読書好きな私がヘルマン・ヘッセの名作『少年の日の思い出』のあらすじを紹介します。
年間100冊以上の本を読む私にとっても、この小説は忘れられない一冊。
蝶の標本作りに夢中になった少年の心の成長を描いた感動作です。
この素晴らしい物語のあらすじを100文字以内の簡単で簡潔なバージョンから詳しいものまで、読書感想文で使える重要ポイントとともにご紹介していきますね。
『少年の日の思い出』の100文字以内の簡潔なあらすじ
『少年の日の思い出』の簡単なあらすじ
『少年の日の思い出』の詳しいあらすじ
物語は「私」が客に蝶の標本を見せたことから始まる。それをきっかけに、客は自身の少年時代の思い出を語り出す。
8~9歳の頃から蝶の収集に熱中していた少年は、貧しい家庭のため、ボール紙の箱を標本箱として使っていた。ある日、珍しいコムラサキを捕まえた少年は、隣家に住む模範的な少年エーミールに見せに行く。しかし、エーミールからの酷評に傷つき、二度と標本を見せる気をなくしてしまう。
2年後、エーミールが貴重なクジャクヤママユの繭を手に入れたという噂を聞いた少年は、一目見たさに留守の部屋に忍び込む。標本を持ち出そうとした際、慌てて逃げ出した少年は、ポケットの中で標本を潰してしまう。母親に促され謝罪に向かった少年を待っていたのは、想像以上に深い経験だった。
『少年の日の思い出』の概要
項目 | 詳細 |
---|---|
作者 | ヘルマン・ヘッセ(1877-1962) ドイツ出身のスイス人作家。1946年にノーベル文学賞を受賞 |
出版年 | 1931年(原題: Jugendgedenken) ※初稿は1911年に『Das Nachtpfauenauge』(クジャクヤママユ)として発表 |
教科書掲載 | 1947年に日本の国定教科書に初めて掲載 以降70年以上にわたり中学1年生の国語教科書に採用され続けている |
主な舞台 | 19世紀末のドイツの地方都市 主人公の家と隣家(エーミールの家)が物語の中心的な舞台となる |
時代背景 | 産業革命後の近代化が進むドイツ 自然科学への関心が高まり昆虫採集が教養ある少年の趣味として普及していた時期 |
『少年の日の思い出』の登場人物紹介
『少年の日の思い出』の主要な登場人物たちを簡単にご紹介しますね。
名前 | 説明 |
---|---|
ぼく(客) | 蝶の収集に夢中だった少年。貧しい家庭の出身で、標本箱にはボール紙を使用していた |
エーミール | 隣家に住む先生の息子。模範的な少年で、完璧な標本作りの技術を持っている |
私 | 物語の語り手。子供ができたことをきっかけに蝶の収集を始める |
ぼくの母 | 思いやりのある母親。息子の苦悩を理解し、適切なアドバイスを与える |
『少年の日の思い出』の文字数と読了時間
『少年の日の思い出』の文字数と読むのにかかる時間の目安をご紹介します。
項目 | 詳細 |
---|---|
推定総文字数 | 約30,000文字(50ページ程度) |
読了時間の目安 | 約60分(1時間) |
『少年の日の思い出』の読書感想文で外せない3つの重要ポイント
『少年の日の思い出』には、読書感想文で必ず触れておきたい重要なポイントがありますよ。
- 少年の心の成長と葛藤
- 友情と競争心の描写
- 罪の意識と償いのテーマ
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
少年の心の成長と葛藤
主人公の少年は、蝶の収集を通じて様々な感情を経験します。
憧れや嫉妬、欲望や後悔など、複雑な心の動きが繊細に描かれています。
友情と競争心の描写
エーミールとの関係性には、尊敬と反発という相反する感情が混在しています。
これは思春期特有の友情の形を見事に表現しているんですよ。
罪の意識と償いのテーマ
クジャクヤママユの標本を壊してしまった後の少年の苦悩と、それに向き合う姿勢は、人間として大切な教訓を含んでいます。
※『少年の日の思い出』を通じて作者が伝えたいことは、以下の記事で解説しています。

