『よるのばけもの』の考察!4つの疑問点をズバッと解説

『よるのばけもの』の解説 解説

※プロモーションが含まれています

『よるのばけもの』を考察していきたいと思います。

住野よるさんの『よるのばけもの』は、いじめという重いテーマを扱いながらも、現代の中学生が抱える複雑な心境を丁寧に描いた青春小説として高く評価されています。

作者の住野よるさんは、『君の膵臓をたべたい』で一躍有名になった小説家で、若者の心理描写の巧さで知られていますね。

年間100冊以上の本を読む読書愛好家として、この作品には特別な魅力を感じました。

まず要点だけをまとめると……

  • 『よるのばけもの』は表面的ないじめ小説ではなく、人間の内面を深く掘り下げた心理小説
  • 主人公の「化け物」への変身は、現代人が抱える二面性の巧妙な比喩表現
  • 登場人物それぞれの行動には深い心理的背景があり、単純な善悪では割り切れない

この作品を読んでも「なんだかよくわからなかった」という人は、実はかなり多いんです。

でも安心してください。

この記事では、物語の核心部分や登場人物の心理を詳しく解説していきますよ。

『よるのばけもの』の考察

『よるのばけもの』を理解するうえで最も重要なのは、物語に込められた象徴的な意味を読み取ることです。

この作品には、表面的な出来事の裏に深い心理的な意味が隠されているんですね。

特に注目すべきポイントは以下の通り。

  • 「夜」と「化け物」が持つ象徴的意味
  • 主人公・安達の変身の真の理由
  • 矢野さんの行動に隠された心理
  • 物語終盤の重要な一文の意味

これらの要素を一つずつ詳しく見ていくことで、『よるのばけもの』の真の魅力が見えてきますよ。

「夜」と「化け物」は何の象徴?

『よるのばけもの』における「夜」は、主人公・安達が本音や本当の自分と向き合う時間を象徴しています。

昼間の学校生活では、周囲に合わせて「正しい」行動を取ろうとする安達。

しかし夜になると、自分の気持ちや弱さと向き合うことができる特別な時間が訪れるのです。

一方で「化け物」は、安達の心の中にある「本当の自分」、つまり人に見せたくない部分や異質な存在を象徴しています。

社会の中で「普通」から外れることへの恐怖や、自分の中の醜さ・弱さ・恐怖を具現化したものと考えられるでしょう。

また、化け物は「周囲に合わせて自分を偽ること」への葛藤や苦しみを象徴しているとも言えます。

安達が化け物になる理由

安達が夜になると化け物に変身するのは、学校生活で「本当の自分」を隠し、周囲に合わせて生きるストレスや罪悪感が原因です。

いじめを見て見ぬふりし、「その他大勢」として傍観者でいようとする自分への嫌悪感が、夜になると「化け物」として現れるんですね。

物語の中で「昼の安達」は周囲に同調し、「夜の安達」は本音をさらけ出します。

この二面性が「化け物」という形で表現されているのが、この作品の巧妙なところです。

多くの現代人が抱える「表の顔」と「裏の顔」の葛藤を、ファンタジー要素を使って見事に描写している作品と言えるでしょう。

矢野さんが緑川さんの本を投げた理由

矢野が緑川の大切な本を皆の前で投げ捨てた行為は、一見すると冷酷に見えますが、実は深い心理が隠されています。

矢野は緑川をいじめから守るため、自分が「悪者」になることでクラスの攻撃を一身に引き受けようとしたのです。

矢野は井口を守るためにビンタしたこともあり、他人のために自分が嫌われ役を買って出る思慮深さを持っています。

緑川を傷つけるだけなら人目のないところでできるはずですが、皆の前で行動したのは「緑川をいじめから守るため」という意図があったと考えられるでしょう。

このような複雑な人間関係の描写が、『よるのばけもの』の魅力の一つなんです。

物語終盤の印象的な言葉の意味

この日の夜、久しぶりにぐっすり眠ることが出来た

■引用:住野よる『よるのばけもの』

物語終盤のこの一文は、安達の内面的な変化を表す重要な描写です。

これは、安達が「自分の気持ち」を大切にし、勇気を出して矢野に挨拶を返すという「一歩」を踏み出したことで、偽りの自分を演じるストレスや罪悪感から解放されたことを示しています。

今まで「昼の自分」を「正しい」と思い込んでいた安達が、「自分の本音」を受け入れ、行動したことで、初めて本当の意味で安心して眠ることができたのです。

この場面は、安達の成長と自己受容を象徴する重要なシーンと言えるでしょう。

※『よるのばけもの』が伝えたいことは以下の記事で解説しています。

『よるのばけもの』が伝えたいこと。3つの読み解く鍵とは?
『よるのばけもの』が伝えたいことには、深い意味が込められています。化け物になることの象徴性、笑顔の裏に隠された真実、夜の学校という特別な空間の意味。作品の謎を一つずつ解き明かしながら、私たちの心に届けられたメッセージを探ります。

『よるのばけもの』の登場人物の心理と変化を解説

『よるのばけもの』の魅力を語るうえで欠かせないのが、登場人物たちの複雑で繊細な心理描写です。

特に主人公の安達と矢野さつきの人物造形は、現代の中学生が抱える心の葛藤をリアルに表現していますね。

この章では以下の点について詳しく解説していきます:

