「好きな本に出会えた時って、なんだか宝物を見つけたような気分になるなぁ……」
そんな気持ちを抱きながら、今日は多くの人が知っているけれど、実際に読んでいない名作について語らせてください。
『星の王子さま』はアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリによる、小さな王子の物語。
小惑星から地球にやってきた王子さまが、砂漠に不時着した飛行士と出会い、自分の旅の物語を語る…そんな一見シンプルな物語です。
でも、この作品に対して「子供向けの本でしょ?」といった先入観から、あえて再読するのも避ける方も多いのではないでしょうか。
私も最初はそうでした。
書店で見かけるたび「いつかもう一度読もう」と思いながら、なかなか手に取れずにいたんです。
ところが、一旦読み始めると…その世界観にすっかり魅了されてしまいました。
今日は、年間100冊以上の本を読む私が感じた『星の王子さま』の魅力をお伝えしたいと思います。
この小説を読むことをためらっているあなたに、この作品がいかに面白いかを、心を込めてお伝えします。
『星の王子さま』は面白い小説か?
結論から言えば、『星の王子さま』は間違いなく面白い小説です。
この作品が世界中で愛され続ける理由は以下の点にあります。
- シンプルな物語に込められた深い人生の真理
- 美しい詩的表現と心に残る名言の数々
- 大人と子供、両方の視点から楽しめる二重構造
- 著者自身が描いた素朴で魅力的なイラスト
それでは、これらの魅力について詳しく見ていきましょう。
シンプルな物語に込められた深い人生の真理
『星の王子さま』の最大の魅力は、シンプルなストーリーの中に深い人生の真理が込められていることでしょう。
砂漠に不時着した飛行士と小さな王子の出会い。
その王子が語る、自分の星での生活や旅の途中で出会った人々のエピソード。
一見すると単純な物語ですが、そこには「本当に大切なものは目に見えない」という深遠なメッセージが込められています。
私が初めてこの本を読んだとき、キツネが王子さまに語る「なつかせる」という概念に心を打たれました。
「あるものに時間をかけることで、そのものが特別な存在になる」という真理。
これは人間関係においても、仕事においても、あらゆる場面で当てはまる普遍的な教えです。
日々の忙しさに追われ、効率や結果ばかりを求める現代社会において、この物語は私たちに立ち止まって考える機会を与えてくれます。
美しい詩的表現と心に残る名言の数々
『星の王子さま』のもう一つの魅力は、美しい詩的表現と心に残る名言の数々にあります。
「大切なものは目に見えない」
「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないんだよ」
これらの言葉は、単なる美しいフレーズではなく、人生の深い洞察に満ちています。
サン=テグジュペリの言葉は、シンプルでありながら、読む人の心に深く刻まれる力を持っています。
私自身、人生の岐路に立ったとき、この物語の言葉が心の支えになったことが何度もありました。
飛行士でもあった著者の経験から生まれた言葉には、実感と説得力があります。
それは、単なる空想上の物語ではなく、著者自身の人生経験や思索から紡ぎ出された深い知恵だからなんでしょうね。
大人と子供、両方の視点から楽しめる二重構造
『星の王子さま』の特筆すべき魅力は、子供にも大人にも、それぞれの視点から楽しめる二重構造にあります。
子供の目には、不思議な冒険物語として映るでしょう。
小さな星から来た少年が、様々な星を訪れ、奇妙な大人たちと出会い、地球でキツネや蛇と友達になる…。
一方、大人の目には、社会批評や人間の本質についての深い考察として映ります。
王子さまが出会う「王様」「うぬぼれ屋」「実業家」などのキャラクターは、実は現代社会に生きる大人たちへの鋭い批判となっています。
私はこの本を何度も読み返していますが、読むたびに新たな発見があるんですよ。
年齢や経験によって、同じ文章からでも受け取るメッセージが変わってくる。
そんな奥深さが、この作品の魅力の一つなのです。
著者自身が描いた素朴で魅力的なイラスト
『星の王子さま』を語る上で欠かせないのが、著者サン=テグジュペリ自身によるイラストの存在です。
素朴でありながら、どこか心を打つイラストの数々。
特に金色の髪をした小さな王子の姿は、世界中の人々の心に刻まれています。