『少年の日の思い出』の読書感想文の例(原稿用紙約3枚分/約1300文字)
『少年の日の思い出』を読んで
私は最初、教科書に載っているこの物語を読むのが少し面倒くさいと思った。ドイツの作家が書いた古い小説だし、きっと難しくて退屈なんだろうと思い込んでいたからだ。でも読み始めてみると、意外にも自分の気持ちとよく似た主人公の心情に引き込まれていった。
物語の中で、主人公の「僕」は蝶の収集に夢中になっている。私も去年から昆虫採集を始めたので、珍しい昆虫を見つけた時のワクワクする気持ちがすごくよく分かった。「僕」がコムラサキを捕まえた時の喜びは、先月私がカブトムシの大きなオスを見つけた時の気持ちとそっくりだった。
でも、「僕」には気になる存在がいた。エーミールという、なんでも完璧にこなす模範的な少年だ。「僕」はエーミールのことを、すごいなと思いながらも何となく気味が悪く、妬ましく思っている。この気持ち、私にもよく分かる。うちのクラスにも、テストはいつも100点で、スポーツも得意で、先生からいつも褒められている女子がいる。その子のことを、すごいなと思う反面、なんだかイライラしてしまうことがある。
物語の中で一番心に残ったのは、「僕」がエーミールのクジャクヤママユを自分の物にしようするシーンだ。欲しいものを目の前にして、つい手を伸ばしてしまう。そして、持ち帰る途中でそれを壊してしまう。この場面を読んだとき、去年の文化祭で友達の工作を触っていて壊してしまった時のことを思い出した。あの時の後悔と恥ずかしさは今でも覚えている。
主人公が謝罪しに行った時、エーミールは冷たい態度で「そうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな」と言う。この言葉は痛かっただろうなと思う。だって自分の本当の姿を見られてしまったみたいだから。私も一度、親に「そういう性格なの?」と言われたことがあって、すごく胸が痛くなった記憶がある。
最後に「僕」は自分の集めた標本を全部壊してしまう。最初読んだ時は「もったいない!」と思った。でも考えてみると、これは「僕」なりの償いの形なのかもしれない。自分の大切なものを壊すことで、エーミールの気持ちが少しでも分かるようになったのではないだろうか。
この物語を読んで、人は誰でも失敗をするけれど、その失敗と向き合うことで少しずつ成長していくのだと分かった。「僕」は最後まで完璧な解決方法は見つけられなかったけれど、自分の行動と向き合おうとした。それは勇気のいることだったと思う。
私も、人に言えないような失敗をしたことがある。でも、この物語を読んで、失敗は恥ずかしいことだけれど、それを認めて反省することが大切なんだと気づいた。エーミールのような完璧な人になれなくても、自分の過ちと向き合える人になりたいと思った。
物語の最後で大人になった「僕」が、この思い出を「自分で穢してしまった」と言うのが印象的だった。きっと大人になっても、あの時の後悔は消えていないのだろう。でも、その経験があったからこそ、「僕」は何か大切なものを学んだのではないかと思う。
この『少年の日の思い出』という物語は、ただの教科書の中の古い話じゃなかった。今の私たちにも、すごく身近で大切なことを教えてくれる物語だったのだ。
『少年の日の思い出』はこんな人におすすめ
『少年の日の思い出』は、特に以下のような方におすすめです。
- 青春時代の心の揺れ動きに共感したい人
- 友情や成長をテーマにした物語が好きな人
- 繊細な心理描写を味わいたい人
- 短い時間で深い感動を得たい人
※『少年の日の思い出』の面白いところは、こちらの記事でご紹介しています。

『少年の日の思い出』に似た小説3選
『少年の日の思い出』と似たテーマや雰囲気を持つ作品をご紹介します。
『三四郎』(夏目漱石)
主人公の成長と新しい環境での経験が描かれる青春小説です。
心の揺れ動きや内面の変化が丁寧に描かれている点が『少年の日の思い出』と共通しています。

『いちご同盟』(三田誠広)
思春期特有の悩みや葛藤、友情の形が描かれた作品です。
人間関係を通じた心の成長という点で『少年の日の思い出』と通じるものがあります。
『檸檬のころ』(豊島ミホ)
等身大の高校生の心情が描かれた青春小説です。
日常の中での小さな発見や心の成長という観点で『少年の日の思い出』に似た魅力を持っています。
『少年の日の思い出』のあらすじまとめ
『少年の日の思い出』は、蝶の収集という趣味を通じて少年の心の成長を描いた珠玉の作品。
短編小説ながら、友情や葛藤、償いといった普遍的なテーマを見事に描き切っています。
あらすじを読んで気になった方は、ぜひ手に取ってみてください。
読書感想文の題材としても最適な一冊ですよ。
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