『ライスボールとみそ蔵と』のあらすじについて、簡単に短く、また詳しく解説していきますね。
この作品は横田明子さんによる心温まる児童文学で、2022年に絵本塾出版から刊行されました。
第69回青少年読書感想文全国コンクール小学校中学年の部の課題図書にも選ばれており、多くの子どもたちに愛され続けています。
この記事では、年間100冊以上の本を読む私が、読書感想文を書く予定の皆さんが理解しやすいよう、ネタバレなしのあらすじから登場人物、作品の魅力まで丁寧に解説していきますよ。
横田明子『ライスボールとみそ蔵と』のあらすじを短く簡単に
横田明子『ライスボールとみそ蔵と』のあらすじを詳しく(ネタバレなし)
物語の舞台は「味噌市」という地方都市。
主人公のジュンは小学4年生で、実家は代々続く味噌屋を営む。
そのため家には古い味噌蔵があり、おじいちゃんとお父さんが昔ながらの製法で味噌を作り続けている。
しかし、ジュンは味噌屋の息子であることを恥ずかしく思い、クラスメイトから「みそっ子」と呼ばれるのを嫌がっていた。
そんなある日、ロンドンで3年間暮らしていたユキちゃんが転校生として現れる。
ユキちゃんのお母さんは味噌が大好きで、日本から味噌を取り寄せていたほどだった。
ユキちゃんから「味噌蔵を見せてほしい」と頼まれたジュンは、仕方なく味噌蔵を案内することになる。
最初はあまり興味を示さなかったジュンだったが、ユキちゃんの熱心な様子に影響され、次第に味噌の奥深さや美味しさに目覚めていく。
お母さんから伝統の「みそにぎり」の作り方を教わり、友達に振る舞うようになったジュンは、味噌蔵で働く家族の姿に誇りを感じるようになる。
そしてユキちゃんの友達ウィルを迎えるため、使われていなかった空き蔵を活用した企画を立ち上げることに……。
『ライスボールとみそ蔵と』のあらすじを理解するための用語解説
物語を理解するために重要な用語を整理しておきましょう。
以下の表で主要な用語について解説しますね。
用語 | 説明 |
---|---|
みそ蔵 | 味噌を発酵させて作るための蔵のこと。 物語の重要な舞台で 家族が代々味噌作りを続けてきた 神聖な場所として描かれている。 |
みそにぎり | 味噌を使った伝統的なおにぎり料理。 ジュンが母から教わり、 友達に振る舞うことで 味噌への理解を深めるきっかけとなる。 |
味噌市 | 物語の舞台となる地方都市の名前。 味噌作りが盛んな地域として設定されており 伝統文化が根付いた場所を表している。 |
コウジ菌 | 味噌や醤油の発酵に必要な微生物。 蔵の壁に住み着いており 物語中では「蔵の神さま」として 神秘的に語られている。 |
空き蔵 | 使われていない古い蔵のこと。 物語後半でジュンたちが活用し 観光サービスや料理のふるまいを行う場所となる。 |
これらの用語を覚えておくと、『ライスボールとみそ蔵と』の世界観がより深く理解できるでしょう。
『ライスボールとみそ蔵と』の感想
正直に言うと、私は最初この『ライスボールとみそ蔵と』を手に取った時、「子供向けの本なのに、また地味な題材を選んだもんだな……」なんてネガティブに思ってしまいました。
でも、読み進めていくうちに、これは単なる伝統文化の紹介本ではないことがよく分かったんです。
ジュンの心の動きがものすごくリアルで、思わず自分の子ども時代を思い出してしまいましたね。
親の仕事や家業を恥ずかしく思う気持ち、友達にからかわれることの辛さって、誰にでも経験があるんじゃないでしょうか。
私も子どもの頃、父の職業を友達に聞かれるのが嫌だった時期がありましたから、ジュンの気持ちがすごく理解できました。
特に感動したのは、ユキちゃんとの出会いによってジュンの価値観が変わっていく部分です。
外国から来た子が日本の伝統を大切にしていることで、逆に日本人であるジュンが自分のルーツを見つめ直すという構造が本当に巧妙だと思いましたね。
