本屋大賞にもノミネートされた浅倉秋成さんの小説『六人の嘘つきな大学生』。
わたしは読書が大好きで年間100冊以上の本を読んでいるのですが、この作品は本当にハラハラドキドキの展開で一気に読んでしまいました。
読書感想文を書く予定の皆さんの力になれるよう、短くて簡単なあらすじから詳しいあらすじまで、丁寧に解説していきますね。
それではさっそく進めていきましょう!
『六人の嘘つきな大学生』の簡単で短いあらすじ
『六人の嘘つきな大学生』の中間の長さのあらすじ
『六人の嘘つきな大学生』の詳しいあらすじ
渋谷のIT企業スピラリンクスの最終選考に残った6人の大学生たち。波多野省吾、嶌衣織、九賀蒼太、袴田亮、矢代つばさ、森久保公彦の6人は当初、全員内定の可能性があると告げられていた。しかし試験直前、突然ルールが変更され、採用枠が1名だけになったと通知される。
選考当日、監視カメラが設置された密室でのグループディスカッションが行われることになった。途中、部屋に不審な封筒が見つかり、中には各自宛の「告発文」が入っていた。それぞれの秘密を暴露する内容に、6人は疑心暗鬼になっていく。封筒を持ってきたのは森久保だと判明するが、彼は自宅に届いたものを持ってきただけだと主張した。最終的に、唯一アリバイがなかった波多野が封筒を用意したと名乗り出て退室する。
8年後、スピラリンクスに勤める嶌のもとに、波多野が亡くなったという知らせが届く。波多野の遺品から「犯人、嶌衣織さんへ」と書かれたファイルが見つかり、嶌は当時の真相を探るため、関係者へのインタビューを始めた。そこから明らかになる意外な事実と、本当の犯人の正体とは?
『六人の嘘つきな大学生』の概要
『六人の嘘つきな大学生』の基本情報をまとめてみました。
この作品についての理解を深めるためにぜひ参考にしてくださいね。
項目 | 内容 |
---|---|
作者 | 浅倉秋成 |
出版年 | 2021年3月2日 |
出版社 | KADOKAWA |
受賞歴 | 「第22回本格ミステリ大賞」候補 「第43回吉川英治文学新人賞」候補 「2022年本屋大賞」ノミネート |
主な舞台 | 渋谷のIT企業「スピラリンクス」 |
時代背景 | 2011年の就職活動期と2019年(8年後) |
『六人の嘘つきな大学生』の主要な登場人物
『六人の嘘つきな大学生』には個性豊かなキャラクターがたくさん登場します。
それぞれの人物がストーリーの展開に大きく関わってくるので、しっかりと把握しておくことが読書感想文を書く際のポイントになりますよ。
人物名 | 説明 |
---|---|
波多野省吾 | 立教大学経済学専攻。「就職試験」の語り手。実家は朝霞市。 |
嶌衣織 | 早稲田大学社会科学部。洞察力が高い。「それから」の語り手。 |
九賀蒼太 | 慶應大学総合政策学部。友人も同じ企業を受けていた。 |
袴田亮 | 明治大学。宮城県出身の元高校球児。ムードメーカー気質。 |
矢代つばさ | お茶の水女子大国際文化専攻。海外旅行が好き。 |
森久保公彦 | 一橋大学。一浪しているため他の5人より年上。 |
鴻上達章 | スピラリンクス人事部長。後に独立して採用コンサル業に。 |
波多野芳恵 | 波多野省吾の妹。公務員。 |
鈴江真希 | 「それから」時点でのスピラリンクス新入社員。 |
マネージャー | 「それから」時点での40代半ばの男性スピラリンクス中間管理職。 |
それぞれの登場人物が抱える秘密や過去が物語のカギとなっていくので、読み進めるうちに彼らのキャラクターがどんどん深く描かれていきますよ。
『六人の嘘つきな大学生』の文字数と読了時間
『六人の嘘つきな大学生』の読書感想文を書くためには、まずはしっかり読み込むことが大切です。
どのくらいの時間があれば読み終えられるのか、目安をお伝えしますね。
項目 | 内容 |
---|---|
ページ数 | 304ページ(単行本) |
推定文字数 | 約182,400文字(304ページ×600文字) |
平均的な読了時間 | 約6時間 |
速読の場合 | 約3〜4時間 |
じっくり読む場合 | 約8〜10時間 |
もちろん、読むスピードには個人差がありますので、あくまで目安としてくださいね。
この小説はミステリー要素が強いので、伏線を見逃さないようにじっくり読むことをおすすめします。
『六人の嘘つきな大学生』の読書感想文を書くうえで外せない3つの重要ポイント
読書感想文を書く際には、物語の中で特に印象に残った場面や考えさせられたテーマについて触れることが大切です。
『六人の嘘つきな大学生』の感想文を書く上で、特に押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
- 就職活動における競争と心理戦
- 「嘘」と「真実」の境界線
- 過去の秘密と向き合うことの意味
それぞれのポイントについて、もう少し詳しく説明していきますね。
就職活動における競争と心理戦
この小説の舞台となっているのは、大学生たちの就職活動の最終選考。
最初は「全員内定もありえる」と言われていたのに、突然「採用枠1名」に変更されるというドラマチックな設定は、現代の就活の厳しさを象徴しています。
登場人物たちが置かれた状況は極端かもしれませんが、限られた採用枠を巡って学生同士が競争せざるを得ない就活の現実を反映しています。
彼らが次第に互いを疑い、自分の立場を守るために行動していく様子は、就活生の心理的プレッシャーを鮮明に描いているんですよ。
感想文では、このような極限状態で人間がどのように変化していくのか、また現代の就職活動の問題点について自分の考えを述べると、より深みのある内容になるでしょう。
「嘘」と「真実」の境界線
タイトルにもある「嘘つき」というキーワードが示すとおり、この物語では「嘘」と「真実」が重要なテーマとなっています。
選考中に出てきた「告発文」には、それぞれの登場人物の秘密が書かれていましたが、それらはすべて真実なのでしょうか? それとも嘘が混じっているのでしょうか?
