今回は東野圭吾さんの心温まる小説『クスノキの番人』のあらすじをていねいにご紹介していきますよ。
私は読書が大好きで年間100冊以上の本を読むくらいの本の虫なんです。
とくにミステリー小説には目がありません。
ですので東野圭吾さんの作品は全作品を読破しています。
この記事では、読書感想文を書く予定の皆さんに向けて、『クスノキの番人』の短くて簡単なあらすじから詳しいあらすじまで、丁寧に解説していきますね。
『クスノキの番人』の短くて簡単なあらすじ
『クスノキの番人』の中間の長さのあらすじ
『クスノキの番人』の詳しいあらすじ
会社の製品の欠陥を顧客に話してしまい解雇された直井玲斗。給料も退職金ももらえないまま追い出された彼は、会社への恨みから高価な機械を盗もうとして逮捕される。
絶望的な状況の中、突然現れた柳澤千舟という女性が彼を救う。彼女は玲斗の亡き母の腹違いの姉だった。示談金を支払う条件として、玲斗はある神社のクスノキの番人になることを命じられる。
このクスノキには不思議な力があるという。満月と新月の夜になると、予約をした人々が訪れてクスノキに祈りを捧げる。その祈りの内容も、クスノキの力も、玲斗にはわからない。叔母の千舟は「いずれ理解できる時が来る」と言うだけだった。
玲斗は次第に、訪れる人々の様々な思いに触れていく。そして、クスノキが持つ神秘的な力と、叔母が自分をクスノキの番人に選んだ切ない理由を知ることになっていく。
『クスノキの番人』の概要
項目 | 内容 |
---|---|
作者 | 東野圭吾 |
出版年 | 2020年 |
出版社 | 実業之日本社 |
主な舞台 | 地方都市の神社 |
時代背景 | 現代 |
『クスノキの番人』の主要な登場人物
『クスノキの番人』を彩る個性豊かな登場人物たちをご紹介しますね。
人物名 | 説明 |
---|---|
直井玲斗 | 主人公。20代前半。クスノキの番人となる |
柳澤千舟 | 玲斗の叔母。70歳近い。ヤナッツ・コーポレーションの顧問 |
直井美千恵 | 玲斗の母親。千舟の異母妹。すでに他界 |
直井富美 | 玲斗の祖母 |
佐治寿明 | クスノキに祈念に来る工務店社長 |
『クスノキの番人』の文字数と読了時間
『クスノキの番人』を読むのにどのくらい時間がかかるのか、目安をお伝えしますね。
項目 | 詳細 |
---|---|
ページ数 | 456ページ(単行本) |
推定総文字数 | 約273,600文字 |
読了時間の目安 | 約9時間 |
『クスノキの番人』の読書感想文で外せない3つの重要ポイント
『クスノキの番人』の読書感想文を書くときに、ぜひ触れてほしいポイントを3つご紹介します。
- 主人公・玲斗の人間的成長
- クスノキが持つ不思議な力の正体
- 人と人とのつながりの大切さ
玲斗の人間的成長について
最初は自分を卑下し、将来への希望も持てなかった玲斗。
でも、クスノキの番人として様々な人との出会いを重ねることで、少しずつ成長していきます。
とくに、叔母の千舟からマナーや社会人としての心得を学んでいく過程は、とても印象的。
玲斗の成長ぶりを具体的に挙げながら、自分の考えを述べるといいでしょう。
クスノキの不思議な力
満月と新月の夜にだけ許される「祈念」。
その正体は物語の核心部分なので、ここでは明かせませんが、人々がクスノキに何を求めているのか、考察してみるのもおもしろいですよ。
人とのつながり
玲斗と千舟の関係性、クスノキを訪れる人々との交流など、人と人とのつながりがこの物語の重要なテーマになっています。
それぞれの登場人物がどんな思いを持っているのか、掘り下げて書いてみましょう。
※『クスノキの番人』を通じて作者が伝えたいことは、下記の記事にて考察しています。

