『カラフル』の面白いところ3選!「ぼく」は「あなた自身」

『カラフル』は面白い? 感想

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安っぽい人間ドラマには興味ないし、ましてや中学生が主人公の青臭い小説なんて今さら読みたくない…。

でも、森絵都さんの『カラフル』は「人の心の複雑さなんて、もう十分知っている」という私の思い込みを見事に打ち砕いてくれたんです。

読み始めた日から、毎日が発見の連続でした。

電車で読んでいて駅を乗り過ごしそうになったり、夜中まで「あと一章だけ」を繰り返したり。

そんな私を虜にした『カラフル』の面白さや魅力を、今日は徹底的に掘り下げていきたいと思います。

この小説は、人生に迷いや不安を感じているあなたに、きっと新しい視点を与えてくれるはずです。

『カラフル』は面白い小説か?

『カラフル』の面白さは、以下の3つのポイントに集約されます。

  • 魂の乗り移りという設定を活かした、他者理解の深い洞察
  • 人間の本質を鋭く捉えた、リアルで共感できる人物描写
  • 重たいテーマを希望に変える、優れた物語構成力

魂の乗り移りという設定がもたらす深い洞察

「他人の人生を生きられたら?」

誰もが一度は考えたことのある問いを、森絵都さんは見事な形で物語にしています。

主人公は、自ら命を絶とうとした少年・小林真の体で生活することになります。でも、これは単なるファンタジー的な設定ではありません。

むしろ、「他者の視点で世界を見る」という貴重な機会を私たちに与えてくれるんです。

例えば、主人公は最初、真の両親を「会社の上司が逮捕されて喜ぶ父親」「不倫をする母親」と一面的に判断します。

でも、真として生活するうちに、父親の仕事への誇り、母親の家族への深い愛情など、表面からは見えない本質に気づいていく。

この「視点の変化」による発見が、読者の心を強く揺さぶります。

リアルで共感できる人物描写

この小説に登場する人物たちは、どこか懐かしい。

それは、私たちの周りにいる人々そのものだからです。

例えば、真の親友となる早乙女。彼は決して特別な存在ではありません。むしろ、普通の中学生です。

でも、その「普通」の中に、友情の尊さや、他者を理解することの難しさと喜びが詰まっています。

佐野唱子との関係性の変化も印象的です。

最初は互いに誤解し合っていた二人が、少しずつ理解を深めていく。

その過程は、まるで私たち自身の経験のように感じられるんです。

重たいテーマを希望に変える物語構成

不倫、いじめ、コンプレックス…。一見すると重たいテーマの連続です。

でも、森絵都さんはこれらを「生きる希望」へと昇華させていきます。

特に素晴らしいのは、物語の展開方法。

主人公は、最初こそ投げやりな態度を取りますが、真の人生を生きるうちに、少しずつ変化していきます。

その変化は決して劇的ではありません。むしろ、日常の小さな発見の積み重ねによって生まれるんです。

例えば、父親との釣り。母親の手作り弁当。友人との何気ない会話。

そんな日常の一コマ一コマが、実は生きる意味を教えてくれていた。

この気づきが、読者の心に深く響くんです。

※さきに『カラフル』のあらすじを把握したい方は以下の記事にお進みください。

森絵都の小説『カラフル』のあらすじを簡単に短く&詳しく
森絵都の小説『カラフル』のあらすじを簡単に短く、また詳しく様々な長さで紹介。他者の人生を生きることで見えてくる「生きる意味」とは?感動のストーリーを読書感想文執筆のポイントもあわせて解説します。

『カラフル』の面白い場面

『カラフル』で私が個人的に印象に残ったシーンを3つ挙げてみましょう。

  • スニーカーを奪われる事件が導く、意外な展開
  • プラプラとの対話シーンに散りばめられた真実
  • 最後の衝撃的な真相

スニーカーを奪われる事件が示す人間関係の機微

真が大切にしていたスニーカーを不良に奪われるシーン。

一見すると単なる被害事件ですが、ここから物語は思いがけない方向へ展開していきます。

このスニーカーには、実は深い意味が込められているんです。

それは真の「自分らしさ」の象徴であり、同時に他者との関係性を築くきっかけでもありました。

例えば、安くスニーカーを買える店を教えてくれた早乙女との友情。

スニーカーを奪われた後に見舞いに来てくれた佐野唱子の優しさ。

一つの出来事が、様々な人間関係の糸を紡いでいく。その描写の巧みさに、私は思わず引き込まれてしまいました。

プラプラとの対話シーンに隠された真実

天使のような存在であるプラプラ。

彼の存在は、単なる導き手以上の意味を持っています。

特に印象的なのは、プラプラが時々見せる「素」の表情。

天界では丁寧な言葉遣いなのに、下界では思わずタメ口が出てしまう。そんなギャップが、なんとも愛おしい。

でも、そのギャップには重要な意味が。

それは「誰もが完璧ではない」というメッセージを、さりげなく伝えているんです。

最後の衝撃的な真相

物語のクライマックスで明かされる真相は、衝撃的です。

「ぼく」の正体が実は◯◯◯だったという展開。(ネタバレになるため伏せ字)