これって現代の日本にも当てはまる話で、外国人観光客が日本文化に感動する姿を見て、私たち自身が日本の良さを再発見することがありますよね。
横田明子さんの筆力も素晴らしくて、味噌蔵の描写なんか読んでいるだけで、あの独特な香りが鼻の奥によみがえってくるような気がしました。
コウジ菌を「蔵の神さま」と表現するあたりも、子どもにとって分かりやすくて印象的です。
ただ、一つだけ気になったのは、ジュンの心の変化がちょっと急すぎるかなという点でしょうか。
もう少し葛藤の時間があってもよかったかもしれませんが、これは児童書という性質上、仕方ない部分もありますね。
それでも、最後にジュンが「ここはぼくたちのみそっ子レストランです」と堂々と言うシーンには、ちょっと涙が出そうになりました。
自分のコンプレックスを誇りに変えることができた瞬間の描写が、これほど美しく書かれている児童書はなかなかないと思います。
国際交流の部分も自然で、説教臭くなくて良かったですね。
ユキちゃんやウィルとの交流を通じて、文化の違いを楽しみながら理解し合う姿勢が描かれていて、現代の子どもたちにとって大切なメッセージが込められていると感じました。
読書感想文を書く学生さんには、ぜひジュンの心の変化に注目して読んでもらいたいですね。
自分だったらどんな時に家族や地域の伝統を誇らしく思えるか、考えながら読むときっと良い感想文が書けると思いますよ。
※『ライスボールとみそ蔵と』の読書感想文の書き方と例文はこちらで解説しています。

『ライスボールとみそ蔵と』の作品情報
項目 | 内容 |
---|---|
作者 | 横田明子(よこた あきこ) |
出版年 | 2022年5月 |
出版社 | 絵本塾出版 |
受賞歴 | 第69回青少年読書感想文全国コンクール課題図書 (作者は児童ペン・少年小説賞、日本児童文芸家協会賞受賞経験あり) |
ジャンル | 児童文学、児童読み物 |
主な舞台 | 日本の地方都市「味噌市」、新町小学校、味噌蔵 |
時代背景 | 現代(国際化が進む地方都市) |
主なテーマ | 伝統文化の継承、自己肯定感の育成、国際交流、家族の絆 |
物語の特徴 | 味噌作りという伝統を通じた少年の成長物語 国際交流をきっかけとした価値観の変化 |
対象年齢 | 小学校中学年向け(中学年よみものシリーズ) |
青空文庫の収録 | 未収録(2022年刊行のため) |
『ライスボールとみそ蔵と』の主要な登場人物とその簡単な説明
物語を理解するために重要な登場人物を紹介しましょう。
以下の表で主要キャラクターの特徴をまとめました。
人物名 | 紹介 |
---|---|
上原ジュン | 物語の主人公で小学4年生の男の子。 味噌蔵のある家に生まれたが 最初は家業を恥ずかしく思っている。 次第に自分の家や伝統に誇りを持つように成長する。 |
ユキ | ロンドンから転校してきた少女。 味噌が大好きで、ジュンの味噌蔵に強い興味を示す。 ジュンの価値観を変える重要なきっかけとなる人物。 |
上原お母さん | ジュンの母親。 みそにぎりの作り方など 伝統的な味噌料理をジュンに教える。 家庭の味噌文化を次世代に伝える役割を担っている。 |
上原お父さん | ジュンの父親で味噌屋を営んでいる。 代々続く味噌作りを継承し、 お店や味噌蔵を守り続けている。 時々冗談を言う親しみやすい性格の持ち主。 |
上原おじいちゃん | ジュンの祖父で熟練の味噌職人。 頑固一徹に伝統の味噌作りを続けている。 ジュンが味噌蔵に誇りを持つようになる源泉の一つ。 |
小林太郎 | ジュンの幼馴染で親友。 ひょうきんで明るい性格をしている。 ジュンを支える大切な友人の一人。 |
宮沢アヤノ | ジュンのクラスメイト。 てきぱきした性格で、クラスの中心的存在。 ジュンの企画を支援する協力者でもある。 |
小山先生 | 新町小学校でジュンたちの担任を務める教師。 子どもたちの成長を温かく見守る存在。 |
