『羅生門』読書感想文の書き方と例【400字・600字・2000字】

『羅生門』の読書感想文 感想

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『羅生門』の読書感想文の書き方を知りたい中学生・高校生のみなさんへ向けて、読書が趣味で年間100冊以上を読む私が詳しく解説していきますよ。

芥川龍之介の代表作『羅生門』は、平安時代末期の荒廃した社会を舞台に、極限状況における人間のエゴイズムと善悪の曖昧さを鋭く描いた短編小説。

1915年に発表されたこの作品は、『今昔物語集』を原典としながらも、芥川独自の人間観察力によって現代にも通じる普遍的なテーマを浮き彫りにしています。

私は長年にわたって多くの文学作品に触れてきましたが、『羅生門』ほど短い文章の中に深いテーマが凝縮された作品は珍しいと感じています。

この記事では、400字詰め原稿用紙で1枚(400字)から600字、そして2000字の読書感想文を書く際のポイントを、具体的な例文とともに丁寧にお伝えしていきます。

具体的な文例を掲載していますが、くれぐれもコピペはしないで「お手本」としてご活用ください。

『羅生門』の読書感想文を書くうえで外せない3つの重要ポイント

羅生門』の読書感想文を効果的に書くためには、以下の3つのポイントを押さえることが重要です。

  • 人間性のエゴイズムと倫理の葛藤
  • 象徴としての羅生門と社会の荒廃
  • 芥川龍之介の人間観と現代への問いかけ

これらのポイントを理解することで、表面的な感想ではなく、作品の本質に迫る深い読書感想文が書けるようになります。

それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

人間性のエゴイズムと倫理の葛藤

『羅生門』の最大のテーマは、極限状況に置かれた人間が示すエゴイズムと、善悪の境界線の曖昧さです。

物語の主人公である下人は、最初は老婆が死体から髪を抜く行為を「悪」として強く批判します。

しかし、老婆から「生きるために仕方がない」という論理を聞かされると、今度は自分も生き延びるために老婆の着物を剥ぎ取って逃走してしまいます。

この劇的な心境の変化は、人間が追い詰められたときに見せる本質的な姿を浮き彫りにしています。

下人の行動を通して、私たちは「本当の悪とは何か」「生きるためならどこまで許されるのか」という重い問いを突きつけられるのです。

読書感想文では、下人の心理変化に着目し、自分自身が同じ状況に置かれたらどうするかを考察することが重要です。

また、現代社会においても格差や貧困といった問題が存在する中で、『羅生門』が描く人間の本質がどのように通じるかを論じると、より深みのある内容になります。

象徴としての羅生門と社会の荒廃

物語の舞台である「羅生門」は、単なる建物ではなく、平安時代末期の社会の荒廃と人々の心の荒廃を象徴する重要な装置です。

かつては平安京の威厳ある正門だった羅生門は、作品の中では死体が捨てられ、盗人が住み着く廃墟として描かれています。

この対比は、栄華を誇った平安時代の終焉と、社会秩序の崩壊を象徴的に表現しています。

門の上層部で繰り広げられる下人と老婆の出来事は、まさに道徳や倫理が崩壊した世界の縮図なのです。

羅生門という場所が持つ陰鬱で不気味な雰囲気は、登場人物たちの心の闇と呼応し、物語全体に重苦しい緊張感をもたらしています。

読書感想文では、羅生門の象徴的な意味を理解し、それが物語のテーマをどのように効果的に表現しているかを分析することが大切です。

現代でも、経済的な混乱や自然災害などによって社会秩序が揺らぐことがありますが、そうした状況と『羅生門』の世界観を重ね合わせて考察すると興味深い内容になります。

芥川龍之介の人間観と現代への問いかけ

芥川龍之介は『羅生門』を通して、人間が持つ本質的な弱さや醜さ、そして社会の矛盾を鋭く描き出しています。

作者は決して登場人物を一面的に悪として描くのではなく、彼らが置かれた状況の複雑さや、生きることの困難さも同時に描写しています。

老婆も下人も、それぞれが生き延びるために「悪」とされる行為に手を染めますが、その背景には深刻な社会問題があることを芥川は示唆しています。