でも、この展開は単なる驚きだけでは終わりません。

そこには「自分を受け入れる」という深いテーマが込められているんです。

自分の過ちを認め、それでも前を向いて生きていく勇気。

その描写は決して説教くさくならず、読者の心に静かに、でも確実に響いてきます。

特に印象的なのは、物語の締めくくりのプラプラの台詞。

「しぶとく生きろ」

この一言には、人生の苦しみや喜び、そして希望が凝縮されています。

※『カラフル』を通じて作者が伝えたいことは以下の記事にて考察しています。

『カラフル』が伝えたいこと。誰でも変われる?再生のヒント
『カラフル』が伝えたいこととは?一見モノクロに見える人生をカラフルに変える、心に響くメッセージを6つの視点から詳しく解説。今をより豊かに生きるヒントがここに!

『カラフル』の評価表

評価項目 点数 コメント
ストーリー ★★★★★ 伏線の回収が見事で、展開に無駄がない
感動度 ★★★★★ 押しつけがましくない自然な感動が心に残る
ミステリ性 ★★★★☆ 主人公の正体という謎が巧みに解かれていく
ワクワク感 ★★★★☆ 日常の描写でも飽きさせない展開力がある
満足度 ★★★★★ 読後に前向きな気持ちになれる稀有な作品

『カラフル』を読む前に知っておきたい予備知識

『カラフル』をより深く楽しむために、以下の3つのポイントを理解しておくと良いでしょう。

  • YA文学の金字塔として評価される理由
  • 「カラフル」という言葉に込められた深い意味
  • 1998年という時代背景が持つ意味

YA文学の金字塔としての評価

『カラフル』は一般的にYA文学(ヤングアダルト文学-中高生向きの小説)に分類されます。

しかし、「若者専用の小説」ではありません。

確かに主人公は中学生ですが、扱われているテーマは普遍的です。

例えば、自己肯定感の問題。家族との関係。友情や恋愛。

これらは年齢を問わず、誰もが直面する課題です。

だからこそ、20年以上経った今でも多くの読者に支持され続けているんですね。

「カラフル」という言葉の深い意味

タイトルの『カラフル』には、実に深い意味が込められています。

それは単に「色とりどり」という意味ではありません。

人生には様々な色がある。明るい色も暗い色も、すべてが私たちの人生を彩っている。

その「多様性」を受け入れることが、実は生きていく上で大切なんだと。

作品全体を通して、この「カラフル」という概念が見事に表現されているんです。

1998年という時代背景

この作品が書かれた1998年。

バブル崩壊後の閉塞感が漂う中で、多くの人々が「生きる意味」を見失いかけていた時代です。

その時代だからこそ、この物語は強く響いたのかもしれません。

でも不思議なことに、現代を生きる私たちの心にも、同じように響いてくる。

それは、人間の本質的な悩みや喜びが、時代を超えて描かれているからなんです。

『カラフル』を面白くないと思う人のタイプ

正直に申し上げると、『カラフル』は以下のような方には物足りなく感じられるかもしれません。

  • 派手なアクションや展開を求める読者
  • ハッピーエンドだけを求める読者
  • 現実的な人間ドラマを好まない読者

派手なアクションや展開を求める読者

この作品の魅力は、静かな気づきの積み重ねにあります。

例えば、主人公が真の両親の本質に気づいていく過程。

それは劇的な展開ではなく、日常の小さな発見の連続として描かれます。

スニーカーを奪われる事件も、アクション性よりも、その後の人間関係の変化に重点が置かれています。

そのため、派手な展開や目まぐるしい事件を期待すると、少し物足りなさを感じるかもしれません。

ハッピーエンドだけを求める読者

この作品は、確かに希望に満ちています。

しかし、それは現実の苦さや複雑さを無視したものではありません。

例えば、真の母親の不倫は最後まで消えない事実として残ります。

ただし、その事実を受け入れた上で、なお家族として歩んでいく姿が描かれるんです。

完璧な解決や理想的な結末だけを求める方には、この「リアルさ」が物足りなく感じられるかもしれません。

現実的な人間ドラマを好まない読者

『カラフル』は、魂の乗り移りというファンタジー要素がありながら、本質的には現実的な人間ドラマです。

登場人物たちは皆、欠点を持っています。

時に利己的で、時に不器用で、時に過ちを犯す。

そんな人間らしい人間の姿に共感できない方には、物語自体が退屈に感じられるかもしれません。

最後に:『カラフル』が教えてくれること

この作品を読んで、私は大切なことに気づきました。

人生は、決して単色ではないということ。

喜びも、悲しみも、怒りも、優しさも、すべてが混ざり合って、私たちの人生を形作っている。

そして、その「カラフル」な状態こそが、実は最も自然な姿なのかもしれません。

今、人生に迷いを感じているあなた。周囲との関係に悩んでいるあなた。

この作品は、きっとあなたに新しい視点を与えてくれるはずです。

なぜなら、これは単なる物語ではなく、私たち一人一人の人生の縮図でもあるからです。

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