『城の崎にて』のあらすじを簡単に短くをご紹介します。
志賀直哉のこの名作は、彼自身の実体験をもとに書かれた心に染みる短編小説ですよ。
年間100冊以上の本を読む読書好きとして、この作品の魅力や価値を皆さんにお伝えしたいと思います。
特に読書感想文に取り組もうとしている学生の皆さんの助けになれると嬉しいですね。
それでは早速、あらすじや作品の特徴、読書感想文を書く際のポイントなどを詳しく紹介していきましょう。
『城の崎にて』のあらすじ(簡単に短く100字で)
『城の崎にて』の中間の長さのあらすじ
『城の崎にて』の詳しいあらすじ
東京の山手線で電車に跳ね飛ばされる事故に遭い、命拾いした「自分」は、傷の療養のため但馬の城崎温泉を訪れていた。医者からは背中の傷が脊椎カリエスになれば致命傷になりかねないと告げられていたが、友人にはそれを否定していた。
静かな温泉町で「自分」は近年になく落ち着いた気持ちで過ごしていた。ある日の散歩で、「自分」は道端で死んだ蜂を見つけ、不思議と親しみを感じる。また別の日には、首に魚串が刺さった鼠が車夫や子供たちに石を投げられ、逃げ惑う姿を目にする。さらに小川でイモリを見つけた「自分」は、驚かそうとして石を投げるが、それが当たってイモリを殺してしまう。
これらの小さな生き物たちとの出会いと別れを通して、「自分」は生と死について深く考えるようになった。特に自分が電車に跳ね飛ばされながらも生き延びたことと、これらの生き物の死を重ね合わせ、生きることと死ぬことの意味、そしてそれらが単なる対極ではなく自然な営みの一部であることを感じ始めていく。
『城の崎にて』の作品情報
『城の崎にて』はどんな小説なのか、基本的な情報をまとめてみましたよ。
作者 | 志賀直哉 |
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出版年 | 1917年(大正6年)5月 |
出版社 | 同人誌『白樺』に初掲載(のちに新潮文庫や角川文庫などから出版) |
受賞歴 | 特になし(ただし日本の私小説の代表作として高い評価を受けている) |
ジャンル | 私小説、心境小説 |
主な舞台 | 兵庫県の城崎温泉 |
時代背景 | 大正時代初期 |
主なテーマ | 生と死、自然との共生、孤独、内省 |
物語の特徴 | 淡々とした文体で内面の変化を描写、小さな生き物との交流を通じた哲学的考察 |
対象年齢 | 中学生以上(中学の教科書にも掲載されることがある) |
『城の崎にて』の主要な登場人物とその簡単な説明
『城の崎にて』には多くの登場人物が出てくるわけではなく、主人公の「自分」を中心に物語が展開していきます。
それでも何人かの人物が登場しますので、簡単に紹介しますね。
人物名 | キャラクター紹介 |
---|---|
自分 | 主人公。 山手線の電車に跳ね飛ばされて怪我をし、 療養のために城崎温泉を訪れる。 生と死について考えを深めていく。 |
医者 | 「自分」に対して、背中の傷が脊椎カリエスになれば 致命傷になりかねないと告げた人物。 |
友 | 「自分」の傷が致命的なものかどうかを質問され、 それを否定した人物。 |
車夫 | 首に魚串が刺さった鼠に石を投げる 40歳くらいの男性。 |
子供たち | 車夫と同じように鼠に石を投げている 2、3人の子供たち。 |
この物語は登場人物による会話や人間関係よりも、主人公「自分」の内面の変化や自然との交流に焦点が当てられていることが特徴ですよ。
※『城の崎にて』で志賀直哉が伝えたいことは以下の記事にまとめています。

『城の崎にて』の文字数と読むのにかかる時間(読了時間)
『城の崎にて』は短編小説なので、それほど時間をかけずに読み終えることができますよ。
具体的な文字数と読了時間の目安を以下にまとめてみました。
文字数 | 約5,280文字 |
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ページ数 | 約9ページ(1ページあたり600文字で計算) |
読了時間 | 約11分(1分間に500文字読むと想定) |
難易度 | 中程度 (文体は簡潔だが、内容は深い哲学的テーマを含む) |
この作品は短い時間で読めるのに、深い内容が詰まっているのが特徴ですね。
通学や通勤の電車の中でも十分に読み終えられる長さですよ。
また、何度か読み返すことで新たな発見があるかもしれませんね。
