第71回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書に選ばれた『森に帰らなかったカラス』の読書感想文を書く予定のみなさん、とても素敵な作品を選びましたね。
この作品はジーン・ウィリス作、山﨑美紀訳の児童文学で、1957年のイギリス郊外を舞台に、11歳の少年ミックがケガをしたニシコクマルガラスのヒナ「ジャック」を保護し、家族や地域の人々と共に育てていく心温まる物語です。
ロンドン動物園の元主任飼育員の少年時代の実話をもとにしており、戦後社会の背景と人間関係のリアリティが丁寧に描かれています。
私は年間100冊以上の本を読む読書好きなのですが、この作品は特に動物と人間の絆、家族の愛情、そして成長というテーマが巧みに織り込まれた傑作だと感じています。
この記事では『森に帰らなかったカラス』の読書感想文の書き方について、重要なポイントから具体的な例文まで、みなさんの感想文作成をしっかりとサポートしていきますよ。
『森に帰らなかったカラス』の読書感想文を書くうえで大切な3つのポイント
『森に帰らなかったカラス』で読書感想文を書くときに外せない重要なポイントを3つご紹介します。
これらのポイントを意識することで、ただのあらすじ紹介ではない、深みのある感想文が書けるようになりますよ。
- 主人公ミックと父親、そしてジャック(カラス)の成長と心理的な変化
- ジャックとの出会いと別れを通して描かれる喪失と再生のテーマ
- 1957年のイギリス戦後社会の背景と地域コミュニティの描写
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
主人公ミックと父親、そしてジャック(カラス)の成長と心理的な変化
『森に帰らなかったカラス』の最も重要な要素の一つが、登場人物たちの心理的な成長です。
11歳の主人公ミックは、ケガをしたニシコクマルガラスのヒナを森で見つけたとき、単純な優しさからジャックを家に連れて帰ります。
しかし物語が進むにつれて、ミックは野生動物を飼うことの責任や、愛するものを手放すことの意味について深く考えるようになるのです。
ミックの父親もまた重要なキャラクターですね。
元空軍兵士として第二次世界大戦を体験した父親は、戦争で仲間を失った辛い記憶を長年心の奥に閉じ込めてきました。
ところがジャックとの別れを通して家族が悲しみを共有することで、初めて息子に自分の過去を打ち明けることができるようになります。
そしてジャック自身も、単なるペット以上の存在として物語の中で重要な役割を果たしています。
空を飛ぶ鳥として、父親の戦争体験と象徴的に重なり合い、家族の心の傷を癒やす存在になっていくのです。
読書感想文を書くときは、これらのキャラクターがどのような内面の変化を遂げたのか、どの場面でその成長を強く感じたのかを具体的に書くことが大切です。
あなた自身の体験と重ね合わせながら、登場人物の心情に共感した部分を詳しく描写してみてください。
ジャックとの出会いと別れを通して描かれる喪失と再生のテーマ
『森に帰らなかったカラス』で特に印象深いのが、大切なものとの出会いと別れが人間にもたらす影響についての描写です。
ミックがジャックを森で見つけた瞬間から、二人の絆は深まっていきます。
ジャックはミックの家族が営むパブで育ち、地域の人々に愛される存在になっていきました。
電車に乗って隣町まで運ばれてしまったり、よそのおばあさんに連れて行かれてしまったりと、ちょっとした事件が起こるたびに、ミックや近所の子どもたち、パブの常連客たちみんなでジャックを捜索し、帰ってくるたびに安堵するのです。
しかし成長したジャックは野生動物として、本来の生活に戻るべき時がやってきます。
ミックにとって、愛するジャックを手放すことは大きな喪失体験でした。
でもこの別れを通して、ミックは真の愛情とは何かを学び、家族との絆も深まっていくのです。
感想文では、この喪失と再生のテーマについて、あなたが実際に体験した別れや失ったものについて触れながら書くと良いでしょう。
ペットとの別れ、友達との別れ、大切にしていたものを失った経験など、自分の体験と重ね合わせることで、より深い感想が書けますよ。
1957年のイギリス戦後社会の背景と地域コミュニティの描写
『森に帰らなかったカラス』の舞台である1957年のロンドン郊外という設定も、物語の重要な要素です。
第二次世界大戦が終わってから12年が経った時代で、多くの人々が戦争の記憶を心の中に閉じ込めていました。
ミックの父親のように戦争を体験した大人たちと、戦争を知らない子どもたちが一緒に暮らしている社会の様子が繊細に描かれています。
またミックの家族が営むパブを中心とした地域コミュニティの温かさも印象的ですね。
ジャックが事件を起こすたびに、パブの常連客や近所の人々がみんなで協力する姿が描かれています。
現代社会では地域のつながりが薄くなっていると言われますが、この物語は人と人とのふれあいの大切さを教えてくれます。
感想文では、このような時代背景や社会の描写について、現代の社会と比較しながら書くのも良いアプローチです。
あなたが住んでいる地域のコミュニティや、家族を取り巻く社会環境について考えながら読むと、より深い理解につながるでしょう。
読書感想文を書くために『森に帰らなかったカラス』を読んだらメモしておきたい3項目
読書感想文を書くためには、ただ物語を読むだけでなく、「自分がどう感じたか」をしっかりとメモしておくことが重要です。
『森に帰らなかったカラス』を読みながら、以下の3つの項目について、あなたの率直な感想をメモしてみてください。
- ミックや父親の成長に対してあなたが共感した場面と理由
- ジャックとの別れの場面で感じた喪失感や学び
- 戦後社会の地域コミュニティの描写から感じた現代社会との違い
これらの感想をメモしておくことで、感想文の核となる「あなた独自の視点」が生まれますよ。
ミックや父親の成長に対してあなたが共感した場面と理由
『森に帰らなかったカラス』でミックや父親がどのような成長を遂げるか、その場面であなたがどんな気持ちになったかをメモしておきましょう。
たとえばミックが野生動物を自然に返すことについて真剣に考える場面では、どのような感情を抱きましたか?
