『黒い雨』あらすじを簡単に&詳しく※本・小説版

『黒い雨』のあらすじ あらすじ

※プロモーションが含まれています

井伏鱒二の名作『黒い雨』のあらすじを、簡単に・短く・詳しく・ネタバレなしで紹介していきますね。

『黒い雨』は戦後広島を舞台に、原爆による「黒い雨」を浴びた家族の苦悩を描いた井伏鱒二による感動的な作品。

1966年に野間文芸賞を受賞したこの小説は、被爆者の実体験に基づいて書かれた戦争文学の傑作として高く評価されています。

年間100冊以上の本を読む私が、この深いテーマを扱った作品のあらすじや読んだ感想を、読書感想文を書く予定の学生の皆さんに分かりやすく解説していきますよ。

それでは、さっそく『黒い雨』の世界へと足を踏み入れてみましょう。

当記事では本/小説の『黒い雨』のあらすじを「結末を明かさないネタバレなし」でご紹介します(映画版のあらすじは扱っていません)。

井伏鱒二の本『黒い雨』のあらすじを簡単に(ネタバレなし)

戦後の広島を舞台に、原爆による「黒い雨」を浴びた一家が病と偏見に苦しみながらも希望を抱いて生きる姿を描いた物語。主人公の閑間重松は妻・シゲ子と姪・矢須子と暮らしているが、矢須子の縁談が持ち上がるたび、原爆の「黒い雨」を浴びたという噂が広まり破談になってしまう。重松は当時の日記を清書して矢須子が被爆していないことを証明しようとするが、やがて矢須子にも原爆症の兆候が現れることが判明する。

井伏鱒二の本『黒い雨』のあらすじを詳しく(ネタバレなし)

広島市への原子爆弾投下より数年後の広島県東部、神石郡小畠村。閑間重松とシゲ子の夫妻は戦時中広島市内で被爆し、その後遺症で重労働をこなすことができずにいた。養生のために散歩や魚釣りをすれば、口さがない村人から怠け者扱いされる始末である。やりきれない重松は村在住の被爆者仲間を説得し、鯉の養殖を始めようと決意する。一方で重松は同居する姪・矢須子のことで頭を痛めていた。婚期を迎えた彼女だが、縁談が持ち上がるたびに被爆者であるという噂が立ち、縁遠いままなのである。昭和20年8月6日朝、重松は広島市内横川駅で、シゲ子は市内千田町の自宅でそれぞれ被爆したが、矢須子は社用で爆心地より遠く離れた場所におり、直接被爆はしていないはずだったが……。

小説『黒い雨』のあらすじを理解するための用語解説

『黒い雨』を読み進める上で重要な用語をまとめました。

これらの用語を理解しておくと、物語の背景やテーマがより深く理解できますよ。

用語 説明
黒い雨 原子爆弾投下後に降った
煤や放射性物質を含んだ黒色の雨のこと。
放射能を帯びており、
被爆範囲を広げる恐ろしい存在。
原爆症 原爆投下により
放射線被曝したことによる健康被害の総称。
作中の矢須子の症状として登場し、
社会的偏見や病の恐怖の背景となる。
日記形式 物語の大部分は
閑間重松の当時の日記の清書として進む。
これにより戦後の「日常」と
原爆直後の「非日常」の時間が交錯しながら描かれる。
白い虹 物語中に繰り返し登場する、
太陽を貫く一本の白い虹のこと。
悪いことの前兆とも取れる象徴で、
戦争の不安と終戦の曖昧な心情を表す。
社会的偏見 被爆者やその家族に対して
当時の社会で根強かった差別や偏見。
婚約破棄などの形で物語の重要なテーマの一つ。

