『グスコーブドリの伝記』のあらすじを簡単に、そして詳しく紹介していきますね。
宮沢賢治が1932年に発表したこの童話は、自己犠牲の精神と科学への探求心を描いた代表作のひとつです。
私は年間100冊以上の本を読む読書愛好家として、この作品の深いメッセージ性と普遍的なテーマに強く心を打たれました。
読書感想文を書く予定の皆さんにとって、この記事がきっと参考になるはずです。
短くて簡単なあらすじから詳しいネタバレありの内容まで、そして私の率直な感想も交えながら、丁寧に解説していきますよ。
『グスコーブドリの伝記』の短くて簡単なあらすじ
イーハトーブの森で生まれた少年ブドリは、冷害による飢饉で家族を失った。
様々な困難を乗り越えながら学問を身につけ、火山局の技師となる。
27歳のとき、再び襲った冷害からイーハトーブを救うため、カルボナード火山を人工的に爆発させる計画の実行役となり、自らの命と引き換えに人々を救った物語である。
『グスコーブドリの伝記』の中間の長さのあらすじ
樵の息子として生まれたグスコーブドリは、10歳のときに冷害による飢饉で両親を失い、妹ネリとも生き別れになった。
てぐす工場で働いた後、農家の赤ひげのもとで農業を学び、やがてクーボー大博士の紹介で火山局の技師となる。
技師として様々な業績を上げ、妹との再会も果たす。
しかし27歳のとき、再び深刻な冷害がイーハトーブを襲う。
ブドリは火山を人工的に噴火させて温室効果で冷害を防ぐ計画を提案し、実行役に志願して命を犠牲にしてイーハトーブの人々を救った。
『グスコーブドリの伝記』の詳しいあらすじ(ネタバレあり)
イーハトーブの森で樵の息子として生まれたグスコーブドリは、10歳から翌年にかけて連続した冷害による飢饉で、両親が家を出て行き、妹ネリは人さらいに連れ去られた。
ブドリはてぐす飼いの工場で働くが、火山噴火で工場が閉鎖となり、次に農家の赤ひげのもとで6年間働きながら勉強に励んだ。
その後、クーボー大博士の学校で試問を受け、優秀な成績でイーハトーブ火山局への就職を紹介される。
火山局では老技師ペンネンナームの指導のもと、着実に技術と地位を向上させ、人工降雨による施肥などの業務で成果を上げた。
この頃、成長して牧場主に嫁いでいた妹ネリとの再会も果たす。
しかし27歳のとき、イーハトーブは再び深刻な冷害に見舞われる。
ブドリはカルボナード火山を人工的に爆発させ、大量の炭酸ガスによる温室効果で冷害を食い止める計画を提案する。
この計画では実行者が一人犠牲になる必要があったが、ブドリは自ら志願し、博士や老技師の制止を振り切って火山に残り、爆発を成功させてイーハトーブを救った。
『グスコーブドリの伝記』の感想
『グスコーブドリの伝記』を読み終えて、私は深い感動と同時に、現代にも通じる普遍的なメッセージの重さを感じました。
まず何より心を打たれるのは、ブドリの生き方そのものです。
幼い頃から次々と襲いかかる困難に対して、彼は決して絶望することなく、常に前向きに学び続け、成長し続けます。
両親を失い、妹と生き別れ、工場の閉鎖、様々な試練を経験しながらも、その都度新しい環境に適応し、知識を身につけていく姿は、現代を生きる私たちにも大きな勇気を与えてくれます。
特に印象深いのは、ブドリが単なる被害者に留まらず、自らの経験を糧にして社会に貢献する人間へと成長していく過程です。
火山局の技師として、科学的な知識を駆使して人々の生活を向上させようとする姿勢は、知識が持つ力と責任の重さを教えてくれます。
宮沢賢治が込めた「科学と自然の調和」というテーマも、環境問題が深刻化する現代において、より一層重要な意味を持っています。
ブドリの最後の選択については、読者それぞれが異なる感想を持つでしょう。
