『オルタネート』のあらすじについて、簡単にわかりやすく解説していきますね。
加藤シゲアキさんによる青春小説『オルタネート』は、高校生限定のマッチングアプリが普及した近未来の日本を舞台にした群像劇です。
第164回直木三十五賞候補、第42回吉川英治文学新人賞受賞作品として話題を集めました。
年間100冊以上の本を読む読書家の私が、あらすじから作品の背景、登場人物の魅力まで、丁寧に解説していきますよ。
加藤シゲアキ『オルタネート』のあらすじを簡単に(ネタバレなし)
加藤シゲアキ『オルタネート』のあらすじを詳しく(ネタバレなし)
小説『オルタネート』のあらすじを理解するための用語解説
『オルタネート』を深く理解するために、重要な用語を整理しておきましょう。
デジタル時代の青春を描いた本作には、現代的な概念が数多く登場します。
用語 | 説明 |
---|---|
マッチングアプリ「オルタネート」 | 高校生限定のSNS的マッチングアプリ。 全国の高校で必須となっており、 新しい人間関係や恋愛を促進する。 利用には賛否両論があり、 情報管理の問題も描かれる。 |
オルタネート(alternate) | 「交互の」「代わりの」「もう一方の」 といった意味を持つ英単語。 動詞としては 「~を交互に行う」や「~と交替する」 といった意味で使われる。 |
ジーンマッチ | オルタネート内のAI機能で、 遺伝子レベルで相性の良い相手を判定するシステム。 完璧なデータを提示するが、 人間の感情とは異なる結果を示すことがテーマ的に重要。 |
ワンポーション | 全国配信される高校生料理コンテスト番組。 主人公蓉が過去に出場し トラウマを抱えるきっかけとなった大会。 |
内発的・外発的動機付け | 心理学用語で、 SNS時代の若者の行動原理を示す。 内発的は自発的な興味、 外発的は「いいね」などの外部承認を求める行動。 |
群像劇 | 複数の登場人物それぞれに焦点を当て、 多面的な人間模様や物語が並行して展開し、 最終的にそれらが絡み合うか収束する形式の物語 |
これらの用語を押さえることで、テクノロジーと人間の関係というテーマがより明確になります。
『オルタネート』の本を読んだ私の感想
この小説『オルタネート』を読み終えた時、胸がぎゅっとなるような、それでいて爽やかな感動に包まれました。
正直なところ、高校生向けのマッチングアプリが必須、なんて設定は、最初はちょっとぶっ飛んでいるかな、と思っていたんです。
でも読み進めていくうちに、これがただの突飛な設定じゃないんだと気づかされましたね。スマホやSNSが当たり前の現代で、若者たちが感じている孤独や「誰かと繋がりたい」という気持ちが、痛いほどリアルに伝わってきました。
特に印象的だったのは、3人の主人公それぞれの気持ちが丁寧に描かれているところです。
蓉(いるる)が料理に真剣に向き合う姿は、昔の失敗を乗り越えようとする強い気持ちが伝わってきて、応援したくなりました。彼女がアプリを使わないのは、単に機械が苦手だからじゃなくて、人間関係の不安が根本にあるんだと分かった時、すごく切なかったです。
凪津(なづ)のアプリに依存してしまう様子も、最初は「なんでそこまで?」って思いました。でも、お母さんとの関係や、誰かに認めてほしいという気持ちが見えてくると、「そっか、そういうことか」って納得。データで完璧な相手を探したくなる気持ち、なんだか分かる気がします。
そして、尚志(なおし)の物語は、デジタルから少し離れて、人と人との繋がりを求める姿が温かかったです。彼だけがアプリを使えない状況だからこそ、音楽を通じて人と出会い、本当に心を通わせる場面が、より一層輝いて見えました。
3つのストーリーがそれぞれ進んでいき、最後に文化祭で一つに繋がる構成も見事でした。パズルのピースがカチッとはまるような感覚で、読みながら「ああ、こうなるのか!」って鳥肌が立ちましたね。青春小説の醍醐味がぎゅっと詰まっていて、本当に面白かったです。
加藤シゲアキさんの文章力にも驚かされました。高校生の話し方がすごく自然で、感情の動きを繊細に描き出すのが本当に上手。料理のシーンは、読んでいるだけで香りが漂ってくるようでした。
ただ、一つだけ気になったのは、アプリがどうして全国の高校で必須になったのか、その背景がもう少し分かればよかったかな、ということ。
でも、それを差し引いても、この小説が問いかけてくる「人と繋がるって、一体どういうことなんだろう?」というテーマは、深く心に残りました。
読後感は、晴れ渡った空のように爽やかで、希望に満ちています。若い人たちには自分のこととして、大人には今の若者のことを知るきっかけとして、多くの人に読んでもらいたい一冊ですね。
※『オルタネート』の読書感想文の書き方と例文はこちらで解説しています。

