森絵都さんの『カラフル』って、どんな小説なのかな?と思っている方も多いのではないでしょうか。
私は年間100冊以上の本を読む読書家なのですが、『カラフル』は何度読んでも新しい発見がある素晴らしい作品だと感じています。
今回は、『カラフル』のあらすじや読書感想文のポイントを、できるだけ分かりやすくお話ししていきますね。
特に読書感想文を書く予定の方には、きっと役立つ情報がたくさんありますよ。
それでは、まずは短い簡単なあらすじから見ていきましょう。
『カラフル』の短いあらすじ
『カラフル』の簡単なあらすじ
『カラフル』の詳しいあらすじ
死後の世界で「抽選に当たった」と告げられた魂である「ぼく」は、天使のようなプラプラに導かれ、中学生・小林真の体で「ホームステイの修行」を始めることになる。
最初は不倫する真の母親や利己的な父親に反発的な態度を取る「ぼく」。しかし、スニーカーを奪われる事件や、友人との出会い、父との釣り、進路選択など、様々な出来事を通じて、人間の多面性に気づいていく。
やがて真の家族や友人との絆を深めていくが、その愛情が自分ではなく真に向けられたものだと気づき、葛藤を抱えることに。そして最後に、自分の過去と向き合うことになるのだった。
『カラフル』の概要
森絵都さんの代表作である『カラフル』の基本情報をまとめてみました。
項目 | 内容 |
---|---|
作者 | 森絵都 |
出版年 | 1998年7月 |
主な舞台 | 関東近郊の住宅地 |
時代設定 | 1998年9月~12月 |
受賞歴 | 第46回産経児童出版文化賞 |
『カラフル』の主要な登場人物
『カラフル』という物語を理解する上で重要な登場人物たちを紹介しますね。
人物 | 説明 |
---|---|
小林真 | 中学3年生。美術部所属。背が低いことにコンプレックスを持つ。主人公の魂が宿る少年。 |
プラプラ | 「ぼく」のサポート役の天使。天界では丁寧だが、下界ではぞんざいな口調に。 |
佐野唱子 | 真のクラスメイト。真の変化に気づく女子生徒。 |
早乙女 | 真の親友となる男子生徒。スニーカーがきっかけで仲良くなる。 |
真の父親 | 食品企業に勤めるサラリーマン。一見利己的だが、実は家族思い。 |
真の母親 | 専業主婦。平凡な自分に負い目を感じている。過去に不倫経験あり。 |
『カラフル』の文字数と読了時間
この『カラフル』を読むのにどのくらい時間がかかるのか、目安をお伝えします。
項目 | 数値 |
---|---|
総ページ数 | 272ページ(文春文庫版) |
推定総文字数 | 約163,200文字 |
読了時間の目安 | 約5時間30分 |
※1分間に500文字を読むペースで計算しています。
『カラフル』の読書感想文を書くうえで外せない3つの重要ポイント
『カラフル』の読書感想文を書く際は、以下の3つのポイントを押さえておくと良いでしょう。
- 「視点の変化」による心の成長
- 人間の多面性への気づき
- 「生きる」ことの意味
「視点の変化」による心の成長
主人公である「ぼく」は、最初は真の家族に対して批判的な目を向けています。
でも、一緒に生活を重ねていくうちに、家族それぞれの苦悩や愛情に気づいていくんです。
例えば、父親との釣りの場面。普段は仕事ばかりの父親の、意外な優しさや不器用さが見えてきます。
この「見方の変化」は、私たちの日常生活でも大切なことを教えてくれています。
人間の多面性への気づき
この物語では、誰一人として完璧な人はいません。
母親は不倫という過ちを犯しながらも、確かな愛情を持っています。
クラスメイトたちも、最初は距離を置いていた主人公に、少しずつ心を開いていきます。
人間の「良い面」も「悪い面」も含めて受け入れていく過程が、とても丁寧に描かれているんです。
「生きる」ことの意味
この作品は、「生きる」ということについて深く考えさせられる物語です。
人生に絶望して生きる意味を見失った真。
でも、周囲の人々との関わりを通じて、生きることの意味を少しずつ見出していきます。
特に印象的なのは、最後のプラプラの「しぶとく生きろ」という言葉。
この一言には、生きることの苦しさも喜びも、すべてを包み込む深い意味が込められているんです。
※『カラフル』を通じて作者が伝えたいことは以下の記事で考察しています。

『カラフル』の読書感想文の例(原稿用紙4枚分/約1600文字)
森絵都さんの『カラフル』を読んで、私はとても深く考えさせられました。この物語は、一度人生の終わりを迎えた「ぼく」が、天使のプラプラによって新たな機会を与えられ、他の誰かとして生活することで自分自身を見つめ直すというストーリーです。最初は戸惑いや反発が多かった「ぼく」ですが、家族や友人との関わりを通じて次第に変化していきます。