私自身、彼の自己犠牲の精神に深く感動する一方で、本当にそれが最善の選択だったのかという疑問も抱きました。
しかし、「私よりもっともっとなんでもできる人が、私よりもっと立派にもっと美しく、仕事をしたり笑ったりして行くのですから」という彼の言葉は、未来への希望と他者への信頼に満ちており、単なる悲劇的な自己犠牲ではない、より深い意味を持っていることがわかります。
賢治の文章の美しさも特筆すべき点です。
「イーハトーブ」という幻想的な舞台設定でありながら、そこで描かれる自然災害や社会問題は現実味があり、童話でありながら大人の読者にも十分に響く内容となっています。
科学的な描写も、専門知識がなくても理解できるよう工夫されており、賢治の教育者としての一面も感じられます。
この作品を読んで改めて感じるのは、個人の幸福と社会全体の幸福の関係性についてです。
ブドリは自分の幸せを追求することもできたはずですが、より大きな視点から社会全体の幸福を選択しました。
現代の個人主義的な価値観からすると極端に見えるかもしれませんが、真の幸福とは何かを考えさせられる深いテーマだと思います。
※『グスコーブドリの伝記』を通して宮沢賢治が伝えたいことは以下の記事にまとめています。

『グスコーブドリの伝記』の心に残った一文を2つ紹介
『グスコーブドリの伝記』には多くの印象的な言葉がありますが、特に心に残った一文を2つご紹介しますね。
「私よりもっともっとなんでもできる人が、私よりもっと立派にもっと美しく、仕事をしたり笑ったりして行くのですから。」
この言葉は、ブドリが最後の決断を下すときに語った言葉です。
自分の命を犠牲にすることへの迷いや恐れではなく、未来への希望と他者への信頼が込められています。
現代社会では自分の能力や価値を過度に主張することが多い中で、このような謙虚さと他者への敬意を持った生き方は、とても貴重で美しいものだと感じました。
「私にそれをやらしてください。」
短い言葉ですが、ブドリの強い意志と覚悟が凝縮された重みのあるフレーズです。
誰かに強制されたわけでもなく、自らの意志で危険な任務を引き受ける決意表明として、その潔さと責任感の強さが表現されています。
現代でも、困難な状況に直面したときに、このような前向きな姿勢を持てる人間でありたいと思わせる言葉でした。
■心に残った一文の引用元:宮沢賢治 グスコーブドリの伝記
『グスコーブドリの伝記』の作品情報
『グスコーブドリの伝記』の基本的な情報をまとめておきますね。
項目 | 内容 |
---|---|
作者 | 宮沢賢治 |
出版年 | 1932年(昭和7年) |
出版社 | 雑誌『児童文学』第2号 |
受賞歴 | なし(賢治の生前発表作品のひとつ) |
ジャンル | 童話・文学 |
主な舞台 | イーハトーブ(岩手県をモデル) |
時代背景 | 大正時代後期 |
主なテーマ | 自己犠牲・科学と自然・成長 |
物語の特徴 | 一人の男性の生涯を描いた成長物語 |
対象年齢 | 小学生から大人まで |
『グスコーブドリの伝記』の主要な登場人物とその簡単な説明
『グスコーブドリの伝記』の登場する重要な人物たちをご紹介しますね。
人物名 | 説明 |
---|---|
グスコーブドリ(ブドリ) | 主人公。樵の息子として生まれ、様々な困難を乗り越えて火山局の技師となる |
ネリ | ブドリの妹。人さらいに連れ去られるが、牧場の夫婦に育てられ、後に結婚する |
グスコーナドリ(ナドリ) | ブドリとネリの父親。樵をしていたが、飢饉のために家を出ていく |
ブドリの母 | ナドリの妻。夫の後を追うように家を出て、戻らなかった |
クーボー大博士 | 高名な学者。無料の学校を開き、ブドリに火山局を紹介する |
ペンネンナーム(ペンネン技師) | 火山局の老技師。ブドリの良き相談相手となる |