私が特に好きなのは、小さな星と、そこに立つ小さな王子のイラスト。
この構図には、宇宙の広大さの中での人間の存在の小ささと、それでも自分の世界を大切に守ろうとする姿勢が表現されています。
イラストと文章が一体となって、読者の想像力を刺激する。
それは現代のビジュアル過多な時代においても、色褪せることのない魅力を持っています。
※『星の王子さま』のあらすじをご覧になりたい方は、こちらの記事へお進みください。

『星の王子さま』の面白い場面(印象的・魅力的なシーン)
『星の王子さま』には心に残る印象的なシーンがたくさんあります。
物語の中でも特に魅力的で、読む人の心に深く刻まれるシーンをいくつか紹介しましょう。
- キツネとの出会いと「なつかせる」ことの意味
- バラとの別れと再評価の過程
- 様々な小惑星で出会う奇妙な大人たち
- 砂漠の中で見つけた井戸と「本当の豊かさ」の発見
それでは、これらの印象的なシーンについて詳しく見ていきましょう。
キツネとの出会いと「なつかせる」ことの意味
『星の王子さま』の中で最も印象的なシーンの一つが、王子さまとキツネの出会い。
地球に来た王子さまは、多くのバラを見つけて失望した後、一匹のキツネと出会います。
キツネは王子さまに「なつかせてくれ」と頼みます。
「なつかせる」という行為を通して、「ただのキツネ」「ただのバラ」が「唯一無二の存在」になるという真理を教えてくれるのです。
「僕にとって、きみは世界に何十万といる少年の一人にすぎない。君にとって、僕も何十万といるキツネの一匹にすぎない。でも、もしきみが僕をなつかせてくれたら、僕たちはお互いに、この世でたった一つの存在になる」
この言葉に初めて触れたとき、私は胸が熱くなりました。
人間関係の本質をこれほど的確に表現した言葉があるでしょうか。
時間と心を注ぐことで、ありふれたものが特別な存在になる。
この真理は、現代のSNSで繋がる浅い人間関係が増えた今だからこそ、より強く響いてくるメッセージです。
バラとの別れと再評価の過程
王子さまが自分の星のバラと別れ、旅に出るシーン。
そして地球で多くのバラを見つけ、自分のバラの特別性を疑うものの、キツネとの出会いを通じてバラへの愛を再確認するプロセスは、物語の核心部分です。
「時間をかけて世話をしたから、あのバラは大切なんだ」
初めて読んだ時、このシーンに私は深く考えさせられました。
誰もが人生で一度は経験するのではないでしょうか?
何かを特別だと思っていたのに、もっと優れたものを見つけて価値を疑うこと。
でも本当の価値は、そこに注いだ時間と愛情にあるという真理。
バラとの関係を通じて描かれるこの気づきは、恋愛だけでなく、仕事や創作活動など、あらゆる人間の営みに当てはまる普遍的な教えです。
バラへの思いを再確認した王子さまの表情は、イラストではシンプルに描かれていますが、そこには深い感情が表現されています。
様々な小惑星で出会う奇妙な大人たち
王子さまが旅の途中で訪れる様々な小惑星と、そこに住む奇妙な大人たちとの出会いも、非常に印象的なシーンです。
王様、うぬぼれ屋、実業家、点灯夫、地理学者…。
これらのキャラクターたちは、一見すると滑稽で奇妙な存在ですが、実は現代社会で生きる大人たちの縮図となっています。
権力、虚栄心、逃避、所有欲、システムへの服従、机上の空論…。
大人の世界の様々な側面を風刺したこれらのエピソードは、初めて読んだ時から私の心に強く残っています。
特に印象的なのは、点灯夫のエピソードです。
わずか1分で1回転するようになってしまった星で、昼と夜を区別するため、1分ごとにランプを消したりつけたりする彼の姿。
「命令は命令だ」と言いながら、意味を考えずに働き続ける点灯夫の姿に、現代のブラック企業で疲弊する労働者の姿を重ねずにはいられません。
砂漠の中で見つけた井戸と「本当の豊かさ」の発見
物語の終盤、水が尽きて途方に暮れる飛行士と王子さまが、砂漠の中で井戸を見つけるシーン。
「星の光のように輝く滑車の音」と「ロープの重み」。
そして汲み上げられた水の味わい。
「この水は、星の下を歩いたり、滑車の歌を聴いたり、私の腕の力があってこそ美味しいんだ」
単なる水ではなく、そこに至るまでの過程や、関わった人の心が、その価値を高めているという真理。
この場面は、物質的な豊かさと精神的な豊かさの違いを鮮やかに描いています。
