魯迅の『故郷』のあらすじを知りたい皆さん、こんにちは。
本記事では、中国近代文学の巨匠・魯迅の代表作『故郷』について詳しく紹介していきますよ。
この小説は1921年に発表され、のちに魯迅の最初の作品集『吶喊』に収録された名作。
日本では中学校の国語教科書に長年掲載されている親しみやすい短編小説でもあります。
私は年間100冊以上の本を読む読書家ですが、『故郷』は何度読んでも深い感動を覚える作品ですね。
読書感想文を書く予定の学生の皆さんにとって役立つ情報を、短くて簡単なあらすじから詳しい解説まで丁寧にお届けしましょう。
『故郷』の短くて簡単なあらすじ
『故郷』の中間の長さのあらすじ
二十年ぶりに故郷に戻った「私」は、代々住んでいた家を売却するために帰郷した。幼い頃の美しい思い出とは異なる寂れた風景に失望を感じながらも、母から幼なじみの閏土の話を聞き、鮮やかな記憶がよみがえる。
かつて親しく遊んだ閏土との再会は、「私」に衝撃を与えた。老け衰えた閏土の姿と「旦那様」と呼ぶ態度からは、二人の間に厚い階級の壁が築かれていることを痛感する。引っ越しの日、閏土の子供と「私」の甥が仲良く交わる様子を見て、「私」は次世代には自分たちのような壁が生まれないことを願うのだった。
『故郷』の詳しいあらすじ(ネタバレあり)
「私」は二十年ぶりに故郷に帰ってきた。目的は、代々住んでいた古い家屋敷を売却し、引っ越すためである。
故郷に到着した「私」は、かつての美しい記憶とは異なる寂れた風景に失望を感じる。しかし、母から幼なじみの閏土の話を聞いたことをきっかけに、幼い頃の思い出が鮮やかによみがえってくる。
閏土との出会いは三十年前、「私」が8歳の頃だった。裕福な家に育った「私」と使用人の息子である閏土は、年齢が近かったことから親密な友情を育んだ。閏土は海辺での貝殻拾いや西瓜畑での番、鳥捕りなど「私」の知らない世界の話を聞かせてくれた。二人は純粋な子どもの心で強く結ばれていた。
しかし二十年後の再会で、閏土は見違えるほど老け、苦労の跡が刻まれた顔をしていた。かつての活気ある少年の面影はなく、「旦那様」と「私」を呼ぶ閏土の態度からは、二人の間に厚い階級の壁が築かれていることが痛感される。
引っ越しの日、閏土は船で荷物を運ぶ手伝いをしてくれた。その時、閏土の子供と「私」の甥の宏児が親しく交わる様子を見て、「私」は次世代には自分たちのような階級の壁が生まれないことを願う。しかし同時に、それが単なる希望に過ぎないことも悟る。
結末で「私」は、故郷を離れゆく船の中で、人々の間に存在する見えない壁について思いを巡らせる。そして次世代には、自分たちとは異なる新しい生活が実現することを願うのだった。
『故郷』の作品情報
『故郷』について、より深く理解するために作品情報をまとめてみました。
項目 | 内容 |
---|---|
作者 | 魯迅(ろじん) |
原題 | 故鄕 |
発表年 | 1921年5月 |
掲載誌 | 『新青年』 |
収録作品集 | 『吶喊』(1923年) |
ジャンル | 短編小説 |
主な舞台 | 中国の農村(魯迅の故郷がモデル) |
時代背景 | 20世紀初頭の中国 |
主なテーマ | 故郷への思い、社会階級、希望と絶望 |
日本での位置づけ | 中学3年の国語教科書に掲載 |
対象年齢 | 中学生以上 |
『故郷』は魯迅自身の経験をもとに書かれた作品で、当時の中国社会に残る封建的な身分制度への批判が込められています。
日本では1959年から教科書に採用され始め、1975年以降はすべての教科書会社が採用しているほど重要な作品ですよ。
『故郷』の主要な登場人物
『故郷』に登場する主要な人物たちを紹介します。
それぞれの人物の関係性を理解すると、物語の深みがより感じられるでしょう。
人物名 | 説明 |
---|---|
「私」(主人公) | 20年ぶりに故郷に帰ってきた語り手。かつては裕福な家の子どもだったが、家が没落し、複雑な思いを抱えている。 |
