『ツナグ』のあらすじを知りたい学生の皆さん、こんにちは。
辻村深月さんが描いた『ツナグ』は、死者と生者を一度だけ再会させる特別な使者の物語です。
第32回吉川英治文学新人賞を受賞し、69万部を超えるベストセラーになった感動の連作短編小説。
私は年間100冊以上の本を読む読書好きですが、この作品は特に心に残る一冊でした。
読書感想文を書く予定の皆さんに向けて、章ごとの簡単なあらすじ(ネタバレなし)、そして私が読んだ感想まで、丁寧に解説していきますね。
『ツナグ』「アイドルの心得」のあらすじを簡単に(ネタバレなし)
『ツナグ』「長男の心得」のあらすじを簡単に(ネタバレなし)
『ツナグ』「親友の心得」のあらすじを簡単に(ネタバレなし)
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『ツナグ』「使者の心得」のあらすじを簡単に(ネタバレなし)
『ツナグ』の感想
この小説を読み終えて、私はしばらく本を閉じたまま動けませんでした。
死者との再会という設定は決してファンタジーではなく、生きている人間の心の奥底にある切実な思いを描くための装置として機能しています。
特に印象的だったのは、再会が必ずしも癒しや救いをもたらすわけではないという点です。
嵐美砂のエピソードでは、親友の奈津に謝罪するチャンスがありながら、結局それを果たせずに終わります。
「綺麗な気持ちのままあの世に行ってほしい」という美砂の思いは一見美しく聞こえますが、実際には自分が楽になりたいだけの自己保身でした。
面会後に奈津の伝言を聞いた美砂が泣き崩れるシーンは、本当に胸が痛くなりました。
「道は凍ってなかったよ」という奈津の言葉が、美砂の行為を知っていながらも、それでも友情を信じていたことを示しているのです。
このような残酷さと優しさが同居する描写こそが、辻村深月さんの真骨頂だと思います。
一方で、平瀬愛美とサヲリの再会は心温まるものでした。
うつ病で苦しんでいた愛美が、サヲリとの面会を通じて生きる希望を見つけていく過程は、読んでいて涙が止まりませんでした。
「アイドルって、すごい」という愛美の言葉には、人を励ます力の素晴らしさが込められています。
サヲリが愛美のことを「平ちゃん」と呼んで親しみを込めたのも、本当に温かい描写でした。
畠田靖彦と母親ツルの再会も、日本の家族関係の複雑さを丁寧に描いていて感動的でした。
長男としての責任と自分の器の限界に悩む靖彦の気持ちは、多くの男性読者が共感できるのではないでしょうか。
ツルが「もう久仁彦を追い出して家業を継いだなどと考えないよう」に諭すシーンは、日本の家族制度の重圧を表している一方で、母親の深い愛情も感じられました。
土谷功一とキラリの別れの場面も印象深かったです。
7年間も彼女の死を受け入れることができなかった功一が、最後に「大好き」という言葉を聞いて前に進む決意を固める。
愛する人を失った悲しみと、それでも生きていかなければならない現実の重さが、ひしひしと伝わってきました。
主人公の歩美の成長も見逃せません。
最初は戸惑いながらも、さまざまな依頼者と向き合うことで、使者としての責任と人間としての深みを身につけていきます。
彼女自身が両親を亡くした過去を持っているからこそ、依頼者の気持ちを理解できるのでしょう。
この小説で最も素晴らしいのは、死者との再会を通して「今を生きることの大切さ」を描いている点です。
一度きりの再会というルールが、いかに日常の出会いや別れが貴重なものかを教えてくれます。
読み終えた後、私は自分の大切な人たちの顔を思い浮かべずにはいられませんでした。
もし自分が使者に依頼するとしたら、誰に会いたいだろうか。
そして、今の自分は大切な人たちに十分な愛情を伝えているだろうか。
そんなことを考えさせられる、深い余韻を残す作品でした。
※『ツナグ』で作者が伝えたいことはこちらの記事で考察しています。