  • 主人公「僕」の二面性と成長過程
  • 矢野さつきという存在のリアルさ

これらの人物分析を通じて、『よるのばけもの』がなぜ多くの読者の心を捉えるのかが見えてくるはずです。

主人公「僕」の二面性と成長

主人公の安達は、昼と夜で異なる自分を持つ中学3年生として描かれています。

昼は「俺」として周囲に合わせ、目立たず「普通」でいようと努めますが、夜は「僕」となり、8つの目・6本足・4本尾の化け物に変身するんです。

この二面性は、誰もが持つ「本音」と「建前」、社会の中での仮面と素顔の象徴として機能しています。

昼の安達はクラスの同調圧力やいじめの傍観者であり、正しい行動を取ることに安堵しつつも、自己嫌悪や罪悪感を抱えています。

夜になると化け物になる現象は、周囲に合わせて自分を偽るストレスや、傍観者でいることへの自己否定が具現化したものなんですね。

矢野さつきとの「夜休み」を通じて、安達は他者に心を開くことや、自分の本音と向き合う勇気を少しずつ身につけていきます。

クラスの冷たい視線の中、矢野に「おはよう」と返事をした場面は、安達が自分の意志で一歩踏み出した象徴的な成長の瞬間です。

この行動によって、彼は初めて自分を肯定し、夜も人間の姿で眠れるようになります。

安達の成長は、「本当の自分」を受け入れ、他者と向き合う勇気を持つことに集約されるでしょう。

矢野さつきという存在のリアルさ

矢野さつきは、クラスで壮絶ないじめを受けながらも、毎朝にんまりと笑顔で登校する女子生徒として描かれています。

彼女の「怖い時に無理に笑う」という癖は、表面的な明るさの裏にある恐怖や不安をリアルに表現しているんです。

さつきは空気が読めず、独特な話し方や距離感のなさから「変な人」と思われがちですが、実は他人の本質を鋭く見抜く力を持っています。

いじめに対して反撃せず、教師や親にも頼らず、ただ自分のペースで生きる姿は、現実の学校社会における「異質な存在」のリアルな描写と言えるでしょう。

彼女の行動や言葉は、周囲の「普通」や同調圧力に流されることなく、ありのままの自分でいようとする強さと脆さを同時に感じさせます。

さつきは安達にとって「本当の自分」と向き合うきっかけとなる存在です。

彼女の存在が、安達の成長や変化を促す重要な役割を果たしているんですね。

いじめや孤立の問題を「きれいごと」で終わらせず、痛々しいほどリアルに描くことで、読者に強い印象と気づきを与えています。

簡単に言えば『よるのばけもの』はこういう小説

『よるのばけもの』について、これまで詳しく解説してきましたが、結局のところこの作品はどのような小説なのでしょうか。

簡潔に表現するなら、『よるのばけもの』は「いじめをめぐる人間の心の闇と、そこから抜け出すための葛藤と成長を描いた、少し不思議な青春物語」と言えるでしょう。

この作品の特徴をまとめると以下のようになります。

  • いじめをテーマにしながらも単純な勧善懲悪ではない複雑な人間関係
  • ファンタジー要素を使った心理描写の巧妙さ
  • 現代の中学生が抱える葛藤のリアルな表現

住野よるさんは、この作品を通じて読者に重要なメッセージを伝えようとしています。

主人公の安達が、夜になると「化け物」に変身するというファンタジー要素を通して、いじめの傍観者としての罪悪感や葛藤、そしてそこから逃れようとする変化の過程が描かれているんです。

いじめの加害者、被害者、そして傍観者——それぞれの立場にある登場人物たちの内面が非常に丁寧に描かれており、「いじめとは何か」「人はなぜ加害・被害・傍観してしまうのか」「その中でどうすれば自分を変えられるのか」といった重い問いを読者に投げかけます。

化け物になった安達が、いじめられている矢野と交流する中で、自身の心と向き合い、現実を変えようともがく姿は、いじめという問題の根深さと、それでも希望を見出そうとする人間の強さを示しています。

この作品は、表面的ないじめ小説ではなく、人間の内面を深く掘り下げた心理小説として読むべきですね。

現代社会を生きる私たちが抱える「本音と建前」の葛藤や、「普通」であることへのプレッシャー、そして真の自分らしさとは何かという普遍的なテーマが込められていますから。

読書感想文を書く際には、これらの深いテーマを意識して読み返してみることをおすすめします。

振り返り

『よるのばけもの』の考察について、詳しく解説してきました。

この作品の魅力と深さを、改めて整理してみましょう。

この記事で解説した重要なポイント。

  • 「夜」と「化け物」は現代人の二面性と内面の葛藤を象徴している
  • 主人公・安達の成長は自己受容と他者への勇気を通じて描かれる
  • 矢野さつきの行動には深い心理的背景がある
  • この作品は単純ないじめ小説ではなく複雑な人間心理を描いた青春文学

『よるのばけもの』は、表面的に読むだけでは理解できない深い作品です。

しかし、登場人物の心理や行動の背景を理解することで、住野よるさんが込めた重要なメッセージが見えてくるはず。

読書感想文を書く際には、これらの考察ポイントを参考にして、自分なりの解釈を加えてみてくださいね。

きっと素晴らしい感想文が書けると思いますよ。

※読書感想文の作成に便利な『よるのばけもの』のあらすじはこちらの記事でご確認ください。

『よるのばけもの』のあらすじ【簡単に短く】
『よるのばけもの』のあらすじを簡単に短くまとめました。この小説の概要から読書感想文の作成に役立つ情報も解説しています。

コメント