人は自分を守るために嘘をつくことがあります。
または、自分にとって都合の良い「真実」だけを見ようとすることもあります。
この小説を通じて、私たちは「真実」と「嘘」の境界線が曖昧であることに気づかされるはず。
感想文では、登場人物たちが抱える「嘘」と「真実」について考察し、なぜ人は嘘をつくのか、また真実を知ることの意味について自分の考えを述べると良いでしょう。
過去の秘密と向き合うことの意味
この物語は「就職試験」パートと「それから」パートという二部構成。
「それから」のパートでは、8年後の嶌が当時の出来事の真相を探るために動き始めます。
これは過去の秘密や真実と向き合うという行為の意味を問いかけているんですね。
波多野の死をきっかけに、嶌が過去の出来事を掘り起こしていく過程は、過去から目をそらさず、真実と向き合おうとする姿勢を象徴しているかのよう。
感想文では、過去の秘密や真実から目をそらさず向き合うことの意味や、そうすることで得られるものについて考察すると、より深い内容になるでしょう。
また、登場人物たちがどのように成長したのか、または変わらなかったのかについても触れると良いですね。
『六人の嘘つきな大学生』の読書感想文の例(原稿用紙約4枚/約1600文字)
読書感想文:『六人の嘘つきな大学生』を読んで
浅倉秋成さんの『六人の嘘つきな大学生』を読みました。この小説は就職活動中の6人の大学生が、企業の最終選考で繰り広げる心理戦を描いた作品です。わたしはこの本を読んで、人間関係の複雑さと、「真実」というものの不確かさについて深く考えさせられました。
まず印象に残ったのは、物語の舞台設定です。就職活動というのは、今のわたしにとってはまだ先のことですが、いずれ直面する現実です。最初は「全員内定の可能性もある」と言われていたのに、突然「採用枠1名」に変更されるという状況は、現代社会の厳しさを象徴していると感じました。限られた枠を巡って競争せざるを得ない状況は、学校の定期テストや受験にも似ているかもしれません。でも、顔を合わせて話し合いながら互いを評価し合う就活のグループディスカッションは、もっと生々しい人間関係の駆け引きがあるのだと気づかされました。
物語の中で特に考えさせられたのは、「嘘」と「真実」の境界線についてです。グループディスカッションの場に現れた「告発文」には、それぞれの登場人物の秘密が書かれていました。高校時代のいじめや、不正なアルバイト、交際相手との問題など、どれも本人が隠したいことばかりです。最初はショックを受けましたが、よく考えると、誰にでも言いたくない過去や秘密はあるはずです。わたし自身も完璧な人間ではないし、人に知られたくないことがあります。
登場人物たちが互いを疑い、自分を守るために行動していく様子を見て、人間の弱さや恐れについても考えさせられました。特に、波多野が最終的に「封筒は僕が用意した」と名乗り出るシーンは衝撃的でした。彼の行動には様々な解釈ができますが、わたしは「嘘」をつくことで周囲の混乱を収めようとした、ある種の自己犠牲ではないかと感じました。
物語の後半(「それから」のパート)では、8年後の嶌が当時の真相を探る姿が描かれます。波多野の死をきっかけに始まるこの探索は、過去と向き合うことの意味を問いかけているように思いました。過去の出来事から目をそらさずに真実と向き合おうとする姿勢は、とても勇気のいることだと思います。わたし自身も、つらい経験や失敗から逃げずに向き合えているだろうかと考えさせられました。
また、この小説を通じて、人はなぜ嘘をつくのかについても考えました。自分を守るため、大切な人を守るため、あるいは自分にとって都合の良い「真実」だけを見ようとするため…。人間関係の中での「嘘」は必ずしも悪いものばかりではないのかもしれません。ときには、互いの嘘が関係を円滑にすることもあるのでしょう。でも、重要なのは自分自身に対して嘘をつかないことなのではないでしょうか。
『六人の嘘つきな大学生』を読んで、わたしは人間の複雑さと「真実」の多面性について深く考えるきっかけを得ました。これから進学や就職など、さまざまな選択を迫られる場面があると思います。そんなとき、自分に正直でいること、そして他者の複雑な事情にも想像力を働かせることの大切さを忘れないようにしたいと思います。
また、この小説は単なるミステリーとしても非常に面白く、「誰が本当に封筒を用意したのか」という謎に引き込まれました。伏線が巧みに張られていて、最後まで目が離せない展開でした。物語の構成も「就職試験」と「それから」という二部構成になっていて、過去と現在を行き来しながら真相に迫っていく手法が効果的だと感じました。
最後に、この小説を読んで、他者を簡単に判断しないことの大切さを学びました。誰にでも言えない事情や秘密があり、一見「嘘つき」に見える行動にも、その人なりの理由があるのだということです。これからの人間関係において、この教訓を心に留めておきたいと思います。
『六人の嘘つきな大学生』はどんな人向けの小説?
