朝井リョウ『何者』の本のあらすじ(ネタバレなし)

朝井リョウの小説『何者』のあらすじ あらすじ

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就活の不安とリアルな若者を描いた朝井リョウの『何者』のあらすじをご紹介します。

2012年に新潮社から刊行され、第148回直木三十五賞を受賞した注目の一冊。

就活生たちの葛藤や人間関係の機微を丁寧に描いた作品で、2016年には映画化もされました。

私は年間100冊以上の本を読む40代の読書家として、この作品の魅力を余すところなくお伝えしますね。

読書感想文に取り組む皆さんの助けになる情報をたっぷりとお届けしますので、ぜひ参考にしてくださいね。

当記事では物語の核心には触れない「ネタバレなし」のあらすじをご紹介します。

『何者』の短くて簡単なあらすじ

大学生の拓人、光太郎、瑞月、理香、隆良の5人が就活に挑む姿を描く物語。

理香の部屋を「就活対策本部」として集まり、互いに励まし合いながら就職活動に取り組むが、SNSでの自己演出や本音と建前の狭間で揺れ動く。

内定をもらった「裏切り者」が現れたとき、これまで抑えられていた妬みや本音が露わになり、彼らは自分自身と向き合うことになった。

『何者』の中間の長さのあらすじ

御山大学の学生サークルで脚本を書いていた拓人を中心に、ルームシェアをしている光太郎、拓人が思いを寄せる瑞月、「意識高い系」の理香、理香と同棲中の隆良という5人の大学生が就職活動に奮闘する。

彼らは理香の部屋を「就活対策本部」として定期的に集まり、情報交換や模擬面接を行いながら就活を進める。

SNSでの自己アピールや面接での自己PR、建前と本音の狭間で揺れ動く彼らの関係性は次第に変化していき、内定を獲得した「裏切り者」の存在をきっかけに、これまで抑えられてきた感情が表面化していく。

『何者』の詳しいあらすじ

大学4年生の就活シーズン。御山大学演劇サークルで脚本を書いていた二宮拓人、バンド活動に注力していた神谷光太郎、アメリカでインターンを経験した田名部瑞月、海外留学経験のある「意識高い系」の小早川理香、そして就活に批判的な宮本隆良の5人は、理香の部屋を「就活対策本部」として定期的に集まるようになる。

拓人は観察眼に優れ、人を分析するのが得意だが、彼自身も就活の荒波に飲まれていく。光太郎は何も考えていないように見えて実は着実に内定に近づいていく。拓人が思いを寄せる瑞月は光太郎の元カノで、実直な性格の持ち主。理香は就活への意識が高く、SNSでも自分を良く見せようと努力するが、なかなか結果が出ない。隆良は当初就活をしないと宣言するが、内心では焦りを感じている。

彼らはエントリーシートの書き方や面接の練習を重ねながら、SNSで日々の出来事や思いを発信する。表向きは協力し合っているように見える彼らだが、次第にそれぞれの本音や嫉妬心が見え隠れするようになる。そして、ついに内定を獲得した「裏切り者」が現れたとき、これまで抑えられていた感情が爆発し、彼らは自分と向き合うことになるのだった。

『何者』の概要

何者』の基本情報をまとめました。

作者 朝井リョウ
出版年 2012年11月30日
受賞歴 第148回直木三十五賞
ジャンル 現代小説・就活小説
主な舞台 大学生のアパートと就活現場
時代背景 2010年代前半の日本
主なテーマ 自己実現、他者との比較、SNSと現実の乖離
物語の特徴 リアルな就活描写とSNSでの自己表現
対象年齢 大学生~20代後半(特に就活世代)

『何者』の主要な登場人物とその簡単な説明

『何者』には個性豊かな登場人物たちが出てきます。

それぞれの人物がどのような特徴を持っているのか見ていきましょう。

人物名 キャラクター紹介
二宮拓人 主人公。社会学部の学生で、演劇サークルで脚本を書いていた。観察力が高く、人を分析するのが得意。
神谷光太郎 拓人のルームシェア相手。社会学部でバンド活動に熱心だった。明るくコミュニケーション能力が高い。
田名部瑞月 拓人の片思いの相手。社会学部で、光太郎と一時期交際していた。アメリカでインターンの経験あり。
小早川理香 外国語学部の学生。留学経験があり、就活への意識が非常に高い。SNSで自分の良いイメージを発信する。
宮本隆良 理香の彼氏。就活に批判的な態度を示すが、内心では焦りを感じている。
銀次 拓人と同じ演劇サークルにいた元大学生。大学を辞めて自分の小劇団を設立。
サワ先輩 拓人と親交のある大学院2年生。理工学部の学生。

