『そして誰もいなくなった』小説のあらすじを簡単に短く、また詳しくネタバレなしで紹介していきますね。
『そして誰もいなくなった』は1939年に刊行されたアガサ・クリスティーというイギリス人ミステリー作家の推理小説で、世界中で1億冊以上売り上げられた歴史的ベストセラー。
クローズド・サークルと見立て殺人の代表作として、現在でも多くの読者に愛され続けています。
年間100冊以上の本を読む私が、この名作の魅力を分かりやすく伝えていきます。
あらすじの理解に役立つ用語解説から登場人物の紹介、さらには読了時間の目安まで、読書感想文作成に必要な情報を網羅的にまとめました。
それでは、さっそく進めていきましょう。
アガサ・クリスティーの小説『そして誰もいなくなった』のあらすじを短く簡単に
アガサ・クリスティーの小説『そして誰もいなくなった』のあらすじを詳しく(ネタバレなし)
1939年、デボン州沖の小さな孤島「兵隊島」に、謎の招待状を受け取った8人の客が到着した。執事夫妻のロジャースと共に、計10人が島に集まることとなる。彼らを招いたユリック・ノーマン・オーエン夫妻の姿はなく、客室には古い童謡「十人の小さな兵隊さん」が飾られ、ダイニングには10体の人形が置かれていた。夕食後、蓄音機から流れた音声は、集まった10人全員が過去に殺人を犯したと告発する。その直後、青年マーストンが青酸カリで中毒死し、翌朝にはロジャース夫人がベッドで死んでいるのが発見される。さらにマッカーサー将軍も撲殺され、死因が童謡の歌詞と一致し、人形も3つ消えていることに気づく。島を捜索してもオーエン夫妻は見つからず、残った7人の中に犯人がいると結論づけざるを得なくなった。疑心暗鬼の中、次々と犠牲者が出続け、最終的には全員が死亡し、「誰もいなくなって」しまうのだった……。
小説『そして誰もいなくなった』のあらすじを理解するための用語解説
物語をより深く理解するために、重要な用語を以下にまとめました。
これらの用語を押さえておくと、『そして誰もいなくなった』の構造や魅力がより分かりやすくなりますよ。
用語 | 説明 |
---|---|
クローズド・サークル | 物理的・地理的要因によって 外部との行き来が絶たれた閉鎖空間。 本作では孤島という設定で 外部と連絡不能な状況を作り出している。 |
「十人の小さな兵隊さん」 | 子供向けの動揺で 事件や事故で10人の小さな兵隊(または小人)が 一人ずつ減っていく歌。 |
見立て殺人 | 歌や詩、物語などのモチーフに沿って 殺人が行われること。 本作では童謡「十人の兵隊さん」の 歌詞になぞらえて次々と殺人が起こる。 |
叙述トリック | 作者が文章上の言い回しや 視点を利用して読者を欺く仕掛け。 クリスティー作品の特徴で、 本作でも終盤でどんでん返しが生まれる。 |
群像劇 | 複数の主人公が存在し、 それぞれの視点で物語が展開する形式。 『そして誰もいなくなった』も 10人それぞれに焦点を当てながら進む。 |
『そして誰もいなくなった』の感想
『そして誰もいなくなった』を読み終えた時、マジで鳥肌が立ちました。
これほどまでに完璧なミステリー小説があるのかと、心の底から感動したんです。
まさに完璧な構成
まず何と言っても、この作品の構造の美しさが素晴らしいですね。
孤島に10人を閉じ込めて、童謡に合わせて一人ずつ消していくアイデアは、もう天才的としか言いようがありません。
今では珍しくない設定ですが、これを90年くらい前に思いついていたのが驚きです。
読んでいる間中、次は誰が、どんな方法でやられるのかとハラハラドキドキが止まらなかったです。夜中に読むと、本当に怖くなるほどでした。
心理描写がリアルで恐ろしい
特に印象的だったのは、登場人物たちの疑心暗鬼が深まっていく心理描写です。
最初は互いに協力していた10人が、事件が進むにつれて誰も信用できなくなっていく様子は、本当にリアルで恐ろしかったですね。
私も読みながら「この人が犯人かな?」「いや、この人は違うだろう」と推理していましたが、結局最後まで真犯人を見抜くことはできませんでした。
クリスティーの巧妙な叙述トリックに、まんまと騙されてしまいました。
謎解き以上の魅力
『そして誰もいなくなった』の魅力は、単純に謎解きが面白いだけではありません。
各登場人物が抱える過去の罪や秘密が少しずつ明かされていく過程も、人間ドラマとして非常に興味深かったです。
誰もが完全に善良な人物ではなく、それぞれに暗い過去を背負っているという設定が、物語に深みを与えています。
読み進めるうちに、被害者でありながら同時に加害者でもある登場人物たちに対して、複雑な感情を抱くようになりました。
