オスカー・ワイルドの名作『幸福の王子』のあらすじをこれから詳しくご紹介していきますね。
『幸福の王子』はアイルランドの文豪オスカー・ワイルドによる心温まる童話作品で、自己犠牲と愛の美しさを描いた名作です。
読書感想文を書く予定の皆さんの参考になるよう、簡単なあらすじから詳しいあらすじまで、ネタバレも含めてわかりやすく解説していきますよ。
読書が大好きで、年間100冊以上の本を読む私におまかせください。
『幸福の王子』の簡単なあらすじ
『幸福の王子』の中間の長さのあらすじ
『幸福の王子』の詳しいあらすじ
ある町の中心に、「幸福な王子」と呼ばれる美しい像が立っていた。目はサファイア、剣の柄にはルビー、体全体は金箔で覆われ、心臓は鉛でできている。町の人々は知らなかったが、この像には幸福に生きた王子の魂が宿っており、高い場所から見る町の貧困や悲しみに心を痛めていた。
ある日、エジプトへ渡る途中のツバメが王子の足元で一晩休むことにした。すると王子の涙が落ちてきた。王子はツバメに、剣の柄のルビーを病気の子どもがいる貧しい家に届けてほしいと頼む。ツバメは南へ急ぐ予定だったが、王子の願いを聞き入れる。
その後も王子は両目のサファイアを若い作家やマッチ売りの少女に届けるようツバメに頼み、ツバメはエジプト行きを断念して王子と共に過ごすことを決意した。王子は体の金箔も剥がし、町の貧しい人々に分け与えていく。
やがて冬が訪れ、宝石も金箔もなくなった王子の像はみすぼらしくなり、南へ渡れなかったツバメも寒さで死んでしまう。心を痛めた王子の鉛の心臓は二つに割れた。町の人々は価値がなくなった像を溶かそうとしたが、鉛の心臓だけは溶けず、ツバメの亡骸とともにゴミ捨て場に捨てられた。しかし神は天使に「この町で最も尊いもの二つ」を持ってくるよう命じ、天使は鉛の心臓とツバメを選んだ。二人は天国で永遠の幸福を得るのだった。
『幸福の王子』の作品情報
『幸福の王子』の基本情報をまとめました。
作者 | オスカー・ワイルド |
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出版年 | 1888年 |
出版社 | 短編集『幸福な王子とその他の物語』に収録 |
受賞歴 | 特になし |
ジャンル | 児童文学、童話、寓話 |
主な舞台 | 架空の街 |
時代背景 | 19世紀後半(ビクトリア朝時代) |
主なテーマ | 自己犠牲、博愛、真の幸福、友情 |
物語の特徴 | 象徴的な表現が多く、教訓的な内容 |
対象年齢 | 子どもから大人まで(全年齢向け) |
『幸福の王子』の主要な登場人物とその簡単な説明
『幸福の王子』の物語を理解するうえで重要な登場人物をご紹介します。
人物名 | キャラクター紹介 |
---|---|
幸福な王子 | 町の中心に立つ像。生前は宮殿で幸せに暮らしていたが、死後は町の悲惨な現実を知り、困っている人々を助けようとする。 |
ツバメ | エジプトへ渡る途中で王子の像に出会う渡り鳥。王子の頼みを聞き入れ、宝石を届ける使者となる。 |
貧しい母親 | 病気の息子を抱え、貧困に苦しんでいる女性。王子からルビーを受け取る。 |
若い劇作家 | 寒さと飢えに苦しみながらも作品を書き続ける若者。王子から片目のサファイアを受け取る。 |
マッチ売りの少女 | マッチを溝に落としてしまい、困っていた少女。王子からもう片方のサファイアを受け取る。 |
神 | 物語の最後に登場し、王子とツバメの行いを評価する存在。 |
天使 | 神の命により、町で最も価値のあるものを二つ探し出す使者。 |
市長と議員たち | みすぼらしくなった王子の像を取り壊すことを決定する町の権力者たち。 |
これらの登場人物が織りなす物語は、自己犠牲と愛の尊さを教えてくれますよ。
『幸福の王子』の文字数と読むのにかかる時間(読了時間)
『幸福の王子』はどのくらいの長さで、読むのにどれくらいの時間がかかるのでしょうか。
文字数 | 約9,660文字 |
ページ数 | 約16ページ(1ページ600字として計算) |
読了時間 | 約20分(1分間に500字読むと仮定) |
難易度 | やさしい(小学校高学年から読める) |
『幸福の王子』は短編小説なので、30分もあれば余裕をもって読み終えることができますよ。
比較的やさしい文章で書かれているので、読みやすい作品です。
『幸福の王子』の読書感想文を書くうえで外せない3つの重要ポイント
『幸福の王子』の読書感想文を書く際に、ぜひ触れておきたい重要なポイントを3つご紹介します。
- 外見の美しさより心の美しさの大切さ
- 真の幸福とは何かというテーマ
- ツバメと王子の友情と自己犠牲
これらのポイントをしっかり理解すると、深みのある感想文が書けますよ。