この視点は、現代社会の格差問題や、個人の尊厳と生存権の関係といったテーマとも深く結びついています。

芥川が100年以上前に描いた人間の本質や社会の問題は、残念ながら現代でも完全には解決されていません。

読書感想文では、作者が何を問題視し、読者に何を問いかけようとしているのかを自分なりに解釈し、それが現代にどのような意味を持つかを論じることが重要です。

また、芥川の鋭い人間観察力や、短い作品の中に複雑なテーマを込める技法についても触れると、より文学的な深みを持った感想文になります。

※『羅生門』で芥川龍之介が伝えたいことはこちらの記事でご紹介しています。

芥川龍之介『羅生門』が伝えたいこと。簡単に3点まとめ!
『羅生門』が伝えたいことを分かりやすく解説。芥川龍之介の名作に込められた人間のエゴイズム、善悪の相対性、生存本能と道徳の対立について詳しく説明します。課題対策にも最適です。

『羅生門』を読んだら感想をメモしておきたい3項目~登場人物の行動に対してあなたが感じたこと~

読書感想文を書く際に最も重要なのは、作品を読んで「自分がどう感じたか」を明確にすることです。

以下の3つの項目について、読みながら自分の率直な感想をメモしておくことをおすすめします。

  • 下人の心境変化に対する共感度
  • 老婆の論理に対する納得感
  • 物語の結末に対する印象

これらの感想は、読書感想文の中で「自分らしさ」を表現する重要な要素になります。

客観的な分析だけでなく、あなた自身の価値観や体験と照らし合わせた感想を織り交ぜることで、説得力のある感想文が完成します。

下人の心境変化に対する共感度

下人が老婆を批判していたにも関わらず、最終的に同じような行為に及ぶという心境の変化について、あなたはどの程度共感できるでしょうか。

「生きるためには仕方がない」という下人の論理に理解を示すか、それとも「やはり間違っている」と感じるかは、読者によって大きく分かれるところです。

この共感度の違いは、あなた自身の価値観や人生経験を反映しています。

共感できる場合は、なぜそう感じるのか、どのような経験や考えがその共感につながっているのかを具体的に書いてみましょう。

逆に共感できない場合も、その理由を明確にし、では下人はどうすべきだったと考えるかを述べることが大切です。

どちらの立場でも、自分の感情や価値判断を正直に表現することで、個性的な読書感想文になります。

老婆の論理に対する納得感

老婆が語る「死んだ女も生前は嘘をついて魚を売っていた。だから自分が髪を抜いても許してくれるだろう」という論理に対して、あなたはどう感じましたか。

この論理は一見すると筋が通っているようにも見えますが、同時に自己正当化の側面も強く持っています。

老婆の言葉に説得力を感じるか、それとも詭弁だと思うかは、読者の道徳観によって変わってきます。

また、老婆の行為を「生きるために仕方がない」と捉えるか、「死者への冒涜」と捉えるかも重要なポイントです。

あなたの感じた納得感の程度と、その理由を詳しく分析してみることで、作品のテーマに対する理解が深まります。

現代社会の事例と比較して考えてみるのも効果的です。

物語の結末に対する印象

「下人の行方は、誰も知らない」という有名な結末について、あなたはどのような印象を受けたでしょうか。

この開かれた結末は、読者にさまざまな想像を抱かせる効果があります。

下人がその後どうなったかを想像し、それがあなたにとって希望的なものか絶望的なものかを考えてみてください。

また、芥川がなぜこのような結末を選んだのか、明確な結論を示さなかった理由についても考察してみましょう。

物語の余韻や読後感についても、率直な感想を記録しておくことが大切です。

「すっきりしない」「考えさせられる」「怖い」など、どのような感情を抱いたかが、あなたらしい読書感想文を書く材料になります。

※『羅生門』を深掘りした解説はこちらの記事にまとめています。

芥川龍之介『羅生門』の解説。5つの疑問点を高校生向けに考察
『羅生門』を読んでも意味が分からない?安心してください。なぜ舞台が羅生門なのか、下人の心理変化の理由、老婆の論理など、作品理解に必要なポイントを読書家の視点から丁寧に解説します。

『羅生門』の読書感想文の書き方例(400文字のショートバージョン)

