『檸檬』の読書感想文を書こうと思っている皆さん、こんにちは。
梶井基次郎の『檸檬』は、大正14年に発表された短編小説で、わずか数ページの短い作品ながら、今でも多くの読者に愛され続けている名作です。
主人公の「私」が感じる「えたいの知れない不吉な塊」という漠然とした憂鬱と、一個の檸檬との出会いによる一瞬の解放感を詩的に描いた作品で、日本近代文学の傑作として教科書にも掲載されています。
私は読書が趣味で年間100冊以上の本を読んでいますが、『檸檬』のような短くても奥深い作品こそ、読書感想文の絶好の素材だと思っています。
この記事では、高校生の皆さんが『檸檬』の読書感想文を簡単に、でも深みのある内容で書けるよう、200字から800字まで様々な長さの例文と共に、書き方のコツを丁寧に解説していきますよ。
高校生が『檸檬』の読書感想文を書くうえで外せない3つの重要ポイント
『檸檬』の読書感想文を書く際には、以下の3つのポイントを必ず押さえておきましょう。
- 主人公の「えたいの知れない不吉な塊」と檸檬による心の解放の対比
- 五感に訴える繊細な描写と想像力の働き
- 現代社会に生きる私たちへの普遍的なメッセージ
これらのポイントを意識することで、表面的なあらすじの紹介ではなく、作品の本質に迫る深い感想文が書けるようになります。
それでは、それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
主人公の憂鬱と解放の劇的な対比
『檸檬』の核心は、主人公が抱える重苦しい憂鬱と、檸檬との出会いによる一瞬の解放感の対比にあります。
主人公は「えたいの知れない不吉な塊」という表現で自分の心の状態を表していますね。
これは単純な病気や借金といった具体的な悩みではなく、もっと根深い、理由のはっきりしない不安や閉塞感を表しています。
好きだった音楽も詩も心を慰めてくれず、よく通っていた丸善の書店も重苦しい場所に変わってしまった状況は、多くの高校生にも共感できる感情でしょう。
一方で、果物屋で檸檬を手に取った瞬間から、主人公の心は劇的に変化します。
檸檬の「ひやりと冷たい」感触、鮮やかな黄色、確かな重さが、長い間心を圧迫していた「不吉な塊」を緩めるのです。
この変化は、日常の何気ないものが持つ力の大きさを教えてくれます。
感想文では、この対比をどのように感じたか、自分自身の体験と重ね合わせながら書くことで、説得力のある内容になりますよ。
現代社会でも、SNSの疲れや将来への不安など、「えたいの知れない不吉な塊」に似た感情を抱くことは珍しくありません。
そんな時に、自分にとっての「檸檬」は何だろうかと考えてみることで、作品への理解がより深まるでしょう。
五感に訴える描写と主人公の豊かな想像力
梶井基次郎の文章の美しさは、五感に訴える繊細な描写にあります。
檸檬の「レモンイエローの絵具をチューブから搾り出して固めたような」色、「ひやりと冷たい」感触、そして香りまで、読者が実際にその檸檬を手に取っているかのような錯覚を覚えるほど鮮やかに描かれています。
また、丸善の書店の薄暗さ、積み上げられた画集の重さ、街の汚れた風景なども、主人公の心情と呼応するように描かれていますね。
そして何より印象的なのが、檸檬を「爆弾」に見立てる主人公の想像力です。
丸善の画集の山に檸檬を置いて立ち去り、その檸檬が爆発して書店を木っ端微塵にする様子を愉快に想像するという場面は、一見突飛に見えるかもしれません。
しかし、これは主人公にとって、過去の重苦しい知識や価値観から自分を解放する象徴的な行為なのです。
想像力こそが、現実の重圧から心を自由にしてくれる力を持っているということを、この作品は教えてくれます。
感想文では、これらの描写がどのように心に響いたか、また自分自身の想像力の体験と重ね合わせて書くことで、オリジナリティのある内容になるでしょう。
現代の高校生にとっても、勉強や人間関係のストレスから解放されたいと思う瞬間があるはずです。
