『オツベルと象』のあらすじを簡単に!【宮沢賢治著】

『オツベルと象』のあらすじ あらすじ

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『オツベルと象』のあらすじを簡単に解説していきますね。

この作品は宮沢賢治による短編童話で、1926年に雑誌『月曜』創刊号に掲載された社会風刺色の強い傑作。

賢治作品の中でも異色で、現代的なテーマを扱っており、資本主義社会の問題点を鋭く描いた作品として高い評価を受けています。

年間100冊以上の本を読む私が、読書感想文を書く予定の皆さんのお力になれるよう、物語の内容から登場人物の解説、そして実際に読んだ感想まで詳しくお伝えしていきます。

『オツベルと象』のあらすじを簡単に短く(ネタバレ)

大金持ちの大地主オツベルは、最新の稲扱器械を使って16人の百姓を働かせていた。そこに迷い込んできた白象を言葉巧みに騙して自分の財産にし、過酷な労働を強いる。白象は最初こそ喜んで働いていたが、次第に食事を減らされ、重い鎖と分銅を付けられて弱っていく。苦しくなった白象は月に向かって助けを求め、赤衣の童子の手を借りて仲間の象たちに手紙を送る。手紙を読んだ象の群れは激怒してオツベルの屋敷に押し寄せ、オツベルを踏み潰して白象を救出した。

『オツベルと象』のあらすじを詳しく(ネタバレ)

物語は「ある牛飼い」の語りで始まる。大金持ちの大地主オツベルは、最新の稲扱器械を6台も据え付けて16人の百姓を働かせていた。そこに森から迷い込んできた白象が現れる。オツベルは白象を言葉巧みに騙して自分の財産にし、時計や鎖、分銅などを身に付けさせて過酷な労働を強いる。白象は最初こそ「稼ぐのは愉快だねえ」と喜んでいたが、次第に食事を減らされ、重い鎖と分銅を付けられて弱っていく。毎晩藁を食べながら月に向かって「サンタマリア」と呼びかけていた白象は、ついに「もう、さようなら、サンタマリア」と別れを告げる。月の助言で赤衣の童子の手を借りて仲間の象たちに手紙を送ると、手紙を読んだ象の群れは激怒してオツベルの屋敷に押し寄せる。オツベルは銃で応戦するが通用せず、なだれ込んだ象によって踏み潰される。白象は救出されるが、「さびしくわらって」いた。

『オツベルと象』第一日曜のあらすじ

オツベルは、六台の稲扱器械と十六人の百姓を酷使して、膨大な稲を処理する作業場を営んでいた。機械の轟音と舞い上がる埃の中、彼は悠然と歩き回り、儲けで豪勢な食事をとっていた。そんなある日、突然一頭の白い象が作業場に現れる。百姓たちは驚きながらも、象との関わりを避けようとひたすら仕事に打ち込む。オツベルは平静を装いながらも、象の動きを鋭く観察していた。象が小屋の中へ入り込み、稲扱器械から飛び散る籾が歯に当たるのを不快そうにすると、オツベルは意を決し、象に「ずっとここにいたらどうか」と持ちかける。百姓たちが息を殺して見守る中、象はあっさりと「居てもいいよ」と応じた。オツベルはこれに狂喜し、この白い象を自分の財産として利用し、働かせたりサーカス団に売ったりして、大金を稼ぐことを企むのであった。

『オツベルと象』第二日曜のあらすじ

オツベルは、手に入れた白象を巧みに利用していた。その象は二十馬力もの力持ちで、オツベルはまずブリキの時計や分銅付きの靴を象に与え、それが象にとって重荷となっても、象自身はそれを気に入っているように振る舞う。オツベルは税金が高いという口実で、象に川から水を汲ませ、菜園に水をやらせた。象は喜んで五十杯もの水を運び、仕事を終えると「稼ぐのは愉快だねえ」と満足げだった。次にオツベルは税金が上がったと偽り、森から薪を運ばせた。象はこれも快諾し、半日で九百把もの薪を運び終え、「せいせいした」と呟いた。さらに翌日、税金が五倍になったと告げ、鍛冶場で炭火を吹くよう命じた。象は半日かけて炭火を吹き続け、「疲れたな、嬉しいな」と語る。このように、オツベルは様々な口実で象に過酷な労働を課したが、象は常に喜びを感じているかのように働き続けた。最終的に象の食事は五把の藁にまで減ったが、それでも驚くほどの力を発揮し続けた。オツベルは、象を経済的に使いこなす自分の手腕に大いに満足していた。