【題名】人の心の変わりやすさ

『羅生門』を読んで、人の心がこんなに簡単に変わってしまうものなのかと驚いた。最初は下人が老婆のことを悪い人だと思って怒っていたのに、老婆の話を聞いたとたん、自分も同じようなことをしてしまう。この変化がとても印象に残った。

下人は仕事をクビになって、どうやって生きていけばいいか分からなくて困っていた。そんな時に羅生門で老婆が死んだ人の髪の毛を抜いているのを見つけて、「ひどいことをする人だ」と思った。でも老婆が「生きるためには仕方がない」と言うと、下人も「自分も生きるために仕方がない」と言って老婆の着物を取って逃げてしまった。

私はこの話を読んで、人間って弱い生き物だなと思った。普段はいい人でも、本当に困った時には悪いことをしてしまうかもしれない。でもそれは仕方がないことなのだろうか。私だったらどうするだろうと考えてみたけれど、正直よく分からない。

この小説は短いけれど、人間の心の複雑さがよく描かれていて、読み終わった後もずっと考えさせられた。

『羅生門』の読書感想文の例(600字の中学生向けバージョン)

【題名】人間の本当の姿

私は芥川龍之介の『羅生門』を読んで、人間って本当に複雑な生き物だなと思った。最初に下人が老婆のことを悪い人だと決めつけていたのに、最後には自分も同じようなことをしてしまうところが印象的だった。

下人は仕事を失って、盗人になるかどうか迷っていた。でも勇気が出なくて困っていた。ところが羅生門の上で老婆が死体から髪を抜いているのを見つけると、急に正義感を出して老婆を責めた。「死人の髪を抜くなんてひどい」と言って。

でも老婆が「生きるために仕方がない」と説明すると、下人の考えは変わってしまった。「おれも生きるために仕方がない」と言って、老婆の着物を奪って逃げていった。この変化がとても急で驚いた。

私は最初、下人のことを「ひどい人だ」と思った。でもよく考えてみると、本当にお腹がすいて死にそうになったら、私だって何をするか分からない。食べ物がなくて家族が飢えていたら、もしかしたら悪いことでもしてしまうかもしれない。

この話は平安時代の設定だけど、今でも同じようなことがあると思う。戦争や災害で食べ物がなくなったとき、人はどこまで正しくいられるだろうか。

『羅生門』を読んで、人間には良い面と悪い面の両方があることを改めて感じた。普段は良い人でも、追い詰められると違う行動をとってしまう。それが人間の本当の姿なのかもしれない。この作品は短いけれど、とても深いことを教えてくれる話だった。

『羅生門』の読書感想文の例(2000字の高校生向けバージョン)

【題名】極限状況が暴く人間の本質

芥川龍之介の『羅生門』は、わずか数ページの短編でありながら、人間の本質について深く考えさせられる作品である。この小説を読んで、私は善悪の境界線の曖昧さと、極限状況における人間の心理の変化について強い衝撃を受けた。特に印象深かったのは、主人公である下人の劇的な変化である。

物語の冒頭で下人は、解雇されて途方に暮れている状況にある。盗人になることを考えながらも、まだその勇気が出ない状態だ。しかし羅生門の上で老婆が死体の髪を抜いているのを目撃すると、突然道徳的な怒りを示す。「死人に対してなんということを」という正義感を振りかざして老婆を問い詰めるのである。

ところが老婆の「生きるために仕方がない」という説明を聞くと、下人の態度は一変する。老婆の論理に触発されて「おれもそうしなければ餓死する身なのだ」と開き直り、老婆から着物を剥ぎ取って逃走してしまう。この心境の急変は、人間の道徳観がいかに状況に左右されやすいものかを示している。

私はこの下人の変化に、人間の本質的な矛盾を見た思いがした。彼は決して根っからの悪人ではない。むしろ最初は正義感を持って老婆を批判していた。しかし「生きるため」という切実な理由の前では、その正義感は簡単に崩れ去ってしまう。これは現代社会でも見られる現象ではないだろうか。

経済的に困窮した人が犯罪に手を染める事例や、企業が利益のために不正を行う事件など、私たちの周りでも「生きるため」「会社のため」という理由で道徳的な判断が歪められることは珍しくない。下人の行動は決して遠い昔の話ではなく、現代の私たちにも起こりうることなのだ。