そんな時に、どのような「想像力」が自分を支えてくれるかを考えてみると、作品への共感がより深まりますよ。
現代社会に生きる私たちへの普遍的なメッセージ
『檸檬』が発表されてから約100年が経ちますが、この作品が描くテーマは現代の私たちにも深く響きます。
主人公の抱える「えたいの知れない不吉な塊」は、現代社会を生きる私たちが感じる様々な不安や閉塞感と重なる部分が多いのです。
進路への不安、人間関係の悩み、社会への漠然とした不満など、具体的な理由を挙げることは難しいけれど、心の奥にある重苦しさを感じることは、誰にでもあるでしょう。
そんな中で、『檸檬』は私たちに大切なことを教えてくれます。
それは、日常の小さなものの中にも、心を救ってくれる力があるということです。
檸檬という平凡な果物が、主人公にとって特別な意味を持ったように、私たちの周りにも、見過ごしがちだけれど大切な「檸檬」があるかもしれません。
それは好きな音楽かもしれないし、美しい夕焼けかもしれないし、友人との何気ない会話かもしれません。
また、想像力の力についても考えさせられます。
現実が辛い時に、空想の世界に逃げ込むことは決して悪いことではありません。
むしろ、想像力こそが私たちの心を自由にし、新しい視点を与えてくれる貴重な力なのです。
感想文では、この作品から受け取った「生きるヒント」について、自分の言葉で表現してみてください。
きっと、読み手にも響く、心のこもった感想文になるはずですよ。
※梶井基次郎が『檸檬』で伝えたかったことはこちらの記事で解説しています。

より良い読書感想文を書くために『檸檬』を読んだらメモしておきたい3項目~作品に対してあなたが感じたこと~
『檸檬』の読書感想文をより深く、説得力のあるものにするためには、読書中に自分の「感じたこと」をメモしておくことが重要です。
- 主人公の憂鬱や不安に対して共感した点、疑問に思った点
- 檸檬の描写で特に印象に残った表現とその理由
- 「檸檬爆弾」の想像に対して抱いた感情や考え
なぜ「感じたこと」をメモすることが大切なのでしょうか。
それは、読書感想文の良し悪しは、作品のあらすじを正確に書けるかどうかではなく、作品を通してあなた自身がどのような発見や気づきを得たかにかかっているからです。
感情の動きや疑問、共感を記録しておくことで、あなただけのオリジナルな感想文が書けるようになりますよ。
主人公の心の状態に対してあなたが感じたこと
主人公が抱える「えたいの知れない不吉な塊」について、あなたはどのように感じましたか。
「まさに自分が今感じていることと同じだ」と共感したでしょうか。
それとも「なぜそんなに悩んでいるのか理解できない」と疑問に思ったでしょうか。
どちらの反応も正解で、大切なのはその理由を具体的に考えることです。
共感した場合は、自分のどのような体験と重なったのか、その時の気持ちはどうだったのかをメモしておきましょう。
疑問に思った場合は、なぜそう感じたのか、現代の高校生として主人公をどう見るかを記録してください。
また、主人公の孤独感についても考えてみてください。
友人の下宿を転々とし、借金取りに追われながらも、根本的な解決を求めるのではなく、街をさまよい歩く主人公の姿をどう感じたでしょうか。
現代社会においても、人とのつながりを求めながらも、深いところでは孤独を感じている人は多いものです。
主人公の心境と現代社会の状況を重ね合わせて考えることで、時代を超えた普遍的なテーマが見えてくるでしょう。
檸檬の描写で心に残った表現とその理由
『檸檬』には、檸檬を描写する美しい表現がたくさん散りばめられています。
「レモンイエローの絵具をチューブから搾り出して固めたような」「ひやりと冷たい」「確かな重さ」など、五感に訴える表現の中で、特にあなたの心に残ったものはどれでしょうか。
なぜその表現が印象的だったのか、その理由も一緒にメモしておきましょう。
たとえば、檸檬の色について「絵具を固めたような」という表現に注目したなら、なぜ「黄色い」ではなくこの表現が使われているのかを考えてみてください。