時代を超えた名作
正直、1939年の作品なので、現代の視点からすると少し古さを感じる部分もゼロではありません。
時代背景や価値観の違いで、多少理解しにくい箇所もあったんです。
それでも、この作品が後のミステリー小説界に与えた影響の大きさを考えると、やはり読んでおくべき名作だと思います。
実際、現代のミステリー作品にも『そして誰もいなくなった』の影響を受けているものがたくさんありますからね。
総評
最後に、この小説を読んで改めて感じたのは、アガサ・クリスティーの構成力の高さです。
無駄な描写は一切なく、すべてが最終的な種明かしにつながっているという完璧さには、本当に脱帽しました。
『そして誰もいなくなった』は、ミステリー好きなら絶対に読むべき一冊だと断言できます。まだ読んでない人は、ぜひ手に取ってみてください。
※『そして誰もいなくなった』の読書感想文の書き方と例文はこちらで解説しています。

小説『そして誰もいなくなった』の作品情報
『そして誰もいなくなった』の基本的な情報を以下の表にまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
作者 | アガサ・クリスティー |
出版年 | 1939年(イギリス刊行) |
出版社 | 早川書房、講談社など |
受賞歴 | 特になし(世界最大級の売上・評価) |
ジャンル | 推理小説、ミステリー、クローズド・サークル |
主な舞台 | 英国デヴォン州沖「兵隊島」 |
時代背景 | 1939年頃のイギリス |
主なテーマ | 正義と復讐、罪と罰 |
物語の特徴 | 見立て殺人、群像劇、叙述トリック |
対象年齢 | 中学生以上 |
青空文庫の収録 | 未収録 |
『そして誰もいなくなった』の主要な登場人物とその簡単な説明
『そして誰もいなくなった』に登場する重要な人物を、重要度の高い順に紹介します。
それぞれの人物の背景を理解すると、物語がより楽しめますよ。
人物名 | 紹介 |
---|---|
ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ | 著名な元判事。 多くの者が被告の無実を確信していた殺人事件で 陪審員を誘導して不当な死刑判決を出したと告発される。 |
ヴェラ・エリザベス・クレイソーン | 教師。 家庭教師をしていた病弱な子供に 泳げるはずのない距離を泳ぐことを許可して 溺死させたと告発される。 |
フィリップ・ロンバード | 元陸軍大尉。 東アフリカで部下の先住民を見捨てて食糧を奪い 21人を死なせたと告発される。 |
エドワード・ジョージ・アームストロング | 医師。 酔ったまま手術をして 患者を死なせたと告発される。 |
ウィリアム・ヘンリー・ブロア | 元警部の探偵。 犯罪組織から賄賂を受け取って法廷で嘘の証言を行い、 無実の男に罪を着せたと告発される。 |
エミリー・キャロライン・ブレント | キリスト教の信仰に篤い、厳格な老婦人。 雇っていた10代のメイドの妊娠が発覚した際、 彼女を自殺に追い込んだと告発される。 |
ジョン・ゴードン・マッカーサー | 退役した老将軍。 大戦の際に妻の愛人だった部下を 故意に死地に追いやったと告発される。 |
アンソニー・ジェームズ・マーストン | 遊び好きで生意気な青年。 危険運転で2人の子どもを轢き殺したと告発される。 |
トマス・ロジャース | オーエンに雇われた召使。 妻と共謀して当時の雇用主を心不全に追いやり、 その遺産を手に入れたと告発される。 |
エセル・ロジャース | オーエンに雇われた召使で料理人。 以前仕えていた高齢の独身婦人の心不全の発作に際し 救護せず遺産を手に入れたと告発される。 |
『そして誰もいなくなった』の読了時間の目安
『そして誰もいなくなった』の読了時間について、具体的な数値で説明しますね。
読書計画を立てる際の参考にしてください。
項目 | 内容 |
---|---|
推定文字数 | 約240,000文字 (400ページ/クリスティー文庫) |
読了時間 | 約8時間 (日本人平均読書速度500字/分で計算) |
1日1時間読書の場合 | 約8日で読了 |
1日30分読書の場合 | 約16日で読了 |
集中して読む場合 | 2-3日で読了可能 |
『そして誰もいなくなった』は比較的読みやすい文体で書かれているため、推理小説初心者でもスラスラと読み進められます。
特に後半は展開が加速するので、夢中になって一気に読んでしまう人も多いですよ。
『そして誰もいなくなった』はどんな人向けの小説か?
