森鷗外の短編小説『高瀬舟』の読書感想文を書こうと考えている皆さん、今回は書き方のコツから例文まで、詳しく解説していきますよ。
『高瀬舟』は1916年に発表された森鷗外の代表作のひとつで、江戸時代の罪人護送を描いた深い哲学的テーマを含む作品です。
弟殺しの罪で島流しになる喜助と、彼を護送する同心・庄兵衛の会話を通じて、人間の幸福や善悪の基準について問いかける名作ですね。
この記事では、読書が趣味で年間100冊以上の本を私が、中学生や高校生の皆さんに『高瀬舟』の読書感想文の書き方のポイントや題名のつけ方、さらには書き出しの工夫まで、具体的な例文と共にお伝えしていきます。
コピペに頼らず、自分なりの感想をしっかりと書けるようサポートしますので、最後まで読んでくださいね。
『高瀬舟』の読書感想文で触れたい3つの要点
『高瀬舟』の読書感想文を書く前に、必ず押さえておきたい重要な要点が3つあります。
これらの要点について、読書中や読了後に「自分はどう感じたか」をメモしておくことが大切ですよ。
- 喜助の「足るを知る」精神と幸福観
- 安楽死という倫理的な問題
- 庄兵衛の価値観の変化と自己省察
メモを取る際は、単純に「感動した」「悲しかった」ではなく、「なぜそう感じたのか」「自分だったらどうするか」「現代社会との関連性はあるか」といった具体的な視点で記録してください。
これらの感想メモが、後々読書感想文を書く際の重要な材料になるからです。
感想文では自分の考えや体験談を交えることが求められるため、登場人物の行動や考え方に対する個人的な感情や意見こそが最も重要な要素なんですね。
喜助の「足るを知る」精神
喜助は罪人として島流しになる身でありながら、与えられた二百文に感謝し、これまでの貧しい生活にも満足していました。
現代の私たちは、より多くのお金や物に囲まれることが幸せだと考えがちですが、喜助の生き方はそんな価値観に疑問を投げかけてきます。
彼の「足るを知る」精神について、皆さんはどう感じるでしょうか。
現代社会では SNS で他者と比較することが当たり前になっているからこそ、喜助の考え方は新鮮に映るかもしれませんね。
自分の生活や価値観と比較しながら、物質的な豊かさと精神的な満足度の関係について考えてみてください。
また、喜助のような境遇でも穏やかでいられる心の強さについて、自分なりの解釈を持つことが感想文を深める鍵になります。
安楽死の倫理的問題
物語の核心となるのが、喜助が苦しむ弟の願いを聞き入れて安楽死させた場面です。
これは現代でも議論が続く非常にデリケートな問題で、法律と人情、個人の尊厳と社会のルールの間で揺れ動く複雑なテーマですね。
喜助の行動は、法的には殺人罪にあたりますが、弟への愛情から生まれた行為でもあります。
皆さんは、喜助の判断をどう評価するでしょうか。
家族の苦しみを見ていられない気持ちと、命の尊さについて、自分なりの意見を持ってみてください。
正解のない問題だからこそ、自分の価値観や体験に基づいた率直な感想が読書感想文には必要です。
また、現代医療の発達した今だからこそ考えられる視点も交えると、より説得力のある感想になるでしょう。
庄兵衛の内面的変化
護送役の庄兵衛は、喜助の話を聞くことで自分自身の人生や価値観について深く考えるようになります。
四人の子供と年老いた母親を養うために倹約生活を送る庄兵衛にとって、喜助の満足した生き方は驚きでした。
庄兵衛の心の動きを通して、読者である私たちも「幸福とは何か」について考えさせられるのです。
庄兵衛が感じた疑問や葛藤について、皆さんも同じような経験があるかもしれませんね。
例えば、努力しているのに報われない時期や、他人の生き方を羨ましく思った経験など、自分の体験と重ね合わせて考えてみてください。
庄兵衛のように、他者の価値観に触れることで自分自身を見つめ直した経験があれば、それを感想文に盛り込むと説得力が増しますよ。
物語の最後で庄兵衛がどのような心境になったか、そして読者である自分がどう変化したかを比較することも重要なポイントです。
※『高瀬舟』を通じて森鴎外が伝えたいことはこちらで考察しています。

『高瀬舟』の読書感想文の例文(1200字の中学生向け)
