今日は芥川龍之介の名作『蜘蛛の糸』についてご紹介します。
この物語は短くてシンプルなのに、深い意味を持つ作品なんですよ。
まずは、簡単なあらすじや子供向けのあらすじから見ていきましょう。
『蜘蛛の糸』の短く簡潔なあらすじ(50文字)
『蜘蛛の糸』のあらすじを簡単に100文字で
『蜘蛛の糸』の子供向けのあらすじ
むかしむかし、お空の上にいるお釈迦様が、下の世界をのぞいてみました。
すると、とっても暗くて怖い地獄が見えました。そこには、悪いことをした人がたくさんいて、みんな苦しそうでした。
その中に、カンダタという男の人がいました。カンダタは生きていたときに、たくさん悪いことをしたけど、一度だけいいことをしたことがありました。それは、小さな蜘蛛を踏まないで助けてあげたことです。
お釈迦様は、そのいいことを思い出して、カンダタを助けてあげようと思いました。そこで、きれいな銀色の蜘蛛の糸を、地獄に向かって垂らしました。
カンダタは、その糸を見つけてとってもうれしくなりました。「やった!これで地獄から出られるぞ!」と思って、一生懸命登り始めました。
でも、途中で下を見ると、他の人たちも糸につかまって登ってきていました。カンダタは怖くなって、「やめろ!この糸は僕のものだ!」と大きな声で叫びました。
そのとたん、ぷつっと糸が切れてしまいました。そしてカンダタは、また地獄に落ちていってしまいました。
お釈迦様は、とても悲しそうな顔をしました。みんなで助け合うことの大切さを、カンダタが分かってくれたらよかったのにと思ったのです。
『蜘蛛の糸』の200文字の簡単なあらすじ
『蜘蛛の糸』の400文字の詳しいあらすじ
ある朝、釈迦は極楽の蓮池を散歩中に地獄を覗き、そこでカンダタという男が苦しむ姿を見つけた。カンダタは悪行をさんざん重ねてきた罪人だったが、かつて小さな蜘蛛を助けた一度だけの善行があった。その善行を思い出した釈迦は、彼を地獄から救うために蜘蛛の糸を下ろしてやることにした。
暗い地獄に垂れてきた蜘蛛の糸を見つけたカンダタは、登れば地獄から出られると考え、糸につかまって上昇し始めた。しかし、途中で疲れて下を見ると、多くの罪人たちが彼の後を追ってきている様子に気づく。カンダタは重みで糸が切れるのを恐れ、自己中心的に「この糸は俺のものだ!お前たちは誰に許可を得て登ってきたのか!下りろ!」と叫んだ。その瞬間、カンダタの真上で糸が切れてしまい、再び地獄の底に真っ逆さまに落ちてしまった。
自分だけが助かろうとした結果、元の地獄に戻ってしまったカンダタを見て、釈迦は浅ましさを感じ、悲しげな表情で蓮池を後にした。
『蜘蛛の糸』のあらすじを理解するための用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
極楽(ごくらく) | 仏教における 苦しみのない安らかな世界。 |
地獄(じごく) | 仏教における 生前の悪行によって苦しみを受ける世界。 |
蓮池(はすいけ) | 極楽にある池。 蓮の花が咲き乱れ、その下は地獄に通じている。 |
血の池(ちのいけ) | 地獄の底にある 罪人たちが苦しむ池。 |
蜘蛛の糸(くものいと) | 極楽にいる蜘蛛が張る 細くも強い銀色の糸。 お釈迦様が地獄の罪人を救うために垂らす。 |
因果応報(いんがおうほう) | 善い行いには善い報いが 悪い行いには悪い報いがあるという仏教の教え。 |
我執(がしゅう) | 自分本位な考えや自分に固執する心。 |
『蜘蛛の糸』の作品情報
項目 | 内容 |
---|---|
作者 | 芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ) |
初出年 | 1918年(大正7年) |
初出誌 | 『赤い鳥』 |
現在の主な出版社 | 多数の出版社から文庫本などで刊行されています (例:角川文庫、新潮文庫など) |
ジャンル | 短編小説、童話、寓話 |
対象年齢 | 小学校高学年~一般 (幅広い年齢層に読まれています) |
青空文庫の収録 | あり(こちら) |
『蜘蛛の糸』の登場人物と簡単な説明
登場人物 | 説明 |
---|---|
お釈迦様 | 極楽におわす仏様。 慈悲深くカンダタを救おうとする。 |
カンダタ | 主人公。 悪事を働いた罪人だが一度だけ善行をした。 |
他の罪人たち | カンダタと同じく地獄にいる罪人たち。 救われたいと糸につかまる。 |
『蜘蛛の糸』の文字数と読了時間
項目 | 数値 |
---|---|
文字数 | 3,236文字 |
読了時間 | 約5分(3,236文字÷600文字/分) |
>>>読書感想文の参考として作者が読者に伝えたいことを知りたい方は、コチラの記事にお進みください。

