『羅生門』のあらすじを詳しく知りたい皆さん、こんにちは。
芥川龍之介が1915年に発表した短編小説『羅生門』は、平安時代末期の荒廃した京都を舞台に、極限状態に追い込まれた人間の心理を描いた名作です。
高校生が授業でよく扱う作品として、また日本の近代文学を代表する作品として高い評価を受けています。
この記事では、100字・200字・400字という3つの長さで『羅生門』の簡単なあらすじから詳しいあらすじまでを紹介し、私自身の感想も率直にお伝えしていきます。
読書感想文を書く予定の学生の皆さんにとって、きっと役立つ内容になっているはずですよ。
それでは早速、わずか約5700文字(10ページ)の小説の世界に入っていきましょう。
『羅生門』の100文字の短くて簡単なあらすじ
『羅生門』の200文字の中間の長さのあらすじ
『羅生門』の400文字の詳しいあらすじ(ネタバレあり)
平安の世、都は度重なる地震や飢饉、突風の被害に見舞われ、荒れ果てていた。ある雨の夕暮れ、一人の若者が門の下で雨宿りをしていた。仕えていた家を追われ、行くあてもなく、盗みを働くしか生きる道はないと思い詰めていたが、決心がつかなかった。
雨風をしのぐため、門の上に登ると、そこには死体だけがあると思いきや、老婆が灯りをともして、女の死体から髪を抜いていた。男はその行為に嫌悪を覚え、老婆に刃物を突きつけて何をしていたのか問いただす。
老婆は、かつらを作るために髪を取っていたと語る。さらに、「悪いことかもしれないが、生きるために仕方なかった。この女も人を騙してヘビの干物を魚と偽って売っていた。だから、私のしていることも許されるだろう」と話す。
男はその答えの平凡さに失望しながらも、門の下にいたときにはなかった勇気が芽生える。「己も餓死する身だ」と老婆を蹴り倒して着物を奪い、暗闇の中へと駆けて去っていった。
『羅生門』の感想
私がこの『羅生門』を初めて読んだとき、まず強烈に印象に残ったのは、その圧倒的な暗さと重さでした。
平安時代という華やかなイメージとは正反対の、荒れ果てた京都の描写がとにかく生々しいんです。
羅生門という建物自体が廃墟同然で、そこに死体が放置されているという設定からして、もう普通の物語ではないことが分かります。
でも、この暗い世界観こそが、この小説の核心的なテーマを際立たせているんですよね。
下人という主人公の心理の変化が、本当に見事に描かれています。
最初は老婆の行為を「悪」として断罪していたのに、老婆の「生きるために仕方がない」という言葉を聞いた途端、自分の行動を正当化して盗みを働くという変わり身の早さ。
これって、現代の私たちにも通じる部分があるんじゃないでしょうか。
正義感や道徳心って、実は案外もろいものなのかもしれません。
極限状態に追い込まれたとき、人間はどこまで自分の信念を貫けるのか。
私自身、この下人の立場だったらどうしただろうと考えると、正直言って自信がないんです。
老婆の論理も、冷静に考えると一理あるんですよね。
死んだ人の髪を抜くのは確かに不気味で不道徳に感じるけれど、それで生き延びることができるなら、果たして絶対的に悪いことなのか。
死んだ女性も、生前は嘘をついて商売をしていたという設定も巧妙です。
完全に善良な被害者ではないという複雑さが、物語に深みを与えています。
芥川龍之介の文章力も素晴らしいですね。
短編小説でありながら、無駄な描写は一切なく、すべてが必要不可欠な要素として機能しています。
特に下人の心理描写は秀逸で、迷いから決断に至るまでの過程が手に取るように分かります。
ただ、この小説を読んで少し困惑したのは、結末の曖昧さです。
下人がその後どうなったのか、一切描かれていません。
最初は物足りなく感じたのですが、読み返してみると、この余韻こそがこの作品の魅力なのかもしれません。
読者それぞれが、下人のその後を想像する余地を残している。
それと同時に、私たち自身が同じような状況に置かれたとき、どのような選択をするのかを考えさせられる構造になっているんです。
現代社会でも、経済的困窮や失業など、人を極限状態に追い込む要因はたくさんあります。
不安定な今を生きる私たちにとっても、この物語のテーマは決して他人事ではないでしょう。
社会の秩序が揺らいだとき、人間の道徳観はどれほど頼りになるものなのか。
この小説は、そんな普遍的な問いを私たちに投げかけているのだと思います。
最後に、この作品が高校生の教材としてよく使われる理由も分かります。
短くて読みやすいのに、考えさせられる内容が詰まっている。
読書感想文を書く上でも、自分なりの解釈や感想を述べやすい作品だと感じました。
『羅生門』の作品情報
項目 | 詳細 |
---|---|
作者 | 芥川龍之介 |
出版年 | 1915年(大正4年) |
出版社 | 帝国文学(初出) |
受賞歴 | 特になし(芥川の初期代表作) |
ジャンル | 短編小説、心理小説 |
主な舞台 | 平安時代末期の京都・羅生門 |
時代背景 | 災害と飢饉で荒廃した平安京 |
主なテーマ | 人間のエゴイズム、善悪の相対性 |
物語の特徴 | 心理描写に優れた短編小説 |
対象年齢 | 高校生以上 |
『羅生門』の主要な登場人物とその簡単な説明
『羅生門』は非常にシンプルな構成で、主要な登場人物は実質的に2人だけです。
どちらも名前は明かされておらず、社会的な立場で呼ばれているのが特徴的ですね。
人物名 | 説明 |
---|---|
下人 | 主人から解雇された若い男性。 にきびを気にする描写から思春期前後と推測される。 生きるために盗人になることを考えている |
老婆 | 羅生門で死体の髪を抜いている痩せた老女。 生きるために仕方がないという論理で自分の行為を正当化する |
『羅生門』の読了時間の目安
読書感想文を書く皆さんにとって、読了時間は気になるポイントですよね。
『羅生門』は短編小説なので、比較的短時間で読み終えることができます。
項目 | 詳細 |
---|---|
文字数 | 約5700文字 |
ページ数 | 約10ページ |
読了時間 | 約12分 |
読み終える期間 | 1日で完読可能 |
読みやすさ | 高校生レベルで読みやすい |
高校生の皆さんなら、集中して読めば30分もかからずに読み終えることができるでしょう。
ただし、内容をしっかり理解するためには、何度か読み返すことをおすすめします。
『羅生門』はどんな人向けの小説か?
『羅生門』がどんな人に向いているか、私なりに考えてみました。
特に以下のような人には強くおすすめできる作品だと思います。
- 人間の心理や本質について深く考えたい人
- 善悪の基準や道徳について疑問を持っている人
- 短時間で読める質の高い文学作品を求めている人
- 読書感想文の題材を探している高校生
- 日本の近代文学に興味がある人
- 極限状況での人間の行動に関心がある人
- 社会の問題と個人の倫理観の関係を考えたい人
逆に、明るく楽しい小説を求めている人や、ハッピーエンドを期待している人には向いていないかもしれません。
でも、人生について深く考えるきっかけが欲しい人には、間違いなく価値のある一冊だと思います。
『羅生門』と似ている小説3選
『羅生門』を読んで興味を持った皆さんに、似たテーマや雰囲気を持つ小説を3つ紹介しますね。
どれも人間の本質や極限状況での心理を描いた名作です。
『舞姫』- 森鷗外
明治時代の文豪森鷗外による代表作の一つです。
ドイツに留学した主人公が現地の踊り子と恋に落ちるものの、最終的に自分の出世のために彼女を見捨てるという物語。
『羅生門』と同様に、主人公が自己の利益のために他者を犠牲にする心理が描かれており、人間のエゴイズムというテーマで共通しています。