『オツベルと象』第五日曜のあらすじ

白象への過酷な扱いはエスカレートし、ついに象は笑顔を失い、疲労困憊で「苦しい」「さようなら」と呟くまでに至る。月がそれを聞き、象は助けを求める手紙を書き、赤衣の童子が山に住む仲間たちに届けた。手紙を受け取った山の象たちは激怒し、「オツベルをやっつけよう」と一斉にオツベルの屋敷へ向かって突進する。異変を察知したオツベルは、象小屋に白象を閉じ込めて丸太で補強し、門を閉めて防備を固めるよう百姓たちに命じる。しかし、百姓たちは主人の巻き添えを恐れて降参の意思を示す。やがて屋敷を象の群れが取り囲み、地響きと共に怒号が響き渡る。檻に閉じ込められた白象と外の仲間たちが互いを気遣う声も聞こえる中、セメント製の塀を象たちは破壊し始める。オツベルはピストルで応戦するも弾丸は通じず、象たちは次々と塀を乗り越えて屋敷内へ侵入。最終的に白象の仲間たちは、丸太をへし折り小屋から白象を救い出し、鎖と分銅を外して自由にした。白象は痩せ細っていたものの、仲間たちに救われたことを喜んだ。

『オツベルと象』のあらすじを理解するための用語解説

『オツベルと象』に登場する重要な用語を以下の表で説明しますね。

用語 説明
稲扱器械 稲から籾を取る最新の農業機械。
オツベルの富と権力の象徴として描かれている。
サンタマリア 白象が月に向かって呼びかける言葉。
救いや希望を求める祈りの表現。

これらの用語は物語の象徴的な意味を理解する上で重要な要素となっています。

『オツベルと象』の感想

いやー、この作品は本当にすごかったですね!

宮沢賢治というと『銀河鉄道の夜』みたいな幻想的な作品を思い浮かべがちですが、『オツベルと象』は全然違う顔を見せてくれます。

社会風刺がこんなにも鋭く描かれているなんて、正直びっくりしました。

オツベルが白象を騙すシーンなんて、現代のブラック企業そのものじゃないですか。

「時計は要らないか」「鎖もなくちゃだめだろう」って、どんどん重いものを身に付けさせていく手法が本当に巧妙で、読んでいて背筋が寒くなりましたよ。

白象の純真さがまた切ないんです。

最初は「稼ぐのは愉快だねえ」なんて言って喜んでいるのに、だんだん食事を減らされて、最後には「もう、さようなら、サンタマリア」って月に別れを告げる場面では、私も思わず涙ぐんでしまいました。

