『オツベルと象』のあらすじを簡単に解説していきますね。
この作品は宮沢賢治による短編童話で、1926年に雑誌『月曜』創刊号に掲載された社会風刺色の強い傑作。
賢治作品の中でも異色で、現代的なテーマを扱っており、資本主義社会の問題点を鋭く描いた作品として高い評価を受けています。
年間100冊以上の本を読む私が、読書感想文を書く予定の皆さんのお力になれるよう、物語の内容から登場人物の解説、そして実際に読んだ感想まで詳しくお伝えしていきます。
『オツベルと象』のあらすじを簡単に短く(ネタバレ)
『オツベルと象』のあらすじを詳しく(ネタバレ)
『オツベルと象』第一日曜のあらすじ
『オツベルと象』第二日曜のあらすじ
『オツベルと象』第五日曜のあらすじ
『オツベルと象』のあらすじを理解するための用語解説
『オツベルと象』に登場する重要な用語を以下の表で説明しますね。
用語 | 説明 |
---|---|
稲扱器械 | 稲から籾を取る最新の農業機械。 オツベルの富と権力の象徴として描かれている。 |
サンタマリア | 白象が月に向かって呼びかける言葉。 救いや希望を求める祈りの表現。 |
これらの用語は物語の象徴的な意味を理解する上で重要な要素となっています。
『オツベルと象』の感想
いやー、この作品は本当にすごかったですね!
宮沢賢治というと『銀河鉄道の夜』みたいな幻想的な作品を思い浮かべがちですが、『オツベルと象』は全然違う顔を見せてくれます。
社会風刺がこんなにも鋭く描かれているなんて、正直びっくりしました。
オツベルが白象を騙すシーンなんて、現代のブラック企業そのものじゃないですか。
「時計は要らないか」「鎖もなくちゃだめだろう」って、どんどん重いものを身に付けさせていく手法が本当に巧妙で、読んでいて背筋が寒くなりましたよ。
白象の純真さがまた切ないんです。
最初は「稼ぐのは愉快だねえ」なんて言って喜んでいるのに、だんだん食事を減らされて、最後には「もう、さようなら、サンタマリア」って月に別れを告げる場面では、私も思わず涙ぐんでしまいました。
でも一番印象的だったのは、救出された後の白象が「さびしくわらって」いるところですね。
単純に「助かってよかった」で終わらないところが、賢治の深さを感じます。
オツベルへの複雑な気持ちなのか、自分の情けなさなのか、いろんな感情が混じり合った表現だと思うんです。
象の群れが押し寄せてくる場面の迫力もすごかったですね。
「グララアガア、グララアガア」という鳴き声が印象的で、読んでいるだけでその場の緊張感が伝わってきました。
ただ、オツベルが最後に踏み潰されるシーンは、正直複雑な気持ちになりました。
確かに彼は悪役だけど、暴力で解決するっていうのはどうなんでしょうね。
でも、それだけ当時の社会問題が深刻だったということの表れなのかもしれません。
この作品を読んで改めて思ったのは、賢治の社会に対する眼差しの鋭さです。
童話という形を取りながら、資本主義社会の矛盾や労働問題をこんなにも的確に描いているなんて、本当に天才だと思います。
現代の私たちが読んでも全然古さを感じないのは、描かれている問題が今も続いているからなんでしょうね。
語り手が「牛飼い」っていうのも面白い設定でした。
最後の「おや、川へはいっちゃいけないったら」という一文も、なんだか余韻があって良かったです。
読書感想文を書く学生さんには、ぜひこの作品の社会性に注目してもらいたいですね。
※『オツベルと象』の疑問点はこちらの記事で解説しています。