きっと、ただの色ではなく、人工的でありながら鮮やかで、絵画のような美しさを表現していることに気づくはずです。
また、檸檬を手に取った瞬間の「ひやりと冷たい」という感触の描写も重要です。
この冷たさが、主人公の熱っぽい憂鬱を和らげる効果を持っていることが分かりますね。
さらに、丸善で檸檬を画集の上に置いたときの
その檸檬の色彩はガチャガチャした色の階調をひっそりと紡錘形の身体の中へ吸収してしまって、カーンと冴えかえっていた。
引用:梶井基次郎 檸檬
という表現についても考えてみてください。
この描写から、檸檬がただの果物ではなく、混沌とした現実を整理し、美しいものに変える力を持った存在として描かれていることが分かります。
「檸檬爆弾」の想像に対してあなたが抱いた感情
物語のクライマックスである「檸檬爆弾」の場面について、あなたはどのような感情を抱いたでしょうか。
「面白い発想だ」と感じたか、「ちょっと怖い」と思ったか、「理解できない」と困惑したか、人それぞれ異なる反応があるはずです。
この場面は、主人公が檸檬を丸善の画集の山に置いて立ち去り、それが爆弾となって書店を爆破する様子を愉快に想像するという、一見突飛な内容です。
しかし、これは主人公にとって重要な意味を持つ行為なのです。
丸善は主人公にとって、かつては心の支えだった場所でした。
しかし借金のために重苦しい場所に変わってしまい、積み上げられた画集も、過去の芸術や知識の重圧として感じられるようになっていました。
そこに檸檬という「生きた美しさ」を置くことで、古い価値観や重圧から自分を解放しようとしているのです。
あなたがこの場面をどう感じたかは、あなた自身の価値観や経験を反映しています。
共感したなら、どのような体験がその共感につながったのか考えてみてください。
違和感を覚えたなら、なぜそう感じたのか、あなたなら同じ状況でどうするかを考えてみましょう。
この「檸檬爆弾」の想像が、現代を生きる私たちにとってどのような意味を持つかについても考えてみてくださいね。
『檸檬』の読書感想文の例(200字バージョン)
【題名】一個の檸檬がもたらした解放感
主人公が感じる「えたいの知れない不吉な塊」という憂鬱に深く共感した。理由もなく心が重くなることは、私にもよくあるからだ。しかし、一個の檸檬との出会いが主人公の心を一瞬で軽やかにする場面に驚いた。檸檬の色彩と感触が重苦しさを和らげる様子が美しく描かれている。檸檬を「爆弾」に見立てる想像も印象的で、過去の重圧からの解放を表しているのだろう。日常の小さな物に心を救う力があることを教えてくれる作品だった。
『檸檬』の読書感想文の例(400字以内)
【題名】檸檬が教えてくれた日常の美しさ
梶井基次郎の『檸檬』は短い作品ながら心に深く響いた。主人公が抱える「えたいの知れない不吉な塊」という憂鬱は、現代を生きる私たちにも共感できる感情だ。進路への不安や人間関係の悩みなど、具体的な理由を挙げることは難しいが、心の奥に重苦しさを感じることは誰にでもある。
そんな主人公が、果物屋で一個の檸檬と出会い、その瞬間から心が軽やかになる場面が印象的だった。檸檬の「ひやりと冷たい」感触と鮮やかな色が、長い間心を圧迫していた憂鬱を和らげる様子が美しく描かれている。特に「レモンイエローの絵具をチューブから搾り出して固めたような」という表現は、ただの黄色ではない、特別な美しさを感じさせる。
丸善で檸檬を画集の上に置き、それを「爆弾」に見立てる想像も興味深かった。これは過去の重い知識や価値観からの解放を象徴していると思う。日常の何気ない物にも、心を救ってくれる力があることを教えてくれる作品だった。
『檸檬』の読書感想文の例(600字バージョン)
【題名】檸檬との出会いが描く心の解放
『檸檬』を読んで主人公の心の動きに強く惹かれた。「えたいの知れない不吉な塊」が心を圧迫している状態は、現代を生きる私たちにも深く共感できる感情だ。SNSでの人間関係の疲れや将来への漠然とした不安など、心の奥に重苦しさを感じることは珍しくない。主人公の孤独感や焦燥感は、まさに現代の高校生が抱える悩みと重なる部分が多い。
