第69回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書に選ばれた『魔女だったかもしれないわたし』のあらすじを、簡単にそして詳しくご紹介していきますね。
『魔女だったかもしれないわたし』は、エル・マクニコルさんによる自閉スペクトラム症の少女が主人公の感動的な成長物語です。
この作品は、ウォーターストーンズ児童文学賞やシュナイダー・ファミリーブック賞オナーなど数々の賞を受賞し、2025年にはカーネギー賞にもノミネートされた注目の一冊。
私は年間100冊以上の本を読む読書好きですが、この『魔女だったかもしれないわたし』は特に印象深い作品の一つでした。
読書感想文を書く予定の皆さんにとって、きっと参考になる内容をお届けできると思います。
それでは、さっそく進めていきましょう。
エル・マクニコル『魔女だったかもしれないわたし』のあらすじを簡単に
エル・マクニコル『魔女だったかもしれないわたし』のあらすじを詳しく(ネタバレなし)
主人公のアディ(アデライン)は、自閉スペクトラム症の少女で、スコットランドの小さな村ジュニパーで両親、双子の姉(ニナとキーディ)と暮らしている。
学校では字がうまく書けない自分を担任のマーフィー先生が認めてくれず、かつての親友ジェンナとも疎遠になり、深い孤独を感じていた。
ある日の授業で、アディは自分たちの村でかつて「人と違う」というだけで「魔女」と呼ばれ、多くの無実の女性が苦しめられ命を落とした歴史を知る。
自分ももしその時代に生きていたら魔女狩りの犠牲者になっていたかもしれないと考えたアディは、その犠牲者たちのために慰霊碑を村の委員会に作ってもらいたいと願い出る。
しかし体裁を重んじる委員会はこれを却下し、さらにクラスメイトのエミリーからいじめを受けるなど、アディの周りには困難が続く。
それでも新しく転校してきたオードリーや図書館司書のアリソン先生といった理解者に支えられながら、アディは自分が自閉であることを堂々と明かし、「人と違うのはいいことで、自分が自閉でよかった」と力強くスピーチする。そして村にはゆっくりと、だが確実に変化が訪れるのだった。
『魔女だったかもしれないわたし』のあらすじを理解するための用語解説
この物語を深く理解するために、重要な用語について説明しますね。
用語 | 説明 |
---|---|
自閉スペクトラム症(ASD) | 神経発達症の一つで 社会的なコミュニケーションや 行動のパターンに特徴がある。 主人公アディや姉のキーディが該当し 感覚過敏やコミュニケーションの困難さが描かれている。 |
魔女狩り | 中世から近世にかけてのヨーロッパで 「魔女」とされた人々が迫害・処刑された歴史的事件。 主に女性がターゲットとなり 異質や異端を理由に命を奪われた歴史背景を示す。 |
ニューロダイバーシティ | 脳の多様性を尊重する考え方。 発達障害を「個性の一つ」ととらえ、 多様な生き方や思考の違いを肯定する理念。 |
慰霊碑 | 歴史的な犠牲者や過去の事件を記憶し 供養や追悼を目的に建てられる碑。 作中では魔女狩りの犠牲者を追悼するための 慰霊碑を村に建てることが重要なテーマ。 |
仮面(マスク) | 社会生活で周囲に合わせて 自分の本来の性格や感情を隠す行動を象徴。 アディは自閉による違いを隠すため「仮面」をかぶっているが 内心の苦しさを抱えている。 |
これらの用語を理解することで、『魔女だったかもしれないわたし』の深いメッセージがより伝わってくるでしょう。
『魔女だったかもしれないわたし』の感想
『魔女だったかもしれないわたし』を読み終えて、まず感じたのは「これはすごい作品だ」ということでした。
正直に言うと、最初は自閉スペクトラム症についての知識が乏しかった私にとって、アディの感じ方や行動を完全に理解するのは難しかったんです。
でも読み進めていくうちに、彼女の繊細さや純粋さ、そして周りとの違いに悩みながらも自分らしさを貫こうとする強さに心を打たれました。
特に印象的だったのは、アディが魔女狩りの歴史と自分の境遇を重ね合わせる場面です。
「人と違う」というだけで迫害された過去の女性たちと、現代でも理解されずに苦しむ自分を重ねる発想は、まさに天才的だと思いました。
歴史の中の不条理と現代の偏見を結び付ける視点が、この物語に深みを与えているんですよね。
マーフィー先生のような理解のない大人たちの描写も、リアルで胸が痛くなりました。
子どもを型にはめようとする大人の姿勢って、確かに現実にもよくあることで、読んでいて「ああ、こういう先生いるよね」って思ってしまいます。
一方で、アリソン先生やオードリーのような理解者がいることで、物語に希望の光が差しているのも良かったです。