モノや情報があふれる現代社会だからこそ、この「本当の豊かさとは何か」というメッセージが心に響きます。
私自身、この場面を読むたびに、日常の中で見過ごしている「本当に価値あるもの」について考えさせられます。
※『星の王子さま』を通じて作者が伝えたいことは、以下の記事で考察しています。

『星の王子さま』の評価表
評価項目 | 評価 | コメント |
---|---|---|
ストーリー | ★★★★☆ | シンプルながらも深い洞察に満ちたストーリー構成。ただし、物語としての起伏は控えめ。 |
感動度 | ★★★★★ | キツネとの別れや王子さまの帰還など、胸を打つシーンの数々。心に残る名言の宝庫。 |
ミステリ性 | ★★★☆☆ | 王子さまの正体や星への帰り方など、謎めいた要素はあるが、ミステリーとしての展開は乏しい。 |
ワクワク感 | ★★★★☆ | 様々な星への訪問や不思議な出会いなど、想像力を刺激する要素が豊富。ただし派手な展開はない。 |
満足度 | ★★★★★ | 読み終えた後も長く心に残り、人生の様々な場面で思い出したくなる深い余韻を残す作品。 |
『星の王子さま』を読む前に知っておきたい予備知識
『星の王子さま』をより深く楽しむために、知っておくと良い予備知識があります。
これらの知識を持って読むことで、物語の魅力をより深く理解することができるでしょう。
- 著者サン=テグジュペリの人生経験
- 象徴的な表現と哲学的メッセージの存在
- 翻訳による違いの可能性
それでは、これらの予備知識について詳しく見ていきましょう。
著者サン=テグジュペリの人生経験
『星の王子さま』を読む前に、著者アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリが飛行士であったことを知っておくと、物語の理解が深まります。
サン=テグジュペリは郵便飛行士として活躍し、実際に砂漠に不時着した経験を持っています。
『星の王子さま』の冒頭部分は、著者自身の体験に基づいているのです。
また、第二次世界大戦中の1943年にアメリカで執筆・出版されたこの作品は、著者の祖国フランスがナチス・ドイツに占領されていた時期に書かれました。
物語の背景には、戦争による喪失感や、理解し合えない人間社会への失望といった著者自身の感情が反映されています。
サン=テグジュペリは、この作品を出版した翌年の1944年、偵察飛行中に行方不明となり、戻ることはありませんでした。
そうした著者の人生を知った上で読むと、物語の別れのシーンや「星を見上げれば…」というメッセージに、より深い意味を感じることができるでしょう。
象徴的な表現と哲学的メッセージの存在
『星の王子さま』は一見、子供向けの童話のように見えますが、実は深い哲学的メッセージが込められています。
物語の中の様々な要素は、単なるファンタジーではなく、人間社会や人生の真理を表す象徴として描かれているのです。
例えば、バオバブの木は放置すれば星全体を破壊しかねない「悪習」や「問題」の象徴です。
小さなうちに抜いておかなければ、取り返しのつかないことになる。
王子さまが訪れる様々な星の住人たちは、現代社会の様々な側面を風刺しています。
また、キツネやバラとの関係は、人間関係の本質を表しています。
こうした象徴的な表現や哲学的なメッセージの存在を意識しながら読むことで、単なる物語を超えた深い洞察を得ることができるでしょう。
翻訳による違いの可能性
『星の王子さま』はフランス語で書かれた作品です。
そのため、どの翻訳で読むかによって、ニュアンスや表現に違いが生じる可能性があることを知っておくと良いでしょう。
日本語訳だけでも複数の版があり、訳者によって表現や言い回しが異なります。
例えば、有名な「L’essentiel est invisible pour les yeux」という一節は、「大切なものは目に見えない」「本当に大切なものは、目では見えない」など、様々な訳され方をしています。
また、キツネが王子さまに教える「apprivoiser(アプリヴォワゼ)」という概念は、訳者によって「なつかせる」「飼いならす」など、微妙に異なる言葉で訳されています。
もし可能であれば、複数の翻訳を比較してみるのも面白いかもしれません。
それぞれの訳者の解釈や表現の違いを通して、原作の奥深さを感じることができるでしょう。