『ツナグ』の作品情報
『ツナグ』の基本的な情報を以下の表にまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
作者 | 辻村深月 |
出版年 | 2010年 |
出版社 | 新潮社 |
受賞歴 | 第32回吉川英治文学新人賞 |
ジャンル | 連作短編小説・ヒューマンドラマ |
主な舞台 | 現代日本 |
時代背景 | 2010年代 |
主なテーマ | 死生観・家族愛・友情・後悔と赦し |
物語の特徴 | オムニバス形式・超常現象・感動系 |
対象年齢 | 中学生以上 |
『ツナグ』の主要な登場人物とその簡単な説明
『ツナグ』に登場する重要な人物たちを紹介します。
それぞれの人物が抱える複雑な感情や背景を理解することで、物語への理解が深まりますよ。
人物名 | 説明 |
---|---|
渋谷歩美 | 主人公。高校2年生。祖母から使者の力を受け継ぐ。両親を幼い頃に亡くしている。 |
渋谷アイ子 | 歩美の祖母。長年使者を務めてきた。心臓の病気で入院し、歩美に力を譲る。 |
平瀬愛美 | 歩美の最初の依頼者。うつ病で苦しんでいる。水城サヲリのファン。 |
水城サヲリ | 3か月前に亡くなった芸能人。元キャバクラ嬢でコメンテーターとして活躍していた。 |
畠田靖彦 | 50代の工務店社長。長男としての責任に悩む。母親ツルとの面会を希望。 |
畠田ツル | 靖彦の母親。2年前に癌で亡くなった。生前も使者を利用したことがある。 |
嵐美砂 | 歩美の同級生。美人だが攻撃的。親友の奈津を事故で失う。 |
御園奈津 | 美砂の親友。演劇部で主役に抜擢されたが、自転車事故で亡くなった。 |
土谷功一 | 30代のサラリーマン。婚約者キラリの失踪から7年経っても彼女を待ち続けている。 |
日向キラリ | 功一の婚約者。本名は鍬本輝子。家出して東京に来て功一と出会った。 |
『ツナグ』の読了時間の目安
『ツナグ』を読むのにどれくらい時間がかかるか、目安を表にまとめました。
読書速度には個人差がありますが、参考にしてくださいね。
項目 | 数値 |
---|---|
総ページ数 | 320ページ(単行本) |
推定文字数 | 約192,000文字 |
読了時間(標準速度) | 約6時間24分 |
1日1時間読書の場合 | 約1週間 |
1日30分読書の場合 | 約2週間 |
連作短編の形式なので、章ごとに区切って読みやすい構成になっています。
読書感想文を書く学生さんにとっても、比較的読みやすい分量だと思いますよ。
『ツナグ』はどんな人向けの小説か?
『ツナグ』は以下のような人に特におすすめできる小説です。
- 大切な人を亡くした経験がある人
- 家族や友人との関係に悩んでいる人
- 人間の心の複雑さに興味がある人
- 感動的な物語を読みたい人
- 死生観について考えたい人
- 日本の家族制度や人間関係を理解したい人
- 短編集のような読みやすい形式を好む人
- 読書感想文のテーマを探している学生
逆に、純粋なファンタジーや冒険小説を求める人にはあまり向かないかもしれません。
この作品の魅力は、超常現象よりも人間の心の動きにあるからです。
あの本が好きなら『ツナグ』も好きかも?似ている小説3選
『ツナグ』を気に入った人におすすめの、似た雰囲気やテーマを持つ小説を3つ紹介します。
どの作品も人間の心の機微を丁寧に描いた感動的な物語ですよ。
『きみの友だち』重松清
重松清さんの『きみの友だち』は、子供から大人への成長過程で経験する友情や別れを描いた作品です。
足の不自由な恵美と転校生の由香を中心に、複数の視点から友情の形を探る物語。
『ツナグ』と同様に、オムニバス形式で様々な人物の心情を描いており、失われた関係性との向き合い方がテーマになっています。
超常現象はありませんが、人間関係の複雑さと温かさを丁寧に描いた点で共通しています。
『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ
瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』は、血のつながらない家族の愛情を描いた感動作です。
主人公の優子が3回の離婚・再婚を経験し、4人の父親に育てられる物語。
『ツナグ』と同じく、家族の絆や受け継がれる愛情がテーマになっており、過去の人物たちの影響が現在に与える意味を探ります。
温かく優しい筆致で読者の心を癒す力があり、読後の余韻も似ています。

『海辺のカフカ』村上春樹
村上春樹さんの『海辺のカフカ』は、15歳の少年が家出をしながら自分と向き合う成長物語です。
現実と非現実が交錯する中で、主人公が失われた存在や過去の記憶と対話していきます。
『ツナグ』の直接的な死者との再会に対し、より象徴的で夢幻的な形で過去との関係性を描いている点が異なります。
しかし、喪失と再生、過去の清算というテーマは共通しており、死後の世界や見えない繋がりについて考えさせられます。

振り返り
『ツナグ』は、死者との一度きりの再会という設定を通じて、人間の心の奥底にある複雑な感情を描いた傑作です。
辻村深月さんの丁寧な心理描写と、オムニバス形式の巧みな構成により、読者は様々な角度から死生観や人間関係について考えさせられます。
感動的な再会もあれば、切なく残酷な別れもあり、人生の複雑さをリアルに描いている点が印象的でした。
読書感想文を書く学生の皆さんにとって、このネタバレありのあらすじと感想が参考になれば幸いです。
『ツナグ』を読んで、皆さんも大切な人との関係や今を生きることの意味について、深く考えてみてくださいね。
※『ツナグ』の読書感想文の書き方はこちらで解説しています。

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