そんな憂鬱な状況の中で主人公が果物屋で檸檬と出会う場面が印象的だった。「ひやりと冷たい」感触と「確かな重さ」、そして「レモンイエローの絵具をチューブから搾り出して固めたような」鮮やかな色が、主人公の心を一瞬で軽やかにする。この変化の描写が非常に美しく、読んでいる私自身も心が晴れやかになった。梶井基次郎の五感に訴える繊細な表現力に感動した。
特に興味深かったのは、丸善での「檸檬爆弾」の想像だ。主人公が檸檬を画集の山に置いて立ち去り、それが爆弾となって書店を爆破する様子を愉快に想像する場面は、一見突飛に見える。しかし、これは主人公にとって重要な意味を持つ行為だと思う。丸善は過去の芸術や知識の象徴であり、それらが主人公には重圧として感じられていた。そこに生きた美しさである檸檬を置くことで、古い価値観からの解放を図っているのだ。
この作品から、日常の些細な物にも心を救ってくれる力があることを学んだ。私たちの周りにも見過ごしがちだけれど大切な「檸檬」があるのかもしれない。
『檸檬』の読書感想文の例(800字バージョン)
【題名】檸檬が教えてくれた想像力の力と日常の美しさ
『檸檬』はわずか数ページの短い作品でありながら、読み手の心に深い余韻を残す名作である。主人公が抱える「えたいの知れない不吉な塊」という憂鬱の描写から始まるこの物語は、現代を生きる私たちにも深く共感できる。
主人公の心を圧迫する「不吉な塊」は、病気や借金といった具体的な問題だけでなく、もっと根深い、理由のはっきりしない不安や閉塞感を表している。これは現代社会を生きる私たちが感じる様々な悩みと重なる。好きだった音楽や詩にも慰められず、よく通っていたなじみの店も重苦しい場所に変わってしまったという状況も容易に想像がつく。
そんな憂鬱な状況の中で、主人公が果物屋で檸檬と出会う場面が印象的だった。「ひやりと冷たい」感触、「確かな重さ」、そして「レモンイエローの絵具をチューブから搾り出して固めたような」鮮やかな色の描写は、読んでいる私自身もその檸檬を手に取っているような錯覚を覚えるほどで、梶井基次郎の繊細な表現力に感動した。
最も興味深かったのは、丸善での「檸檬爆弾」の想像だ。主人公が檸檬を画集の山に置いて立ち去り、それが爆弾となって書店を爆破する様子を愉快に想像する場面は、最初は突飛な発想に見えた。しかし、それが主人公にとって重要な象徴的行為なのだろう。丸善は主人公にとって、かつては心の支えだった知識や芸術の場所だった。しかし、それらが今では重圧として心を圧迫している。そこに生きた美しさである檸檬を置くことで、過去の価値観から自分を解放しようとしているのだ。
この作品から学んだのは、現実が辛い時に想像力の力を借りることの大切さと、日常の小さなものにも心を救ってくれる力があるということだ。主人公にとっての檸檬のように、私たちの周りにも見過ごしがちだけれど大切な「檸檬」があるはずだ。それは見慣れた景色かもしれない。そういった日常の美しさを見つける感性を大切にしていきたいと思った。
振り返り
『檸檬』の読書感想文の書き方について、重要なポイントから具体的な例文まで詳しく解説してきました。
この記事で紹介した3つのポイントを意識すれば、きっとあなたも深みのある感想文が書けるはずです。
短い作品だからこそ、一つ一つの表現や描写に込められた意味を丁寧に読み取ることが大切ですね。
主人公の心の動きに共感し、五感に訴える美しい表現を味わい、現代の私たちにとってのメッセージを考える。
そうすることで、『檸檬』という名作の奥深さを十分に感じ取れるでしょう。
200字から800字までの様々な長さの例文も参考にして、あなたらしい感想文を書いてみてくださいね。
きっと、読み手の心に響く素晴らしい感想文が完成するはずですよ。
※『檸檬』のあらすじはこちらで簡単にまとめています。

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