また、老婆の論理にも考えさせられるものがあった。彼女は死んだ女性が生前に嘘をついて魚を売っていたことを挙げ、「だから自分が髪を抜いても許してくれるだろう」と述べる。この論理は一見すると説得力があるようにも思える。しかし同時に、自分の行為を正当化するための詭弁とも感じられる。

この老婆の言葉から、私は人間が自分の行動を合理化する際の心理メカニズムを学んだ。誰しも自分を悪者だと思いたくはない。だからこそ、何らかの理由を見つけて自分の行為を正当化しようとする。老婆の論理はその典型例だと言えるだろう。

物語の舞台である羅生門も象徴的な意味を持っている。かつては平安京の威厳ある正門だった建物が、今では死体が捨てられる廃墟となっている。この変化は、平安時代末期の社会の荒廃を物語っている。社会秩序が崩壊し、人々の道徳観も揺らいでいる時代背景が、登場人物たちの行動に影響を与えているのだ。

さらに重要なのは、芥川がこの物語に明確な結論を示していないことである。下人の行為を善とも悪とも断じていない。その代わりに、読者自身に判断を委ねているのである。この開かれた結末は、道徳的な問題に対する単純な答えなど存在しないという芥川の認識を示しているのかもしれない。人間の行動の背後には、常に複雑な動機と心理が絡み合っており、単純な善悪の二元論では捉えきれないという真実を伝えようとしているように思える。

現代でも、戦争や自然災害、経済危機などによって社会が混乱すると、平時には考えられないような事件が起こることがある。『羅生門』が描く状況は、決して過去の話ではなく、人類が繰り返し直面してきた普遍的な問題なのである。

この作品を読んで、私は人間の道徳観というものがいかに脆いものかを痛感した。同時に、そうした人間の弱さを理解することの重要性も学んだ。下人や老婆を単純に「悪い人」として片付けるのではなく、彼らがなぜそのような行動を取らざるを得なかったのかを考えることが大切だと思う。

また、この物語は私たちに自己批判の重要性も教えてくれる。下人が最初に老婆を非難した時、彼は自分もまた同じ状況に置かれていることに気づいていなかった。つまり、他者を批判する前に、自分自身の立場を省みることの大切さを示しているのだ。私たちも日常生活において、安易に他者を批判するのではなく、まず自分の状況を顧みる謙虚さを持つべきではないだろうか。

ただし、状況を理解することと行為を肯定することは別である。いかに切迫した状況であっても、人としての最低限の尊厳は保つべきだと私は考える。では、その境界線はどこにあるのか。この問いに対する明確な答えは見つからないが、それこそが芥川龍之介が読者に投げかけた重要なメッセージなのかもしれない。

『羅生門』は短い作品ながら、人間の本質について深く考えさせる傑作である。この小説が今なお多くの人に読み継がれているのは、それが扱うテーマが時代を超えた普遍性を持っているからだろう。私たちは日常生活の中で、大小様々な倫理的な選択を迫られる。その時に『羅生門』の教訓を思い出し、安易な自己正当化に陥らないよう気をつけたいと思う。

振り返り

今回は『羅生門』の読書感想文の書き方について、重要なポイントから具体的な例文まで詳しく解説してきました。

この短編小説が持つ深いテーマを理解し、自分なりの感想を織り交ぜることで、説得力のある読書感想文が書けるはずです。

人間のエゴイズムと倫理の葛藤、象徴としての羅生門、そして芥川龍之介の鋭い人間観察力という3つのポイントを軸に、あなた自身が感じたことを率直に表現してください。

400字から2000字まで、どの長さの感想文でも、これらの要素を組み合わせることで質の高い内容に仕上がります。

中学生も高校生も、恐れずに自分の言葉で『羅生門』と向き合ってみてくださいね。

きっと素晴らしい読書感想文が完成することでしょう。

※『羅生門』のあらすじはこちらでご確認ください。

芥川龍之介『羅生門』のあらすじを簡単に100字~200字で
『羅生門』のあらすじを100字・200字・400字でまとめました。芥川龍之介の代表作である本作品の簡単なあらすじから、読書感想文に役立つ詳細な内容まで、高校生向けに分かりやすく紹介します。

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