朝比奈蓉子さんによる児童文学『私の気になるあの子』のあらすじを、簡単に短く、また詳しい内容まで丁寧にご紹介していきますね。
この作品は2021年にポプラ社から出版された、ジェンダーや多様性をテーマにした現代的な児童文学です。
「女の子らしく」「男の子らしく」という固定観念に疑問を持つ子どもたちの成長物語として、多くの読者から共感を得ている秀作ですよ。
年間100冊以上の本を読む私が、読書感想文を書く予定の皆さんのお役に立てるよう、ネタバレなしで作品の魅力をお伝えしていきます。
朝比奈蓉子『私の気になるあの子』のあらすじを短く簡単に
朝比奈蓉子『私の気になるあの子』のあらすじを詳しく(ネタバレなし)
主人公の小学生・瑠美奈は、同居する祖父から日々「女の子らしくしろ」と口うるさく言われることにうんざりしていた。
祖父の価値観は古く、瑠美奈の自由な行動や考え方を制限しようとする態度に、彼女は強い反発を覚えている。
そんな日常に変化が訪れたのは、クラスに転校生の詩音がやってきた時だった。
詩音は突然坊主頭で登校し、その見た目から周囲の冷たい視線やからかいを受けて孤立してしまう。
瑠美奈は詩音の状況に衝撃を受け、なぜ坊主頭にしたのか気になって仕方がない。
やがて明らかになった理由は、詩音の高校生の姉が学校の時代錯誤な校則に抗議するため自ら丸刈りにしたことだった。
詩音は理解されない姉を少しでも支えたいという思いから、同じように坊主頭にしたのである。
瑠美奈は詩音の境遇に同情し、何とか助けてあげたいと考える。
しかし詩音は「ほっといてほしい」と頑なで、瑠美奈の好意を素直に受け入れようとしない。
物語は瑠美奈と詩音の視点が交互に描かれ、それぞれの家族や学校の先生たちも含めて、「女の子らしく」「男の子らしく」「普通にしろ」という社会の固定観念と向き合う姿が丁寧に描写される。
『私の気になるあの子』のあらすじを理解するための用語解説
『私の気になるあの子』を読む上で押さえておきたい重要な用語をまとめました。
これらの言葉の意味を理解しておくと、物語の背景やテーマがより深く分かりますよ。
用語 | 説明 |
---|---|
ジェンダー | 「男らしさ」「女らしさ」といった性別に関する 社会的・文化的な役割や期待のこと。 本作では、固定観念や伝統的な性別役割に対して 疑問を投げかけている。 |
多様性 | 性別、考え方、行動、見た目などが一様ではなく 人それぞれ違うことを認める精神。 「みんなと同じ」でなくてもいいという メッセージが込められている。 |
固定観念 | 物事や人について、 変えがたいイメージや思い込みのこと。 性別による役割や行動の決めつけが、 主人公たちの葛藤の元になっている。 |
時代錯誤 | 時代に合わず古くさい考えや行動。 本作では周囲の性別役割に関する 固定観念や校則が時代錯誤として描かれている。 |
これらの概念を理解すると、『私の気になるあの子』が描く現代的な問題意識がクリアに見えてきますね。
『私の気になるあの子』を読んだ私の感想
『私の気になるあの子』を読んで、まず感じたのは「これは現代の子どもたちが本当に直面している問題だな」ということでした。
私自身も子どもの頃、「男の子なんだから泣くな」とか「女の子はおしとやかに」なんて言われた記憶があります。
でも時代は変わって、今の子どもたちはもっと複雑で繊細な感情を抱えているんですよね。
瑠美奈の祖父への反発心は、すごくリアルに描かれていて共感できました。
古い価値観を持つ大人と、新しい考え方を持つ子どもの間にある溝って、どの時代にもあるんだなと感じます。
でも、祖父も決して悪い人じゃない。
彼なりに孫を思ってのことなんですが、その表現方法が時代に合わなくなってしまっている。
そういう大人の複雑さも、朝比奈さんは上手に書いていますね。
詩音というキャラクターがまた秀逸でした。
坊主頭で登校してくる理由が分かった時は、「うわあ、重いな」と思ったんです。
高校生の姉の抗議行動を支えるために自分も坊主にするなんて、小学生にしては相当な覚悟ですよね。
でも、それだけ姉のことを思っているし、理不尽な校則に対する怒りも本物なんだなと。
子どもなりに社会の矛盾を感じ取って、行動に移す詩音の強さに感動しました。
一方で、瑠美奈が詩音を助けたいと思うんだけど、詩音は「ほっといてほしい」と言う場面は、読んでいてもどかしかったです。
でも、これもリアルなんですよね。
