芥川龍之介『杜子春』のあらすじを短く簡単に(ネタバレ含む)

芥川龍之介『杜子春』のあらすじ あらすじ

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芥川龍之介『杜子春』のあらすじや感想をご紹介していきますね。

『杜子春』は1920年に雑誌『赤い鳥』で発表された芥川龍之介の短編小説で、中国の古典説話を元にした感動的な物語です。

私は年間100冊以上の本を読む読書好きですが、この作品は何度読んでも心に響く名作だと感じています。

読書感想文を書く予定の皆さんの力になれるよう、短く簡単なあらすじから詳しいあらすじまで、ネタバレありで丁寧に解説していきますよ。

それでは、さっそく進めていきましょう。

『杜子春』のあらすじを短く簡単に(ネタバレ)

唐の時代、金持ちの息子だった杜子春は財産を使い果たし、一文無しになっていた。西門で途方に暮れていると、片眼の老人が現れて黄金のありかを教えてくれた。しかし杜子春は大金持ちになっても浪費を繰り返し、三度も無一文になってしまう。三度目に老人と出会った時、杜子春は人間に失望し、仙人になりたいと願った。老人は鉄冠子という仙人で、杜子春を弟子にして峨眉山で修行させた。どんな苦痛にも耐えた杜子春だったが、地獄で苦しむ母親を見て思わず「お母さん」と叫んでしまい、仙人になることはできなかった。しかし鉄冠子は杜子春の人間らしさを評価し、家と畑を与えて去っていった。

『杜子春』のあらすじを詳しく(ネタバレ)

唐王朝の都・洛陽で、金持ちの息子だった杜子春は遊び暮らして財産を使い果たし、乞食同然の身の上となっていた。ある春の日暮れ、西門の下で途方に暮れていると、片眼の不思議な老人が現れ、「この場所を掘るように」と告げた。その場所からは荷車一輌分の黄金が出て、杜子春は一夜にして大富豪になった。しかし浪費癖は治らず、三年後には再び無一文となってしまう。同じように老人に助けられては散財を繰り返し、三度目に老人と出会った時、杜子春の心境には変化があった。金持ちの時はちやほやされ、貧乏になると冷たくあしらわれる人間というものに愛想を尽かした杜子春は、老人が仙人であることを見抜き、仙術を教えてほしいと懇願した。老人は鉄冠子という仙人であることを明かし、杜子春を峨眉山へ連れて行く。そこで杜子春は「帰ってくるまで何があっても口をきいてはならない」という試練を受けた。虎や大蛇に襲われても、神に殺されて地獄に落とされても、杜子春は無言を貫いた。しかし閻魔大王が畜生道に落ちた両親を連れてきて、鬼たちに打たせると、苦しむ母親の姿を見て耐え切れずに「お母さん」と叫んでしまった。すべては仙人が見せた幻で、杜子春は現実に戻された。鉄冠子は「両親が打たれても黙っていたら命を絶つつもりだった」と告白し、杜子春に家と畑を与えて去っていった。

『杜子春』の感想

実は私、最初に読み始めた時、「またお金持ちになって散財する話かな?」なんて、ちょっと斜に構えていたんです(笑)。

でも、読み進めるうちに、そのシンプルな物語の中に、ぞくっとするほど深いメッセージが込められていることに気づいて、すっかり引き込まれてしまいました。

特に印象的だったのは、杜子春が三度目に老人と出会う場面。人って、お金がある時は手のひらを返すように優しくしてくれたり、ちやほやしてくれたりするのに、なくなると途端に冷たくなる…そんな人間のどこか寂しい一面が、この作品では浮き彫りにされていて。

「あぁ、人って本当にそうだよなぁ」って、なんだか胸が締め付けられるような気持ちになりました。普遍的なテーマだからこそ、今の時代を生きる私たちにもじんわりと響いてくるんですよね。

