今回は、本屋大賞を受賞したキラリと光る秀作『そして、バトンは渡された』のあらすじをご紹介していきますよ。
私は読書が大好きで年間100冊以上の本を読んでいるので、小説の分析は得意中の得意。
読書感想文を書く予定の皆さんの力になれるよう、短くて簡単なあらすじから詳しいあらすじまで、丁寧に解説していきます。
それではさっそく進めていきましょう。
『そして、バトンは渡された』の短い簡潔なあらすじ
『そして、バトンは渡された』の簡単なあらすじ
『そして、バトンは渡された』の詳しいあらすじ
2歳で実母を亡くした優子は、実父と暮らしていたが、やがて明るく自由奔放な梨花が新しい母となる。梨花は優子を我が子のように愛したが、より良い環境を与えたいという思いから、不動産会社社長の泉ヶ原と再婚。しかし、その結婚生活はわずか3ヶ月で終わりを迎える。
その後、優子は東大卒の森宮と暮らすことになる。最初は距離を感じていた2人だが、森宮の優しさと思いやりに触れるうちに、次第に心を通わせていく。高校最後の年、合唱祭の伴奏者として選ばれた優子は、5組の伴奏者である早瀬君と出会う。優れたピアノの腕前を持つ早瀬君に、優子は心惹かれていく。
複雑な家族関係の中で成長してきた優子が、本当の家族の意味と自分の進むべき道を見つけていく姿を優しく描いた感動作。
『そして、バトンは渡された』の概要
『そして、バトンは渡された』の基本情報をまとめてみましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
作者 | 瀬尾まいこ |
出版年 | 2018年 |
主な舞台 | 日本の地方都市 |
時代背景 | 現代(2000年代後半〜2010年代) |
『そして、バトンは渡された』の登場人物
『そして、バトンは渡された』の主要な登場人物たちを紹介しますね。
それぞれがとても魅力的なキャラクターです。
登場人物 | 説明 |
---|---|
森宮優子 | 主人公。2歳で実母を亡くし、3人の父と2人の母に育てられる。素直で優しい性格。 |
田中梨花 | 優子の2番目の母親。明るく自由奔放な性格で、優子に深い愛情を注ぐ。 |
森宮壮介 | 優子の3番目の父親。東大卒のエリート。優しく思いやりのある性格。 |
泉ヶ原茂雄 | 不動産会社社長。優子の2番目の父親。紳士的な性格。 |
早瀬賢人 | 優子の同級生。ピアノの腕前が抜群で、優子の恋愛相手となる。 |
『そして、バトンは渡された』の文字数と読了時間
『そして、バトンは渡された』の文字数と読むのにかかる時間の目安をお伝えしますね。
項目 | 数値 |
---|---|
総ページ数(単行本) | 372ページ |
予想総文字数 | 約223,200文字 |
読了時間の目安 | 約7時間30分 |
『そして、バトンは渡された』の読書感想文で外せない3つの重要ポイント
『そして、バトンは渡された』の読書感想文を書く際に、特に注目してほしいポイントを3つ挙げてみましょう。
- 複雑な家族関係の中での愛情の形
- それぞれの親から受け継いだもの
- 自分らしい生き方を見つける過程
複雑な家族関係の中での愛情の形
優子は3人の父親と2人の母親に育てられます。
血のつながりがなくても、それぞれの親が優子に深い愛情を注ぎます。
特に、継母の梨花と継父の森宮の愛情表現の違いは印象的です。
それぞれの親から受け継いだもの
梨花からは明るさと生きる力を、森宮からは思いやりの心と責任感を学んでいきます。
複数の親との関わりを通じて、優子は豊かな人間性を育んでいきます。
自分らしい生き方を見つける過程
様々な家族との出会いと別れを経験しながら、優子は自分の進むべき道を探していきます。
特に高校時代の早瀬君との出会いは、優子の人生に大きな影響を与えます。
※『そして、バトンは渡された』を通じて作者が伝えたいことは以下の記事で考察しています。

