谷崎潤一郎『細雪』のあらすじ【結末までネタバレ】上中下巻を簡単に

谷崎潤一郎『細雪』のあらすじ あらすじ

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谷崎潤一郎『細雪』のあらすじと感想をご紹介していきますね。

『細雪』は昭和初期の大阪上流階級の四姉妹を描いた、谷崎潤一郎の代表作として知られる長編小説です。

1936年から1941年までの約5年間を舞台に、蒔岡家の四姉妹の日常と特に三女・雪子の見合いを中心とした物語が展開されています。

毎日新聞社から出版され、三島由紀夫をはじめ多くの文学者から高い評価を受けている作品でもあります。

年間100冊以上の本を読む読書家として、この作品のあらすじを簡単に結末までネタバレありで、また上巻・中巻・下巻に分けて詳しく丁寧に紹介していきますよ。

それでは、さっそく進めていきましょう。

『細雪』のあらすじを簡単に短く(軽くネタバレ)

大阪の旧家・蒔岡家の四姉妹の物語である。三女・雪子は30歳を過ぎても結婚できずにいた。家の格式を重んじる長女・鶴子と現実的な次女・幸子が雪子の見合いを世話するが、相手の家柄や病気が原因で次々と破談になる。一方、四女・妙子は自由奔放で複数の男性と恋愛関係になり、家族を困らせる。戦争の影が忍び寄る中、雪子は最終的に御牧子爵家の庶子との結婚が決まる。しかし婚礼の日、雪子は下痢に苦しみながら東京へ向かう列車に乗り込むのだった。

『細雪』のあらすじを最後まで詳しく(結末までネタバレ)

大阪船場の旧家・蒔岡家は、かつて木綿問屋として栄えた商家だったが、時代とともに衰退していた。

本家には長女・鶴子と婿養子の辰雄、分家には次女・幸子と婿養子の貞之助が住んでいる。

未婚の三女・雪子と四女・妙子は両家を行き来しながら暮らしていた。

物語は雪子の見合いから始まる。

30歳を過ぎても結婚できない雪子のために、美容院の井谷が瀬越という男性を紹介するが、相手の母親に遺伝性の精神病があることが判明し破談となる。

次に陣場夫人が紹介した野村という中年のやもめとの見合いでは、相手の無神経さに雪子が嫌気をさして断る。

一方、妙子は写真師の板倉と恋愛関係になるが、彼は病気で亡くなってしまう。

その後、妙子は以前駆け落ちした奥畑と再び関係を持つようになる。

さらに沢崎、橋寺との見合いも失敗に終わり、雪子の結婚は絶望的になる。

妙子は赤痢にかかり、看病中に三好というバーテンダーの子を妊娠していることが判明する。

死産となった後、妙子は三好と所帯を持つことになる。

最後に御牧子爵家の庶子との縁談が持ち上がり、雪子はついに結婚を決意する。

しかし婚礼当日、雪子は下痢に苦しみながら東京へ向かう列車に乗り込むのだった。

『細雪』の上中下巻のそれぞれのあらすじ

上巻のあらすじ

かつて豪商だった蒔岡家は、本家(大阪)と分家(芦屋)に分かれて暮らしている。長女鶴子と次女幸子は婿を迎え家を継いでいるが、雪子と妙子は未婚である。雪子は30歳で縁談が減り、妹の妙子は駆け落ちの新聞記事で家の恥となった。姉妹は芦屋で過ごし、妙子は人形作りに打ち込む。

雪子には瀬越との縁談が持ち込まれるが、相手の母親の精神病歴で断念。次に野村という中年男性との見合いがあるが、その間に本家の辰雄が東京転勤となり、雪子も東京へ。しかし元気がなく、見合いを口実に大阪へ戻る。

見合い直前に幸子が流産するも、一週間後に野村と会う。野村は老けて見え、幸子の体調を気遣わない上、亡き妻子の仏壇を無神経に見せたことで雪子は結婚を拒否。結局、雪子は再び東京へ戻ることになる。

中巻のあらすじ

妙子は人形作りから洋裁と山村舞へと関心を移し、芦屋での舞のお浚い会で写真を撮っていた若い写真師・板倉と親交を深める。彼はすでに妙子の人形の写真を撮った縁で知り合いだった。

1か月後、関西地方を大水害が襲い、洋裁学院にいた妙子を板倉が勇敢に救出したことで、妙子は彼に好意を抱くようになる。二人の関係を知った幸子は、板倉の低い出自を理由に反対するが、妙子は結婚の意志を固める。

その後、妙子はフランスへの洋裁留学を計画するが、師匠の辞退により洋服店開業へと方針転換。資金援助を求めて東京の本家を訪れるが、病に倒れた板倉のため急遽大阪へ戻る。