クライマックスでアディが自分の個性を堂々と受け入れるスピーチをするシーンは、本当に感動しました。
「自分が自閉でよかった」と言い切る彼女の強さには、涙が出そうになりましたね。
これまで「仮面」をかぶって生きてきた彼女が、ありのままの自分を受け入れ、周りにも理解してもらおうとする勇気は素晴らしいものでした。
ただ、正直なところ、物語の前半部分は少し重くて読むのがつらい部分もありました。
アディの孤独感や理不尽な扱いを受ける場面は、読んでいて心が痛くなります。
でもそれがあるからこそ、後半の成長や希望がより輝いて見えるんでしょうね。
この作品を読んで、多様性について改めて考えさせられました。
私たちは無意識のうちに「普通」という枠にはまることを求めがちですが、実際には一人ひとり違っていて当たり前なんですよね。
アディのような子どもたちが、自分らしく生きられる社会になってほしいと心から思いました。
著者のエル・マクニコルさん自身も自閉スペクトラム症ということで、アディの描写には説得力があります。
外から見ただけでは分からない内面の複雑さや、感覚過敏の辛さなどが丁寧に描かれていて、理解の手助けになりました。
『魔女だったかもしれないわたし』は、単なる児童文学を超えた、現代社会への重要なメッセージを含んだ作品だと思います。
大人も子どもも、ぜひ読んでほしい一冊ですね。
※『魔女だったかもしれないわたし』の読書感想文の書き方とテンプレートはこちらでご紹介しています。

『魔女だったかもしれないわたし』の作品情報
項目 | 内容 |
---|---|
作者 | エル・マクニコル(著) 櫛田理絵(訳) |
出版年 | 2022年8月16日 |
出版社 | PHP研究所 |
受賞歴 | 第69回青少年読書感想文全国コンクール課題図書 ウォーターストーンズ児童文学賞 シュナイダー・ファミリーブック賞オナー 2025年カーネギー賞ノミネート |
ジャンル | 児童文学、成長物語、多様性理解をテーマとしたフィクション |
主な舞台 | スコットランドの小さな村ジュニパー |
時代背景 | 現代 |
主なテーマ | ニューロダイバーシティ(脳の多様性) 多様性の理解と受容 自己肯定感の育成 |
物語の特徴 | 自閉スペクトラム症の少女の視点から描かれた成長物語 魔女狩りの歴史と現代の偏見を重ね合わせた構成 |
対象年齢 | 小学校高学年(10歳以上)から中学生向け |
青空文庫の収録 | 未収録 |
『魔女だったかもしれないわたし』の主要な登場人物とその簡単な説明
物語の理解を深めるために、主要な登場人物をご紹介しますね。
人物名 | 紹介 |
---|---|
アデライン(アディ) | 主人公の自閉スペクトラム症の少女。 スコットランドの小さな村ジュニパーで 両親と双子の姉2人と暮らしている。 周囲と違うことから孤立しがちだが 自分の個性を受け入れ成長していく。 |
キーディ | アディの姉。 アディと同じく自閉スペクトラム症だが 大学ではそのことを隠している。 |
ニナ | アディの双子の姉。 大学を辞め動画投稿をしている。 |
マーフィー先生 | アディの学校の担任教師。 アディに厳しく、理解が乏しい。 |
アリソン先生 | 図書館司書。 アディに理解と支援を示す。 |
オードリー | 転校生で、アディの良き理解者となる。 |
ジェンナ | アディのかつての親友。 最近は他の女生徒と仲良くし アディには冷たい態度をとる。 |
エミリー | ジェンナの友人で、アディに対していじめを行う。 |
マッキントッシュ | 村の委員会委員長。 アディの慰霊碑設置の提案に反対する。 |
ミリアム | 村で一番大きな家に住む老女で
の伝統を重んじる人物。 |
これらの登場人物が織りなす人間関係が、『魔女だったかもしれないわたし』の魅力的なストーリーを作り上げているんですね。
『魔女だったかもしれないわたし』の読了時間の目安
読書感想文を書く予定の皆さんにとって、読了時間は気になるポイントですよね。
項目 | 目安 |
---|---|
総ページ数 | 240ページ |
推定文字数 | 約144,000文字 |
読了時間(集中して読む場合) | 約4時間48分 |
1日30分読書の場合 | 約10日間 |
1日1時間読書の場合 | 約5日間 |
『魔女だったかもしれないわたし』は児童文学なので、文章は比較的読みやすく書かれています。
ただし、テーマが深いので、じっくりと味わいながら読むことをおすすめします。
読書感想文を書く場合は、読みながらメモを取っておくと後で役立ちますよ。
『魔女だったかもしれないわたし』はどんな人向けの小説か?