『山月記』- 中島敦
中島敦の代表作で、プライドの高い男性が虎に変身してしまうという幻想的な物語です。
人間の内面の醜さや、社会からの疎外感、自己との葛藤という点で『羅生門』と通じるものがあります。
短編でありながら深い哲学的テーマを扱っている点も似ていますね。

『沈黙』- 遠藤周作
江戸時代のキリシタン弾圧を背景に、宣教師の信仰の葛藤を描いた長編小説です。
極限状況で自分の信念を貫くか、それとも現実に妥協するかという選択を迫られる点で、『羅生門』の下人の心理と重なります。
宗教的な要素が強いですが、人間の弱さと強さを深く掘り下げた傑作です。
振り返り
『羅生門』のあらすじを100字・200字・400字という3つの長さでご紹介し、私自身の感想も詳しくお伝えしました。
このたった約5700文字しかない短編小説は、人間のエゴイズムと善悪の相対性という重いテーマを扱いながらも、高校生にも理解しやすい簡潔な文章で書かれています。
読書感想文を書く際には、下人の心理変化や老婆との対比、現代社会との関連性など、さまざまな角度から考察できる豊かな作品です。
芥川龍之介が描いた人間の本質は、時代を超えて私たちに重要な問いを投げかけ続けているのではないでしょうか。
※『羅生門』の理解に役立つ記事がコチラです。



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