『六人の嘘つきな大学生』は様々な魅力を持つ作品ですが、特に以下のような方におすすめですよ!
- ミステリー・サスペンスが好きな方
- 就職活動や就活生の心理に興味がある方
- 人間関係の機微や心理戦を楽しみたい方
- 「嘘」と「真実」についての哲学的なテーマに関心がある方
- 伏線が巧みに張られた物語が好きな方
特に就活中の学生さんや、これから就活を控えている大学生の方には、共感できる部分が多いと思いますよ。
もちろん、物語の面白さはそれだけにとどまらないので、ミステリー好きな方なら年齢を問わず楽しめる作品です。
心理戦や人間の本質に迫るような深いテーマを持ちながらも、読みやすい文体で書かれているので、ミステリー初心者の方にもおすすめできる一冊です!
※『六人の嘘つきな大学生』の面白いところは、以下の記事で熱くまとめています。

『六人の嘘つきな大学生』に似た小説3選
『六人の嘘つきな大学生』を読んで面白いと感じた方におすすめの、似たテーマや雰囲気を持つ小説を3つ紹介します。
読書の幅を広げるきっかけになれば嬉しいです!
『何者』(朝井リョウ 著)
こちらも就職活動をテーマにした小説です。
5人の大学生が就活を通じて揺れ動く心情や、SNSでの自己表現と本当の自分との乖離などが描かれています。
『六人の嘘つきな大学生』と同様に、就活というシビアな状況下での人間関係が鋭く描かれており、現代の若者の生きづらさが伝わってくる作品。
特に「自分は何者なのか」というアイデンティティの問題は、両作品に共通するテーマと言えるでしょう。
『教室が、ひとりになるまで』(浅倉秋成 著)
同じ著者による学園ミステリーです。
ある高校の特別教室に集められた生徒たちが、互いの秘密を暴露し合うゲームに巻き込まれるという設定は、『六人の嘘つきな大学生』の閉鎖空間での心理戦に通じるものがあります。
こちらも登場人物たちの過去や秘密が徐々に明らかになっていく展開で、浅倉さんの緻密な伏線の張り方や心理描写の巧みさを堪能できます。
『プロパガンダゲーム』(根本聡一郎 著)
就職活動ではありませんが、ゲーム形式の選考という設定が『六人の嘘つきな大学生』と似ています。
主人公たちがシステムに翻弄される様子や、競争が激化する中での人間関係の変化など、共通点が多い作品です。
こちらはSF的な要素も含んでいますが、人間の本質や選択の意味を問うテーマは共通しており、両方の作品を読み比べると面白い発見があるかもしれません。
振り返り
今回は、浅倉秋成さんの小説『六人の嘘つきな大学生』のあらすじをご紹介しました。
短く簡単なものから詳しいネタバレありのものまで、さまざまな長さでまとめてみましたが、読書感想文の作成で参考になるかと思います。
この作品は、就職活動という身近なテーマを扱いながらも、人間の本質や「嘘」と「真実」についての深い問いかけを含んだミステリー小説です。
読書感想文を書くうえでのポイントも詳しくご紹介したので、ぜひ参考にしてくださいね!
もし時間に余裕があれば、紹介した類似作品も読んでみると、さらに読書の幅が広がるのでおすすめです。
それぞれの作品を比較しながら読むと、新たな気づきがあるかもしれませんよ。
読書は知識を広げるだけでなく、想像力を豊かにし、他者への理解を深める素晴らしい経験です。
これからも素敵な読書ライフを送ってくださいね!
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