てぐす飼い | 森を買収しててぐす工場を経営する資本家。ブドリを雇う |
赤ひげ | 投機的な農業をする農家の主。ブドリを6年間雇って勉強もさせる |
おかみさん | 赤ひげの妻。夫の投機的な性格に苦労しながらも家計を支える |
人さらい | ネリを誘拐した男。泣き声に耐えられず途中で置き去りにする |
『グスコーブドリの伝記』の読了時間の目安
『グスコーブドリの伝記』の読了時間について詳しく説明しますね。
項目 | 詳細 |
---|---|
文字数 | 約27,391文字 |
ページ数 | 約46ページ(1ページ600文字換算) |
読了時間(平均的な読書速度) | 約55分 |
読了時間(ゆっくり読む場合) | 約1時間30分 |
読了日数の目安 | 1〜2日 |
この作品は比較的短めの童話なので、集中して読めば1時間程度で読み終えることができます。
文章も読みやすく、難しい漢字にはふりがなが振ってあることが多いので、中学生以上であれば スムーズに読み進められるでしょう。
読書感想文を書く場合は、じっくりと内容を味わいながら読むことをおすすめします。
『グスコーブドリの伝記』はどんな人向けの小説か?
『グスコーブドリの伝記』は幅広い読者層に愛されていますが、特に以下のような人におすすめです。
- 困難に立ち向かう勇気を求めている人
- 科学や自然に興味がある人
- 自己犠牲や利他的な精神について考えたい人
- 宮沢賢治の世界観に触れてみたい人
- 環境問題や持続可能な社会に関心がある人
- 家族の絆や人とのつながりを大切にしたい人
- 読書感想文を書く学生
- 人生の意味や価値について深く考えたい人
特に、人生で困難に直面している人や、逆境を乗り越えようとしている人にとって、ブドリの生き方は大きな励みとなるはずです。
また、童話でありながら深いテーマを扱っているため、大人が読んでも十分に楽しめる作品だと思います。
『グスコーブドリの伝記』と似ている小説3選
『グスコーブドリの伝記』と共通するテーマや世界観を持つ作品をご紹介します。
小川洋子『博士の愛した数式』
小川洋子さんによるこの作品は、数学という科学を通じて人と人との温かい交流を描いています。
ブドリが科学的知識を駆使して社会に貢献する姿と、博士が数学への純粋な愛を通じて周囲の人々に影響を与える点で共通しています。
知識や学問が人間関係に与える豊かさを描いた点で、両作品は深いつながりがあります。

星新一『ボッコちゃん』
一見異なる作風に見えますが、星新一のショートショートには、科学技術と人間社会の関係を客観的に描いた作品が多く含まれています。
ブドリが科学を使って自然と向き合う姿とは対照的に、人間のエゴや愚かさを描くことで、逆にブドリの献身的な行動の尊さが際立ちます。
科学と人間存在の関係を考察する点で共通項があります。
遠藤周作『沈黙』
遠藤周作のこの作品は、信仰のために、あるいは他者の苦しみを救うために、自己の信条を犠牲にする究極の選択を描いています。
ブドリが「みんなの幸」のために自己を犠牲にする決断と、ロドリゴ神父が他者のために自分の信念を曲げる選択には、深いレベルでの共通点があります。
自己犠牲の精神と利他的な行動について、より深く考察できる作品です。
振り返り
『グスコーブドリの伝記』は、宮沢賢治が描いた深いメッセージ性を持つ名作です。
一人の青年の成長と自己犠牲を通じて、科学と自然の調和、個人と社会の関係、真の幸福とは何かを問いかけています。
読書感想文を書く際には、ブドリの生き方や選択について自分なりの考えを深めることが大切ですね。
この記事が皆さんの理解の助けになれば幸いです。
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