『オツベルと象』の作品情報
項目 | 内容 |
---|---|
作者 | 宮沢賢治 |
出版年 | 1926年 |
出版社 | 雑誌『月曜』創刊号 |
受賞歴 | 特になし(生前発表作品) |
ジャンル | 短編童話・社会風刺文学 |
主な舞台 | オツベルの農場と象小屋 |
時代背景 | 大正時代の資本主義社会 |
主なテーマ | 搾取・労働問題・団結 |
物語の特徴 | 動物を使った寓話形式 |
対象年齢 | 小学生以上 |
青空文庫 | 収録済み(こちら) |
『オツベルと象』の主要な登場人物とその簡単な説明
物語の重要な登場人物を以下の表にまとめました。
登場人物 | 説明 |
---|---|
オツベル | 大金持ちの大地主。 白象を騙して奴隷のように働かせる悪役。 最後は象の群れに踏み潰される。 |
白象 | 森からやってきた純真な象。 オツベルに騙されて過酷な労働を強いられる。 仲間の象たちに救出される。 |
議長の象 | 白象の所属する群れの長。 白象の手紙を読んで仲間を率いてオツベルの屋敷に向かう。 |
赤衣の童子 | 白象の手紙を仲間に届ける使者。 神的な存在として描かれる。 |
月 | 白象が毎晩話しかける相手。 「サンタマリア」と呼ばれ、白象に助言を与える。 |
牛飼い | 物語の語り手。 オツベルの話を聞き手に語る。 |
百姓たち | オツベルの農場で働く16人の農民。 象の群れが押し寄せた時は逃げ出す。 |
オツベルの犬 | オツベルの飼い犬。 象の群れと対面してすぐに気絶する。 |
『オツベルと象』の読了時間の目安
読了時間の目安を以下の表にまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
文字数 | 約5,600文字 |
推定ページ数 | 約9ページ |
読了時間 | 約11分 |
読みやすさ | 非常に読みやすい |
短編童話なので、1日あれば十分に読み終えることができます。
文体も平易で読みやすく、小学生でも理解できる内容となっています。
『オツベルと象』はどんな人向けの小説か?
この作品は以下のような人に特におすすめです。
- 社会の仕組みや不公平さに疑問を持つ人
- 寓話や風刺文学が好きな人
- 宮沢賢治の多面性を知りたい人
社会問題に関心がある人なら、きっと深く考えさせられる作品だと思います。
また、単純な勧善懲悪の物語ではなく、複雑な人間心理や社会構造を描いているので、ある程度の読書経験がある人により楽しめるでしょう。
逆に、純粋にファンタジーを楽しみたい人や、明るい話を求めている人には少し重いかもしれません。
あの本が好きなら『オツベルと象』も好きかも?似ている小説3選
『オツベルと象』と似たテーマや雰囲気を持つ作品をご紹介しますね。
『ごんぎつね』新美南吉
こちらも動物を主人公にした童話で、社会の理不尽さや弱者の悲哀を描いています。
ごんという狐が人間との関係で苦悩する姿は、白象の境遇と重なる部分があります。
権力や社会構造に翻弄される弱者の視点から描かれている点が『オツベルと象』と共通しています。

『蜘蛛の糸』芥川龍之介
強者と弱者の関係、救済と絶望をテーマにした短編です。
社会的な不条理や人間のエゴイズムを寓話的に描く手法が『オツベルと象』と似ています。
どちらも単純な勧善懲悪ではなく、複雑な人間性を描いている点が共通しています。

『山月記』中島敦
社会での自己の位置や権力と個人の関係を象徴的に描いた作品です。
主人公の孤独感や他者との断絶は、白象の境遇と通じるものがあります。
文学的な深さと社会批判の要素を併せ持つ点で『オツベルと象』と似ています。

振り返り
『オツベルと象』は宮沢賢治の代表作の一つで、童話でありながら深い社会風刺を込めた傑作です。
資本主義社会の問題点を鋭く描いた内容は、現代の私たちにも多くの示唆を与えてくれます。
読書感想文を書く際には、単なるあらすじではなく、作品に込められた社会的メッセージに注目してみてください。
きっと深い考察ができる作品だと思います。
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