『そして誰もいなくなった』がおすすめの人とそうでない人について、私なりの見解をまとめました。
この小説は特に以下のような人におすすめです。
- ミステリー・推理小説初心者から愛好家まで幅広い読者層:誰もが楽しめる代表的な本格ミステリーで、ミステリー入門としても最適
- エンターテインメントを求める人:残虐な描写は控えめで純粋な謎解きやサスペンス、驚きの展開を味わえる
- 「孤島もの」「クローズド・サークル」などの設定が好きな人:限定状況・密室劇、見立て殺人といったミステリーの王道要素が満載
逆に、現代的で複雑な心理描写を求める人や、社会派ミステリーが好きな人には物足りないかもしれません。
また、古典的な文体や時代背景に抵抗がある人は、読み始めに少し戸惑う可能性がありますね。
それでも、推理小説の原点とも言える作品なので、一度は読んでおいて損はないでしょう。
あの本が好きなら『そして誰もいなくなった』も好きかも?似ている小説3選
『そして誰もいなくなった』が気に入った人には、同じような構造や雰囲気を持つ以下の小説もおすすめです。
どれもクローズド・サークルや見立て殺人といった要素を含んでいますよ。
綾辻行人『十角館の殺人』
『十角館の殺人』は日本の新本格ミステリーの代表作で、『そして誰もいなくなった』に強く影響を受けた作品です。
孤島の館を舞台に、大学のミステリ研究会のメンバーたちが次々と犠牲になっていく展開が描かれています。
クローズド・サークルの舞台設定や見立て殺人の手法、そして最後の大どんでん返しなど、クリスティー作品の魅力を現代的にアレンジした傑作ですね。
今邑彩『そして誰もいなくなる』
『そして誰もいなくなる』は、名門女子校の演劇部で『そして誰もいなくなった』の劇を上演中に、劇の筋書き通りに事件が起こるメタ構造の物語です。
原作へのオマージュ要素が強く、技巧的なミステリー作品として高い評価を受けています。
クリスティーの原作を知っていると、より深く楽しめる仕掛けがたくさん散りばめられているのが特徴です。
有栖川有栖『こうして誰もいなくなった』
『こうして誰もいなくなった』は、『そして誰もいなくなった』の構造を現代的に再解釈した作品です。
仮想通貨長者による招待やデジタル技術が絡む孤島での事件を描き、伝統と現代性が融合した内容になっています。
クリスティーの古典的な手法を現代の技術や価値観と組み合わせた、新しいタイプのクローズド・サークル・ミステリーとして楽しめますよ。
振り返り
『そして誰もいなくなった』は、1939年に刊行されたアガサ・クリスティーの代表作で、世界中で愛され続けている推理小説の古典です。
孤島という閉鎖空間で繰り広げられる見立て殺人、10人の登場人物が一人ずつ消えていく緊張感、そして最後の驚くべき真相まで、すべてが計算し尽くされた完璧な構成になっています。
読書感想文を書く際には、クローズド・サークルや見立て殺人といった推理小説の技法、登場人物それぞれの背景にある罪と罰のテーマ、そしてクリスティーならではの叙述トリックについて触れると良いでしょう。
現代の読者にとっても十分に楽しめる普遍的な魅力を持った作品なので、ぜひ一度手に取ってみてくださいね。
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