『白鯨』のあらすじをみなさんにお届けしますよ。
アメリカ文学の最高傑作の一つとされるハーマン・メルヴィルの『白鯨』は、復讐に燃える船長と白いクジラの壮絶な物語。
私は年間100冊以上の本を読む読書好きで、この『白鯨』の壮大な物語世界にも何度も引き込まれてきました。
読書感想文に取り組む皆さんの手助けになるよう、簡単なあらすじから詳しい内容まで、丁寧に解説していきますね。
また、登場人物の解説や読書感想文を書く際のポイントなども紹介しています。
ぜひ最後まで読んでいただければと思います。
『白鯨』の簡単なあらすじ
『白鯨』の中間の長さのあらすじ
『白鯨』の詳しいあらすじ(ネタバレあり)
19世紀半ば、イシュメールという若者が捕鯨の冒険を求めてナンタケットにやってくる。宿で出会った異教徒の銛打ちクィークェグと意気投合し、ともに捕鯨船ピークオッド号に乗り込む。船長エイハブは白いマッコウクジラ「モービィ・ディック」に片足を食いちぎられ、鯨骨の義足を付けていた。エイハブは乗組員たちの前で白鯨への復讐を誓い、最初に白鯨を見つけた者に金貨を与えると約束する。
冷静な一等航海士スターバックはエイハブの復讐心を神を冒涜する行為だと諫めるが、エイハブは聞く耳を持たない。ピークオッド号は大西洋を南下し、喜望峰を回り、インド洋へと進む。途中、不吉な前兆や様々な捕鯨船との遭遇を経験しながら、太平洋へと航海を続ける。
ついに日本近海で白鯨を発見し、3日間にわたる戦いが繰り広げられる。最終日、エイハブは白鯨に銛を打ち込むが、ロープが首に絡まり海中へと引きずり込まれる。白鯨はピークオッド号に体当たりし、船は沈没。乗組員全員が溺れる中、イシュメールだけがクィークェグの棺桶を救命具として使い、唯一の生存者となった。別の船に救助されたイシュメールが、この物語を語り継ぐことになる。
『白鯨』の作品情報
『白鯨』の基本的な情報をまとめました。
感想文を書く前に、作品の背景を知っておくと理解が深まりますよ。
作者 | ハーマン・メルヴィル |
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出版年 | 1851年 |
出版社 | 岩波文庫、角川文庫、新潮文庫など |
受賞歴 | 当時は評価されず、メルヴィルの死後に再評価された |
ジャンル | 海洋冒険小説、アメリカ文学 |
主な舞台 | 大西洋、インド洋、太平洋(日本近海) |
時代背景 | 19世紀半ば(捕鯨産業全盛期) |
主なテーマ | 復讐、人間と自然の闘い、狂気と理性 |
物語の特徴 | 一人称と三人称の混在、戯曲調の章も |
対象年齢 | 高校生以上(難解な表現や哲学的内容を含む) |
『白鯨』の主要な登場人物
『白鯨』には個性豊かな登場人物がたくさん出てきます。
感想文を書く際には、特に中心となる人物たちの関係性や心理を押さえておくと良いでしょう。
イシュメール | 物語の語り手。若い水夫で捕鯨は初めて。唯一の生存者となる。 |
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エイハブ | ピークオッド号の船長。白鯨に片足を奪われ、復讐に取り憑かれている。 |
クイークェグ | 南太平洋の島出身の銛打ち。体中に入れ墨があり、イシュメールの親友に。 |
スターバック | 一等航海士。理性的で敬虔なクエーカー教徒。エイハブの狂気を諫める。 |
スタッブ | 二等航海士。陽気でいつもパイプを離さない。 |
フラスク | 三等航海士。小柄だが勇敢で意欲的。 |
ピップ | 黒人少年。海に落ちて救出された後、精神に異常をきたす。 |
フェダラー | 謎めいた東洋人。エイハブが密かに乗せた銛打ち。 |
モービィ・ディック | 伝説の白いマッコウクジラ。狡猾で多くの捕鯨船を破壊してきた。 |
ペレグ船長 | ピークオッド号の共同経営者。イシュメールとクイークェグを雇う。 |
このほかにも多くの乗組員が登場し、多様な人種や文化を持つ人々の姿が描かれています。
『白鯨』の文字数と読むのにかかる時間
『白鯨』は非常に長い小説です。
読書のペースを考える際の参考にしてください。
推定文字数(日本語訳) | 約82万文字(岩波文庫版) |
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ページ数 | 約1,376ページ(岩波文庫版) |
読了時間の目安 | 約27時間(1分間に500字で計算) |
1日2時間読んだ場合 | 約2週間 |
読みやすさ | 難解(鯨に関する知識や哲学的な内容が多い) |
この小説は難解な表現や蘊蓄が多く含まれているため、実際にはもう少し時間がかかるかもしれません。
余裕を持って読み始めることをおすすめします。