これらの登場人物たちが織りなす人間関係が物語の核心部分となっていますよ。

『何者』の文字数と読むのにかかる時間

『何者』は単行本で286ページの作品です。

文字数や読了時間の目安をまとめました。

総文字数(推定) 約17万文字
1日1時間読んだ場合 約5~6日で読了可能
集中して読んだ場合 約5~6時間で読了可能
読みやすさ 現代的な文体で読みやすい

比較的読みやすい文体で書かれているので、集中して読めば短期間で読み終えられる作品ですね。

ページ数は多くありませんが、登場人物の心理描写が細かいので、じっくり味わって読むことをおすすめしますよ。

『何者』の読書感想文を書くうえで外せない3つの重要ポイント

『何者』の読書感想文を書くうえで押さえておきたい重要なポイントを3つ挙げました。

  • 就活を通じて描かれる自意識の葛藤
  • SNSと自己表現の関係
  • 多様な価値観の対立

これらのポイントを意識して読むと、より深く作品を理解することができますよ。

就活を通じて描かれる自意識の葛藤

『何者』の大きな魅力は、就職活動という特殊な状況の中で、登場人物たちが「自分は何者なのか」と悩む姿がリアルに描かれている点ですね。

拓人たち5人の大学生は、それぞれ自分の強みや個性をアピールしようとしながらも、他者からの評価や社会からの期待に応えようとする葛藤を抱えています。

特に印象的なのは、自分をどう見せるべきか、本当の自分とは何かという問いに向き合う場面ですよ。

この自意識の葛藤は、就活生だけでなく、自分のアイデンティティや将来に不安を感じる多くの若者にとって共感できるテーマになっています。

SNSと自己表現の関係

作品内では、SNSが登場人物たちの自己表現の重要なツールとして描かれています。

理香のように SNS上では常にポジティブな自分を演出する人物がいる一方で、そのギャップに違和感を覚える人物もいます。

現代社会において、SNSと現実の間にある自己の乖離は多くの人が経験することであり、この作品はその問題を鋭く描き出していますよ。

感想文では、SNSでの自己表現と本当の自分との関係について、自分自身の経験と照らし合わせながら考察すると良いでしょう。

多様な価値観の対立

『何者』に登場する5人の大学生は、それぞれ異なる背景や価値観を持っています。

拓人の観察眼、光太郎のコミュニケーション能力、理香の「意識高い系」の姿勢、隆良の就活への批判的な態度など、多様な価値観が対立し、時に衝突する様子が描かれています。

特に印象的なのは、就活に対する姿勢の違いですね。

積極的に取り組む人もいれば、批判的な視点を持つ人もいる中で、それぞれが自分なりの答えを模索していく過程は、読者に多様性の重要性について考えさせるきっかけになります。

※『何者』で作者が伝えたいことは、以下の記事で考察しています。

『何者』が伝えたいこと。誰もが思い当たる4つの気づき!
『何者』が伝えたいことを通じて「本当の自分」に迫るためのヒントを探ります。SNSや友人関係で生じる悩みや葛藤をどう受け止め、行動に変えるべきか、一緒に考えてみましょう。

『何者』の読書感想文の例(原稿用紙4枚弱/約1400文字)

私は高校3年生という進路選択の大切な時期に、朝井リョウの『何者』を読んだ。この小説は大学生の就職活動を通して若者の自己認識や人間関係の複雑さを描いた作品で、まだ就活を経験していない私にとっては少し先の未来の話だが、自分自身のアイデンティティについて深く考えさせられた。

物語の主人公である拓人は観察眼に優れ、周囲の人間を分析するのが得意だ。しかし彼自身も就活という大きな波に飲み込まれ、自分はいったい「何者」なのかという問いに直面する。私もこれから進学や就職で同じような問いに向き合うことになると思うと、拓人の葛藤が他人事とは思えなかった。

特に印象に残ったのは登場人物たちのSNSの使い方だ。小早川理香は常にポジティブな自分をTwitterで発信し続け、自分のブランディングに必死になっている。今の時代、私たちもSNSで「いいね」を集めることに意識が向きがちだけど、そこで見せる自分と本当の自分はどれだけ一致しているのだろうか。この作品を読んで、自分のSNSの使い方を見直すきっかけになった。

もう一つ考えさせられたのは、多様な価値観の対立だ。5人の登場人物はそれぞれ異なる背景や考え方を持っている。光太郎のように何も考えていないように見えてすんなり内定を取る人もいれば、理香のように必死に頑張っているのになかなか結果が出ない人もいる。人それぞれの価値観や生き方があって、一概にどれが正解というわけではないんだと気づかされた。

