『斜陽』の読書感想文を書く予定の皆さん、こんにちは。
太宰治の代表作『斜陽』は、戦後の混乱期に没落していく元華族の家族を描いた中編小説です。
1947年に雑誌連載され、その後単行本として刊行されてベストセラーになりました。
作中で描かれた没落していく上流階級の人々を指す「斜陽族」という流行語を生み出したことでも有名ですね。
この記事では、読書が趣味で年間100冊以上の本を読む私が『斜陽』の読書感想文の書き方から具体的な例文まで、丁寧に解説していきます。
中学生向けと高校生向けの書き出しや題名の付け方、コピペではない自分だけの感想文を書くコツまで、しっかりとサポートしていきますよ。
『斜陽』の読書感想文で触れたい3つの要点
『斜陽』の読書感想文を書く際に、必ず触れておきたい重要な要点が3つあります。
これらの要点について「自分はどう感じたか」をメモしながら読み進めることが、感想文を書く上でとても大切になってきます。
読書中にメモを取る方法としては、付箋を使って気になった場面に印を付けたり、ノートに「この場面で私が感じたこと」を簡単に書き留めておくといいでしょう。
なぜ「どう感じたか」が重要なのかというと、読書感想文は単なるあらすじ紹介ではなく、あなた自身の心の動きや考えを表現する文章だからです。
まず、『斜陽』で触れるべき3つの要点を見ていきましょう。
- 没落貴族の家族の「斜陽」=没落と再生の物語
- 「恋と革命」というテーマ
- 「貴族の精神」とその葛藤
これら3つの要点を理解することで、『斜陽』の深いテーマを読み取ることができるようになります。
それぞれの要点について、詳しく解説していきますね。
没落貴族の家族の「斜陽」=没落と再生の物語
『斜陽』は戦後の日本で没落していく元貴族の家族を中心に描かれています。
華族制度が廃止され、主人公かず子とその母は東京の屋敷を売却し、伊豆の山荘で暮らすことになります。
一家の終焉、母の死、弟の自殺という悲劇的な出来事が次々と起こります。
しかし、この物語は単なる没落の物語ではありません。
主人公かず子が新しい生き方を模索し、「恋の革命」を経て再生へ向かう姿が描かれているのです。
ここで重要なのは、あなたがこの「没落と再生」の物語をどう受け止めたかです。
現代を生きる私たちにとって、時代の変化にどう対応していくべきなのか、考えてみてください。
かず子の強さや前向きな気持ちに対して、どのような印象を持ったでしょうか。
また、家族の絆や支え合いについて、この物語から何を学べるでしょうか。
これらの点について、あなた自身の体験や価値観と照らし合わせながら考えてみることが大切です。
「恋と革命」というテーマ
物語の中で主人公かず子は、小説家の上原二郎に恋をし、やがて子供を身ごもることになります。
この「恋」が、かず子にとって新たな生命の希望を示すものとなっているのです。
一方、弟の直治は恋に敗れ、精神的に追い詰められて死を選んでしまいます。
恋による「革命」の成否が、人生の光と影を象徴的に表現しているのが分かりますね。
ここには「古い価値観」と「新しい生き方」の対比というテーマが浮かび上がってきます。
かず子は古い道徳観念にとらわれることなく、自分の気持ちに正直に生きようとします。
この「恋と革命」というテーマについて、あなたはどう感じましたか。
現代の私たちにとって、自分らしく生きるとはどういうことなのでしょうか。
社会の常識や周囲の目を気にしすぎることなく、自分の心に従って行動する勇気について考えてみてください。
また、恋愛や人間関係を通じて成長していくということについても、あなたの考えを整理してみるといいでしょう。
「貴族の精神」とその葛藤
作品の中では「本物の貴族」である母と、貴族的精神にとらわれるかず子と弟の対比が描かれています。
母は「最後の貴族」として品格を保ちながらも、時代の変化を静かに受け入れていきます。
弟の直治は自らの貴族性から抜け出せず、時代に適応できずに敗北してしまいます。
かず子は古い貴族的な価値観を破り、新しい自分として生まれ変わろうとします。
この対比を通じて、時代の変革と個人の葛藤、そして誇りの意味について考えさせられます。
現代を生きる私たちにとっても、自分の中にある「プライド」や「こだわり」とどう向き合うかは重要な問題です。
時には古い考えを手放すことが必要な場面もあるでしょう。
一方で、大切にすべき価値観や信念もあるはずです。
あなたは「貴族の精神」についてどう感じましたか。
現代社会において、本当の意味での「品格」や「誇り」とは何なのでしょうか。