助けを求めるのって、実はとても難しいことだから。
特に詩音のような強い意志を持った子は、なおさら素直になれないんでしょう。
この作品で一番すごいと思ったのは、説教臭くなりすぎないバランス感覚です。
多様性やジェンダーの問題って、どうしても「こうあるべき」という答えを押し付けがちになるんですが、朝比奈さんはそうしていない。
登場人物たちが悩んで、考えて、少しずつ気づいていく過程を丁寧に描いているんです。
読んでいる子どもたちも、一緒に考えながら読み進められる構成になっています。
ただ、正直に言うと、もう少し物語にドラマチックな展開があってもよかったかなと思います。
日常の中の小さな気づきや成長を描くのも大切ですが、読者をもっとハラハラドキドキさせる要素があれば、さらに魅力的な作品になったんじゃないでしょうか。
でも、これは大人の私の感想であって、子どもたちにとってはちょうど良いペースなのかもしれませんね。
『私の気になるあの子』は、現代を生きる子どもたちにとって必要なメッセージがたくさん詰まった作品だと思います。
自分らしく生きることの大切さ、他者を理解することの難しさと喜び、そして社会の常識に疑問を持つことの意味。
これらのテーマを、子どもたちにも分かりやすい言葉と物語で伝えているのが素晴らしいです。
読書感想文を書く学生さんには、ぜひ自分の体験と重ね合わせながら読んでもらいたいですね。
※『私の気になるあの子』の読書感想文の書き方と例文はこちらにまとめています。

『私の気になるあの子』の作品情報
項目 | 内容 |
---|---|
作者 | 朝比奈蓉子(あさひな ようこ)作 絵:水元さき |
出版年 | 2021年2月10日 |
出版社 | ポプラ社 |
受賞歴 | 特定の受賞歴は確認されていない |
ジャンル | 児童読み物(児童文学) |
主な舞台 | 現代の日本の学校や家庭 |
時代背景 | 現代 |
主なテーマ | ジェンダー、多様性、自己肯定感、思いやり |
物語の特徴 | 子どもたちの日常生活を通じて 社会問題を考える成長物語 |
対象年齢 | 小学生高学年以上から中学生、 大人も共感できる内容 |
青空文庫の収録 | なし |
『私の気になるあの子』の主要な登場人物とその簡単な説明
『私の気になるあの子』に登場する主要なキャラクターをご紹介しますね。
各人物の背景や性格を理解すると、物語がより深く楽しめますよ。
人物名 | 紹介 |
---|---|
瑠美奈(るみな) | 主人公の小学生。 口うるさい祖父に 「女の子らしくしろ」と言われ反発している。 詩音のことが気になり助けたいと思う。 |
詩音(しおん) | 転校生で坊主頭の少女。 姉が理不尽な校則に抗議して 坊主にしたことを助けるために坊主にしている。 孤立しているが強い意志を持つ。 |
祖父 | 瑠美奈の祖父で伝統的な価値観の持ち主。 「女の子らしく」「男の子らしく」と言い聞かせる。 瑠美奈と対立しながらも家族への愛情を持つ。 |
詩音の姉 | 高校生。 校則に抗議して坊主頭にするなど 理不尽な社会の常識に疑問を持ち、声をあげる存在。 詩音の行動の動機となる重要な人物。 |
野島くん | 坊主頭の母親を持つ男子生徒。 女性の坊主頭にも好意的だが自分は坊主にしない。 多様性を受け入れる姿勢を見せる。 |
沙耶(さや) | 瑠美奈の友人。 祖母の影響で性別らしい生き方を重んじている。 従来の価値観を持つキャラクター。 |
絵梨佳(えりか) | 瑠美奈の友人。 ボーイッシュな服装を好み 坊主頭にも関心がある。 固定観念にとらわれない自由な考え方を持つ。 |
これらのキャラクターが織り成す関係性が、『私の気になるあの子』の物語を豊かにしているんですね。
『私の気になるあの子』の読了時間の目安
『私の気になるあの子』を読むのにどれくらい時間がかかるか、目安をまとめました。
読書計画を立てる時の参考にしてくださいね。
項目 | 詳細 |
---|---|
ページ数 | 210ページ |
総文字数 | 不明 |
読了時間の目安 | 約3~4時間 |
『私の気になるあの子』は児童文学なので、漢字にルビが振ってあったり文章が読みやすく書かれています。
そのため、実際の読了時間は上記の目安より短くなる可能性が高いですよ。
普段あまり本を読まない人でも、無理なく読み進められる分量です。
『私の気になるあの子』はどんな人向けの小説か?