外見の美しさより心の美しさの大切さ
『幸福の王子』では、最初は美しい宝石や金箔で飾られていた王子の像が、町の人々を助けるために自分の飾りをすべて与えてしまい、みすぼらしい姿になっていくんですね。
この変化は単なる外見の変化ではなく、内面の美しさが増していく過程を表しています。
町の人々は美しかった頃の王子を称えていましたが、みすぼらしくなると「もう美しくないから役に立たない」と言って像を壊してしまいます。
しかし、神の目には王子の鉛の心臓とツバメの亡骸こそが町で最も尊いものとして映るんですよ。
この対比から、社会が外見の美しさや物質的な価値を重視する傾向があるのに対し、本当に大切なのは他者を思いやる心や愛情だということが伝わってきますね。
感想文では、現代社会においても「見た目」や「物質的な豊かさ」が重視される場面と比較しながら、自分自身の価値観について考えを深めることができるでしょう。
真の幸福とは何かというテーマ
タイトルにもなっている「幸福な王子」ですが、実は彼は生前、宮殿の中で贅沢な暮らしをしながらも、外の世界の悲しみや苦しみを知らずにいました。
皮肉なことに、王子が本当の意味で「幸福」を知るのは、死後に像となり、町の人々の苦しみを見て、自分のものを分け与えることができるようになってから。
この展開から、真の幸福とは単に楽しく暮らすことではなく、他者のために行動し、自分の持っているものを分かち合うことにあるというメッセージが読み取れます。
王子とツバメが最後に天国で永遠の幸福を得られたのも、彼らが自己犠牲を通じて真の愛を知ったからでしょう。
感想文では、自分自身の「幸せ」の定義について考え、物語のメッセージと照らし合わせてみるとよいでしょう。
ツバメと王子の友情と自己犠牲
物語の中心となるのが、ツバメと王子の友情。
最初はエジプトへ早く行きたいと思っていたツバメが、王子との交流を通じて南へ渡ることよりも大切なものがあることに気づいていきます。
ツバメは王子の願いを叶えるために南への渡りを諦め、結果的に命を犠牲にします。
王子も同様に、自分の体を飾るものをすべて与えてしまい、みすぼらしい姿になっていきます。
二人の自己犠牲は、表面的には悲しい結末をもたらしますが、実は彼らに真の幸福をもたらすことになります。
こうした「与えることの喜び」や「友情のために自分を犠牲にする勇気」について、自分の経験と照らし合わせながら感想文で掘り下げると、説得力のある文章になるでしょう。
※作者が『幸福の王子』で伝えたいことは、以下の記事で考察しています。

『幸福の王子』の読書感想文の例(原稿用紙4枚分/約1600文字)
私がこの本を手に取ったのは、クラスの読書課題だったからだ。正直に言うと、最初は「また古い童話か」と思って気が進まなかった。でも読み始めてみると、この短い物語には現代にも通じる深いメッセージが込められていて、予想以上に心を動かされた。
物語の主人公である「幸福な王子」は、町の中心に立つ美しい像だ。両目はサファイア、剣の柄にはルビー、体全体は金箔で覆われている。一見すると何の問題もないように見えるこの王子だが、実は町に溢れる貧困や悲しみを見て涙を流していた。そして、南へ渡る途中のツバメと出会い、自分の体を飾る宝石や金箔を町の貧しい人々に分け与えていく。
この物語を読んで最も心に残ったのは、外見の美しさよりも心の美しさが大切だというメッセージだった。王子は自分の外見を犠牲にすることで、内面的にはより美しくなっていく。町の人々は外見が美しくなくなった王子の像を「もう役に立たない」と言って壊してしまうが、神の目には王子の心こそが最も尊いものとして映る。
これは今の社会にも通じると思った。SNSでは外見や持ち物で人を判断することが多いし、学校でもブランド物を持っている人が「かっこいい」と言われたりする。でも本当に大切なのは見た目じゃなくて、その人がどんな心を持っているかだということを、この物語は教えてくれる。
次に考えさせられたのは、「真の幸福とは何か」というテーマだ。王子は生前、宮殿の中で幸せに暮らしていたと言われているが、実際には町の外の世界の苦しみを知らなかった。皮肉なことに、死後に像となり、他者のために自分を犠牲にすることで初めて本当の幸せを知ることになる。
これは私たち自身の生活にも問いかけてくる。本当の幸せって何だろう?単に楽しく暮らすことなのか、それとも誰かのために何かができることなのか。私は部活で忙しく、時々「もっと自由な時間が欲しい」と思うことがある。でも実際、友達や家族のために何かをして感謝されたときの方が、ただゲームをして過ごした時よりも心に残る幸せを感じる。王子が教えてくれたのは、そういう幸せの本質なのかもしれない。
