芥川龍之介の『鼻』のあらすじを紹介します。
長い鼻に悩む高僧の内面描写を通して、人間の心理の複雑さを鋭く描いた名作ですよ。
芥川の出世作となったこの小説は、『今昔物語集』を題材にしながらも、人間の嫉妬や自尊心といった普遍的なテーマを描いています。
私は年間100冊以上の本を読む読書好きですが、『鼻』は短編ながらも読むたびに新たな発見がある作品だと感じています。
この記事では短くて簡単なあらすじから詳しい内容、作品の概要まで丁寧に解説していきますね。
芥川龍之介『鼻』のあらすじ
芥川龍之介の『鼻』のあらすじを長短あわせて3パターンに分けてまとめました。
短く簡単なバージョン
中間の長さ
詳しくまとめたもの(詳細なネタバレ)
平安時代、京都の池の尾に住む禅智内供という高僧は、五、六寸(約15~18cm)もある長い鼻の持ち主だった。その滑稽な外見のせいで周囲から陰口を言われ、嘲笑の的となっていた。内供は表面上は気にしていないふりをしていたが、内心では自尊心を大きく傷つけられていた。
食事の際には、中童子という弟子が内供の鼻を持ち上げなければならず、一度は弟子がくしゃみをして鼻を粥に落としてしまうという恥ずかしい出来事もあった。そんな内供は、弟子を通じて中国から来た医者から鼻を短くする方法を教わる。熱湯で鼻を茹でた後、足で踏むという荒療治だったが、これを試した内供の鼻は見事に短くなった。
しかし喜びもつかの間、短くなった鼻を見て笑う人々が現れ始める。初めは顔が変わったせいだと思おうとしたが、日増しに笑う人は増え、内供は長かった頃よりも馬鹿にされていると感じるようになった。人間は他人の不幸に同情しつつも、その不幸が解消されると物足りなさを感じ、さらには敵意すら抱くという皮肉な性質が描かれる。
鼻の短さを新たに悩み始めた内供だったが、ある夜、鼻がかゆくて眠れない一夜を過ごした。翌朝目覚めると、鼻は元の滑稽な長さに戻っていた。しかし不思議なことに、内供の心は落ち着いていたのだった。
芥川龍之介『鼻』の作品情報
芥川龍之介の『鼻』に関する情報をまとめました。
この作品の基本情報を知ることで、読書感想文を書く際の参考になりますよ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作者 | 芥川龍之介 |
| 出版年 | 1916年 |
| 現在の出版社 | 新潮文庫・岩波文庫・角川文庫など |
| 受賞歴 | 夏目漱石から絶賛を受けた芥川の出世作 |
| ジャンル | 短編小説(掌編小説) |
| 主な舞台 | 平安時代の京都(池の尾/現在の宇治市池尾) |
| 時代背景 | 平安時代 |
| 主なテーマ | 自己コンプレックス、他者の視線、人間の嫉妬心 |
| 物語の特徴 | 『今昔物語集』と『宇治拾遺物語』を題材にした人間心理の描写 |
| 対象年齢 | 中学生以上 |
| 青空文庫 | 収録済み>>>こちら |
主要な登場人物とその簡単な説明
『鼻』に登場する人物は多くありませんが、それぞれが重要な役割を担っています。
ここでは主な登場人物の特徴をまとめました。
| 登場人物 | 説明 |
|---|---|
| 禅智内供 (ぜんちないぐ) |
主人公。 50歳を超えた高僧で、 15~18cmほどの長い鼻を持ち、 そのコンプレックスに悩んでいる |
| 中童子 (ちゅうどうじ) |
内供の弟子。 食事の際に内供の鼻を持ち上げる役割をしており、 くしゃみをして鼻を粥に落とす失敗をする |
| 医者 | 中国から渡来した僧侶で医者。 内供の弟子を通じて鼻を短くする方法を教える |
この物語は登場人物が少ないながらも、それぞれの描写を通して人間の複雑な心理が鮮やかに表現されています。
読了時間の目安
『鼻』は短編小説なので、比較的短時間で読み終えることができます。
ここでは、読書のペース別に読了時間の目安をまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 文字数 | 約5,866文字 |
| ページ数 | 約10ページ(1ページ600文字計算) |
| 平均的な読書速度での読了時間 | 約12分(500文字/分の場合) |
| ゆっくり読む場合の読了時間 | 約20分(300文字/分の場合) |
| 速読の場合の読了時間 | 約6分(1,000文字/分の場合) |
『鼻』は一度読むだけでも楽しめますが、じっくり読むことで人間心理の深い描写や社会批評といった側面も味わうことができますよ。
短い作品なので、何度も読み返して新たな発見をするのもおすすめです。
※芥川龍之介が『鼻」で伝えたいことは、以下の記事で考察しています。