この作品がどんな人にぴったりなのか、私なりに分析してみました。
特におすすめしたいのは、以下のような方々です。
- 自分らしさを大切にしたいと思っている中学生・高校生の皆さん
- 多様性や個性について深く考えたい人
- 感動的な成長物語を読みたい読書好きの方
『魔女だったかもしれないわたし』は、特に思春期の悩みを抱えている人には心に響く作品だと思います。
周りと違うことで悩んでいる人、自分の個性に自信を持てない人にとって、アディの成長は大きな励みになるでしょうね。
また、家族や教師、友人など周囲の人たちとの関係性も丁寧に描かれているので、人間関係に悩んでいる方にもおすすめです。
ただし、テーマが重い部分もあるので、軽い気持ちでサクッと読みたい人には少し重く感じるかもしれません。
それでも、最後まで読み切れば必ず心に残る何かを得られる作品だと確信しています。
あの本が好きなら『魔女だったかもしれないわたし』も好きかも?似ている小説3選
『魔女だったかもしれないわたし』が気に入った方に、似たような雰囲気や テーマを持つ作品をご紹介しますね。
どの作品も、思春期の繊細な心情や成長を丁寧に描いた素晴らしい小説です。
梨木香歩『西の魔女が死んだ』
主人公のまいは、学校に行けなくなった中学生の女の子です。
おばあちゃんの家で過ごす夏休みを通して、自分自身と向き合っていく物語。
『魔女だったかもしれないわたし』と同様に、主人公が抱える生きづらさや、周囲との違いに悩む姿が共通しています。
また、「魔女」というキーワードも共通していて、どちらも現実的でありながら少し幻想的な雰囲気を持つ作品ですね。

小川洋子『ことり』
静かで幻想的な雰囲気と、主人公の繊細な内面が丁寧に描かれている点で似ています。
この小説では、特別な能力を持つ少年の成長が描かれており、周囲との違いに悩みながらも自分らしさを見つけていく過程が印象的。
『魔女だったかもしれないわたし』のアディと同じように、主人公の内面の豊かさと複雑さが美しく表現された作品です。
日常の風景がふとした瞬間に特別なものに変わる感覚も共通しています。
森絵都『つきのふね』
思春期の少女が家族や社会との関係の中で自分自身の居場所を探していく物語です。
主人公の繊細な心模様が詩的に描かれており、現実から逃げ出したくなる気持ちと、それでも前に進もうとする強さが描かれている点が『魔女だったかもしれないわたし』と似ています。
直接的なファンタジー要素は少ないものの、主人公の内面世界の豊かさや、成長への道のりが美しく表現された作品ですね。
振り返り
『魔女だったかもしれないわたし』のあらすじを、簡単なものから詳しいものまで、そして作品の魅力や感想まで幅広くお伝えしました。
この作品は、自閉スペクトラム症の少女アディの成長を通して、多様性の大切さや自己受容の重要性を教えてくれる素晴らしい物語です。
読書感想文を書く際には、アディの心の変化や、周囲の人々との関係性に注目してみてください。
きっと深みのある感想文が書けるはずです。
この記事が、皆さんの読書や読書感想文作成の参考になれば嬉しいです。
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