そして、物語のクライマックス、地獄での試練の場面は、もう、本当に胸がいっぱいになってしまって…。どんな苦痛にも耐え抜いてきた杜子春が、たった一人、お母さんが苦しむ姿を見て、思わず「お母さん!」と叫んでしまう。

この瞬間、私の心は完全に持っていかれました。

仙人になるという、とてつもない目標よりも、親への深い愛情という、人間だからこそ持ちうる温かい感情の方が何よりも尊いのだと。芥川龍之介が私たちに伝えたかった「人間として最も大切なもの」が、ストレートに心に刺さって、思わず涙がこぼれそうになりました。

鉄冠子(仙人)の最後の言葉も、忘れられません。「もし両親が打たれても黙っていたら、命を絶つつもりだった」と明かされた時、その仙人が杜子春の人間性を試していたのだと分かり、ハッとさせられました。

真の修行って、人間らしさを失うことではなくて、本当に大切なものを見極めることなんだな、と。なんだか心が洗われるような気持ちになりました。

芥川龍之介らしい、簡潔で透明感のある美しい文章も、この物語の魅力を一層引き立てています。スルスルと読めてしまうのに、読後には心にずっしりと、温かいものが残るんです。

中国の古典説話が元になっているのに、こんなにも現代の私たちの心に語りかけてくるなんて、本当に名作ですよね。

ただ、ひとつだけ、思わずクスッと笑ってしまったのは、杜子春が三度も同じ失敗を繰り返してしまうこと。「あれ?また同じことしちゃったの?学習能力は…?」なんて、ちょっとツッコミたくなりました(笑)。

でも、それも含めて、私たちの誰もが持っている「人間らしさ」なのかな、とも思えて。どこか憎めない、愛すべきキャラクターとして、すっと心に入ってきました。

人生で本当に大切なものって何だろう? そんな問いを、やさしく、そして深く投げかけてくれる『杜子春』。読後にはきっと、心の中に温かい光が灯るような、そんな体験ができるはずです。ぜひ、手に取ってみてくださいね。

※芥川龍之介『杜子春』は青空文庫で公開されています。→こちら

※なお、芥川龍之介が『杜子春』で伝えたいことは以下の記事で考察しています。

『杜子春』が伝えたいこと。SNS世代にも響く4つの格言!
『杜子春』が伝えたいことを現代的な視点から徹底解説。SNSやお金、人間関係に悩む若者に響く本質的なメッセージとは?表面的な人間関係と本物の愛情の違い、本当の幸せとは何かを、分かりやすく解説します。杜子春の選択から学ぶ、人生の大切な教訓とは。

『杜子春』の作品情報

『杜子春』の基本的な作品情報をまとめました。

項目 内容
作者 芥川龍之介
出版年 1920年(大正9年)
初出 雑誌『赤い鳥』
受賞歴 なし
ジャンル 短編小説・児童文学・説話文学
主な舞台 唐王朝時代の中国・洛陽・峨眉山
時代背景 唐時代(7~10世紀)
主なテーマ 親子の愛・人間らしさ・欲望と精神的成長
物語の特徴 中国古典説話の翻案・寓話的構成
対象年齢 小学生高学年~大人まで

『杜子春』の主要な登場人物とその簡単な説明

『杜子春』に登場する主な人物をご紹介します。

登場人物は少ないですが、それぞれが物語において重要な役割を果たしています。

人物名 簡単な紹介
杜子春 物語の主人公。
金持ちの息子だったが遊び暮らして無一文になる。
人間に失望し仙人を目指すが、
最終的に人間らしく生きることを選ぶ
鉄冠子 片眼の謎の老人。
正体は仙人で、杜子春に黄金のありかを教え、
後に弟子として修行させる。
人間らしさを重んじる人物
杜子春の母親 地獄の試練で登場。
馬の姿に変えられ鬼に打たれるが、
息子を思う気持ちは変わらない。
杜子春が声を発するきっかけとなる
杜子春の父親 母親と同様に地獄で馬の姿にされている。
物語では母親ほど詳しく描かれない
閻魔大王 地獄の支配者。
杜子春の沈黙に怒り、両親を連れてきて鬼に打たせる