『クスノキの番人』の読書感想文の例(原稿用紙4.5枚/約1700文字)
東野圭吾さんの作品は、緻密なトリックやどんでん返しが魅力のミステリー小説が有名です。でも、『クスノキの番人』は、そういうミステリー要素がほとんどありませんでした。それでも、私はこの作品を一気に読んでしまいました。むしろ、ミステリーでないからこそ、物語の温かさや深みが感じられて、心に残るものになったと思います。
本作の主人公、直井玲斗は、特別優れた人物ではありません。彼は自分の境遇に不満を抱えながらも、それを変えようと努力せず、流されるように生きている青年です。そんな彼が理不尽な理由で会社を解雇されたことで、衝動的に犯罪に手を染めてしまいます。
最初は、玲斗にあまり好感を持てませんでした。「自分は悪くない」と言いつつ、結局は短絡的な行動を取る彼に、私はイライラすら感じました。しかし、突然現れた伯母の柳澤千舟が物語を大きく動かします。千舟は玲斗のために示談金を支払い、彼を救う代わりに、「クスノキの番人」という役目を押しつけるのです。最初はただの仕事として淡々とこなしていた玲斗ですが、次第にクスノキに関わる人々の思いを知ることで、彼自身も変わっていきます。
この小説を読み進めるうちに、私の中で玲斗への印象が変わっていきました。確かに彼は未熟で、何かを成し遂げたいという強い意志を持っていませんでした。しかし、千舟のもとで「番人」としての役割を果たしながら、少しずつ成長していくのです。最初はただのおせっかいな親戚にしか見えなかった千舟が、彼に本気で向き合い、導こうとしていることが分かるにつれて、玲斗の怠惰な態度も変わっていきました。
特に印象に残ったのは、玲斗が「番人」としての仕事に疑問を持ちながらも、次第にその意味を理解していく過程です。クスノキには「願いを叶える力がある」と言われ、多くの人が祈りに訪れます。しかし、その本当の意味を千舟はすぐには教えてくれません。訪れる人々も何かを隠すような素振りを見せます。この「分からない」状況が物語に独特の雰囲気を与えており、玲斗と一緒に読者も「クスノキとは何なのか?」と考えながら読み進めます。
この作品は、単なる成長物語ではなく、「人はなぜ祈るのか?」という深いテーマも含まれています。祈るという行為は、ただ願いを叶えてもらうためだけのものなのでしょうか? それとも、願うこと自体に何か意味があるのでしょうか? 物語の中で、祈りに訪れる人々はそれぞれに抱えた想いや悩みを持っています。玲斗は最初、その行為を疑問視していましたが、やがて彼もクスノキの前に立ち、心の中の想いを語るようになります。彼が気づいたのは、「祈る」という行為が、願いを叶えるためだけではなく、自分自身を見つめ直し、心を整理するためのものでもあるということでした。
また、千舟というキャラクターの存在も、この作品を特別なものにしています。千舟は一見、厳しく冷たい人に見えますが、実は深い愛情を持って玲斗を導いています。彼女の言葉には一本筋が通っており、読んでいる私も「もっとしっかりしなければ」と思わされることが何度もありました。彼女はただ玲斗を甘やかすのではなく、彼が自立できるように厳しく接します。その厳しさの中にある愛情が、物語に温かみを与えていました。
最後まで読んだとき、私は玲斗の成長に驚きました。最初は自分のことしか考えていなかった彼が、クスノキの番人として人々の思いに寄り添い、責任を持って生きようとするようになります。その変化は決して劇的なものではなく、ゆっくりと少しずつ積み重なっていくものでしたからこそ、リアルで心に響いたと思います。そして、物語が終わった後も、私はクスノキのことを考え続けていました。もし本当に「願いを叶える木」があったとしたら、私は何を願うだろうか? そんなことを思いながら、本を閉じました。
『クスノキの番人』は、ミステリーではありません。しかし、心の奥に残る何かを持った作品でした。玲斗の成長を見守ることで、読者自身もまた、自分の生き方を見つめ直すきっかけを得ることができるのではないかと思います。読後、私はふと背筋を伸ばし、「私ももっとしっかりしなければ」と思いました。そして、玲斗が経験したように、私自身もこれからの人生で多くの人と出会い、成長していきたいと強く感じました。
『クスノキの番人』はこんな人におすすめ
『クスノキの番人』は、以下のような方に特におすすめです。
- 人間ドラマが好きな方
- 成長物語が好きな方
- 不思議な展開を楽しみたい方
- 心があたたかくなる物語を読みたい方
- 人と人とのつながりを大切にする方
※『クスノキの番人』の面白い点や魅力は下記の記事にて力説しています。

『クスノキの番人』に似た作品3選
『クスノキの番人』は以下のような作品がお気に入りなら、きっと楽しめるはずです。
『夜明けのすべて』by瀬尾まいこ
主人公が周囲の人々との関わりを通じて成長していく様子が似ています。
温かな人間ドラマとして、共通点が多い作品です。
『コンビニ人間』by村田沙耶香
社会の中で居場所を見つけていく過程が描かれている点で共通しています。
主人公の成長物語という面でも似ています。

『透明な螺旋』by東野圭吾
同じ作者による作品で、不思議な力を持つものが人々の人生に関わっていくという設定が似ています。
振り返り
ミステリアスな要素を含みながらも、人間の成長と再生を描いた心温まる物語、それが『クスノキの番人』です。
読書感想文を書く際は、玲斗の成長過程や、人と人とのつながりの大切さについて、自分の考えを述べてみるといいでしょう。
きっと素敵な感想文が書けるはずですよ。
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