『城の崎にて』の読書感想文を書くうえで外せない3つの重要ポイント
読書感想文を書く際には、作品の核心に触れることが大切です。
『城の崎にて』の場合、特に以下の3つのポイントを押さえておくといいでしょう。
- 生と死の境界線を見つめる視点
- 自然との調和と心の平穏
- 日常の中に潜む人生の真理
それでは、これらのポイントについて詳しく解説していきますね。
生と死の境界線を見つめる視点
『城の崎にて』の主人公は、電車事故で九死に一生を得た経験から、生と死について深く考えるようになります。
作品中では、蜂の死骸、首に魚串が刺さった鼠、自分が投げた石で死んでしまったイモリという3つの生き物の死が象徴的に描かれていますよ。
主人公はこれらの出来事を通して、死が身近にあることを実感し、自分も死ぬかもしれなかった事故との関連を考えます。
特に注目すべきは、それぞれの生き物の死に対する主人公の受け止め方の違い。
蜂の死には不思議な親しみを感じ、鼠の苦しみには同情し、イモリの死には罪悪感を抱きます。
これらの経験を通じて、主人公は生と死が対立するものではなく、連続した自然の営みの一部であることを悟っていくのです。
読書感想文では、主人公のこうした死生観の変化について、自分自身の経験や考えと比較しながら書くといいですよ。
自然との調和と心の平穏
『城の崎にて』では、城崎という自然豊かな温泉地での療養生活が描かれています。
主人公は都会の喧騒から離れ、小川のせせらぎや山々の風景に囲まれて過ごすことで、「近年になく静まって落ち着いたいい気持」を感じています。
この自然との調和が、主人公の心の平穏をもたらし、深い思索を可能にしているのです。
現代社会では、常に情報や刺激に囲まれた生活を送りがちですが、この作品は自然と向き合い、静かに自分自身と対話することの大切さを教えてくれますね。
読書感想文では、自然環境が人間の心に与える影響について考察したり、自分自身が心の平穏を感じる場所や瞬間について触れたりすると、深みのある内容になるでしょう。
日常の中に潜む人生の真理
『城の崎にて』の魅力は、特別な出来事ではなく、日常の何気ない場面の中に人生の真理を見出している点にあります。
散歩の途中で見つけた蜂の死骸、偶然目にした鼠の姿、小川で見つけたイモリ―これらはどれも特別なことではありません。
しかし、主人公はこれらの日常的な出来事を通して、生と死について深く考え、自分の存在意義や生き方について思いを巡らせます。
この作品は、私たちの周りにある日常の風景や出来事の中にこそ、人生の真理や深い意味が隠されていることを教えてくれるのです。
読書感想文では、自分の日常生活における「小さな発見」や「気づき」にも触れながら、日常と人生の真理の関係について考察すると良いでしょう。
※『城の崎にて』の解説はこちらへどうぞ。

『城の崎にて』の読書感想文の例(原稿用紙3枚強/約1300文字)
私は今回、志賀直哉の『城の崎にて』を読んだ。最初は古い小説だし難しそうだなと思ったけど、読み進めるうちに自分の身の回りのことを考えさせられる不思議な作品だった。
主人公は電車にはねられる大きな事故に遭いながらも、奇跡的に命を取り留めて療養のために城崎温泉に行く。普段なら死ぬはずだった人が生きている―そんな特別な状態の人間が見る世界は、いつもとは違って見えるんだろうなと思った。
私も小学生の時に高熱で入院したことがあって、その時は「もしかして死ぬかも」って本気で怖かった。だから主人公が生と死について考えるのが、ちょっとだけど分かる気がする。でも私の場合はそれ以上深く考えたりしなかったから、大人になるってこういうことなのかなとも思った。
作品の中で印象に残ったのは、3つの生き物との出会いだ。まず蜂の死骸を見て、主人公は不思議と「親しみ」を感じる。普通なら気持ち悪いとか思いそうなのに、なんで親しみなんだろうと最初は疑問だった。でも読み進めると、主人公自身も死に近い体験をしたから、死んだものに対して特別な感情を持つようになったんだと分かった。
次に出てきた首に魚串が刺さった鼠は、生きているのに死に向かっている状態で、それを見た主人公は「自分もあんな風に死んでいくのかも」と想像したんだと思う。そして最後のイモリは、主人公自身が石を投げたせいで死んでしまう。事故で自分は他人(電車の運転手とか)に殺されかけたのに、今度は自分が他の生き物を殺してしまった。この逆転がすごく意味深いと思った。