『杜子春』の読了時間の目安

『杜子春』の文字数と読了時間の目安をまとめました。

短編小説なので、気軽に読めるのが魅力です。

項目 内容
文字数 約9,000文字
ページ数 約15ページ
読了時間 約18分
読書日数の目安 1日で読了可能
読みやすさ ★★★★☆(やや読みやすい)

短時間で読める分量なので、忙しい学生さんでも気軽にチャレンジできます。

文章も芥川龍之介らしく簡潔で美しく、読みやすい作品です。

『杜子春』はどんな人向けの小説か?

『杜子春』は以下のような人に特におすすめです。

人生について考えたい人や、家族の大切さを感じたい人には特に響く作品だと思います。

  • 親子の愛や家族の絆に関心がある人
  • 人生で本当に大切なものについて考えたい人
  • 物質的な豊かさよりも精神的な豊かさを求める人
  • 中国の古典文学や説話に興味がある人
  • 短時間で感動できる物語を求める人
  • 芥川龍之介の美しい文章を味わいたい人
  • 読書感想文のテーマを探している学生
  • 人間の成長や変化を描いた物語が好きな人

逆に、複雑な人間関係や現代的なエンターテインメント性を求める人には物足りないかもしれません。

しかし、普遍的なテーマを扱った名作として、多くの人に読んでもらいたい作品です。

あの本が好きなら『杜子春』も好きかも?似ている小説3選

『杜子春』が気に入った方には、似たテーマや雰囲気を持つ以下の作品もおすすめです。

どれも人間の本質や家族愛を描いた感動的な物語ばかりです。

宮沢賢治『銀河鉄道の夜』

宮沢賢治による幻想的な名作で、主人公ジョバンニが銀河鉄道に乗って不思議な旅をする物語です。

『杜子春』と似ている点は、現実離れした幻想的な世界を舞台にしながら、人生の本質や無償の愛について深く考えさせられることです。

カンパネルラの自己犠牲的な愛は、杜子春が母親への愛を選んだ場面と通じるものがあります。

美しい文章と詩的な表現も共通しており、読後に深い余韻を残す作品です。

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宮沢賢治『グスコーブドリの伝記』

こちらも宮沢賢治の作品で、主人公ブドリが苦難を乗り越えながら成長し、最終的に自分を犠牲にして人々を救う物語です。

『杜子春』との共通点は、家族への愛と自己犠牲のテーマです。

ブドリが妹や人々のために自分の命を捧げる姿は、杜子春が母親への愛を仙人への道よりも選んだ場面と重なります。

寓話的な語り口や児童文学としての側面も似ており、人間らしさの大切さを教えてくれる作品です。

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新美南吉『ごんぎつね』

新美南吉による日本の代表的な童話で、いたずら好きのきつねごんが償いの気持ちから兵十に親切にする物語です。

『杜子春』と共通するのは、相手を思いやる心や家族への愛情をテーマにしていることです。

ごんが兵十の母親のために償いをしようとする気持ちは、杜子春が母親を思う気持ちと通じるものがあります。

短編でありながら深い感動を与える点も共通しており、読書感想文の題材としても人気の作品です。

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振り返り

『杜子春』は芥川龍之介が中国の古典説話を元に創作した、人間の本質を問う深い作品でした。

短く簡単に要約すると、金持ちの息子が財産を失い、仙人を目指すものの、最終的に人間らしい愛情を選ぶという物語です。

ネタバレありで詳しく解説しましたが、この作品の魅力は何度読んでも新しい発見があることです。

親子の愛、人間らしさ、本当の幸福とは何かといった普遍的なテーマが込められており、読書感想文の題材としても最適です。

短時間で読める分量でありながら、深い感動と考察の材料を与えてくれる名作として、多くの人におすすめしたい作品です。

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