この作品のテーマの一つは、人間の多面性と成長です。最初は家族の欠点ばかりが目につき、周囲に対して否定的な態度をとっていた「ぼく」ですが、時間が経つにつれてそれぞれの悩みや葛藤に気づきます。特に母親との関係では、単なる不満から一歩進み、彼女の苦悩や努力を理解するようになります。このような視点の変化が、物語の大きな魅力の一つだと感じました。また、父親や兄に対しても、当初は冷めた目で見ていましたが、彼らなりの努力や想いを知ることで見方が変わっていきます。家族の一員としての絆や、互いの気持ちを理解しようとする大切さが描かれている点に心を打たれました。
また、友情の大切さも描かれています。「ぼく」は学校生活の中で新たな友人を得ることで、自分の存在が決して孤独ではないと気づきます。特に早乙女というクラスメイトとの交流は印象的で、何気ない会話の中にお互いを思いやる気持ちが感じられました。友人の存在が、どれほど人の心を支えるのかを改めて考えさせられます。さらに、クラスの中での人間関係やちょっとした出来事も、「ぼく」にとっては大きな影響を与えました。相手を理解しようとすることで、自分自身も成長していく姿が印象的でした。
物語の終盤で「ぼく」が自分自身の過去を振り返る場面は、とても胸に響きました。彼はかつて、人生に対して深い絶望を抱えていましたが、新しい経験を通して自分の存在の意味を見出していきます。その過程を読みながら、私もまた、自分の周りにある幸せや支えてくれる人々の存在に感謝しなければならないと感じました。どんなに辛いときでも、見方を変えれば希望は必ずあるのだということを、この物語は教えてくれます。時には、自分自身の殻に閉じこもり、周囲との関係を遮断したくなることもありますが、それでも人とのつながりは温かく、私たちを支えてくれるものだと感じました。
タイトルの『カラフル』には、人生の多様性や人それぞれの個性が表現されていると考えます。どんなに辛いことがあっても、世界は一色ではなく、さまざまな色が混ざり合ってできているのだと。たとえ苦しい時期があったとしても、それは決して無駄ではなく、いずれ自分にとって大切な経験となるのかもしれません。また、物語の中で描かれるさまざまな感情—悲しみ、喜び、怒り、不安—も、まるでカラフルな色彩のように、人生を豊かにしているのだと感じました。この作品は、どんな状況でも前向きに生きていく大切さを教えてくれる素晴らしい物語でした。
私はこの本を読んで、人の気持ちを深く理解することの大切さを学びました。普段何気なく接している家族や友人にも、それぞれの悩みや葛藤があり、見えている一面だけで判断するべきではないと気づかされました。そして、どんなときでも新しいチャンスはあるのだと信じることが大切だと思います。たとえ今がうまくいかなくても、未来には必ず光があるということを、この物語を通じて改めて実感しました。私自身も、自分の人生をもっと多様な視点で見つめ直し、より豊かに生きるためのヒントをもらえた気がします。
『カラフル』は、これからの人生において忘れられない一冊となりました。自分のことを見つめ直し、もっと前向きに生きようとする勇気をもらえた作品でした。もし誰かが悩んでいるのなら、この本を読んで、少しでも心が軽くなることを願っています。そして、人生のさまざまな色を感じながら、より豊かに生きていけたらと思います。この本が、多くの人にとって希望や勇気を与えるものであることを願っています。
『カラフル』はどんな人向けの小説?
『カラフル』という小説は、特に以下のような方におすすめです。
- 人間関係に悩んでいる中高生
- 家族との関係を見つめ直したい人
- 自分の生き方に迷いを感じている人
- 心理描写の丁寧な小説が好きな人
- 他人の視点で物事を考えてみたい人
特に10代の読者には、きっと多くの共感ポイントが見つかるはずです。
でも、大人が読んでも新しい発見がある。それが『カラフル』の魅力なんですよ。
※『カラフル』の面白いところは以下の記事にて解説しています。

『カラフル』に似た小説3選
『カラフル』を楽しめた方には、以下の作品もおすすめです。
『風に舞いあがるビニールシート』(森絵都)
同じ作者による青春小説です。
こちらも思春期の心の揺れ動きを繊細に描いています。
人間関係の機微や、成長の過程が丁寧に表現されているところが『カラフル』に似ています。
『星の子』(今村夏子)
主人公が自分の存在意義を探っていく物語。
家族との関係性や、自己の在り方について深く考えさせられる点が『カラフル』と通じるものがあります。
『空色勾玉』(荻原規子)
ファンタジー要素を含みながら、人間の心理を深く描いた作品。
現実と非現実が交錯する設定や、主人公の心の成長を描く手法が『カラフル』に似ています。
振り返り
『カラフル』は、一見重たいテーマを扱いながらも、どこか温かな希望に満ちた物語です。
人それぞれの「色」があって、それが混ざり合って私たちの世界は成り立っている。
そんな当たり前のことを、優しく、でも力強く教えてくれる作品です。
読書感想文を書く方は、ぜひ自分の経験と重ね合わせながら読んでみてください。
きっと、あなたならではの新しい発見があるはずですよ。
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