『そして、バトンは渡された』の読書感想文の例(約1600文字/原稿用紙4枚分)
私は『そして、バトンは渡された』を読んで、「家族」という形は一つではないということを強く感じました。主人公の森宮優子は、3人の父親と2人の母親のもとで育ちました。普通なら複雑で困難な環境だと思われるかもしれませんが、優子は各々の親から違った形の愛情を受け、豊かな心を育んでいきます。
特に印象に残ったのは、二番目の母親である田中梨花との関係です。梨花は明るく自由奔放な性格で、優子に対して惜しみない愛情を注ぎます。経済的に余裕がない時期もありましたが、「大丈夫!なんとかなるわよ!」と前向きな姿勢を見せ、優子を励まし続けました。二人でデパートに買い物に行ったり、遊園地で遊んだりする場面からは、まるで本当の親子のような温かさが伝わってきました。そんな梨花が突然いなくなってしまう場面では、私も優子と同じように大きな喪失感を覚えました。
また、最後の父親となる森宮さんとの関係も心に深く残りました。最初は距離を感じていた優子でしたが、森宮さんの地道な愛情表現によって、少しずつ心を開いていきます。森宮さんは優子の好きなハンバーグを作ったり、音楽の話で心を通わせたりと、決して派手ではないけれど、確かな愛情で優子に接していきました。特に、優子の結婚式でのシーンは感動的でした。血のつながりがなくても確かな親子の絆が築かれていたことが表れていると思います。
優子のピアノへの想いも印象的でした。梨花との生活で叶えられなかった夢を、泉ヶ原との生活で実現できるようになります。しかし、そこには物質的な豊かさと引き換えに失われた自由があり、優子の複雑な心境が細やかに描かれていました。これは、幸せとは何かを考えさせられる場面でもありました。
この作品を通じて、私は「家族」とは必ずしも血縁関係だけで成り立つものではないと気づきました。むしろ、日々の生活の中での思いやりや、お互いを想う気持ちこそが、本当の意味での家族を作り上げるのだと感じました。それは、時に苦しみを伴うこともありますが、その分だけ深い絆となって心に刻まれるのだと思います。
また、優子が高校で出会う早瀬君との恋愛も印象的でした。ピアノを通じて心を通わせていく二人の関係は、純粋で美しいものでした。結婚という選択に対して森宮さんが最初は反対しますが、最終的に優子の幸せを願って受け入れる姿に、真の親の愛を見た気がします。早瀬君との新しい人生を選択する優子の決断には、それまでの複雑な家族関係の中で培われた強さが感じられました。
私たち高校生は、まだ「家族」について深く考える機会が少ないかもしれません。日々の生活の中で、両親や兄弟との関係を当たり前のものとして過ごしているかもしれません。しかし、この作品は、血縁関係だけにとらわれない、多様な形の愛情や絆があることを教えてくれました。それは、これから社会に出ていく私たちにとって、大切な気づきになると思います。
「バトン」という言葉には、次の世代へと愛情を引き継いでいくという意味が込められているのでしょう。優子は様々な親から受け取った愛情というバトンを、しっかりと受け止め、そして自分の手で新しい家族を作っていこうとします。時には挫折や困難もありましたが、それらを乗り越えて成長していく優子の姿は、私たちに勇気を与えてくれます。
この物語は、家族の形は変わっても、愛情さえあれば確かな絆を築けることを教えてくれる、心温まる作品でした。今、自分の周りにいる家族や友人との関係を大切にしながら、将来、自分も誰かに愛情のバトンを渡せる人になりたいと強く感じました。
『そして、バトンは渡された』はこんな人におすすめ
『そして、バトンは渡された』は、以下のような方におすすめです。
- 家族の絆について考えたい人
- 様々な愛情表現の形に興味がある人
- 成長物語が好きな人
- 心温まる物語を読みたい人
※『そして、バトンは渡された』の面白いところは、以下の記事で解説しています。

『そして、バトンは渡された』に似た小説3選
『そして、バトンは渡された』を楽しめた方には、以下の作品もおすすめです。
『52ヘルツのクジラたち』著:町田そのこ
現代的な家族の形を描いた作品です。
主人公が過去の傷を抱えながら、新しい家族の形を探していく過程が心に響きます。

『流浪の月』著:凪良ゆう
複雑な人間関係と家族の絆を描いた作品です。
登場人物たちの心情描写が繊細で美しい物語です。
『コンビニ人間』著:村田沙耶香
現代社会における人とのつながりや「居場所探し」の問題を描いた作品です。
主人公はコンビニという小さな社会の中で自分の生きがいと幸せを見つけていきます。
『そして、バトンは渡された』と同様に、普通とは違う形で幸せを探していく心の機微が丁寧に描かれているところが似ています。
主人公が自分らしい生き方を見つけていく過程も、とても印象的な物語ですよ。

振り返り
『そして、バトンは渡された』は、現代の家族の形を優しく描いた心温まる物語です。
複雑な家族関係の中で育つ優子の成長と、それを見守る大人たちの愛情が印象的でした。
読書感想文を書く際は、それぞれの親から受けた愛情の形に注目してみてくださいね。
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