また、変化を恐れずに新しい自分になる勇気について、どのように考えますか。
これらの点について、あなた自身の経験や価値観と結び付けて考えてみることが、深い感想文を書くポイントになります。
※『斜陽』で太宰治が伝えたいことや物語上の疑問点の解説はこちらの記事にまとめています。


『斜陽』の読書感想文の例文【中学生向け】原稿用紙3枚(約1200字)
【題名】新しい生き方を見つける勇気
太宰治の『斜陽』を読んで、私は「時代の変化」と「自分らしく生きる勇気」について深く考えさせられた。この物語は戦後の日本で没落していく貴族の家族が主人公で、特に、かず子という女性が新しい自分の生き方を模索しながら困難に立ち向かう姿が強く印象に残った。
物語の中では、華族制度が廃止されて生活が苦しくなったかず子と母親が、東京の屋敷を売って伊豆の山荘で暮らすことになる。今まで当たり前だった生活が一変してしまう様子を読んでいて、私は現代でも同じようなことが起こり得るのだと感じた。例えば、親の転職で引っ越しをしなければならなくなったり、家族の事情で生活スタイルが変わったりすることは誰にでもあることだ。
特に印象的だったのは、母親の生き方である。「最後の貴族」として品格を保とうとする母親の姿は、困難な状況でも自分の信念を曲げない強さを表していると思った。私の祖母も戦争を経験した世代で、どんなに大変なときでも愚痴を言わずに家族を支えてくれる。母親の生き方を通して、人としての品格とは何かを考えさせられた。
一方で、主人公のかず子は古い価値観から必死に脱却しようとする。彼女が最後に「恋と革命」という言葉で自分の生き方を表現する場面は、とても印象深かった。周囲の目を気にせず、自分の気持ちに正直に生きようとするかず子の強さに、私は心を打たれた。中学生の私にとって、友達の目や周りの評価を気にしてしまうことは日常茶飯事だ。でも、かず子のように自分の意志で新しい道を切り開こうとする勇気は、とても大切なことだと感じた。
弟の直治は、姉とは対照的に時代の変化に適応できず、自己破滅的な道をたどってしまう。彼の苦悩を読んでいて、変化を受け入れることの難しさを感じた。現代を生きる私たちも、急速に変わっていく社会の中で、古い考えにとらわれすぎると取り残されてしまう危険があるのではないだろうか。直治の姿は、そんな現代社会への警告のようにも思えた。
この物語は、過去の話であると同時に、現代を生きる私たちにとっても多くの問いを投げかけてくる。SNSや技術の発達によって、今までの常識や人間関係のあり方が大きく変わろうとしている今、私たちは古い価値観に囚われたまま立ち止まっているのか、それとも新しい時代を切り開いていくのか。
『斜陽』を読んで、私は自分らしく生きることの大切さを改めて実感した。周りに流されることなく、でも時代の変化も受け入れながら、自分なりの生き方を見つけていきたい。かず子のように困難な状況でも前向きに生きる強さを、私も身につけていきたいと思う。どんなことがあっても、自分の信じる道を歩んでいく勇気を持ち続けたい。
『斜陽』の読書感想文の例文【高校生向け】原稿用紙5枚(約2000字)
【題名】時代の転換期を生きる私たちへのメッセージ
太宰治の『斜陽』を読んで、まず圧倒されたのは、時代に取り残されていく「旧華族」たちの生活を描いた、美しくもどこか哀しい文章の力だった。戦後の混乱の中、今まで当たり前だった価値観が崩れていく様子が繊細な筆致で描かれていて、一気に作品の世界に引き込まれていった。
特に心に残ったのは、母親の存在である。結核に侵されながらも、「最後の貴族」としての品格を保とうとする母親の姿は、時代の変化を受け入れられない旧体制そのものを象徴しているように感じられた。しかし、静かに滅びていく彼女の姿は、決して古臭いものには見えず、むしろ一つの時代が終わる切なさと美しさを感じさせた。
私の曾祖母も明治生まれで、戦前の古い価値観を大切にしながら生きていた人だった。どんなに時代が変わっても、自分の信念を曲げることのなかった曾祖母の姿と、『斜陽』の母親の姿が重なって見えた。
現代の私たちは、便利さや効率を重視するあまり、こうした品格や美意識を失いつつあるのではないだろうか。効率や合理性を求める社会の中で、無駄とも思えるような「佇まい」や「所作」の美しさに価値を見出す感性が、今こそ見直されるべきではないかと感じた。
