泉鏡花『高野聖』のあらすじを簡単に(ネタバレ含む)

泉鏡花『高野聖』のあらすじ あらすじ

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泉鏡花『高野聖(こうやひじり)』のあらすじを簡単に・ネタバレありで詳しく解説していきますね。

『高野聖』は明治時代の幻想文学の名作として知られる泉鏡花の代表作。

1900年に発表されたこの作品は、高野山の僧侶が語る不思議な体験談を通して、現実と幻想が入り混じる神秘的な世界を描いています。

年間100冊以上の本を読む読書家の私が、この作品の奥深い魅力と複雑な構造を皆さんにわかりやすく伝えていこうと思います。

読書感想文を書く予定の学生の皆さんにとって、この記事が『高野聖』の理解を深める手助けになるよう、あらすじから豆知識、感想まで丁寧に解説していきますよ。

それでは、さっそく進めていきましょう。

『高野聖』のあらすじを簡単に短く(ネタバレ)

若狭への帰省途中の汽車で、語り手の「私」は高野聖と呼ばれる中年の僧侶と出会う。敦賀の宿で僧侶から聞いた話は、若い頃の彼が飛騨の山中で体験した奇怪な出来事だった。険しい山道で道に迷った僧侶は、美しい女性の住む孤家にたどり着く。女性は親切に僧侶の世話をするが、彼女には男を獣に変える恐ろしい妖力があった。僧侶は危険を察知して逃げ出すが、その体験は彼の心に深い印象を残していた。

『高野聖』のあらすじを詳しく(ネタバレ)

物語は二重構造になっている。現在部では、若狭への帰省中の「私」が汽車内で高野聖の宗朝と知り合い、敦賀の宿で一夜を共にする。そこで宗朝から聞かされるのが、彼の若い頃の体験談である回想部だ。20歳頃の宗朝は修行のため飛騨の山を越えようとしていた。道中で出会った富山の薬売りが危険な旧道に入っていったため、これを追った宗朝も山中で道に迷ってしまう。蛇や山蛭に襲われながらも、美しい女性の住む孤家にたどり着く。女性は親切に宗朝の傷を癒してくれるが、彼女と白痴の少年、老人の三人で暮らすこの家には不可思議な雰囲気が漂っていた。翌朝、女性のもとを離れた宗朝だったが、彼女への想いが忘れられず引き返そうとする。そこで老人から聞かされた真実は、女性が男を獣に変える妖力を持ち、富山の薬売りも馬に変えられて売られてしまったというものだった。恐怖に駆られた宗朝は山を駆け下りて逃げ去った。

『高野聖』のあらすじを理解するための豆知識

『高野聖』を深く理解するために、作中に登場する重要な用語や概念について説明しておきますね。

これらの知識があると、物語の世界により深く入り込むことができますよ。

用語 説明
高野聖 高野山を拠点として全国を遊行し、布教や勧進を行った僧侶のこと。
作中では特別な呪術や神通力を持つ聖者として描かれている。
飛騨天生峠 岐阜県と富山県の境にある険しい山道。
物語の舞台となる人里離れた秘境の象徴として使われている。
陀羅尼 仏教の呪文や真言を集めたお経。
作中では僧侶が魔を払うために唱える護身の呪文として登場する。
魔性の女 男性を魅惑し、破滅に導く超自然的な力を持った女性。
泉鏡花文学に頻繁に登場する重要なモチーフの一つである。
変身譚 人間が動物などに姿を変える物語の形式。
『高野聖』では男性が馬に変えられるという恐ろしい変身が描かれる。
富山の薬売り 薬を先に置いて使った分だけ後で払う
「先用後利」の商法で、全国に富山の薬を広めた行商人。

これらの用語を頭に入れておくと、『高野聖』の神秘的で幻想的な世界観がより深く味わえるはずです。

『高野聖』の感想

『高野聖』を読み終えて、正直言うと最初は「何だこれは?」という感じでした。

現代の小説に慣れた私にとって、鏡花の独特な文体と幻想的な世界観は最初かなり戸惑いましたね。

でも読み進めるうちに、その美しくも恐ろしい文章の魔力にすっかり引き込まれてしまいました。

特に印象的だったのは、山中の描写の美しさと恐ろしさが絶妙に混じり合っているところです。

蛇や山蛭が襲いかかる場面なんて、読んでいて本当に背筋がゾクゾクしましたよ。

そして何より、あの妖艶な女性の描写がやばかった!

美しいんだけど、どこか得体の知れない恐ろしさを秘めていて、読んでいる私も宗朝と一緒にその魅力に引き込まれそうになりました。

川で体を洗ってもらう場面なんて、官能的でありながらも不気味で、この相反する感情がなんとも言えない緊張感を生み出していましたね。

物語の構造も面白くて、現在の僧侶が過去の体験を語るという入れ子構造になっているんです。

これがまた読者を物語の世界に引き込む効果を高めているんですよね。

ただ、正直なところ理解に苦しんだ部分もありました。

特に最後の方で、女性の正体が明かされる場面は「え、そういうことだったの?」という感じで、もう一度読み返してやっと腑に落ちた感じです。

現代の読者には少し難解な部分もあるけれど、それも含めて『高野聖』の魅力なんでしょうね。

泉鏡花の文章力は本当にすごくて、体言止めを使ったリズム感のある文体が、物語の幻想的な雰囲気を盛り上げています。

声に出して読んでみると、その音楽的な美しさがより際立って感じられますよ。

明治時代の作品でありながら、人間の根源的な欲望や恐怖を描いた普遍的なテーマは今でも十分に通用する内容だと思います。

読み終わった後の余韻がすごくて、しばらく物語の世界から抜け出せませんでした。

これぞ古典文学の醍醐味というやつですね。

※『高野聖』の分かりにくい点はこちらの記事で解説しています。

『高野聖』の女の正体とメッセージ性をわかりやすく解説!
『高野聖』の「女の正体は?」「あの表現の意味は?」という疑問をすべて解決。泉鏡花が込めたテーマ性と名作として評価される理由を、読書家がわかりやすく説明した決定版解説です。

