『ガラスのうさぎ』のあらすじを簡単に短く、そして詳しく解説していきますね。
この感動的な戦争体験記は、高木敏子さんが実際に経験した太平洋戦争末期の出来事をもとに書かれたノンフィクション児童文学です。
1978年に出版されてから240万部を超えるロングセラーとなり、厚生省児童福祉文化奨励賞や日本ジャーナリスト会議奨励賞を受賞した名作でもあります。
年間100冊以上の本を読む私が、読書感想文を書く予定の皆さんに向けて、『ガラスのうさぎ』の魅力を存分にお伝えしていきますよ。
ネタバレなしで詳しくあらすじを紹介し、登場人物や作品情報、さらには似ている小説まで幅広く解説しますので、最後まで読んでいってくださいね。
高木敏子『ガラスのうさぎ』のあらすじを短く簡単に(ネタバレなし)
太平洋戦争末期の昭和20年、東京でガラス工場を営む家族のもとに生まれた12歳の少女・敏子。東京大空襲で母と二人の妹を失った敏子は、疎開先の二宮駅でアメリカ軍機の機銃掃射に遭い、父も敏子の目の前で命を落としてしまう。焼け跡から見つかったのは、父が作ってくれたガラス細工のうさぎが熱で歪んだ姿だった。家族を失った悲しみと向き合いながらも、敏子は生きる意志を見つめ直していく。
高木敏子『ガラスのうさぎ』のあらすじを詳しく
昭和19年、敗色濃厚な日本では生活必需品が配給制となり、学生は学徒兵として、女学生は女子挺身隊として次々と動員されていた。東京両国の川井ガラス工場では、敏子の父・房雄がガラスのうさぎの置物を作っていた。小学6年生の敏子の二人の兄も特攻隊員として志願しており、長兄の昭雄は出発前に別れを告げに来るが、病弱の母との口論で悲しい別れとなる。
空襲が激しくなり、敏子は妹たちと二宮に疎開するが、幼い妹たちは母恋しさに東京へ戻ってしまう。その後、3月10日の東京大空襲で母と妹たちが行方不明になったと知らせが入る。敏子と父は工場の焼け跡を掘り起こすが、遺体は見つからず、溶けたガラスのうさぎだけが出てくる。
8月5日、敏子と父が新潟へ向かう予定の二宮駅で待機中、米軍機の襲撃で父が敏子の目の前で命を落とす。ひとり残された敏子は父の遺体の運搬と埋葬の手続きを行う。深い悲しみに打ちひしがれた敏子だが、ある決断をする。
8月15日、敗戦を迎え、やがて二人の兄が復員してくる。12歳の少女敏子は、両親の遺志を胸に厳しい現実に立ち向かっていく。
『ガラスのうさぎ』のあらすじを理解するための用語解説
『ガラスのうさぎ』を読む際に知っておくと理解が深まる重要な用語をまとめました。
戦争の時代背景や当時の社会情勢を表す言葉が多く登場しますので、ぜひ参考にしてください。
用語 | 説明 |
---|---|
東京大空襲 | 1945年3月10日に起きた 大規模なアメリカ軍による空襲。 東京の広範囲が焼け野原となり、 多くの住民が犠牲になった。 本作の重要な背景となる出来事。 |
疎開 | 戦争の空襲などから子 供や家族を安全な地方に避難させること。 敏子は東京から神奈川県二宮町へ疎開した。 |
P-51ムスタング | アメリカ軍の戦闘機の名前。 物語中で敏子の父が この戦闘機による機銃掃射に遭い命を落とす。 |
焼夷弾 | 空襲で使用された火災を引き起こす爆弾。 東京大空襲で多数が投下され、 火災が広がる原因となった。 |
配給制 | 戦時中に政府が食料品や生活必需品を 制限して配布する制度。 物資不足により一般家庭の生活は厳しくなった。 |
これらの用語を理解しておくことで、『ガラスのうさぎ』の時代背景がより鮮明に見えてくるでしょう。
『ガラスのうさぎ』を読んだ私の感想
『ガラスのうさぎ』を読み終わったとき、正直、頭が真っ白になりました。しばらく本を閉じられなかったくらい、めちゃくちゃ心に刺さったんです。
まず、12歳の女の子・敏子の目線で戦争が描かれているのがすごい。東京大空襲のシーンとか、本当にエグくて、胸がぎゅっと締め付けられるようでした。
特に、幼い妹たちが「お母さん」に会いたくて、疎開先を抜け出そうとする場面が忘れられません。子どもの純粋な気持ちが、戦争っていうどうしようもない現実にぶつかっていくのが、本当に辛くて…。