【題名】本当の幸せとは何か
森鷗外の『高瀬舟』を読んで、私は「幸せ」について深く考えさせられた。
罪人として高瀬舟に乗る喜助の穏やかな表情が、最初はとても不思議だった。
普通なら絶望したり悲しんだりするはずなのに、喜助はまるで旅行にでも行くかのような晴れやかな顔をしている。
その理由を知った時、私は今まで考えていた「幸せ」の意味が間違っていたのかもしれないと思った。
喜助は貧しい生活を送っていたが、それでも毎日を大切に生きていた。
お上からもらった二百文を大事に持ち、遠島での生活にも希望を抱いている。
私だったら、きっと不平不満ばかり言ってしまうだろう。
でも喜助は違う。
与えられたものに感謝し、今ある状況に満足している。
この「足るを知る」という考え方が、私にはとても新鮮だった。
現代の私たちは、もっと良いスマホが欲しい、もっとお小遣いが欲しいと、いつも何かが足りないと感じている。
友達が持っているものを見て羨ましく思ったり、自分の家が貧乏だと嘆いたりすることもある。
でも喜助を見ていると、幸せは外から与えられるものではなく、自分の心の持ち方で決まるのかもしれないと思った。
一番印象に残ったのは、喜助が弟を苦しみから救った場面だ。
弟は病気で働けなくなり、兄に迷惑をかけていることを苦に思って自殺を図った。
でも思うようにいかず、兄に頼んで最後の手助けをしてもらった。
この場面を読んだ時、私は複雑な気持ちになった。
法律では殺人だが、弟への愛情から生まれた行動でもある。
もし自分が同じ立場だったら、どうしただろうか。
家族の苦しみを見ていることはできないが、命を奪うことも間違っている。
正解のない問題だからこそ、考えれば考えるほど答えが見つからない。
でも喜助は、弟のことを思って行動した。
それが罪になったとしても、後悔していないように見える。
家族への愛情の深さと、自分の信念を貫く強さを感じた。
護送役の庄兵衛も、喜助の話を聞いて自分の人生について考えるようになった。
四人の子供と母親を養うために必死に働いているが、喜助ほど満足した顔をしたことがない。
庄兵衛の気持ちがよく分かる。
私も、もっと良い成績を取りたい、もっと部活の成績を伸ばしたい思うばかりで、今の自分に満足したことがあまりない。
でも庄兵衛のように、他の人の生き方を知ることで、自分を見つめ直すきっかけになるのだと思う。
『高瀬舟』は短い物語だが、深いメッセージが込められている。
本当の幸せは、たくさんのお金や物を持つことではなく、今ある生活に感謝し、大切な人を思いやる気持ちから生まれるのかもしれない。
喜助のように、どんな状況でも前向きに生きていく強さを身につけたいと思った。
また、簡単に善悪を判断するのではなく、相手の立場に立って考える大切さも学んだ。
これからは、もっと今の生活に感謝し、家族や友達を大切にしながら生きていきたい。
『高瀬舟』の読書感想文の例文(2000字の高校生向け)
【題名】人間の尊厳と真の幸福を問う
森鷗外の『高瀬舟』を読み終えた時、私は長い間ページを閉じることができなかった。
この短編小説が投げかける問いは、単純な善悪の判断を超えた、人間存在の根本的な意味に関わるものだからである。
罪人として島流しになる喜助の穏やかな表情と、それを見つめる庄兵衛の複雑な心境を通して、私たちが当然だと思っている価値観そのものが問い直されている。
まず、喜助の「足るを知る」精神について深く考えさせられた。
現代社会に生きる私たちは、常により多くのものを求め、他者との比較の中で自分の位置を測ろうとする。
SNS に溢れる他人の華やかな生活を見て劣等感を抱いたり、出身校や収入で人間の価値を測ったりすることが当たり前になっている。
しかし喜助は全く違う世界に生きている。
お上から支給された二百文に心から感謝し、これまでの貧しい生活にも不満を抱かない。
彼にとって幸福とは、外的な条件によって左右されるものではなく、自分の心の持ち方そのものなのだ。
この姿勢は、現代の私たちが忘れかけている重要な価値観を思い出させてくれる。
私自身も、テストの点数が悪いと友達と比較して落ち込んだり、家庭の経済状況を気にしたりすることがある。