『私の気になるあの子』は幅広い読者に愛される作品ですが、特に以下のような人におすすめします。
- 「らしさ」の押し付けに疑問を感じたことがある人
- 友達関係や家族との価値観の違いに悩んでいる人
- 多様性やジェンダーについて考えたい人
一方で、派手なアクションや恋愛要素を期待している人には物足りないかもしれませんね。
この作品は日常の中での気づきや成長を丁寧に描いた作品なので、じっくりと人物の内面を読み取ることを楽しめる人に向いています。
また、読書感想文の題材として選ぶ学生さんにとっては、現代的なテーマで自分の体験と結び付けやすく、感想が書きやすい作品だと思いますよ。
あの本が好きなら『私の気になるあの子』も好きかも?似ている小説3選
『私の気になるあの子』を気に入った方におすすめしたい、テーマや雰囲気が似ている作品をご紹介します。
どれも思春期の繊細な心情や成長を描いた秀作ばかりですよ。
『かがみの孤城』 – 辻村深月
不登校になった中学生たちが、不思議な「城」に集められる物語です。
スクールカーストやいじめ、友人との関係に悩む主人公たちの姿が描かれており、彼らが心を開き、互いの存在を認め合う過程は、『私の気になるあの子』が描く「居場所」の探求というテーマと共通しています。
どちらも現代の子どもたちが抱える孤独感や疎外感を丁寧に描いた作品ですね。

『そして、バトンは渡された』 – 瀬尾まいこ
血の繋がらない親たちのもとを転々としながらも、まっすぐに育っていく主人公の物語です。
複数の家族の間で揺れ動く感情や、新しい環境に馴染もうとする姿は、『私の気になるあの子』が描く「ありのままの自分」を受け入れてもらうことの難しさと、それを見つけることの喜びを思わせます。
家族というテーマを通じて、多様な形の愛情を描いている点でも似ていますよ。

『わたしの苦手なあの子』 – 朝比奈蓉子
同じ朝比奈蓉子さんによる作品で、少女たちの繊細な心の揺れ動きを描いた物語です。
「私の気になるあの子」とテーマが近く、ジェンダーや多様性を問う内容も共通しています。
朝比奈さん独特の優しい文体と、子どもたちの心情への深い理解が感じられる作品として、セットで読むことをおすすめします。
振り返り
『私の気になるあの子』のあらすじを簡単に短くから詳しい内容まで、そして作品の魅力や登場人物について解説してきました。
朝比奈蓉子さんが描くこの物語は、現代の子どもたちが直面するジェンダーや多様性の問題を、身近な学校生活の中で丁寧に描いた秀作です。
「女の子らしく」「男の子らしく」という固定観念に疑問を持つ瑠美奈と、信念を貫く詩音の友情を通じて、私たち読者も自分らしく生きることの大切さを学べる作品となっています。
きっと皆さんも、主人公たちと一緒に成長できる読書体験ができるはずですよ。
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