そして最後に、ツバメと王子の友情と自己犠牲の美しさに心を打たれた。最初はエジプトへ急いでいたツバメが、徐々に王子との絆を深め、最終的には自分の命を犠牲にしてまで王子の願いを叶えようとする。王子もまた、自分の体を飾るものをすべて手放してしまう。
この二人の関係は、真の友情とは何かを考えさせてくれる。友達のために自分の時間や欲求を少し犠牲にすることは、時々面倒くさいと感じることもある。でも、本当の友情とはそういうものなのかもしれない。相手のために何かをしたいと思う気持ち、それが愛なのだろう。
読み終えた後、なぜこの物語が100年以上も読み継がれてきたのか分かった気がした。短い童話の形をとっているけれど、そこに込められたメッセージは決して子供向けだけのものではない。自己犠牲、真の幸福、友情の価値など、私たち現代人が忘れがちな大切なことを思い出させてくれる。
特に印象に残ったのは、物語の最後の場面だ。みすぼらしくなった王子の像と死んだツバメは、一見すると悲しい終わりに見える。でも神の目には、彼らこそが町で最も価値あるものとして映る。これは「本当の価値とは何か」を私たちに問いかけている。
この物語を読んで、自分の価値観を少し見直すきっかけになった。友達や家族との関係、SNSでの自分の見せ方、将来の夢など、何が本当に大切なのかを考え直してみたい。表面的な成功や見栄えの良さよりも、内面の豊かさや他者との絆を大切にしていきたいと思った。
『幸福の王子』は古い童話でありながら、現代を生きる私たちにも多くのことを教えてくれる。短い時間で読める物語だが、その余韻は長く心に残り、生き方を考え直すきっかけを与えてくれる貴重な作品だと思う。
『幸福の王子』はどんな人向けの小説か
『幸福の王子』はどのような方に読んでいただきたい作品なのでしょうか。
- 心温まる童話を求めている人
- 自己犠牲や愛について考えたい人
- 人生の真の価値について深く考えたい人
- 短い時間で読める深い意味を持つ作品を探している人
- 子どもに読み聞かせたい大人
『幸福の王子』は表面上は子ども向けの童話ですが、その深いメッセージは大人にも十分に響く内容です。
特に、物質的な豊かさや見た目の美しさよりも、心の豊かさや他者への思いやりが大切だということを考えたい方には、ぴったりの作品といえるでしょう。
また、忙しい現代人にとって、短時間で読めて深い感動を与えてくれる点も魅力です。
『幸福の王子』に似た小説3選
『幸福の王子』を読んで感動した方におすすめの、同じようなテーマや雰囲気を持つ作品を3つご紹介します。
『ナイチンゲールとバラ』(オスカー・ワイルド)
同じオスカー・ワイルドによる短編童話です。
ある若い学生が赤いバラを探し求めていることを知ったナイチンゲールは、自分の命を犠牲にして赤いバラを咲かせようとします。
『幸福の王子』と同様に、自己犠牲と真の愛のテーマが描かれており、美しくも切ない物語です。
ワイルドの繊細な感性と深い洞察力が光る作品で、『幸福の王子』を楽しめた方なら、きっとこの作品も心に響くでしょう。
『マッチ売りの少女』(ハンス・クリスチャン・アンデルセン)
寒い大晦日の夜、誰にもマッチを買ってもらえない少女が、一本ずつマッチをすり、その光の中に幸せな幻影を見るという物語です。
貧しさと社会の無関心という暗い現実を背景に、少女の純粋な心と夢が対比されており、『幸福の王子』と同じく社会批判の要素も含んでいます。
切ない結末ですが、読者の心に深く残る名作です。
『星の王子さま』(サン=テグジュペリ)
小さな惑星から来た不思議な少年「星の王子さま」と語り手のパイロットとの交流を描いた物語です。
一見すると子ども向けの童話のようですが、「本当に大切なものは目に見えない」というメッセージなど、大人にも深く考えさせる内容になっています。
『幸福の王子』同様、外見よりも内面の美しさや、人と人との絆の大切さを教えてくれる作品です。
振り返り
今回は、オスカー・ワイルドの名作『幸福の王子』について、あらすじから読書感想文のポイントまで詳しく紹介しました。
短いながらも深いメッセージが込められたこの物語は、外見の美しさより心の美しさ、真の幸福とは何か、友情と自己犠牲といったテーマを通して、私たちに多くのことを教えてくれます。
読書感想文を書く際には、これらのポイントを中心に、自分自身の経験や考えと照らし合わせながら書いてみてください。
また、似たテーマを持つ『ナイチンゲールとバラ』『マッチ売りの少女』『星の王子さま』なども読んでみると、より深い理解が得られるでしょう。
この記事が皆さんの読書感想文作成の手助けになれば幸いです。
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