『蜘蛛の糸』を読んだ私の感想
『蜘蛛の糸』を読む前は「分かりにくい話かな?」なんて構えていたんです。でも、いざ読み始めてみたら、これが意外とスッと心に入ってきて、読み終えた後には、なんとも言えない余韻が残りましたね。
この物語、極楽のお釈迦様が、ふとしたことから地獄を覗き見て、一人の大泥棒・カンダタに目を留める。彼が生前たった一度だけ見せた善行、小さな蜘蛛の命を助けたこと。その善行ゆえに、お釈迦様は彼を救おうと、一本の蜘蛛の糸を地獄へと垂らすんです。
ここまでは、まさに「救い」の物語。
希望の光が差し込むような展開に、私も「おお、これは良い話になるぞ」と期待したものです。
ところが、カンダタがその糸を登り始めると、後ろからぞろぞろと他の罪人たちがついてくる。そこで彼が発する「この蜘蛛の糸はおれのものだぞ。下りろ。下りろ!」というセリフ。この瞬間に、ぷつりと糸が切れてしまうんですよね。
いやはや、この場面は本当に衝撃的でした。人間ってやつは、いざ自分の利益がかかると、こんなにも醜い本性を見せるのかと。そして、その我執が、せっかくの救いの手を断ち切ってしまうという皮肉。
お釈迦様が悲しそうに立ち去る姿と、何も気にせず咲き誇る蓮の花の対比もまた、心にズシンと響きました。
世の中の真理というか、人間のエゴと、それを超越した大いなる存在の慈悲。そして、どんな状況でも変わらず美しいものは美しい、という事実。
短い物語の中に、人間の本質、救いとは何か、そして利己的な心がもたらす結末が凝縮されていて、読み終わった後も「自分だったらどうするだろう?」なんて、しばらく考え込んでしまいました。
40代になり、色々と経験を積んだ今だからこそ、この物語の深みがより一層理解できた気がします。若い頃に読んだ時とはまた違う、新たな発見がありました。
まさに、人生の教訓が詰まった一冊。まだ読んでない方には、ぜひ一度手にとってほしいですね。きっと、何かを感じるはずです。
※『蜘蛛の糸』の読書感想文の例文と書き方はこちらでご紹介しています。

『蜘蛛の糸』は誰向けの小説?
『蜘蛛の糸』は、幅広い年齢層の読者に向けた作品だと言えます。
特に以下のような方におすすめですよ。
- 人間の本質や道徳について考えたい人
- 短くても深い意味のある物語が好きな人
- 仏教的な世界観に興味がある人
- 自己中心的な考え方を見直したい人
- 日本の古典文学に触れてみたい中高生
この作品は短いながらも、人間の欲望や救済について深く考えさせてくれます。
また、比喩的な表現や美しい情景描写も魅力的で、文学作品としての価値も高いんですよ。
>>>『蜘蛛の糸』の魅力や読みどころは以下の記事にて深堀りして解説しています。

『蜘蛛の糸』に似た内容の小説4選
「蜘蛛の糸」のテーマや世界観に似た作品をいくつか紹介しますね。
1. 『杜子春』(芥川龍之介)
同じ芥川龍之介の作品で、仙人の試練を受ける主人公の物語です。人間の欲望や弱さ、そして最後に慈悲の心に目覚めるという点が『蜘蛛の糸』と似ています。

2. 「山月記」(中島敦)
人間の業や欲望によって虎に変身してしまった主人公の物語です。人間の本質や業について深く考えさせられる点が『蜘蛛の糸』と共通しています。

3. 「羅生門」(芥川龍之介)
これも芥川の作品ですが、人間の本質的な醜さや利己主義を描いている点で『蜘蛛の糸』と通じるものがあります。

4. 「地獄変」(芥川龍之介)
芥川のもう一つの作品で、芸術家の狂気と地獄のイメージが描かれています。地獄という設定や人間の業の深さを描いている点が『蜘蛛の糸』と似ています。

振り返り
『蜘蛛の糸』を読んで、私たちは多くのことを考えさせられますね。
この物語は短いけれど、人間の本質や道徳、そして救済について深く掘り下げています。
カンダタの行動を通して、私たち一人一人が自分の心の中にある利己主義や欲望と向き合うきっかけになるかもしれません。
また、小さな善行の積み重ねが大切だということも教えてくれています。
お釈迦様の慈悲深さは、私たちに思いやりの心の大切さを伝えていますし、最後のシーンは、人間の弱さを受け入れつつも、諦めずに見守り続ける大きな愛を感じさせてくれます。
この作品を読むたびに、新しい発見や気づきがあるのも魅力の一つですね。
ぜひ皆さんも、この名作を読んで、自分なりの解釈や感想を持ってみてください。きっと、心に響くものがあるはずですよ。
※『蜘蛛の糸』を読み解く自信がない方はこちらの解説記事を参考になさってください。

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