『オルタネート』の作品情報
項目 | 内容 |
---|---|
作者 | 加藤シゲアキ |
出版年 | 2020年 |
出版社 | 新潮社 |
受賞歴 | 第164回直木三十五賞候補 第42回吉川英治文学新人賞受賞 |
ジャンル | 青春小説・群像劇 |
主な舞台 | 東京の円明学園高校 |
時代背景 | 高校生限定マッチングアプリが普及した近未来 |
主なテーマ | 人間関係・友情・恋愛 自己肯定感・デジタル時代の繋がり |
物語の特徴 | ・3人の視点で描かれる群像劇 ・現代的なSNS文化を背景 |
対象年齢 | 高校生以上 (特に10代後半から20代前半におすすめ) |
『オルタネート』の主要な登場人物とその簡単な説明
『オルタネート』を彩る魅力的な登場人物たちを紹介します。
それぞれが抱える悩みや成長過程に注目してみてください。
人物名 | 紹介 |
---|---|
新見蓉(にいみ いるる) | 円明学園高校3年生で調理部部長。 料理コンテスト「ワンポーション」での 過去の失敗がトラウマ。 人間関係に不安を抱き、 オルタネートを使用していない。 |
伴凪津(ばん なづ) | 円明学園高校1年生。 オルタネートを強く信奉し、 ジーンマッチ機能で運命の相手を探している。 母親との関係に悩みを抱える。 |
楤丘尚志(たらおか なおし) | 大阪の高校を中退し、 バンド仲間を探して上京した青年。 高校生ではないためオルタネートを使用できない。 音楽家のシェアハウスに住む。 |
3人の主人公それぞれが異なる背景を持ちながら、現代の若者らしい悩みを抱えているのが印象的です。
『オルタネート』の読了時間の目安
『オルタネート』の読書にかかる時間の目安をまとめました。
読書計画の参考にしてください。
項目 | 詳細 |
---|---|
ページ数 | 488ページ(単行本) |
推定文字数 | 約293,000文字 |
読了時間の目安 | 約9時間50分 |
1日1時間読書の場合 | 約10日で完読 |
読みやすさ | 現代的な文体で読みやすい |
文章は現代的でテンポが良く、3つの視点が交互に展開されるため飽きずに読み進められます。
高校生にとっても親しみやすい内容でしょう。
『オルタネート』はどんな人向けの小説か?
『オルタネート』が特に響くであろう読者層を分析してみました。
以下のような方には強くおすすめします。
- SNSやアプリが日常の一部となっている10代から20代の若者
- 現代の青春小説や群像劇が好きな読書家
- 人間関係や自己肯定感について深く考えたい人
特にデジタルネイティブ世代には、自分たちの等身大の悩みとして共感できる内容でしょう。
一方で、近未来的な設定に違和感を覚える人や、青春小説にあまり興味がない人には向かないかもしれません。
しかし、現代の若者文化を理解したい大人の読者にとっても、新たな視点を与えてくれる価値ある作品です。
あの本が好きなら『オルタネート』も好きかも?似ている小説3選
『オルタネート』と共通点を持つ魅力的な小説を3つ選びました。
現代的なテーマと群像劇という構成に注目して選書しています。
朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』
バレー部のエース桐島が部活を辞めるという出来事を、様々な生徒の視点で描いた群像劇です。
『オルタネート』と同様に、スクールカーストや人間関係の微妙さ、そして「誰かと繋がること」の難しさがテーマになっています。
複数の視点が交錯する構成も共通点の一つでしょう。

朝井リョウ『何者』
就職活動を舞台にした青春群像劇で、SNSでの情報交換や建前を使い分ける登場人物たちの姿が描かれます。
『オルタネート』の高校生たちがマッチングアプリに依存する様子と重なる部分があり、デジタル時代のコミュニケーションの危うさという共通テーマを持っています。

辻村深月『傲慢と善良』
婚活におけるマッチングアプリが物語の鍵となる小説です。
主人公たちがプロフィールという記号で相手を判断し、自分の傲慢さと向き合う姿は、『オルタネート』の凪津がデータに固執する様子と似ています。
現代のツールを使いながら、最終的には人と人との本質的な繋がりを問うという点で共通したテーマを持つ作品です。

振り返り
『オルタネート』のあらすじと魅力について詳しく解説してきました。
加藤シゲアキさんが描く現代の青春群像劇は、デジタル時代の人間関係を鋭く切り取った傑作です。
3人の高校生それぞれの成長物語が交錯する構成は読み応えがあり、現代の若者が抱える普遍的な悩みを丁寧に描いています。
この記事が皆さんの理解の一助となれば幸いです。
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