板倉は乳嘴突起炎の手術後に合併症で壊疽を起こし、命を落とす。これにより、妙子と身分の低い男性との結婚を心配していた幸子の懸念はひとまず消えることとなった。

下巻のあらすじ

6月、辰雄の姉が名古屋の名家・沢崎との縁談を持ちかけるが、見合いは不調に終わり、蒔岡家が初めて断られる経験となる。妙子は奥畑と再び関係を持ち、貞之助が鶴子に報告。妙子は鶴子に絶縁される。井谷が紹介した橋寺との縁談は、雪子の引っ込み思案で破談に。

妙子が奥畑の家で赤痢にかかり、蒔岡家は世間体を気にしつつも友人の病院へ移送し回復に向かう。幸子は、妙子が奥畑に頼っていたこと、さらにバアテンの三好との関係を知り、奥畑との結婚を促すが、奥畑は満州行きを断念。

井谷の渡米前にもたらされた最後の縁談は、公家華族の庶子・御牧だった。姉妹は彼の気さくな人柄に惹かれる。しかしその東京滞在中に、妙子が三好の子を妊娠していることが発覚。幸子と貞之助は有馬で秘密出産の手配をするが、妙子は死産。貞之助は奥畑に口止め料2000円を支払い、妙子は三好と所帯を持つ。

雪子は御牧との結婚を受け入れ、婚礼の準備が進む。しかし雪子は楽しげではなく、東京へ向かう列車でも下痢が続くのだった。

『細雪』のあらすじを理解するための用語解説

『細雪』のあらすじに登場する専門用語や時代背景を理解するための解説をまとめました。

以下の表で主要な用語をチェックしてみてください。

用語 説明
船場 大阪市中央区の地名。
江戸時代から商業の中心地として栄えた場所。
多くの商家が軒を連ねていた。
婿養子 妻の実家の姓を名乗り、家督を継ぐ男性。
『細雪』では辰雄と貞之助が蒔岡家の婿養子となっている。
本家・分家 本家は家督を継ぐ長男の家。
分家は次男以下が独立して作った家。
『細雪』では長女・鶴子が本家、次女・幸子が分家の奥様。
阪神間 大阪と神戸の間の地域。
芦屋、西宮などの高級住宅地を指す。
幸子の分家がある場所。
見合い 結婚相手を探すための正式な顔合わせ。
仲人が間に入って取り持つことが多い。
雪子の結婚問題の中心となる慣習。
御牧子爵家 明治維新で功績のあった公家の華族。
子爵は華族の爵位の一つ。
雪子の最後の結婚相手となる家柄。

これらの用語を理解することで、『細雪』の世界観がより深く分かるようになります。

『細雪』を読んだ私の感想

『細雪』を読み終えた時の感想を率直に語らせてもらいますね。

正直言うと、最初はページ数の多さに圧倒されました。

でも読み進めるうちに、谷崎潤一郎の描く世界に完全に引き込まれてしまったわけです。

まず何といっても、四姉妹それぞれの個性が本当に鮮やかに描かれている点が素晴らしかった。

長女・鶴子の格式を重んじる堅実さ、次女・幸子の社交的で現実的な性格、三女・雪子の奥ゆかしさ、四女・妙子の自由奔放さ。

それぞれが全く違う魅力を持っていて、読んでいて飽きることがありません。

特に雪子の見合いのシーンは、読んでいてハラハラしましたね。

30歳を過ぎても結婚できない雪子の心境が、手に取るように伝わってきます。

野村との見合いで相手の無神経さに嫌気がさすシーンなんて、読んでいて私も一緒にイライラしてしまいました。

そして妙子の恋愛模様も印象的でした。

奥畑との駆け落ち、板倉との悲恋、三好との不倫。

自分の気持ちに正直に生きる妙子の姿は、現代の女性にも通じるものがあります。

でも当時の家制度の中では、妙子の行動は家族にとって大きな重荷だったでしょうね。

谷崎潤一郎の文章力も本当に素晴らしい。

季節の移ろいや食事の描写、着物の柄まで、細かいところまで丁寧に描かれています。

特に関西弁の会話が自然で、まるで実際に姉妹の会話を聞いているような気分になりました。

ただ、読んでいて少し理解に苦しんだのが、雪子の最後の結婚シーンですね。

なぜ下痢に苦しみながら東京へ向かうのか、その象徴的な意味がなかなか掴めませんでした。

でも後から調べてみると、これは雪子の結婚への複雑な心境を表現したものだと分かって、谷崎の巧妙さに感心しました。

戦争の影が忍び寄る時代背景も興味深かったです。

華やかな上流階級の生活が描かれる一方で、時代の変化を感じさせる描写もあちこちに散りばめられています。

まさに一つの時代の終わりを告げる物語として読むことができました。

全体的に、日本の古典文学の美しさを堪能できる作品だと思います。

時間をかけてゆっくり読むことで、谷崎潤一郎の世界観にどっぷり浸ることができますよ。

読書感想文を書く皆さんも、きっと深い感動を味わえるはずです。

『細雪』の作品情報

『細雪』の基本的な作品情報をまとめました。

項目 内容
作者 谷崎潤一郎
出版年 1948年
出版社 毎日新聞社
受賞歴 毎日出版文化賞受賞
ジャンル 家族小説、恋愛小説、社会小説
主な舞台 大阪、芦屋、東京
時代背景 昭和初期(1936年〜1941年)
主なテーマ 家族の絆、結婚、階級社会、時代の変化
物語の特徴 関西弁の会話、季節感豊かな描写、心理描写
対象年齢 高校生以上
青空文庫 収録済み(