私たちは普段、死ぬことなんて考えずに生きている。でも実際はいつ死んでもおかしくないし、他の生き物の命も簡単に奪ってしまうかもしれない。この作品を読んで、生きるってなんだろう、死ぬってどういうことだろうと考えさせられた。
自然の中で過ごすことについても考えさせられた。主人公は都会から離れた城崎で「近年になく静まって落ち着いたいい気持」を感じている。私も普段はスマホやゲームに囲まれた生活をしているけど、たまに家族で山に行ったりすると、なんか心が落ち着くような気がする。それは主人公が感じたことと似ているのかなと思った。
この作品の面白いところは、特別な出来事が起こるわけじゃないのに、日常の小さな出来事から深いことを考えさせられる点だと思う。私も散歩中に死んだ虫を見つけたり、川でカエルを見たりすることはあるけど、そこから生と死について考えたりはしない。でも主人公はそういう小さなことから大きなことを考える。それが大人の見方なのかな、と思った。
この作品を読んで、自分の周りの小さな出来事にも、もっと意味があるのかもしれないと思うようになった。スマホばかり見ていないで、もっと周りの自然や生き物に目を向けてみたら、新しい発見があるかもしれない。
学校の課題で読んだ本だけど、意外と自分の生活や考え方について見つめ直すきっかけになったと思う。難しい言葉もあったけど、何回か読み返すうちに少しずつ理解できるようになった気がする。これからも日常の中の「ふつう」だと思っていることの中に、実はすごく大事なことが隠れているかもしれないと意識して生きていきたい。
『城の崎にて』はどんな人向けの小説か
『城の崎にて』は、特定の読者層に強く響く作品だと言えますね。
どんな人にオススメの小説なのか、考えてみました。
- 生と死について深く考えたい人
- 自然や小さな生き物の描写を楽しみたい人
- 内省的な時間を大切にする人
- 簡潔な文体で表現された深い思索を好む人
- 日本文学、特に私小説に興味がある人
この作品は派手なストーリー展開はありませんが、人生や存在の意味について考えさせてくれる深い内容を持っています。
日常の何気ない出来事から哲学的な思索へと導かれる体験を求める読者に、特にオススメの一冊ですよ。
『城の崎にて』と類似した内容の小説3選
『城の崎にて』を読んで感銘を受けた方は、以下の作品も気に入るかもしれませんね。
生と死、人間の内面、自然との調和といったテーマを扱った作品を3つ紹介します。
『檸檬』(梶井基次郎)
梶井基次郎の『檸檬』も、主人公の内面世界を繊細に描いた作品です。
病気に苦しむ主人公が、ある日買った一つの檸檬(レモン)に心惹かれていく様子を通して、生の実感や心の揺れ動きが描かれていますよ。
『城の崎にて』と同様に、一見何気ない日常の一場面から、深い内面の動きを描き出している点が共通しています。
『羅生門』(芥川龍之介)
芥川龍之介の『羅生門』は、生きることの意味や困難に直面した人間の選択を描いた作品です。
飢饉の時代、仕事を失った下人が生きるために盗みをするか悩む姿を通して、人間の本質や生存の意味を問いかけています。
『城の崎にて』と同じく、人間存在の根源的な問いを投げかける点で共通していますね。
『坊っちゃん』(夏目漱石)
『坊っちゃん』は、直情的な主人公が地方の学校に赴任し、さまざまな人間模様の中で成長していく様子を描いた作品です。
『城の崎にて』とは異なるアプローチながら、主人公の内面変化や成長を通じて人生の意味を問うている点では共通しています。
また、志賀直哉と夏目漱石は文学的な交流もあり、日本文学の流れを知る上でも読み比べる価値がありますよ。

振り返り
今回は志賀直哉の名作『城の崎にて』について、あらすじから読書感想文のポイントまで幅広く紹介してきました。
この小説は短編ながらも、生と死、自然との調和、日常に潜む真理といった普遍的なテーマを静かに、しかし力強く描いた作品ですね。
読書感想文を書く学生の皆さんには、主人公の内面の変化や小さな生き物との出会いから生まれる気づきに注目しながら読んでみてください。
また、自分自身の経験や考えと照らし合わせながら読むことで、より深い理解と共感が生まれるでしょう。
短時間で読める作品なので、何度も読み返しながら、その都度新たな発見を楽しんでみてくださいね。
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