愛しているからこそ手放すべきか悩む姿に、あなた自身の体験を重ねることができるかもしれません。
父親が息子に戦争体験を語る場面でも、家族間でのコミュニケーションの大切さについて考えさせられるでしょう。
あなたの家族関係と比較して、どのような違いや共通点を感じたでしょうか?
このような具体的な場面での感情をメモしておくことで、感想文に説得力のある内容を書くことができます。
ジャックとの別れの場面で感じた喪失感や学び
大切なものとの別れは、誰もが経験する人生の重要なテーマの一つです。
『森に帰らなかったカラス』でジャックとミックが別れる場面を読んで、あなたはどのような感情を抱いたでしょうか?
悲しみ、寂しさ、それとも理解や受け入れの気持ちでしょうか?
あなた自身が体験したペットとの別れ、友達との別れ、大切なものを失った経験と比較してみてください。
その時の感情と『森に帰らなかったカラス』で描かれる別れの感情に共通点はありましたか?
また物語を通して、別れの意味や価値について新しく学んだことがあれば、それもメモしておきましょう。
このような個人的な体験と物語を結びつけることで、読み手の心に響く感想文が書けるのです。
戦後社会の地域コミュニティの描写から感じた現代社会との違い
『森に帰らなかったカラス』に描かれる1957年のイギリス郊外の社会と、現代の日本社会を比較して感じたことをメモしてみてください。
パブを中心とした地域コミュニティの温かさや、ジャックの事件の際にみんなで協力する姿を見て、どのような印象を持ったでしょうか?
現代では近所付き合いが少なくなっていると言われますが、あなたの住んでいる地域はどうでしょうか?
また戦争を経験した大人たちと戦争を知らない子どもたちが共存する社会について、どのように感じましたか?
現代でも様々な世代が一緒に暮らしていますが、世代間のコミュニケーションについて考えるきっかけになったかもしれません。
このような社会的な視点からの感想も、感想文に深みを与える重要な要素なんです。
『森に帰らなかったカラス』の読書感想文の例文(800字の小学生向け)
【題名】ジャックから学んだ愛の意味
私は『森に帰らなかったカラス』を読んで、本当の愛とは何かについて深く考えるようになった。
この物語は1957年のイギリスで、11歳のミック少年がケガをしたニシコクマルガラスのヒナ「ジャック」を森で見つけて家族と一緒に育てる実話をもとにした物語だ。
私が最も心に残ったのは、ミックがジャックを愛しているからこそ、野生に返すべきか悩む場面である。
普通なら好きなものは手元に置いておきたいと思うものだが、ミックは本当にジャックのことを考えて、自然に返してあげることを考えるのだ。
私にも似たような経験がある。
小学2年生の時、公園で弱っている子猫を見つけて家に連れて帰りたいと思ったことがある。
しかし母に「野生の動物は自然に返してあげるのが一番よ」と言われて、結局動物病院に連れて行った。
その時は納得できなかったが、この本を読んで母の気持ちがよく分かった。
物語でもう一つ印象深かったのは、ミックの父親が戦争の記憶について初めて息子に語る場面である。
父親は長い間、戦争で仲間を失った辛い体験を心の奥に閉じ込めていた。
しかしジャックとの別れを通して家族が悲しみを分かち合うことで、やっと自分の過去を打ち明けることができるようになったのだ。
私は普段、嫌なことがあっても一人で我慢してしまうことが多い。
でもこの場面を読んで、家族に気持ちを話すことの大切さを学んだ。
感情を表現し、痛みを分かち合うことで、家族の絆がより深まるのだと思う。
また、パブに集まる地域の人々がジャックを通して心を通わせる場面も素晴らしいと思った。
現代では近所の人との付き合いが少なくなっていると言われるが、この物語に出てくる大人たちは、ジャックが事件を起こすたびにみんなで協力して捜索する。
私の住んでいる地域でも、もっと近所の人たちと交流できたらいいなと思った。
『森に帰らなかったカラス』は実話をもとにしているからこそ、読者の心に深く響くのだと思う。