でも、敏子の強さには、もう感動しっぱなしでした。目の前で父を亡くし、家族を全員失っても、「私が死んだら誰がお父さんのおとむらいをするの」って、涙を流しながらも生きることを選ぶんです。この言葉には、もう涙が止まりませんでした。
物語のシンボルである「ガラスのうさぎ」も、すごく印象的でした。空襲で熱で歪んでしまったうさぎが、壊れてしまった家族の絆や平和を表しているんだな、と。
たったひとつのガラス細工で、日常が戦争でどれだけ無残に壊されるかを見事に表現しているのが、本当にすごいなと思いました。
この本は児童文学ってことになっていますが、大人にも十分響く力があります。教科書で戦争を学ぶのとは全然違う、血の通った現実として心にズシンとくるんです。
敏子の体験を通して、戦争がたくさんの家族をバラバラにし、子どもの未来を奪ったことを、改めて痛感しました。
最後に、復員してきたお兄さんたちと再会して、「三人でガラス工場をつくろう」って希望を語る場面では、本当に涙腺崩壊でした。
どん底の中でも前向きに生きていこうとする敏子の姿に、すごく勇気をもらえました。戦争の悲惨さだけじゃなく、人間の強さと希望を描いた、めちゃくちゃいい話だと思います。
※『ガラスのうさぎ』の読書感想文の例文と書き方はこちらにまとめています。

『ガラスのうさぎ』の作品情報
『ガラスのうさぎ』の基本的な作品情報を表にまとめました。
項目 | 詳細 |
---|---|
作者 | 高木敏子 |
出版年 | 1978年 |
出版社 | 金の星社 |
受賞歴 | 厚生省児童福祉文化奨励賞(1978年) 日本ジャーナリスト会議奨励賞(1979年) |
ジャンル | ノンフィクション児童文学 |
主な舞台 | 東京・神奈川県二宮町 |
時代背景 | 太平洋戦争末期(1945年) |
主なテーマ | 戦争の悲惨さ・家族愛・平和の尊さ |
物語の特徴 | 作者の実体験をもとにしたノンフィクション |
対象年齢 | 小学校高学年以上 |
青空文庫の収録 | なし(著作権保護期間中) |
この作品は2018年時点で発行部数が約240万部に達する超ロングセラーとなっています。
『ガラスのうさぎ』の主要な登場人物とその簡単な説明
『ガラスのうさぎ』に登場する主要な人物たちを重要度の高い順に紹介します。
戦争という過酷な状況の中で懸命に生きる人々の姿をご確認ください。
人物名 | 紹介 |
---|---|
敏子 | 物語の主人公で12歳の少女。 東京大空襲で母と妹たちを失い、 父も機銃掃射で亡くなる。 強くけなげな性格で家族の絆を大切にしている。 |
敏子の父 | ガラス工場を営む父親。 疎開途中の二宮駅で アメリカ軍機の機銃掃射に遭い命を落とす。 父が作ったガラスのうさぎは物語の象徴的存在。 |
敏子の母 | 敏子の母親。 東京大空襲で命を落とし、 物語の悲劇の中心となる存在。 家族思いの優しい母親として描かれている。 |
友子・文子 | 敏子の二人の幼い妹たち。 母恋しさから疎開先の二宮から東京に戻り、 母と共に空襲で命を落とす。 子どもらしい純真さが戦争の悲劇を際立たせる。 |
和雄・昭雄 | 敏子の二人の兄たち。 戦争中は特攻隊員として出征していた。 敗戦後に復員しガラス工場再建の希望を語る。 |
少ない登場人物でありながら、それぞれが戦争という時代を生きる人間の姿を深く表現していますね。
『ガラスのうさぎ』の読了時間の目安
『ガラスのうさぎ』の読了時間について、ページ数や文字数をもとに目安をまとめました。
項目 | 詳細 |
---|---|
総ページ数 | 190ページ(フォア文庫) |
推定文字数 | 約114,000文字 |
読了時間の目安 | 約3時間48分 |
1日の読書時間が30分の場合 | 約8日で読了 |
1日の読書時間が1時間の場合 | 約4日で読了 |
『ガラスのうさぎ』は比較的読みやすい文章で書かれているため、小学生でもスムーズに読み進めることができるでしょう。
感動的な場面では立ち止まってじっくりと味わいたくなるので、実際の読了時間はもう少し長くなるかもしれませんね。
『ガラスのうさぎ』はどんな人向けの小説か?