閏土(ルントウ) | 「私」の幼なじみ。小作人の家の息子で、かつては活気あふれる少年だったが、苦労の末に老け込んでいる。 |
宏児(ホンル) | 「私」の甥。次世代を象徴する子ども。物語の終盤で希望を示す役割を担う。 |
水生(シュイション) | 閏土の5番目の息子。宏児と友達になり、新しい世代の友情を表す。 |
「私」の母 | 閏土の思い出を「私」に語り、過去と現在をつなぐ役割を果たす。 |
猹(チャー) | 閏土の話に登場する動物。実在するかは不明で、象徴的な意味を持つとされる。 |
こうした登場人物たちの関係性から、『故郷』における階級の壁や時代による変化、そして次世代への希望というテーマが浮かび上がってきますね。
特に「私」と閏土の関係性の変化は、物語の中心的なテーマを象徴しています。
『故郷』の読了時間の目安
『故郷』は比較的短い作品なので、忙しい方でも短時間で読み終えることができますよ。
以下に読了時間の目安をまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
小説の文字数 | 約10,000文字 |
ページ数の目安 | 約17ページ(1ページ600字換算) |
平均的な読了時間 | 約20分(500字/分で計算) |
じっくり読む場合 | 約30〜40分 |
読みやすさ | 訳者による(佐藤春夫訳がおすすめ) |
『故郷』は短編小説なので、1回の読書時間で十分に読み終えることができます。
ただし、物語の深い意味を理解するためには、じっくりと味わいながら読むことをおすすめしますよ。
読書感想文を書く場合は、何度か読み返すと新たな発見があるでしょう。
『故郷』の読書感想文を書くうえで外せない3つの重要ポイント
読書感想文を書く際には、作品の本質を捉えることが大切です。
『故郷』の場合、特に以下の3つのポイントを押さえておくと、深みのある感想文が書けるでしょう。
- 時間の経過による人間関係の変化
- 階級社会における壁と葛藤
- 次世代への希望と現実のギャップ
それでは、それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
『故郷』における時間の経過による人間関係の変化
『故郷』では、「私」と閏土の関係が時間の経過とともにどのように変化したかが重要なテーマとなっています。
幼い頃、二人は身分の違いを気にせず、純粋な友情で結ばれていました。
閏土は「私」に海辺での貝殻拾いや西瓜畑での番など、「私」の知らない世界を教えてくれる存在でした。
しかし、20年後の再会では、かつての親しい友情は消え失せ、代わりに「旦那様」と「小作人」という厳しい階級関係が浮き彫りになっています。
この変化は、単なる年齢による変化ではなく、社会的立場や環境によってもたらされたものです。
読書感想文では、この人間関係の変化がどのように描かれているか、また「私」がそれをどのように受け止めているかについて考察すると良いでしょう。
時間が人と人との関係をどう変えるのか、そして本当の友情とは何かについて掘り下げることができますよ。
『故郷』における階級社会における壁と葛藤
『故郷』は、当時の中国社会に残る封建的な身分制度や階級格差を鋭く描いています。
「私」と閏土の間に生じた壁は、まさに社会の階級構造の象徴です。
かつて純粋な友情で結ばれていた二人が、大人になると「地主」と「小作人」という立場の違いによって隔てられてしまいます。
特に印象的なのは、閏土が「私」を「旦那様」と呼び、かつての対等な関係が完全に失われている場面。
この変化に「私」は深い喪失感と悲しみを感じています。
読書感想文では、この階級による壁がどのように描かれているか、また「私」の内面にどのような葛藤を生み出しているかを分析すると良いでしょう。
現代社会にも存在する様々な「見えない壁」と比較しながら考察することもできます。
『故郷』における次世代への希望と現実のギャップ