どんな人向けの小説か?
芥川龍之介の『鼻』は、短編小説でありながら深いテーマを持つ作品です。
特に以下のような人におすすめですよ。
- 自分の外見やコンプレックスに悩んでいる人
- 他人の目や評価を気にしすぎてしまう人
- 人間の複雑な心理や社会の視線について考えたい人
- 短時間で読める文学作品を探している人
- 日本文学の古典に触れてみたい人
この作品は100年以上前に書かれたものですが、人間の本質を描いているため、現代でも十分に共感できる内容となっています。
特にSNSで他者の評価を気にする現代人にとって、示唆に富む作品と言えるでしょう。
短い作品なので、読書が苦手な人でも取り組みやすいというメリットもあります。
また、高校の教科書にも掲載されることがある作品なので、学生の方の読書感想文の題材としても最適ですね。
類似した内容の小説3選
芥川龍之介の『鼻』を読んで興味を持った方に、テーマや雰囲気が似ている作品をいくつか紹介します。
これらの作品も人間の心理や社会との関わりを描いた名作ですよ。
志賀直哉『清兵衛と瓢箪』
志賀直哉の『清兵衛と瓢箪』は、趣味の瓢箪栽培に熱中する少年・清兵衛が、周囲の理解を得られない中でも自分の情熱を貫く姿を描いた作品。
『鼻』と同様に、社会の視線や価値観と個人の情熱との葛藤がテーマとなっています。
清兵衛の瓢箪への愛情は周囲からは理解されませんが、彼自身の心の支えになっている点で、内供が最終的に自分の鼻を受け入れる姿と通じるものがあります。

夏目漱石『坊っちゃん』
夏目漱石の『坊っちゃん』は、正義感の強い主人公が教師として赴任した先で、偽善や世渡り上手な人々との対立を描いた作品。
『鼻』と同様に、社会の中で個人が感じる違和感や葛藤がテーマとなっています。
また、坊っちゃんの率直で誠実な性格が周囲から理解されない点は、内供の悩みとも共通しています。
人間関係や社会の不条理さについて考えさせられる点でも、『鼻』と共通する要素がある作品です。

宮沢賢治『セロ弾きのゴーシュ』
宮沢賢治の『セロ弾きのゴーシュ』は、下手な演奏を周囲から批判されるチェロ奏者が、動物たちとの交流を通じて成長していく物語。
『鼻』と同様に、周囲からの否定的な評価に悩む主人公が描かれています。
ゴーシュが最終的に自分らしい演奏を見つけ、成長していく姿は、内供が自分の個性を受け入れる過程と重なるものがあります。

振り返り
芥川龍之介の短編小説『鼻』について、あらすじや登場人物などを幅広く紹介しました。
簡単に言うと、長い鼻に悩む高僧の心理を通して、人間の自尊心や嫉妬心、自己受容といったテーマを鋭く描いた作品です。
100年以上前に書かれた作品でありながら、SNSで他者の評価を気にする現代人にも共感できる普遍的なテーマを持っています。
短い作品なので気軽に読めるのも魅力で、読書感想文の題材としても深い考察ができる内容ですね。
ぜひ皆さんも『鼻』を読んで、人間の本質について考えてみてはいかがでしょうか。
また、この作品をきっかけに、志賀直哉や夏目漱石、宮沢賢治などの他の日本文学にも触れていただければ幸いです。
※『鼻』を読んでもピンとこない方はこちらの解説記事がおすすめです。

※読書感想文の書き方と例文はこちらにまとめています。

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