主人公のかず子は、そんな古い価値観から必死に脱却しようとする。彼女が最後に「恋と革命」という言葉で自分の生き方を表現する場面は、非常に印象的だった。時代に流されるのではなく、自分の意志で新しい道を切り開こうとする彼女の強さに、深く胸を打たれた。
現代の高校生である私にとって、将来への不安や周囲からの期待に押しつぶされそうになることは珍しくない。大学受験や進路選択において、親や先生の意見に従うことが「正しい」とされがちだが、かず子のように自分の心の声に従って生きる勇気も必要なのではないかと感じた。たとえ間違っていたとしても、自らの選択に責任を持つことでしか、本当の意味での「自立」は得られないのだと思う。
弟の直治の存在も、考えさせられるものがあった。時代の変化に適応できず、自己破滅的な道をたどる直治の姿は、現代を生きる若者たちの一部とも重なって見える。SNSやインターネットの普及により、情報過多の社会で自分を見失ってしまう学生。人間関係のストレスから心を病んでしまう社会人。
直治の苦悩は、現代社会の問題と決して無関係ではないと思う。彼の死は、変化を受け入れることの難しさと、それに失敗したときの悲劇を象徴している。彼の苦しみは弱さではなく、むしろ感受性の強さゆえの苦悩だったとも言える。
この物語で最も重要なテーマの一つが、「貴族の精神」とその葛藤である。作中では「本物の貴族」である母と、貴族的精神にとらわれるかず子と弟の対比が描かれている。現代の私たちにとって「貴族」という存在は遠いものに感じられるかもしれないが、ここで描かれているのは、自分の中にある「プライド」や「こだわり」とどう向き合うかという、普遍的な問題だと思う。
時には古い考えを手放すことが必要な場面もあるし、一方で大切にすべき価値観や信念もある。かず子は古い貴族的な価値観を破り、新しい自分として生まれ変わろうとした。それは単なる反抗ではなく、時代の変化を受け入れながらも、自分らしさを失わない生き方の模索だったのではないだろうか。彼女の行動は、外から与えられた「型」ではなく、自分の内面に根ざした生き方を追求する強さの表れだと感じた。
『斜陽』が描く「恋と革命」というテーマも、現代の私たちにとって重要な意味を持っている。かず子が上原二郎に恋をし、やがて子供を身ごもることで新たな生命の希望を見出す過程は、単なる恋愛小説の枠を超えている。それは、古い価値観にとらわれることなく、自分の感情に素直に生きることの大切さを教えてくれる。
現代社会では、恋愛や結婚に対する価値観も多様化している。周囲の期待や社会の常識に振り回されることなく、自分の心に従って人生を選択する勇気が、今の私たちにも求められているのではないだろうか。たとえその選択が困難な道であっても、自分自身を裏切らない生き方を貫くことが、人生にとって何よりも大切なのかもしれない。
この作品を読んで、私は現代を生きる私たちが直面している問題と、戦後の混乱期に生きた人々の苦悩には、共通する部分が多いことに気づいた。AI技術の発達、グローバル化の進展、働き方の変化など、私たちの周りには常に新しい変化が起こっている。
そうした変化の中で、古い価値観に囚われたまま取り残されるのか、それとも新しい時代を切り開いていくのか。『斜陽』は、時代の転換期に生きる人々の選択を通して、私たち自身の生き方を深く考えさせてくれる作品だった。
かず子の最後の決意は、絶望の中にも希望を見出す強さを表している。どんなに困難な状況に直面しても、未来への可能性を信じて歩み続ける姿勢は、現代を生きる私たちにとっても大きな励みになる。
私も、変化を恐れることなく、自分らしい生き方を見つけていきたいと思う。そして、どんな時代にあっても、自分の感性や価値観を大切にしながら、しなやかに生き抜く力を身につけたいと強く感じた。
振り返り
『斜陽』の読書感想文について、3つの要点から具体的な例文まで詳しく解説してきました。
この記事で紹介した内容を参考にすれば、あなたも必ず素晴らしい読書感想文が書けるはずです。
重要なのは、物語の内容を理解するだけでなく、あなた自身がどう感じたかを大切にすること。
『斜陽』が描く時代の変化や人間の葛藤は、現代を生きる私たちにとっても身近な問題です。
あなたの体験や価値観と照らし合わせながら、自分だけの感想文を作り上げてください。
きっと、太宰治の『斜陽』から得た学びが、あなたの人生にとって価値あるものになるでしょう。
頑張って、心のこもった読書感想文を完成させてくださいね。
※『斜陽』のあらすじはこちらでご紹介しています。

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