『故郷』の結末部分で特に重要なのは、次世代への希望と同時に感じる現実のギャップです。
物語の終盤、「私」は閏土の息子・水生と自分の甥・宏児が仲良く交流する姿を見て、次の世代には自分たちのような階級の壁が生まれないことを願います。
ここには、未来への希望が込められています。
しかし同時に、「私」はそれが単なる願望に過ぎないことも理解しています。
「希望」という概念について、「希望とは道のようなものである」という象徴的な表現で締めくくられる結末は、作品の最も深いメッセージを含んでいます。
読書感想文では、この「希望」の二面性について考察し、魯迅が描こうとした社会変革への思いや、理想と現実のギャップについて掘り下げると良いでしょう。
自分自身の経験と結びつけながら、希望することの意味について考えることもできますよ。
※魯迅が『故郷』で伝えたいことは、以下の記事で考察しています。

『故郷』の読書感想文の例(原稿用紙4枚弱/約1500文字)
# 心の中の「壁」と「希望」〜魯迅『故郷』を読んで〜
私は今回初めて魯迅の『故郷』を読んだ。最初は中国の古い小説だから難しいかなと思ったけど、意外と読みやすくて、すごく考えさせられる内容だった。特に主人公の「私」と幼なじみの閏土(ルントウ)との関係の変化が胸に刺さった。
『故郷』は、二十年ぶりに故郷に帰ってきた「私」の視点で物語が進む。「私」が故郷に帰った目的は、昔からの家を売るためだ。そこで「私」は幼なじみの閏土と再会するのだが、昔は仲良く遊んでいた二人の間には見えない壁ができていた。この「壁」こそが、この物語の中心テーマだと思う。
私が特に印象に残ったのは、閏土と「私」の子供時代の描写だ。二人は身分の違いなんて気にせず、純粋に友達として遊んでいた。閏土は「私」に海辺での貝殻拾いや西瓜畑での番、鳥捕りの話をしてくれる。そんな「私」の知らない世界を教えてくれる閏土に、「私」は憧れを抱いていた。これって本当の友情の姿だと思う。
でも二十年後、再会した閏土はすっかり老け込んでいて、「旦那様」と「私」を呼ぶ。このシーンを読んだとき、社会の現実の厳しさを感じた。時間が経つにつれて、子供の頃の純粋な友情が「地主」と「小作人」という社会的立場の違いによって壊されていくという現実に、すごく切なくなった。
自分の身の回りを見ても、幼稚園や小学校の頃は誰とでも仲良くできたのに、中学や高校になると色々な「壁」ができて、昔のようには付き合えなくなることがある。この作品を読んで、そういう自分の経験とも重なる部分があって、すごく考えさせられた。
もう一つ心に残ったのは、物語の最後の部分だ。閏土の息子と「私」の甥が仲良く遊ぶ場面を見て、「私」は次の世代には自分たちのような壁ができないことを願う。でも同時に、それが単なる願望に過ぎないことも悟る。「希望とは道のようなものである」という言葉で物語は締めくくられるけど、この表現にはいろんな意味が込められていると思う。
道には目的地があるけど、歩くのは自分自身だし、歩き続けないと意味がない。「希望」も同じで、ただ願うだけじゃなくて、実現するために行動し続けることが大切なんだと感じた。
私は普段、友達との間にある「壁」についてあまり考えることがなかった。でも『故郷』を読んで、社会の中には目に見えない様々な壁があることに気づいた。親の職業や住んでいる場所、成績や趣味によって、無意識のうちに人を区別してしまう時がある。そういう「壁」を少しでも減らすには、子供の頃の純粋な気持ちを忘れないことが大切なんじゃないかと思った。
最近のSNSでも、見えない「壁」がたくさんある。グループができて、そこに入れない人がいる。言葉や文化の違いで分かり合えないこともある。こういう問題は、百年前の中国だけの話じゃなくて、今の日本でも変わらずにあるんだなと考えた。
『故郷』は百年も前に書かれた作品なのに、今読んでもすごく共感できる部分が多い。人間関係の変化や、社会の中で生きる難しさ、そして未来への希望と現実のギャップなど、普遍的なテーマが描かれている。読んでから数日経った今でも、時々「私」と閏土のことを思い出す。特に「希望は道のようなもの」という言葉は、これからの自分の生き方を考える時にも大切にしたいと思う。