これらの用語は物語の背景やテーマを深く掘り下げるうえで不可欠な要素です。

『黒い雨』を読んだ私の感想

正直に書くと、『黒い雨』を読み終えた時の私の気持ちは複雑でした。

まず何といっても、この作品の圧倒的な現実感に心を揺さぶられましたね。

井伏鱒二さんが実際の被爆者の日記や手記をベースにしているだけあって、描写の一つひとつがまるで自分がその場にいるかのような生々しさでした。

特に感動したのは、主人公・重松の人間味あふれる描写です。

被爆による体調不良で重労働ができないことを村人に揶揄されながらも、姪の矢須子のために必死に奔走する姿には本当に心を打たれました。

鯉の養殖を始めようとしたり、矢須子の縁談をなんとかまとめようと日記を清書したりする姿は、まさに家族を思う優しい叔父さんそのものでしたよ。

私が特に印象的だったのは、『黒い雨』全体に流れる静かで淡々とした語り口調です。

原爆という凄惨な出来事を扱っているにも関わらず、感情的になりすぎることなく、まるで日記を読んでいるような自然な文体で進んでいく。

この控えめな表現だからこそ、逆に被爆者の苦しみや社会的偏見の重さがじんわりと胸に迫ってくるんですよね。

読んでいて「ああ、こんな理不尽なことがあっていいのか」と何度も思いました。

特に矢須子の縁談が被爆者の噂で次々と破談になってしまう場面では、戦後社会の冷酷さに憤りを感じずにはいられませんでした。

しかし同時に理解できなかった点もありました。

それは作品全体を通じて、登場人物たちが政府や社会に対してあまり怒りを表さないことです。

私のような現代の読者からすると「もっと怒ってもいいのでは」と思ってしまうのですが、これこそが当時の人々の心境だったのかもしれませんね。

諦めと受容の中で、それでも日常を懸命に生きていこうとする姿勢。

これが井伏鱒二さんが描きたかった戦後の庶民の心なのだと思います。

また、物語の中で繰り返し登場する「白い虹」の象徴性にも感銘を受けました。

不吉な前兆とも希望の兆しとも取れるこの白い虹が、重松の心境の変化と重なって描かれているのが本当に巧妙でした。

最後に、私が最も胸を打たれたのは、重松が矢須子の回復を祈って空に虹を想像するラストシーンです。

絶望的な状況の中でも希望を捨てない人間の強さ、そして家族への深い愛情が込められたこの場面は、読み終えた後も長い間心に残りました。

『黒い雨』は確かに重いテーマを扱った作品ですが、その中にある人間の優しさや強さを静かに描いた名作だと私は思います。

※『黒い雨』の読書感想文の例と書き方(高校生~中学生向け)はこちらです。

『黒い雨』読書感想文の例※コピペ厳禁【高校生~中学生向け】
『黒い雨』の読書感想文の書き方を中学生・高校生向けに解説。重要な3つの要点から1200字~2000字の例文、題名・書き出しのコツまで詳しく紹介します。コピペではない自分の言葉で書く方法をお教えします。

小説『黒い雨』の作品情報

『黒い雨』の基本的な作品情報をまとめました。

項目 詳細
作者 井伏鱒二
出版年 1966年
出版社 新潮社
受賞歴 第19回野間文芸賞
ジャンル 戦争文学・被爆文学
主な舞台 戦後の広島県神石郡小畠村
時代背景 原爆投下数年後の戦後復興期
主なテーマ 被爆者の苦悩・社会的偏見・平和への祈り
物語の特徴 日記形式による現実的な描写
対象年齢 中学生以上(全年齢対象)
青空文庫 未収録

これらの情報は読書感想文を書く際の基礎資料として活用してくださいね。

小説『黒い雨』の主要な登場人物とその簡単な説明

『黒い雨』の主要な登場人物をご紹介します。

物語を理解する上で重要な人物たちですので、しっかりと覚えておきましょう。

人物名 紹介
閑間重松(しずま しげまつ) 主人公。
広島市内で被爆し、
田舎に移り住み妻と姪と暮らす。
自身の健康不安と矢須子の被爆噂問題に悩む。
閑間シゲ子 重松の妻。
被爆時は市内千田町の自宅にいて
重松と共に後遺症を抱える。
閑間矢須子(やすこ) 重松夫妻の姪。
原爆投下直後、家族の安否を確かめるため
爆心地付近を訪れ「黒い雨」を浴びてしまう。
縁談のたびに”被爆者”と噂され原爆症も発症する。

この三人が『黒い雨』の中心人物として、戦後社会での苦悩と希望を描いていく重要な存在ですよ。

『黒い雨』の読了時間の目安

『黒い雨』を読むのにどれくらい時間がかかるか目安をお伝えしますね。

項目 詳細
総ページ数 416ページ/新潮文庫
推定文字数 約249,600文字
読了時間の目安 約8時間20分
1日1時間読書の場合 約8-9日で完読
読みやすさ 平易な文体で読みやすい

『黒い雨』は比較的平易な文章で書かれているため、集中して読めば意外とスムーズに読み進められる作品です。

重いテーマを扱っていますが、文体自体は親しみやすく、中学生でも無理なく読めるでしょう。

『黒い雨』はどんな人向けの小説か?

『黒い雨』がどのような読者におすすめできる作品なのか、私の考えをお伝えしますね。

特に以下のような方々には強くおすすめできる作品だと思います。

  • 学生や若い世代で広島の原爆や戦後史を学びたい人
  • 戦争の悲惨さや被爆者の苦悩を文学的に知りたい人
  • 歴史や平和学に興味がある一般読者

一方で、あまりにも重いテーマを扱っているため、軽い読み物を求めている方や、エンターテインメント性を重視する読者にはやや向かないかもしれません。

しかし『黒い雨』は平易で淡々とした文体で書かれており、全年齢対象で読みやすい作品ですから、多くの方に手に取っていただきたい名作ですね。

あの本が好きなら『黒い雨』も好きかも?似ている小説3選

『黒い雨』と似たテーマや文体を持つ作品をご紹介します。

戦争や被爆体験を扱った文学作品の中から、特におすすめの3作を選びました。

遠藤周作『海と毒薬』

戦時中の軍医の立場から、日本軍の人体実験や戦争犯罪の実態を描いた作品です。

戦争の倫理的問題や人間の矛盾を鋭く問う点で、『黒い雨』と同様に戦争の悲惨さや複雑な社会問題を扱っています。

静かな語り口で重いテーマに向き合う姿勢が『黒い雨』と共通しているでしょう。

大岡昇平『野火』

戦地での日本兵の悲劇や戦争の無意味さをリアルに描写した名作です。

兵士の内面心理や戦争の非人間性を淡々と描き出す文体は、『黒い雨』の冷静な筆致とも通じるものがあります。

戦争が個人に与える深い傷を文学的に表現している点で似ている作品ですね。

大田洋子『夕凪の街と人と』

広島の原爆被害者の生活と心情を繊細に描いた作品で、『黒い雨』と同じく被爆者の苦悩と戦後の社会的偏見を中心に据えています。

広島出身で被爆者の実体験に基づいた作品として、被爆文学の重要な一作です。

被爆体験を静かに語る文体や、日常生活の中の苦しみを描く手法が『黒い雨』と非常によく似ているでしょう。

振り返り

井伏鱒二の『黒い雨』について、あらすじから感想、作品情報まで幅広くご紹介させていただきました。

この作品は原爆という重いテーマを扱いながらも、静かで優しい筆致で被爆者の日常と苦悩を描いた名作です。

読書感想文を書く予定の皆さんにとって、きっと多くの学びと感動をもたらしてくれる一冊になるはずですよ。

戦争の悲惨さや平和の大切さを、文学を通じて深く考える機会として、ぜひ『黒い雨』を手に取ってみてくださいね。

コメント