『高野聖』の作品情報

項目 内容
作者 泉鏡花
出版年 1900年(明治33年)
出版社 春陽堂(雑誌『新小説』掲載)
受賞歴 特になし(ただし文学史上の名作として評価)
ジャンル 幻想文学・怪奇小説
主な舞台 飛騨の山中・敦賀の宿
時代背景 明治時代初期
主なテーマ 聖と俗・欲望と信仰・現実と幻想
物語の特徴 二重構造・語りの文学・耽美主義
対象年齢 高校生以上
青空文庫 収録(こちら

『高野聖』の主要な登場人物とその簡単な説明

『高野聖』に登場する重要な人物たちを紹介しますね。

それぞれの人物が物語に深みを与えているんですよ。

人物名 紹介
物語の聞き手となる若者。
若狭への帰省途中で宗朝と出会い、彼の体験談を聞く。
宗朝(旅僧) 45、6歳の高野聖。
若い頃の不思議な体験を語る物語の主人公。
29、30歳くらいの美しい女性。
山中の孤家に住み、男を獣に変える妖力を持つ。
白痴の少年(次郎) 24歳の肥った男性。
女の夫として一緒に暮らしている。
親仁 馬引きの老人。
女の秘密を宗朝に明かす重要な役割を果たす。
富山の薬売り 若い薬売りの男性。
女の妖力によって馬に変えられてしまう。
香取屋の夫婦 敦賀の旅籠宿の主人夫婦。
宗朝と顔なじみで宿を提供する。
百姓 道案内をしてくれる農民。
宗朝に危険な旧道を避けるよう忠告する。
茶店の女 麓の茶店で働く女性。
宗朝に水の安全について教える。

『高野聖』の読了時間の目安

『高野聖』の読了時間について詳しく説明しますね。

短編小説なので、比較的短時間で読み終えることができますよ。

項目 内容
文字数 約37,000文字
ページ数 約62ページ
読了時間 約1時間14分
読了日数 1日(集中して読めば)
読みやすさ やや難しい(古典的な文体のため)

短編なので物理的には1日で読み終えられますが、泉鏡花特有の文体に慣れるまで時間がかかるかもしれません。

じっくり味わいながら読むことをおすすめしますよ。

『高野聖』はどんな人向けの小説か?

『高野聖』は特定の読者層に特に響く作品だと思います。

以下のような人におすすめですね。

  • 幻想的で神秘的な物語が好きな人
  • 古典的な日本文学に興味がある人
  • 怪奇小説やホラー要素のある作品を楽しめる人
  • 美しい日本語の文章表現を味わいたい人
  • 心理的な深層を探求する作品を好む人
  • 短編小説で凝縮された世界観を楽しみたい人
  • 現実と非現実の境界が曖昧な作品に興味がある人

逆に、明確なプロットや現代的な文体を好む人には少し難しく感じられるかもしれません。

でも、日本文学の奥深さを知りたい人には絶対におすすめの作品ですよ。

あの本が好きなら『高野聖』も好きかも?似ている小説3選

『高野聖』の幻想的で耽美な世界観が気に入った人におすすめの、似た雰囲気を持つ作品を3つ紹介しますね。

どれも『高野聖』と共通する魅力を持った名作ばかりですよ。

上田秋成『雨月物語』

『雨月物語』は江戸時代に書かれた怪異小説集で、『高野聖』の先駆けとも言える作品です。

人間と超自然的存在との出会いを描いた短編集で、特に「吉備津の釜」や「浅茅が宿」などは男女の情念と怪異が結びつく点で『高野聖』と共通しています。

古典的な文体と幻想的な世界観、そして人間の業を描いた深いテーマ性が『高野聖』と非常によく似ているんです。

谷崎潤一郎『春琴抄』

『春琴抄』は盲目の美女とその弟子の異常な愛を描いた耽美主義の傑作です。

『高野聖』と同様に、美しさの中に潜む恐ろしさや、倒錯的な魅力を持った女性が登場します。

官能性と文学性が見事に融合した点、そして古風で美しい日本語表現が『高野聖』の魅力と重なる部分が多いですね。

内田百閒『冥途』

『冥途』は夢と現実の境界が曖昧な、不可思議な旅を描いた作品です。

論理的な整合性よりも感覚的なつながりを重視する点で、『高野聖』の世界観と非常に近いものがあります。

散文詩のような美しい文章と、どこか不穏で神秘的な雰囲気が『高野聖』好きの心に響くはずですよ。

振り返り

泉鏡花『高野聖』のあらすじから感想まで、詳しく解説してきました。

この作品は明治時代の幻想文学の傑作として、現在でも多くの読者に愛され続けています。

現実と幻想が入り混じる神秘的な世界観、美しくも恐ろしい女性の描写、そして泉鏡花特有の音楽的な文体が織りなす独特の魅力は、一度読んだら忘れられないものになるでしょう。

読書感想文を書く皆さんにとって、この記事が『高野聖』の理解を深める手助けになれば嬉しいです。

古典文学の奥深い世界をぜひ味わってみてくださいね。

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