この作品を通して、私は「壁」を作らない生き方、そして「希望」を持ち続けることの大切さを学んだ。たとえ社会の中に色々な壁があったとしても、それを少しずつ壊していこうとする姿勢が大切だと感じた。魯迅はこの短い物語の中に、とても深いメッセージを込めていると思う。
『故郷』はどんな人向けの小説か
魯迅の『故郷』は、様々な人に読まれている名作ですが、特に以下のような方々に強く響く作品だと思いますよ。
- 故郷を離れて暮らしている方
- 人間関係の変化や社会の壁について考えたい方
- 近代中国の社会や文化に興味がある方
- 普遍的な人間ドラマを味わいたい方
- 読書感想文の題材を探している中学生・高校生
『故郷』は中国の農村を舞台にした作品ですが、描かれているテーマは国や時代を超えて共感できるものです。
故郷への思いや人間関係の変化、社会の壁といった普遍的な問題を深く掘り下げているので、現代に生きる私たちの心にも強く響くのではないでしょうか。
特に人の成長とともに変わる関係性や、社会の階層による隔たりなど、現代社会にも通じるテーマが含まれているため、自分自身の経験と重ね合わせながら読むことができる作品ですよ。
『故郷』に似た小説3選
魯迅の『故郷』に似たテーマや雰囲気を持つ作品をいくつか紹介します。
これらの作品も、人間関係や社会の問題、故郷への思いなどを深く描いていますよ。
『津軽』(太宰治)
太宰治の『津軽』は、作者が自身の故郷である青森県の津軽地方を訪れる旅を描いた作品。
『故郷』と同様に、久しぶりに訪れた故郷での感慨や、過去の記憶と現実とのギャップが描かれています。
太宰も魯迅と同じく、故郷に対して複雑な思いを抱いており、懐かしさと違和感が入り混じった心情が繊細に表現されています。
故郷を離れて生きる者の心の揺れや、帰郷することの意味を考えさせてくれる点で共通していますよ。
『河童』(芥川龍之介)
芥川龍之介の『河童』は一見すると『故郷』とは異なるファンタジー小説ですが、社会批判や人間関係の隔絶を描く点で共通点があります。
河童の世界を通じて人間社会の矛盾や階級意識を鋭く批判している点は、魯迅が『故郷』で描いた封建的な身分制度への批判と通じるものがあります。
表現方法は異なりますが、社会の問題を深く掘り下げようとする姿勢は両作品に共通していますね。
『山月記』(中島敦)
中島敦の『山月記』は、人間の李徴が虎に変身してしまうという物語ですが、人間関係や社会的地位における葛藤を描いた作品。
『故郷』と同様に、人間同士の隔絶や自己認識の問題を扱っています。
特に主人公が他者との関係性に苦悩する姿は、『故郷』における「私」と閏土との再会シーンを思わせるものがあります。
社会の中で生きる人間の苦悩という普遍的なテーマを描いている点で、両作品には共通点があるでしょう。

振り返り
この記事では、魯迅の代表作『故郷』について、あらすじや登場人物、作品の背景、読書感想文のポイントなど、様々な角度から紹介してきました。
『故郷』は短くて簡単に読める小説ながら、人間関係の変化や社会の階級、そして希望と現実のギャップという深いテーマを含んだ作品です。
故郷への複雑な思いや、幼なじみとの再会を通じて描かれる人間の変化は、百年前の中国を舞台にしていながらも、現代の私たちの心に強く響くものがあります。
読書感想文を書く際には、時間の経過による人間関係の変化、階級社会における壁と葛藤、そして次世代への希望と現実のギャップという3つのポイントを中心に考察すると、より深い感想文が書けるでしょう。
魯迅が『故郷』に込めた思いは、百年の時を超えて私たちに語りかけています。
ぜひ原文を手に取って、じっくりと味わってみてくださいね。
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