就活という特殊な状況の中で、彼らは自分の強みをアピールしつつ、本音と建前の間で揺れ動く。それは今の私たちの学校生活にも通じるものがあると思う。テストの点数や部活の成績など、常に誰かと比較され評価される環境の中で、「本当の自分とは何か」という問いは私たちにとっても切実なものだ。

作中で印象的だったシーンは、内定を得た「裏切り者」が現れたときの他のメンバーの反応だ。それまで抑えられていた妬みや本音が表面化し、一見仲が良さそうに見えた関係性が一気に変わっていく。友人関係でも、表面上の仲の良さと心の奥底にある本当の感情は違うことがある。この描写はリアルで、少し怖くもあり、自分の人間関係を見つめ直すきっかけになった。

『何者』を読んで最も考えさせられたのは、私たち若者が常に「何者かになりたい」と思いながらも、実際には「何者になればいいのか」がわからない葛藤を抱えているということだ。就活生たちが企業に自己PRをする場面は、まるで自分の価値を証明しないといけないようなプレッシャーを感じさせる。私たちは常に「普通」以上のことを求められているような気がして、それがとてもしんどいときがある。

ラストシーンで、拓人たちがようやく自分自身と向き合い始めるところは希望を感じさせた。彼らは完璧な答えを見つけたわけではないけれど、本音を出し合うことで一歩前に進み始める。私も完璧な答えを見つける必要はなく、自分と向き合いながら少しずつ前に進んでいけばいいんだと思えた。

この小説は就活という切り口を通して、現代の若者が直面するアイデンティティの問題や人間関係の機微を鋭く描いている。まだ高校生の私にとっては少し先の話だけれど、自分は何者なのか、何者になりたいのかという問いは、今の私にも十分に響いた。これから進路を決める時、就活をする時、きっとこの小説を思い出すと思う。そして拓人たちのように、建前ではなく本音で自分と向き合いたいと思った。

『何者』はどんな人向けの小説か

『何者』はどんな人に響く小説なのか、特に向いている読者層を考えてみました。

  • 就職活動中の大学生や若者
  • 自己実現や社会での立ち位置に悩む人
  • SNSと現実の乖離に関心がある人
  • 人間観察や心理分析に興味がある読者
  • 現代社会における若者の葛藤を理解したい人

特に就活を控えた大学生には、登場人物たちの不安や葛藤に共感できる部分が多いでしょうね。

また、SNSでの自己表現や他者との比較に悩む人にとっても、心に響く作品となっていますよ。

『何者』と類似した内容の小説3選

『何者』を読んで面白かった方や、似たような作品をもっと読みたい方のために、類似した小説を3つ紹介します。

『桐島、部活やめるってよ』(朝井リョウ)

朝井リョウの代表作の一つで、『何者』と同様に若者の自意識と周囲との関係性を描いています。

学校の人気者である桐島が突然部活をやめたことをきっかけに、周囲の生徒たちの立ち位置が揺れ動く様子が描かれていますよ。

『何者』の登場人物が就活という場で自分の価値を証明しようとするのと同じように、『桐島、部活やめるってよ』の登場人物たちも学校という小さな社会の中での自分の存在意義を探っています。

『スター』(朝井リョウ)

これも同じく朝井リョウの作品で、若者の自己実現や社会での立ち位置を探る物語です。

『何者』が就職活動を通じて若者の葛藤を描いたように、『スター』も若者の成長と自己発見のテーマを扱っています。

特に、自分は「何者か」という問いや他者との関係性の中で揺れ動く若者の姿は、『何者』と共通するテーマとなっていますね。

『正欲』(朝井リョウ)

朝井リョウの作品で、『何者』と同様に複数の登場人物の視点から物語が展開されます。

それぞれの登場人物が抱える問題や内面の葛藤が描かれ、人間の欲望や社会との関わりを探求するという点で『何者』と共通しています。

『何者』と同じく、表面的な関係性の裏に隠れた本音や欲望を丁寧に描き出している点が魅力ですよ。

振り返り

朝井リョウの『何者』は、就職活動に取り組む大学生たちの姿を通して、現代の若者が抱える自己認識の問題や人間関係の機微を鋭く描いた作品です。

登場人物たちが「自分は何者なのか」という問いに向き合い、SNSと現実の狭間で揺れ動く姿は、多くの読者の心に響くでしょう。

この記事では、『何者』のあらすじや登場人物、読書感想文を書くうえでのポイント、類似作品などを紹介しました。

読書感想文の執筆に役立てていただければ幸いです。

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