でも一番印象的だったのは、救出された後の白象が「さびしくわらって」いるところですね。

単純に「助かってよかった」で終わらないところが、賢治の深さを感じます。

オツベルへの複雑な気持ちなのか、自分の情けなさなのか、いろんな感情が混じり合った表現だと思うんです。

象の群れが押し寄せてくる場面の迫力もすごかったですね。

「グララアガア、グララアガア」という鳴き声が印象的で、読んでいるだけでその場の緊張感が伝わってきました。

ただ、オツベルが最後に踏み潰されるシーンは、正直複雑な気持ちになりました。

確かに彼は悪役だけど、暴力で解決するっていうのはどうなんでしょうね。

でも、それだけ当時の社会問題が深刻だったということの表れなのかもしれません。

この作品を読んで改めて思ったのは、賢治の社会に対する眼差しの鋭さです。

童話という形を取りながら、資本主義社会の矛盾や労働問題をこんなにも的確に描いているなんて、本当に天才だと思います。

現代の私たちが読んでも全然古さを感じないのは、描かれている問題が今も続いているからなんでしょうね。

語り手が「牛飼い」っていうのも面白い設定でした。

最後の「おや、川へはいっちゃいけないったら」という一文も、なんだか余韻があって良かったです。

読書感想文を書く学生さんには、ぜひこの作品の社会性に注目してもらいたいですね。

※『オツベルと象』の疑問点はこちらの記事で解説しています。

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『オツベルと象』の作品情報

項目 内容
作者 宮沢賢治
出版年 1926年
出版社 雑誌『月曜』創刊号
受賞歴 特になし(生前発表作品)
ジャンル 短編童話・社会風刺文学
主な舞台 オツベルの農場と象小屋
時代背景 大正時代の資本主義社会
主なテーマ 搾取・労働問題・団結
物語の特徴 動物を使った寓話形式
対象年齢 小学生以上
青空文庫 収録済み(こちら

『オツベルと象』の主要な登場人物とその簡単な説明

物語の重要な登場人物を以下の表にまとめました。

登場人物 説明
オツベル 大金持ちの大地主。
白象を騙して奴隷のように働かせる悪役。
最後は象の群れに踏み潰される。
白象 森からやってきた純真な象。
オツベルに騙されて過酷な労働を強いられる。
仲間の象たちに救出される。
議長の象 白象の所属する群れの長。
白象の手紙を読んで仲間を率いてオツベルの屋敷に向かう。
赤衣の童子 白象の手紙を仲間に届ける使者。
神的な存在として描かれる。
白象が毎晩話しかける相手。
「サンタマリア」と呼ばれ、白象に助言を与える。
牛飼い 物語の語り手。
オツベルの話を聞き手に語る。
百姓たち オツベルの農場で働く16人の農民。
象の群れが押し寄せた時は逃げ出す。
オツベルの犬 オツベルの飼い犬。
象の群れと対面してすぐに気絶する。

『オツベルと象』の読了時間の目安

読了時間の目安を以下の表にまとめました。

項目 内容
文字数 約5,600文字
推定ページ数 約9ページ
読了時間 約11分
読みやすさ 非常に読みやすい

短編童話なので、1日あれば十分に読み終えることができます。

文体も平易で読みやすく、小学生でも理解できる内容となっています。

『オツベルと象』はどんな人向けの小説か?

この作品は以下のような人に特におすすめです。

  • 社会の仕組みや不公平さに疑問を持つ人
  • 寓話や風刺文学が好きな人
  • 宮沢賢治の多面性を知りたい人

社会問題に関心がある人なら、きっと深く考えさせられる作品だと思います。

また、単純な勧善懲悪の物語ではなく、複雑な人間心理や社会構造を描いているので、ある程度の読書経験がある人により楽しめるでしょう。

逆に、純粋にファンタジーを楽しみたい人や、明るい話を求めている人には少し重いかもしれません。

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『オツベルと象』と似たテーマや雰囲気を持つ作品をご紹介しますね。

『ごんぎつね』新美南吉

こちらも動物を主人公にした童話で、社会の理不尽さや弱者の悲哀を描いています。

ごんという狐が人間との関係で苦悩する姿は、白象の境遇と重なる部分があります。

権力や社会構造に翻弄される弱者の視点から描かれている点が『オツベルと象』と共通しています。

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『蜘蛛の糸』芥川龍之介

強者と弱者の関係、救済と絶望をテーマにした短編です。

社会的な不条理や人間のエゴイズムを寓話的に描く手法が『オツベルと象』と似ています。

どちらも単純な勧善懲悪ではなく、複雑な人間性を描いている点が共通しています。

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『山月記』中島敦

社会での自己の位置や権力と個人の関係を象徴的に描いた作品です。

主人公の孤独感や他者との断絶は、白象の境遇と通じるものがあります。

文学的な深さと社会批判の要素を併せ持つ点で『オツベルと象』と似ています。

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振り返り

『オツベルと象』は宮沢賢治の代表作の一つで、童話でありながら深い社会風刺を込めた傑作です。

資本主義社会の問題点を鋭く描いた内容は、現代の私たちにも多くの示唆を与えてくれます。

読書感想文を書く際には、単なるあらすじではなく、作品に込められた社会的メッセージに注目してみてください。

きっと深い考察ができる作品だと思います。

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