『ガラスのうさぎ』は特に以下のような人たちにおすすめしたい小説です。
戦争という重いテーマを扱いながらも、幅広い年代の人に読んでもらいたい名作ですね。
- 戦争を知らない世代の子どもたち(小学校高学年〜中学生)- 一人の少女の体験を通して戦争の恐ろしさと平和の尊さを学べます
- 子どもに戦争について教えたい親や教師 – 実体験に基づいた内容で、戦争の記憶を次世代に伝える貴重な資料となります
- 平和について深く考えたい全ての年代の人 – 戦争体験者が少なくなる現代において、個人の物語を通して戦争の理不尽さを感じられます
一方で、戦争に関する描写が生々しいため、非常に小さなお子さんには難しい内容かもしれません。
また、悲しい出来事が続く物語なので、明るく楽しい小説を求めている人には向かないでしょう。
あの本が好きなら『ガラスのうさぎ』も好きかも?似ている小説3選
『ガラスのうさぎ』と似たテーマや文体を持つ小説を3つご紹介します。
どれも戦争を子どもの目線で描いた作品で、平和の尊さを伝える名作ばかりですよ。
あまんきみこ『ちいちゃんのかげおくり』
東京大空襲で家族と離れ離れになった女の子「ちいちゃん」の物語です。
たった一人で空き地でかげおくりをする姿が、戦争が幼い命を奪う悲劇を静かに描いています。
『ガラスのうさぎ』と同様に、子どもの純粋な視点から戦争の理不尽さを伝える点で共通していますね。
短編でありながら深い感動を与える作品で、戦争の恐ろしさを簡潔に表現する手法が見事です。
野坂昭如『火垂るの墓』
戦後の混乱期を生きる兄妹、清太と節子の過酷な運命を描いた作品です。
作者自身の体験が色濃く反映されており、食糧難や空襲によって孤立していく兄妹の姿が描かれています。
『ガラスのうさぎ』と同じく実体験をもとにしたノンフィクション的要素が強く、戦争が家族に与える影響を生々しく描いている点で似ています。
より大人向けの内容ですが、戦争の悲劇を個人の物語として伝える手法が共通していますね。

黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』
戦時中のユニークな小学校「トモエ学園」での日々を描いた自伝的作品です。
楽しい学校生活が戦争によって突然奪われる様子が、『ガラスのうさぎ』と重なります。
どちらも「失われた日常」をテーマにしており、戦争が子どもたちの生活をどれほど変えてしまうかを描いている点で共通していますね。
明るい日常から一転する展開が、戦争の悲劇をより際立たせる効果を生んでいます。

振り返り
『ガラスのうさぎ』のあらすじから登場人物、そして作品の魅力まで幅広くご紹介してきました。
この作品は12歳の少女・敏子が東京大空襲で家族を失い、それでも強く生きていく姿を描いた感動的なノンフィクション児童文学です。
高木敏子さんの実体験をもとに書かれた物語は、戦争の悲惨さと平和の尊さを私たちに深く訴えかけてきます。
この記事が皆さんの読書体験をより豊かなものにしてくれれば嬉しいです。
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