『細雪』の主要な登場人物とその簡単な説明

『細雪』に登場する主要な人物たちを紹介します。

それぞれの性格や物語での役割をチェックしてみてください。

人物名 紹介
蒔岡鶴子 長女で本家の奥様。
格式を重んじる堅実な性格。
家の伝統を守ろうとする。
蒔岡幸子 次女で分家の奥様。
社交的で現実的な性格。
物語の中心的な人物。
蒔岡雪子 三女で未婚。
古典的な美しさを持つが引っ込み思案。
見合いが物語の主軸となる。
蒔岡妙子 四女で未婚。
自由奔放で新しい物好き。
恋愛問題で家族を困らせる。
辰雄 鶴子の婿養子で本家の当主。
銀行員として働く。
堅実だが融通が利かない。
貞之助 幸子の婿養子で分家の当主。
計理士として働く。
温厚で理解のある性格。
奥畑 妙子の恋人の一人。
貴金属商の三男坊。
妙子と駆け落ちしたことがある。
板倉 妙子の恋人の一人。
写真師として働く。
病気で亡くなってしまう。
三好 妙子の恋人の一人。
バーテンダーとして働く。
最終的に妙子と所帯を持つ。
御牧 雪子の最後の結婚相手。
子爵家の庶子。
45歳で気さくな人柄。

 『細雪』の読了時間の目安

『細雪』を読むのにかかる時間の目安をまとめました。

読書計画を立てる際の参考にしてください。

項目 内容
文字数 約588,000文字
推定ページ数 約980ページ
読書時間 約19時間40分
1日1時間読書 約20日で読了
1日2時間読書 約10日で読了
読みやすさ やや読みにくい(古典的な文体)

『細雪』は長編小説なので、じっくり時間をかけて読むことをおすすめします。

関西弁の会話や季節の描写を味わいながら読むと、より深く楽しめますよ。

 『細雪』はどんな人向けの小説か?

『細雪』は以下のような人に特におすすめできる小説です。

  • 家族の絆や人間関係について深く考えたい人
  • 昭和初期の日本文化や生活様式に興味がある人
  • 谷崎潤一郎の美しい文章表現を味わいたい人

『細雪』は家族小説として非常に優れた作品なので、家族の絆や姉妹の関係について考えたい人にぴったりです。

また、昭和初期の上流階級の生活が詳細に描かれているため、その時代の文化や風俗に興味がある人にも楽しめます。

谷崎潤一郎の流麗な文章と関西弁の会話も魅力的で、日本語の美しさを感じたい人にもおすすめできます。

逆に、アクションやミステリーを求める人、短時間で読み終えたい人には向かないかもしれません。

この作品は時間をかけてゆっくり読むことで真価を発揮する小説なので、じっくり読書を楽しみたい人に最適です。

あの本が好きなら『細雪』も好きかも?似ている小説3選

『細雪』と似た雰囲気や要素を持つ小説を3つご紹介します。

『細雪』が気に入った人なら、きっと以下の作品も楽しめるはずです。

『源氏物語』- 紫式部

平安時代の宮廷社会を舞台にした古典文学の最高峰です。

光源氏と多くの女性たちとの恋愛模様が描かれています。

『細雪』と同じく、上流階級の生活や女性の心理が細やかに描写されている点が似ています。

また、季節感豊かな描写や優雅な文体も共通する魅力です。

『舞姫』- 森鴎外

明治時代の知識人がドイツ留学中に体験した恋愛を描いた作品です。

主人公のエリートと舞姫エリスとの悲恋が美しく描かれています。

『細雪』と同じく、社会的な制約の中での恋愛や結婚の困難さが共通のテーマです。

また、時代の変化に翻弄される人々の姿も似ています。

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『春琴抄』- 谷崎潤一郎

同じく谷崎潤一郎の代表作で、盲目の三味線師匠と弟子の物語です。

春琴と佐助の献身的な愛情が美しく描かれています。

『細雪』と同じ作者なので、美しい文章表現や関西を舞台にした設定が共通しています。

また、日本の伝統文化への深い愛情も両作品に共通する要素です。

振り返り

『細雪』は谷崎潤一郎が描いた昭和初期の家族小説として、今でも多くの人に愛され続けている名作です。

四姉妹それぞれの個性と人生が繊細に描かれており、特に雪子の見合いを通して当時の社会や家族制度の複雑さがよく分かります。

長編小説なので読むのに時間がかかりますが、谷崎潤一郎の美しい文章と関西弁の会話を味わいながら、ゆっくり読み進めることをおすすめします。

読書感想文を書く際には、四姉妹の性格の違いや時代背景、家族の絆について深く考察してみてください。

きっと素晴らしい読書体験と感想文が書けるはずです。

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