小さな命との出会いと別れを通して、真の愛情とは何か、家族の絆の大切さ、そして地域社会のつながりの価値について教えてくれる素晴らしい作品だった。
私もミックのように、本当に相手のことを思いやることができる人間になりたいと心から思った。
『森に帰らなかったカラス』の読書感想文の例文(1200字の小学生向け)
【題名】心に刻まれた小さな命との出会い
私は『森に帰らなかったカラス』を読んで、大切なものとの出会いと別れ、そしてその経験が人をどのように成長させるのかについて深く考えさせられた。
この物語は、11歳のミック少年が怪我をしたニシコクマルガラスのヒナ「ジャック」を森で見つけ、家族や地域の人々と一緒に育てていく心温まる実話に基づいた作品である。
家族が営むパブで育てられたジャックは、やがて町の人々に愛される存在になっていく。
私がこの物語で最も心に残ったのは、ミックの父親が長年抱え続けてきた戦争の記憶について語る場面である。父親は元空軍兵士で、戦争で仲間を失った辛い体験を心の奥に閉じ込めていた。
しかしジャックとの別れを通して家族が悲しみを共有することで、初めて息子に自分の過去を打ち明けることができるようになったのだ。この場面を読んで、私は感情を表現し、痛みを分かち合うことの大切さを学んだ。
私にも似たような経験がある。小学3年生の時、飼っていたハムスターが突然亡くなった。その時私は一人で泣いていたが、母が私の気持ちを察して一緒に泣いてくれた。「悲しい時は一人で我慢しなくていいのよ」と言ってくれた母の言葉で、私は心が軽くなったことを覚えている。
この本を読んで、あの時の母の優しさの意味がより深く理解できた。物語の中で、ジャックは単なるペット以上の存在として描かれている。空を飛ぶ鳥として、父親の過去の記憶と重なり合う象徴的な意味を持っているのだ。
また地域のパブに集まる人々がジャックを通して心を通わせ、絆を深めていく様子も印象的だった。私が特に感動したのは、ミックが野生動物を自然に返すことについて真剣に考える場面である。ジャックを愛しているからこそ、本来の生活に戻してあげるべきか悩む姿に、真の愛情とは何かを考えさせられた。
この作品は実話に基づいているからこそ、読者の心に深く響くのだと思う。
戦後という困難な時代背景の中でも、小さな命との出会いが人々に希望と癒やしをもたらしたことが伝わってきた。
この物語を読んで、私は喪失の痛みを乗り越えることの意味について考えるようになった。大切なものを失うことは辛いことだが、その経験を通して人は成長し、他者の痛みに共感できるようになるのだと思う。
ミックが家族と悲しみを分かち合い、父親の戦争体験を理解できるようになったように、辛い経験も人とのつながりを深める機会になり得るのである。
『森に帰らなかったカラス』は、小さな命との出会いと別れを通して、家族の絆、地域社会のつながり、そして感情を表現することの大切さを教えてくれる素晴らしい作品だった。
私も今後、自分の気持ちを素直に表現し、周りの人々の痛みに寄り添えるような人間になりたいと思う。そしてこの物語のように、小さな命も含めたすべての存在を大切にしながら生きていきたいと心から思った。
振り返り
『森に帰らなかったカラス』の読書感想文について、重要なポイントから具体的な例文まで詳しくご紹介してきました。
この課題図書は登場人物の成長、喪失と再生のテーマ、そして戦後社会の背景という3つの要素が巧みに組み合わされた素晴らしい作品です。
読書感想文を書くときは、これらの要素について「あなたがどう感じたか」を具体的にメモしながら読み進めることが大切ですよ。
あなた自身の体験と物語を重ね合わせ、登場人物の心情に共感した部分を詳しく描写することで、オリジナリティあふれる感想文が完成します。
例文も参考にしながら、あなただけの素敵な読書感想文を書いてくださいね。
きっと心に響く作品に仕上がることでしょう。
※『森に帰らなかったカラス』のあらすじはこちらでご紹介しています。

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