『白鯨』の読書感想文を書くうえで外せない3つの重要ポイント
『白鯨』の読書感想文を書く際には、以下の3つのポイントを中心に考えると、より深みのある内容になりますよ。
- エイハブ船長の復讐心と狂気
- 多様性と人間関係の描写
- 自然の力と人間の限界
それぞれのポイントについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
エイハブ船長の復讐心と狂気
『白鯨』の中心となるテーマは、エイハブ船長の復讐心です。
彼は白鯨モービィ・ディックに片足を奪われたことで、その復讐に人生をかけています。
エイハブの姿は、人間の執着や情念がいかに危険なものになりうるかを示しているんですね。
彼は優秀な船長であるにもかかわらず、復讐という一点に取り憑かれるあまり、理性を失い、最終的には自分だけでなく乗組員たちも破滅へと導きます。
感想文では、エイハブの言動や心理描写に注目し、彼の狂気がどのように描かれているか、またそれが現代社会における執着や固執とどのように結びつくのかを考察するとよいでしょう。
多様性と人間関係の描写
『白鯨』では、様々な国籍や文化背景を持つ乗組員たちが登場します。
イシュメールとクイークェグの友情は、文化の違いを超えた絆を象徴しています。
特に注目すべきは、19世紀という時代にありながら、人種や文化の多様性が自然に描かれている点。
ピークオッド号という一つの船の中で、異なるバックグラウンドを持つ人々が共に働き、時に対立し、時に協力する様子は、現代のグローバル社会にも通じるものがあります。
感想文では、イシュメールとクイークェグの関係性や、船内での多様な人々の交流について触れながら、異文化理解や共生について自分の考えを述べるとよいでしょう。
自然の力と人間の限界
『白鯨』では、大海原と巨大な白鯨という圧倒的な自然の力と、それに立ち向かう人間の姿が描かれています。
エイハブが最終的に敗れるのは、彼の傲慢さが自然の力を過小評価したからとも言えます。
人間がいかに技術を発達させ、知識を蓄えても、自然の前ではなお小さな存在でしかないという教訓がここにあります。
感想文では、現代社会における環境問題や自然災害と結びつけながら、人間と自然の関係について考察を深めると、より説得力のある内容になるでしょう。
自然を征服しようとする人間の姿勢と、自然との共生をどのように考えるか、自分なりの視点を示すことが大切です。
※作者が『白鯨』で伝えたいことは、以下の記事で考察しています。

『白鯨』の読書感想文の例(原稿用紙4枚強/約1700文字)
私は今回、アメリカ文学の傑作と言われるハーマン・メルヴィルの「白鯨」を読んだ。正直に言って、最初は分厚い本を見て気が重くなったが、読み進めるうちに徐々に物語の世界に引き込まれていった。この物語は単なる捕鯨の冒険譚ではなく、人間の執念や限界、そして自然の圧倒的な力について深く考えさせられる作品だった。
物語は、イシュメールという若者が捕鯨船ピークオッド号に乗り込むところから始まる。そこで彼は、白いマッコウクジラ「モービィ・ディック」に片足を奪われたエイハブ船長と出会う。エイハブ船長の白鯨への復讐心は尋常ではなく、彼はその一点に取り憑かれていた。最初、この執着がただの復讐心だと思っていたが、読み進めるうちにそれが人間の根源的な何かと向き合う姿なのではないかと感じるようになった。
印象的だったのは、エイハブ船長がいかに優秀な船長であるにもかかわらず、復讐という感情に支配されて理性を失っていく様子だ。彼は白鯨を「邪悪なるもの」の象徴と見なし、それを倒すことが自分の使命だと信じていた。現代社会でも、一つのことに取り憑かれるあまり、周りが見えなくなってしまう人はいる。SNSでの誹謗中傷や過度な競争心など、エイハブの姿は現代人の中にも見出せるのではないだろうか。
また、ピークオッド号の乗組員たちの多様性にも驚かされた。アメリカ人、ヨーロッパ人、アフリカ系、先住民、アジア人など、様々な背景を持つ人々が一つの船に乗り合わせている。特に主人公イシュメールと南太平洋の島出身のクイークェグの友情は心を打つものがあった。彼らは外見も文化も宗教も全く異なるのに、深い友情で結ばれていく。この描写は19世紀の作品とは思えないほど現代的で、異文化理解や多様性の尊重という今日的なテーマを先取りしているように感じた。
私が最も考えさせられたのは、自然の力と人間の限界についてだ。エイハブは自分の技術と知識を過信し、白鯨を倒せると信じていた。しかし最終的に、彼も船も白鯨の前にはなすすべもなく沈んでいく。これは現代の環境問題にも通じるメッセージではないかと思う。人間はテクノロジーの発達により、自然を制御できると考えがちだが、実際には自然の力は計り知れず、私たちは謙虚に向き合う必要があるのだ。