私自身は内藤濯訳と倉橋由美子訳を読み比べたことがありますが、同じ物語でも印象が少し異なり、新たな発見がありました。
『星の王子さま』を面白くないと思う人のタイプ
文学作品の魅力は読み手によって感じ方が異なるものです。
『星の王子さま』のような名作であっても、すべての人に同じように響くとは限りません。
以下のようなタイプの人は、この作品の魅力を十分に感じられない可能性があります。
- 象徴的・哲学的な表現を好まない実用主義的な人
- 派手なアクションや展開を求める人
- 子供の視点や純粋さへの共感が薄い人
それでは、それぞれのタイプについて詳しく見ていきましょう。
象徴的・哲学的な表現を好まない実用主義的な人
『星の王子さま』は、表面的なストーリーの裏に深い哲学的メッセージや象徴的な表現が込められた作品です。
「大切なものは目に見えない」「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えない」といった抽象的な概念が物語の核心となっています。
そのため、具体的で実用的な内容を好み、象徴的な表現や哲学的な問いかけに興味を持たない人には、物足りなく感じられるかもしれません。
数字や事実、明確な答えを重視する実用主義的な思考の持ち主にとっては、この物語の曖昧さや象徴性が理解しづらく、「何が言いたいのかわからない」と感じる可能性があります。
私の友人で投資や自己啓発の本ばかり読んでいる人がいますが、彼に『星の王子さま』を勧めたところ「何の役に立つの?」と言われたことがあります。
すべての読書から即効性のある学びを得ようとする姿勢では、この作品の真の魅力を感じることは難しいでしょう。
派手なアクションや展開を求める人
『星の王子さま』は、静かで内省的な物語です。
ハリウッド映画のような派手なアクションシーンや目まぐるしい展開、スリリングな冒険は期待できません。
物語の中心は、王子さまと出会う人々との対話や、その中で生まれる気づきにあります。
そのため、常に刺激的な展開や明確なドラマを求める読者にとっては、物語の進行が遅く、退屈に感じられる可能性があります。
アクション映画やサスペンス小説を好む人が『星の王子さま』に期待を寄せると、その期待とのギャップから「つまらない」と感じてしまうかもしれません。
私自身、最初に読んだときは「これだけ?」と思った部分もありました。
しかし、静かな物語だからこそ、心に染み入るような深い感動があることに気づいたのです。
子供の視点や純粋さへの共感が薄い人
『星の王子さま』は、子供のような純粋な視点から世界を見ることの大切さを伝える物語です。
物語の中では、大人たちが数字や権力、見栄えといった表面的なものに囚われる姿が批判的に描かれています。
そのため、現実主義や効率、合理性を重視する人、いわゆる「大人の常識」に強く囚われた人にとっては、物語のメッセージが受け入れがたく感じられるかもしれません。
「子供っぽい」「非現実的だ」と感じてしまうのです。
私の周りにも、常に効率や利益を考え、感情や想像力よりも論理を重視する人がいますが、そうした人々は『星の王子さま』の魅力を十分に感じ取れないようです。
本作を深く味わうには、大人でありながらも、子供のような純粋な視点や感性を取り戻す柔軟さが必要なのかもしれません。
深読みすればするほど『星の王子さま』は面白い!
『星の王子さま』は、シンプルな物語の中に深い人生の真理を隠し持つ、唯一無二の作品です。
キツネとの出会いで学ぶ「なつかせる」ことの意味。
バラとの関係を通して気づく「かけがえのなさ」。
そして「本当に大切なものは目に見えない」という普遍的な真理。
これらのメッセージは、読む人の年齢や経験によって、異なる深さで心に響くことでしょう。
確かに、派手なアクションを期待する人や、実用的な内容を求める人には物足りなく感じられるかもしれません。
しかし、心を開いて読めば、この小さな物語が教えてくれる大きな智慧に出会えるはずです。
『星の王子さま』は、読む度に新たな発見があり、人生の節目に立ち返りたくなる一冊です。
もし、あなたがまだこの本を読んでいないのなら、ぜひ手に取ってみてください。
そして、砂漠に降り立った小さな王子の物語に、心を開いてみてください。
きっと、あなただけの「特別なバラ」を見つける手助けになるはずですから。
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