でも喜助を見ていると、そうした外的な要因に一喜一憂する自分が浅はかに思えてくる。
真の幸福は、与えられた状況の中で最善を尽くし、感謝の気持ちを忘れないことから生まれるのかもしれない。
次に、喜助が弟に対して行った安楽死について考えてみたい。
これは現代でも議論が分かれる非常にデリケートな問題である。
法的には明らかに殺人行為だが、苦しむ弟への愛情から生まれた行動でもある。
弟は病気で働けなくなり、兄に負担をかけていることを苦に思って自殺を図った。
しかし思うようにいかず、最後の瞬間に兄の手を借りることになった。
この場面を読んだ時、私は強い衝撃を受けた。
もし自分が喜助の立場だったら、どのような判断を下しただろうか。
家族の苦しみを目の当たりにして、ただ見ているだけでいられるだろうか。
一方で、人の命を奪うことは絶対に許されない行為でもある。
この葛藤に明確な答えはない。
だからこそ、喜助の行動は読者に深い印象を与えるのだ。
彼は法律や社会的な常識よりも、目の前にいる大切な人の苦しみを取り除くことを選んだ。
その判断が正しかったかどうかは分からないが、家族への愛情の深さと、自分の信念を貫く強さを感じずにはいられない。
現代医療の発達した今でも、終末期医療や尊厳死について様々な議論がある。
技術的には延命することが可能でも、本人や家族の意思を尊重すべきかどうか、正解のない問題が数多く存在する。
喜助の物語は、そうした現代的な課題にも通じる普遍的なテーマを扱っているのだ。
護送役の庄兵衛の心境変化も印象深い。
彼は最初、喜助の穏やかな表情を不思議に思っていた。
しかし喜助の話を聞くうちに、自分自身の人生や価値観について深く考えるようになる。
四人の子供と年老いた母親を養うために必死に働いているが、喜助ほど満足した顔をしたことがない。
庄兵衛の苦悩は、現代を生きる多くの人々に共通するものだろう。
私たちは努力しているつもりでも、なかなか満足感を得られない。
常に次の目標や課題に追われ、今この瞬間を大切にすることを忘れがちである。
庄兵衛のように、他者の生き方に触れることで自分を見つめ直すきっかけを得ることは重要だ。
私も高校生活の中で、様々な価値観を持つ友人たちと出会い、自分の考え方が絶対ではないことを学んできた。
庄兵衛が喜助から学んだように、異なる価値観に触れることで人間は成長していくのだと思う。
『高瀬舟』のもう一つの魅力は、その簡潔な文体の中に込められた深いメッセージである。
無駄のない描写で登場人物の心情が鮮やかに浮かび上がり、読者に強い印象を与える。
物語の舞台となる高瀬舟という閉鎖的な空間が、登場人物の内面的な葛藤を際立たせる効果も見事だ。
森鷗外は、この短い物語の中に人間存在の根本的な問題を凝縮して見せている。
読み終えた後も、様々な問いが心の中に残り続ける。
『高瀬舟』が現代でも読み継がれる理由は、時代を超えて通用する普遍的なテーマを扱っているからだろう。
この物語を読んで、私は自分自身の価値観や生き方について改めて考える機会を得た。
簡単に善悪を判断するのではなく、相手の立場に立って物事を考える大切さを学んだ。
また、真の幸福は外的な条件ではなく、自分の心の持ち方によって決まることも実感した。
これからの人生で困難に直面した時、喜助の生き方を思い出し、与えられた状況の中で最善を尽くしていきたい。
『高瀬舟』は、人間の尊厳と真の幸福について深く考えさせてくれる貴重な作品である。
振り返り
『高瀬舟』の読書感想文について、書き方のポイントから具体的な例文まで詳しく解説してきました。
この記事で紹介した3つの要点を意識しながら、皆さんなりの感想や体験談を交えて書けば、きっと素晴らしい感想文が完成するはずです。
大切なのは、コピペに頼らず自分の言葉で表現することですよ。
登場人物の行動や考え方に対して、皆さんがどう感じたか、どう考えたかを率直に書いてみてください。
『高瀬舟』が投げかける深いテーマについて、自分なりの答えを見つけていく過程こそが、読書感想文の醍醐味なのです。
きっと皆さんにも、心に残る素敵な感想文が書けることでしょう。
※『高瀬舟』のあらすじはこちらで簡単にご紹介しています。

コメント