実際、今日の気候変動や環境破壊の問題を見ても、「白鯨」の警告は色あせていない。エイハブの「人間の意志は全てを征服できる」という考えは、現代社会にも残っている。しかし、自然と共生する道を探らなければ、私たちもまたピークオッド号のように破滅するかもしれない。
また、物語の語り手であるイシュメールが唯一の生存者となる結末には、希望のメッセージもあると感じた。イシュメールは、エイハブの狂気に全面的に染まることなく、一定の距離を保っていた。そして最後には、友人クイークェグの棺として作られた浮き輪によって救われる。これは友情の力、そして極端な考えに流されない柔軟性の重要性を示しているように思える。
この小説を読んで、私は自分の中にあるエイハブ的な部分について考えさせられた。時に一つのことに執着し、周りが見えなくなることはないだろうか。また、自分とは異なる文化や考え方をどれだけ理解し、受け入れられているだろうか。そして、自然の力に対して、私たちはどのような姿勢で向き合うべきだろうか。
「白鯨」は19世紀に書かれた作品でありながら、今日の社会問題や人間の本質について深く考えさせてくれる作品だ。長い航海の描写や鯨についての専門的な解説など、読むのに苦労する部分もあったが、それを乗り越えて読み終えたことで、大きな達成感と共に、人間の複雑さや自然との関わりについての新たな視点を得ることができた。
文学作品の素晴らしさは、時代や場所を超えて普遍的な問いを投げかけてくれることにある。「白鯨」はまさにそのような作品であり、150年以上経った今でも読者の心に深い感銘を与える力を持っている。私もこの本から学んだことを、これからの生活や考え方に活かしていきたいと思う。
『白鯨』はどんな人向けの小説か?
『白鯨』はとても深い内容を含んだ小説ですが、すべての人に向いているわけではありません。
どんな人がこの作品を楽しめるのか、まとめてみました。
- 哲学的なテーマや深い心理描写に興味がある方
- 海洋冒険や自然との対決をテーマにした物語が好きな方
- 多様な文化や人種の共存について考えたい方
- 人間の情念や執着について探求したい方
- 古典文学に挑戦してみたい方
- 長編小説をじっくり読むことができる根気のある方
一方で、『白鯨』は難解な表現や長い描写も多いため、速読を好む方や、単純明快なストーリー展開を好む方にはやや難しいかもしれません。
でも、挑戦する価値は十分にあります。読み進めるうちに、その深さと魅力に引き込まれることでしょう。
『白鯨』のような作品3選
『白鯨』の世界観や文体に魅了された方に、似た魅力を持つ作品を3つ紹介します。
『海の底』(有川浩)
『海の底』は、海を舞台にした人間ドラマという点で『白鯨』と共通点があります。
技術と人間の限界、未知の存在との対峙というテーマは、『白鯨』の白いクジラを追い求める物語と重なる部分が多いですよ。
特に海に対する恐怖や畏敬の念、人間の無力さと勇気が印象的に描かれています。
『白鯨』よりもずっと読みやすい現代文学なので、入門編としてもおすすめです。
『蝿の王』(ウィリアム・ゴールディング)
『蝿の王』は、無人島に取り残された少年たちが次第に野蛮化していく様子を描いた小説。
『白鯨』と同様に、人間の本質や文明の仮面の下に潜む獣性を探求しているという点で共通しています。
また、自然の力と人間の脆さを対比的に描いている点も『白鯨』を思わせます。どちらの作品も人間の本質に迫る寓話的な要素を持っていますね。
『巨人』(アーサー・C・クラーク)
SF作家クラークによる『巨人』は、『白鯨』と同じく探求と執念をテーマにした作品。
宇宙を舞台に特異な現象を追い求める話は、海を舞台に白鯨を追うエイハブの姿と重なります。
また、人間の存在意義や宇宙(自然)との関係について深く考察されている点も、『白鯨』の持つ哲学的な側面に通じるものがあります。
壮大なスケールで描かれる物語を楽しみたい方におすすめです。
振り返り
『白鯨』の簡単なあらすじから詳しい内容、登場人物、読書感想文のポイントまで紹介してきました。
『白鯨』はアメリカ文学の最高傑作の一つであり、単なる海洋冒険小説ではなく、人間の情念や自然との関係、多様性といった普遍的なテーマを含んだ作品です。
確かに長くて難解な部分もありますが、その分だけ得られるものも大きいと思います。
読書感想文を書く際には、エイハブの復讐心や多様な乗組員たちの描写、そして自然の力と人間の限界について考察してみてください。
きっと独自の視点からの感想文が書けるはずです。
この記事が皆さんの『白鯨』理解の助けになり、素晴らしい読書体験につながることを願っています。
読書の旅を楽しんでくださいね!
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