ウィル | ロンドンにいるユキの友達。 日本に遊びに来る予定があり、 ジュンたちが味噌蔵を案内する準備をする。 物語後半の重要なきっかけとなる人物。 |
これらの登場人物の関係性を理解すると、『ライスボールとみそ蔵と』の物語がより深く楽しめるでしょう。
『ライスボールとみそ蔵と』の読了時間の目安
読書感想文を書く際の計画を立てやすいよう、読了時間の目安をまとめました。
項目 | 詳細 |
---|---|
ページ数 | 141ページ |
文字数 | 不明 |
読了時間(大人) | 約2時間50分 |
読了時間(小学生) | 約4~5時間(読書速度を大人の7割として計算) |
推奨読書期間 | 3~5日程度に分けて読むのがおすすめ |
『ライスボールとみそ蔵と』は小学校中学年向けに書かれているため、漢字にふりがなが振ってあり、文章も読みやすく工夫されています。
1日30分程度の読書時間があれば、無理なく読み進められる分量ですね。
読書感想文を書く場合は、メモを取りながらゆっくり読むことをおすすめします。
『ライスボールとみそ蔵と』はどんな人向けの小説か?
この素敵な作品がどのような読者に響くのか、私なりに分析してみました。
特におすすめしたいのは以下のような方々です。
- 自分の家族や地域の伝統について考えてみたい小学生の皆さん
- 国際交流や異文化理解に興味がある子どもたちや保護者の方
- 日本の食文化や味噌について学びたい人(大人も含めて)
特に読書感想文を書く予定の小学生には、自分の体験と重ね合わせながら読んでもらいたい作品ですね。
家族の仕事や伝統について、恥ずかしいと思った経験がある子どもなら、きっとジュンの気持ちに共感できるでしょう。
逆に、冒険やファンタジーを求めている読者には少し物足りないかもしれません。
『ライスボールとみそ蔵と』は日常的な出来事を丁寧に描いた作品なので、派手な展開を期待する人には向かないかもしれませんね。
でも、そこが逆にこの作品の魅力でもあるんです。
あの本が好きなら『ライスボールとみそ蔵と』も好きかも?似ている小説2選
『ライスボールとみそ蔵と』を気に入った方におすすめしたい、似たテイストの作品を3つご紹介しますね。
どれも子どもの成長や自己発見をテーマにした心温まる作品ばかりです。
『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』廣嶋玲子著
廣嶋玲子さんの人気シリーズ『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』も、子どもたちが自分や周囲の人たちと向き合う物語として似ています。
不思議な駄菓子屋を舞台にしたファンタジー要素がありながら、各話で描かれるのは子どもたちの心の成長なんです。
伝統的なものの価値を再発見するという点でも、『ライスボールとみそ蔵と』と通じるものがありますね。
どちらも読書感想文の題材として人気が高い作品です。
『チョコレート戦争』大石真著
大石真さんの『チョコレート戦争』は、子どもたちが正義感を持って行動する痛快な物語です。
主人公たちがお菓子屋さんとの問題を通じて、友情や正義について学んでいく内容になっています。
『ライスボールとみそ蔵と』のように、食べ物を通じて人とのつながりや大切な価値を発見する構造が似ているんですね。
どちらも子どもが主体的に行動し、周囲の大人たちとの関係を築いていく過程が丁寧に描かれています。

振り返り
『ライスボールとみそ蔵と』は、味噌という身近な食材を通じて、伝統の大切さや自己肯定感について考えさせてくれる素晴らしい児童文学でした。
主人公ジュンの心の変化を追いながら、私たち自身も家族や地域の文化について改めて考える機会をもらえる作品だと思います。
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